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【GWSP】静香様のお見合い♪

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【GWSP】静香様のお見合い♪

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「僕の家はね、代々男性が跡を継いでいた。
 けれど、僕はこの通り女だ。
 長く子供ができなかった中で、ようやくできた子供が女だった。ああ、どれほどの落胆だったろう?
 結局その後も長い間子供は望めなかった。だから、僕は男として育てられたんだ。物心ついたときから、ずっと」
 滔々と、セシルは語る。
「ジェイダス校長は僕の家の事情や理由を知っていてね。静香嬢を紹介してくれたというわけなんだ。
 見合いというより、いい友達になれるようにって。
 僕もこんなだから友達なんて居ないし、友達がほしかったからむしろこちらこそってお願いした。
 他の校長先生方や、ラズィーヤさんもこのことは知っている」


*...***...*


 お見合いを破談に導こうと、タイミングを見計らうように隠れていた。
 しかし出て行こうとするたびに闖入者が現れ、逃しまくった出ていく瞬間。
 今だ、と茅野 菫(ちの・すみれ)は思った。
 座布団などを収納していた押し入れの、襖をすぱーんと開けて出ていく。
 どうしてそんなところに潜んでいた、とでも言いたげな視線をスルーして、セシルの前まで歩み寄る。お見合い会場にふさわしい服装を、と思って選んだ黒のドレスの裾が少しよれているのを直してから、
「あたし、セシルさんと友達になってあげてもいいんだけど!」
 宣言した。
 思ったのだ。静香とセシルのお見合いを見ていて、なんとなく応援したい気持ちに。
 そのうえあの発言だ。友達がほしい?
「むしろなってやるけど!」
「菫。私より先に口説くなんて、やるね」
 続いて、菅原 道真(すがわらの・みちざね)が押し入れから出てくる。胸元はがっつり開き、スリットも深く入った露出度の高い白ドレスを着ていた。
「道真は校長先生がタイプだっつってたじゃん」
 菫に指摘されて、道真は静香を見遣る。「うん」と一声上げてから、
「男の娘だったんだ? ふぅーん。……うん。でもいいね」
 にこりと静香に笑いかけた。
 道真の恰好が恰好だからか、静香は直視できずにロザリンドの服に顔を埋める。そんな静香を見て道真が「可愛いねぇ」と笑うから、場の雰囲気が若干、変わる。しかしそれを気にするような道真ではなく。
「これ私の連絡先。今度デートしよう。連絡して」
 紙片を静香の服に突っ込んで、笑う。
「……こら。仮にも見合いの席だというのに、ナンパをするな」
 好き放題の道真に、相馬 小次郎(そうま・こじろう)がストップを掛けた。
「私の時代には当り前のことよ?」
「それは平安時代の話だろうが。今は違う。郷に入っては郷に従え」
「カタいわね」
 小次郎は静香とセシルを順に見て、少し頭を下げる。
「すまない。悪気があったわけではない。わしも菫も、ただおぬしらに興味を持ち、話をしてみたくなっただけなのだ」
 その言葉に続いて、
「僭越ながら、私もセシル様にお仕えしたいと思っておりました」
 今日一日セシルの身の回りの世話をしていた本郷 翔(ほんごう・かける)が言った。
 翔の横で、ソール・アンヴィル(そーる・あんう゛ぃる)が笑っている。
「ほら、俺の言ったこと当たった。
 どう、セシル。俺のハーレムに入らない? 側室の席空けとくよ?」
「そこで正室と言わないところがソールらしいですね。
 ……失礼しました」
 こほん、と翔は咳払いし、セシルの前に膝をついた。
「セシル様、今日一日、私はソールの暴走を止める役割を兼ねて貴方にお仕えさせていただきました」
「着替えとかでは随分と助けられたね」
「いえ、それは執事として当然のことです」
「すごく支えになった。精神的にも」
「そう言っていただければ幸いです。……セシル様、今後も私をお傍に置いてくださいませんか?」
「それはまた、酔狂なことを突然」
「なんとなく、放っておけないのです」
「勝手にフラフラ居なくなったりな。気まぐれ猫め。嫌いじゃないけど」
 途中でソールが軽口を叩き、翔に視線で制された。
 その二人のやりとりを見て、セシルは笑った。
「ああっセシルさん! いい笑顔ですわ!」
 その瞬間、神倶鎚 エレン(かぐづち・えれん)がキャアキャアと騒ぎ始めたから驚く。
「今までどうしても作り物臭くて好きになれなかったあなたの笑顔も、それなら百点満点花丸ですわね、大好きになれそうですわ。さささ、素敵な大和撫子には、私、プレゼントといいましょうかサプライズといいましょうか、趣向をこらせてお召し物を用意してみましたの」
 そしてマシンガントークで話し始め、それに圧倒されているとどこからか一着ドレスを用意した。煌びやかで華やかで、それでいてどこか落ちついている不思議な印象の青いドレス。
「これぞ題しまして『女装男装入れ替え企画』ですわ。さあさ静香さんもみなさんもいかがです? 用意しますわよ。
 ああ、大丈夫です。ジェイダス校長の女装姿を見てみたいですわぁ、金団長の女装姿を見たらドキドキしてしまうかもしれませんわぁ……なんてこと、考えていませんので。ええ、でも着て下さったら……」
「静香校長とセシルくんがするらしいぞ」
「おお、残念だ! 女装とはまた面白い試みだと思ったのだが、セシル殿や桜井校長殿が女装男装するというならば、私たちがするわけにもいかぬな、残念だ!」
 ねだるような色を含ませたエレンの言葉を遮って、ジェイダスと鋭峰が言った。二人とも女装したくないらしい。もっともだ。
「あら残念……」
 とエレンが呟きながら、素早くセシルと静香を捕まえる。逆に、この二人はなんとしてでもお色直しをさせるという目をしている。
「えっ、え、男装……?」
「静香嬢、うろたえなくていい。面白そうじゃないか、堂々としていよう」
 うろたえる静香と、受け入れるセシルを別室へと連れて行き、お色直しは行われた。


*...***...*


 エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)と、コルデリア・フェスカ(こるでりあ・ふぇすか)は、ただの冷やかしのつもりで来ていた。
 結婚式ならいざ知らず、ただのお見合いでこれほどの規模になるなんて……と、完全に物珍しさで来ていた。
 邪魔も協力もしない、ただのエキストラ状態で遠目に二人を見ていた。それが――
「お色直しってすげぇな……」
 別室から出てきたセシルは、いままでさらしか何かで抑えつけていたらしい女性的な胸を、強調するようなドレスに身を包み、薄く化粧もしていた。
 女っぽい。女らしい。素材はとてもいいのだから、綺麗に着飾れば何倍も美人になるのは当然と言えば当然なのだが、やはり驚きは隠しようがない。
「あら、あちらは静香様……?」
 もう一方。コルデリアが見惚れたのは、男装の静香だ。
 長い髪をひとつにまとめ、ふりふりふわふわした女の子らしい服は取っ払って今は落ち着いた雰囲気の黒いスーツを着ていた。
 怖がっているような、伏し目がちな目と落ちつかない挙動がどこか小動物っぽい。
「……お色直しの魔力はすごいですわ」
「絶対そのせいだけじゃないと思うけどな」
「いつかわたくしも、こんな素晴らしいイベントを体験してみたいものですわー。じとー」
「……なんだよその目は」
「さあ、なんでしょうねぇ」


*...***...*


「セシルさんはこの後どうするつもりなの?」
 男装状態の静香が、慣れないスーツを着用しているせいだろう、そわそわしながら尋ねた。同じくややそわそわしているセシルが曖昧に微笑み、「実家に帰るよ」と言った。
 その言葉に、「え」と声をあげてしまった。予想外だったらしい。ではどういう反応を想像していたのだろうか、と静香は自問した。答えは出ない。
 が、
「ねえ、セシルさん。ご兄弟はいらっしゃらないんだっけ」
「いや、僕が生まれてからかなり経って弟が生まれたよ。まだ幼い」
「……その弟さんに、お家のこと……後継ぎは任せたつもりになってさ、……女子高生、やらない?」
「……僕が? 女子高生を?」
「あ、嫌、かな?」
 わりと本気でしてみた提案だった。自分でもどうしてそうやって肩入れするのかわからない。
 ただ、思ったのだ。
 自由に生きてほしいと。
「百合園は、なんだろう校長の僕が言っても信憑性とかあまりないかもしれないけど……とってもいいところだよ。生徒はみんな優しいし、可愛いし、学校生活も楽しいし。素敵なんだ。楽しい女子高生ライフは保証するよ!」
 セシルは黙って静香を見たまま口を開かない。
「……ごめん、いきなり言われても困るよね」
 沈黙。
「……いや、ごめん」
 しばらくしてセシルの発した言葉は、それだった。
 ただし、
「嬉しくて言葉が出なかった」
 そう続いた。
 笑顔の花が咲く。


*...***...*


 後日。
 百合園の制服に身を包んだセシルが、静香と二人で笑っていた。

 そんな写真をも写真に収め、アルバムに綴じたトライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)は「どうです?」と環奈に微笑みかけた。
「よく撮れてるでしょ?」
「……そうね、なかなかだわ」
 心なしか口元を綻ばせて、環奈がアルバムをめくる。
 会場セッティングに勤しむ鋭峰。そしてからかわれて半ば涙目になっている鋭峰。
 セシルとジェイダス。
 襲撃を受けた時のドタバタ。お手洗い攻防戦。
 セシルと生徒のお見合いや、どさくさにまぎれて校長にちょっかいをかけるシーン。
 それから、お見合い。
 お見合いの写真が一番多く、その時のドタバタも多数撮影されていた。
「本当に、よく撮れている。トライブ。……ありがとう」
「……へへ、喜んでもらえたなら光栄ですよ」
 褒められて照れくさそうに笑うトライブに、
「……まさかとは思うけれど、売りさばこうと思っているなら止めなさいね」
「げっバレてる」
「……トライブ?」
「しません。すんません」
 環奈が釘を刺して。

 波乱万丈のお見合いは、百合園転入生を一人増やしただけに、終わった。


担当マスターより

▼担当マスター

茨城はるか

▼マスターコメント

 茨城はるかマスターに代わりまして。
 お久しぶりです、あるいははじめまして。
 代筆ゲームマスターを務めさせていただきました灰島懐音です。
 参加してくださった皆様に多大なる謝辞を。

 6ページ後半、キャンディス様のシーンから灰島執筆担当させていただきました。
 今回はお見合いとのことで。
 どのキャラ様も、いろいろと面白く、そして真剣なアクションでした。
 警備側も、攻め入る(?)側も真剣なんですよねぇ。楽しいな、真剣なの書くのも。
 そしてたまに入るゆるかったりほのぼのしたりなアクションのお客様もとても楽しかった。
 ゆるいのはジャスティス。灰島のジャスティス。

 それにしてもお見合いですか……いいですねぇ出会い。灰島みたいなニート半歩手前フリーターには出会いなんてないですし。……いやだなあ別に、リア充なんてうらやましくなんかないんですからねっ? 爆発しろなんて思ってないんですからね?
 某ゲームで「じばく」を覚える子に、「りあじゅう」なんて名前つけてませんよ。本当だよ?
 「りあじゅうのじばく りあじゅうはたおれた」なんてダイアログみて「ざまあw」ってボヤいてないよ。本当だよ?
 ……これ以上書いてもなんか灰島がかわいそうな子になるだけですので、自粛&終了。

 毎回毎回グダグダなマスターコメントですのに、見ていただいているお客様本当にありがとうございます大好きだ。
 それではそれでは、最後まで読んでいただきましてありがとうございました!

▼マスター個別コメント