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■□■12■□■ しゃんばらだいこうや

会場の隅で。
狼の毛皮をかぶり、左目を布で隠し、杖を持った姿という、
一見、コスプレのようだが、普段通りの姿のシャーマン、
シャンバラ大荒野の精 しゃんばらだいこうやがいた。

羽のついたマントでコウモリの仮装の和原 樹(なぎはら・いつき)と、
耳のついたシルクハットで黒猫の仮装のフォルクス・カーネリア(ふぉるくす・かーねりあ)は、
ひさしぶりにしゃんばらだいこうやに会う。
「こうやさん、元気?」
「だいこうや殿も久しぶりだな。息災か?」
「ああ、おまえ達も元気そうだな」
しゃんばらだいこうやは、笑顔を向ける。
「体が痛いとか、精神不安定とかない?」
「特にないが、どうした?」
「や、ないならいいんだ。
2人に分裂したり二重人格になったりしてないか、ちょっと気になっただけだから」
樹の言葉に、しゃんばらだいこうやは言う。
「我は二重人格にはならぬが、このままでは、しゃんばらが
『ひがししゃんばら』と『にししゃんばら』に分裂してしまうではないか!」
嘆くしゃんばらだいこうやに、フォルクスが飲み物を渡して落ち着かせる。
「取り乱してすまなかったな。
しかし、いろいろとややこしい状態になったものよ」
「そういえば、こうやさんも昔から大荒野だったわけじゃないよな。
古王国時代は土地も荒れてなかっただろうし……
大平原とかだったり?
あ、いや胸の話じゃなくて。……あ、痛」
しゃんばらだいこうやは、杖で樹の頭を軽く殴ると話し始める。
「昔は、アトラスの傷跡がシャンバラの首都で、その周囲に都市が広がっていたのだ。
多くの騎馬民族も暮らす、緑豊かな平原だったのだよ」
「その騎馬民族がパラ実生の前身であったのだな」
フォルクスがうなずく。
「うむ。
……しかし、過去を懐かしんでばかりでもいけないな。
これからは、おまえ達、契約者の力で、この戦乱の世界を変えていってほしい」
「そういえば、契約者になりたいと地祇達が騒いでいたな」
フォルクスが言う。
「ざんすかにつぁんだめ、また何をしでかすつもりだ」
しゃんばらだいこうやは、会場を見回す。
「うん、まあ面白そうだし、一緒に見学しようよ」
樹は言い、一行は、これから始まる騒ぎの様子を見守ることにしたのだった。