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トリック・オア・コントラクト!

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トリック・オア・コントラクト!
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 第1章 楽しいパーティー、友人、恋人と

■□■1■□■ ジェイダス様とハロウィン

ハロウィンパーティー会場にて。

一年中仮装みたいな格好の
薔薇の学舎校長ジェイダス・観世院(じぇいだす・かんぜいん)
パートナーの吸血鬼ラドゥ・イシュトヴァーン(らどぅ・いしゅとう゛ぁーん)は、
普段どおりの格好だが、仮装した者が大勢いるパーティー会場で、まったく違和感がない。
「むしろ、ジェイダス様は1年中ハロウィンだね」
外見年齢9歳の女装腐男子、タシガンの町の精 たしがんは言う。
そこに、学生達がやってくる。

「トリック・オア・トリート! トリック・オア・トリート!」
小さなドラゴニュートのビート・ラクスド(びーと・らくすど)は、
背中に白い羽、頭に輪っか、白いぶかぶかローブの天使の衣装で、
しっぽを振って跳ねまわり、ジェイダスにお菓子をねだる。
対になる衣装である黒基調で露出多め、背中に黒い羽の堕天使の姿の、
藍園 彩(あいぞの・さい)が走ってきて、あわててパートナーを抱え上げる。
「ビート、校長に……ちょっとは落ち着け!
すいません、やかましくして」
「元気なのはよいことだ。
今日はハロウィンパーティーなのだからな」
ジェイダスは、優しい、しかし、どこか艶やかな笑みを浮かべる。
彩は、そんなジェイダスを見て、背筋がぞくりとなる。
「トリック・オア・トリート、兄ちゃんは言わないの?」
ビートの言葉で現実に引き戻された彩は、
(オレ、もう18なんだけどな……)
と思いつつも、
「と、トリック・オア・トリート……」
と、照れながら言う。
しかし、彩は実年齢よりだいぶ幼く見えるため、かわいらしかった。
「よし、よい子にはお菓子をあげよう」
ジェイダスは、ビートと彩にお菓子を渡した。

★☆★

「ジェイダス校長、ラドゥ様、それにたしがん。ハッピーハロウィン。
手作りのお菓子をどうぞ」
サトゥルヌス・ルーンティア(さとぅぬるす・るーんてぃあ)は、
オペラをアレンジした南瓜風味のケーキをジェイダス達に渡す。
食べやすいように一口サイズに切ったものを、ケースに入れてある。
「ありがとう、サトゥルヌス。
ハッピーハロウィン」
「ふん、カボチャの菓子か……」
「ふふふ、ありがとう」
サトゥルヌスのお菓子を受け取り、ジェイダス、ラドゥ、タシガンは喜んだようだった。
ディオニリス・ルーンティア(でぃおにりす・るーんてぃあ)は、
サトゥルヌスの後ろから様子を見ていたが、
「ほら、イリスもご挨拶して」
と促されて、ジェイダスに言う。
「初めまして、お兄ちゃ……サトゥルヌス・ルーンティアの妹のディオニリスです」
ディオニリスは、大好きなサトゥルヌスとともにパラミタで生活するために、
強化人間になり、パートナー契約したのだった。
「ジェイダス校長、トリック・オア・トリートなの」
「おや、お嬢さん、困ったね。
私は先ほどお菓子をあげてしまったんだ。
では、いたずらで許してもらえるかな」
ディオニリスは、ジェイダスの頬に薔薇のシールを貼る。
「今日は外しちゃ駄目なのよ?」
ディオニリスはにっこり笑って言う。
「イリスったら」
サトゥルヌスは、初対面のジェイダスに
いきなりいたずらするディオニリスに苦笑しつつも、
ほほえましく思う。
「ジェイダス、戯れを……」
ラドゥはあきれたように言う。
「ジェイダスが女の子に……レアシーンだね……」
たしがんは、腐男子視線でコメントする。

★☆★

「きゃああああああああ、ジェイダス様―!」
師王 アスカ(しおう・あすか)は、
執事服に狼の耳と尻尾、狼男ならぬ狼執事の格好で、
ジェイダスに走り寄ってくる。
「に、似合います?」
「ああ、なかなかだね」
ジェイダスに言われて、アスカは顔を真っ赤にしてまくしたてる。
「お久しぶりです、お元気でしたか?
会えて嬉しいです……。
ああっ、でも、せっかくの機会、いっぱいお話したいのに会った途端
再会の感動で話題を忘れた〜!」
アスカはあわあわしていたが、ふと気がついて言う。
「そうだ〜ジェイダス様、
トリック・オア・トリートって私に言ってください」
「トリック・オア・トリート。
これでいいのかな?」
「え〜っと……はい、どうぞ♪
カボチャのカップケーキです、甘さ控えめにしています。
カップは私がデザインしてみました」
「ふむ、なかなかに美しい」

★☆★

パーティーで上機嫌なためか、アスカに友好的に接するジェイダスのそばで、
アスカのパートナーの吸血鬼ルーツ・アトマイス(るーつ・あとまいす)は、
ラドゥに言う。
「済まないラドゥ、今回は見逃してくれないか?
こういったイベントが無い限り、
魔法学校の生徒であるアスカはジェイダス校長には会うことすら難しいんだ。
アスカの嬉しそうな顔を歪ませたくない」
神父の仮装のルーツは続ける。
「それに……あなたが危惧しているような感情を
アスカはまだ持っていない。
あれは、恩人に向ける親愛だ」
ラドゥは答える。
「貴様もジェイダスの趣味はわかっているだろう?
別に邪魔立てはせぬ」
「ならいいんだ。
では、ラドゥ。トリック・オア・トリート♪」
ルーツは笑顔で言う。
「よし、特別に私が手作りした菓子をやろう」
ラドゥは、カボチャの形をしたお菓子を渡し、
ルーツのマカロン・ハロウィン風と交換した。