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先生、保健室に行っていいですか?

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先生、保健室に行っていいですか?
先生、保健室に行っていいですか? 先生、保健室に行っていいですか?

リアクション


CASE1 シャンバラ教導団の場合

 軍人養成学校であるシャンバラ教導団では生傷は当たり前のこと。
 そのため授業という訓練でけが人が出るのは日常茶飯事。
 一部学校は例外に除くとして、そんなシャンバラ教導団のとある日の保健室の出来事である。
 教導団専属保険医ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)と、そのパートナールカルカ・ルー(るかるか・るー)は本日も仕事に明け暮れていた。
 この二人、学内では中々好評のあるペアでもある。特にダリルの場合はその高い治療施術に頼りにしている生徒は数知れずだ。
 一方のルカも彼もサポートに回り、手助けをしている。
 そんな二人は今日も仲良く保健室で苦しむ生徒を助けている。
 そんな彼らの下へ本日初めてのお客様が来た。
「し、失礼しま、す……」
「すまないが、診断をお願いしたい」
 やってきたのは夏野 夢見(なつの・ゆめみ)ルーク・ヤン(るーく・やん)の二人だ。
 夢見はお腹を押さえて顔面蒼白で明らかに体調が悪そうにしている。ルークも若干ではあるが、彼女の様子を心配してか焦りがあった。
「はいはーい!とりあえず診断しなきゃ何だけど、椅子に座るかな?」
「す、すみませんが……横になってでも構いませんか?」
「問題ない、彼女をベッドに」
 ダリルとルカは冷静に夢見に最低限の質問をして行動に移す。ルカはルークの手伝いをして夢見をベッドに運び、ダリルは聴診器を首に下げ椅子をベッド傍に移動させる。
 横になってもまだ痛みは続いているのか、夢見の額には大粒の汗がじわじわと溢れ出す。
 ルカは額をタオルで拭い、そのダリルは診断を開始する。
「夢見、いつから痛みがある?」
「突然来て、それに吐き気もひどくて……」
「何か重大な病気なんじゃないのか?!どうなんだ!!」
「騒がないで、結果を急いだってしょうがないんだから」
 ダリルは表情一つ動かさずに夢見に質問をする。その姿にルークは怒りを見せるが、ルカがすぐに諌める。
 ルークも焦っては仕方がないと感じたのかすぐに黙る。一方のダリルは彼女の脈を計るなどをしていた。
 色々調べて、ダリルは次の言葉を話す。
「昨日、何か食べたか?」
「えっと、そんな変なものは特別……気になることと言えば、昨日食べたデザート替わりの輸血パックの味が少し……」
「それだ、ただの食あたり」
「しょ、食あたり!?夢見、お前……!」
「いや、一か月前のだったからもうとっておけないと思ってつい……」
「原因は間違いなくそれだね、とりあえず休んでいって。」
「まぁ少し休めば問題ないだろう。胃腸薬を処方しておく、それを飲んで少し寝ていれば良くなる」
 ただの食あたり、その言葉にルークは安堵した。
 なぜここまで焦っていたのかと言えば、ルークは彼女にテレパシーで鬼気迫る感じで呼び出されたからだ。
 もしや悪い病気なのではないかと心配しただけに、余計に安心したのだ。
 夢見も巻き込んですまないとルークに謝る。
 ルークは気にしていないと言い、授業が始めるからとダリル達に夢見を任せて教室へと戻って行った。
「……焦った後だけど、やっぱり女の体に触るのは緊張するぜ」
 女性の体に触れていたということに、誰もいない廊下で顔を赤面するルーク。
 いまだに夢見のことが心配だが、大事ないと診断されたので安心していた。
 放課後にでも迎えに行こう、そう思いルークは教室へと戻っていった。


 次の日の放課後、すでに大半の生徒が帰り静まり返る校内。
 保健室も完全に鍵を閉められ、本日の使用は出来ないようになっていた。
 ところがそんな静寂を打ち破らんとする生徒が一人近づいていた。
 霧島 玖朔(きりしま・くざく)、いささか派手な外見で着飾っている男子は静かに保健室の扉の前に立ち尽くす。
「さて、時間も良い頃あいだ。たっぷりと楽しもうじゃないか……」
 不敵な笑顔を浮かべながら、玖朔は喜んでいた。
 誰もいない廊下に彼の静かな笑いがひっそりと響いていたが、誰も聞く者はいない。

 それから少し経った後、保健室の扉の前に立つ影。
 本日葦原明倫館との合同授業で教導団に訪れていた秋葉 つかさ(あきば・つかさ)である。
「玖朔様ったら、こんな時間に保健室で呼び出しなんて何かしら?」
 どうやら玖朔に呼ばれたらしく、保健室に訪れたようだ。
 つかさは何度か教導団に訪れたことがあるため保健室の場所も把握済みだった。
「さてっと……あら?鍵が……仕方ありませんね、ここはちょちょいっとピッキングで!」
 当然ながら誰もいない時間帯に保健室など開いているわけがない。鍵のかかった扉につかさの取った行動は何とも大胆だった。
 他校の生徒なのに、あっさりとスキルで施錠を解除してしまう。
 見つかれば大騒ぎなのだが、生憎誰もいない時間帯だ。
 つかさは気にせずに保健室へと入る。
「玖朔様?いらっしゃらないのですか……きゃっ!?」
 室内は外からは見えないように完全に仕切られていた。
 つかさは呼びだした本人の名を呼ぶが反応はない。しかし次の瞬間、彼女の世界が反転した。
 気がつけば背中は柔らかなベッドに包まれ、窓からは夕日の光が薄らとカーテンの隙間から差し込んでいた。
 驚きのあまり、目を閉じていたがゆっくりと瞳を開けるつかさ。
 そこには呼びだした張本人が怪しげな笑みで見下ろしていた。
「もう、少しやり方が強引ではなくて?」
「いいじゃねえか、こういうの好きだろ?」
「ええ、嫌いではありませんわね」
 押し倒した玖朔に、つかさは暴れる様子もなくじっと彼の瞳を見る。
 抵抗の色を見せないつかさに玖朔は彼女の長い髪を掴んで匂いを嗅いだ。
 うっすらと薫り柔らかく和む、そんな香りに玖朔は興奮を隠しきれずにいる。
 つかさは抵抗する気など見せず、玖朔は我慢の限界が来たのか彼女の服を破いた。
 本当はもっとじらすつもりだった。耳の裏、頬、首筋とじっくり刺激してから、服を脱がそうと決めていた。
 しかしつかさはそんな玖朔の手を指を絡めるように繋いで、彼に抱きついてきたのである。
 当然、理性を保つことのできない健全男子玖朔は本能の赴くままに行動するしかない。
 生まれたままの姿になったつかさを見て、玖朔は止まらない。
 自身の衣服も破り捨てるように脱ぎ捨てる。そして熱くなる肌を二人は重ねるのだった。

「……満足したか?」
 すでに外は日が暮れはじめ、まもなく完全下校時刻が迫っていた。
 裸のまま抱き合い、玖朔はつかさにぽつりと呟く。
「ええ、とっても……ですが、服の破るのは頂けませんわ。今日は代えを持っていたからよかったですが、そうでない場合は帰れなくなってしまいますわ」
「そうだな、そうなったら深夜に行動しようじゃないか。好きだろ?」
「いじわるですわね」
「……次も、また楽しもうじゃないか」
「ええ、お待ちしておりますわ……」
 満更ではないとつかさは語り、そんな彼女を見て嬉しそうにする玖朔。
 二人の姿を遠くに見ている月だけが、じっと観察していた。


 とある日の保健室、専属医とその助手が諸事情のため保健室不在だった。
 そのため本日は代理としてセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)の二人が保健委員として活動している。
 しかし、何故かこの日に限り保健室は大混雑していた。9割方男子生徒で保健室は溢れかえっている。
 原因は二人の格好だ。普段から男にとって扇動的な格好をしている彼女たち。その上から白衣を羽織っている姿、ここに来た者は必ず思う。
『エロス、万歳!』
 そう、彼女達の姿を一目見たいがためにわざと怪我して訪れている者がほとんどなのだ。
 だが大半は欲望に従って行動したことに後悔をしていた。
「はぁーい!じゃあちょっと染みるから気をつけてね〜!」
「セレン!そのくらいの擦り傷で消毒液を大量に使わないで!って包帯じゃなくて絆創膏で良いでしょ!……なんでそんな小さいのに5つも貼っているのよ!」
 ハチャメチャだった。治療は確かにしてくれているが、担当しているセレンフィリティが明らかに大雑把なのだ。
 消毒液を必要以上に塗って阿鼻叫喚、骨折したと言えば折れていないところまで包帯を巻かれたり、巻き方が滅茶苦茶だったりする。
 半ば暴走気味のセレンフィリティを止めるのにそろそろ我慢の限界が近くなってきたセレアナは、彼女のサポートを必死でした。
 だがセレアナの努力も虚しく、セレンフィリティは止まることを知らない。
 堪忍袋の緒が切れた、セレアナの中でそう告げる。
「いい加減にしなさいセレン!ちゃんとできないならベッドで寝ていて!後は私がやるから!」
「むっ!?いやよ、それにその台詞そっくりそのままお返しするわ!セレアナの方こそ寝ていなさいよ!!」
 パートナーの挑戦的な言葉にセレンフィリティも黙っていなかった。
 治療途中の生徒をほったらかして二人はそのまま揉み合いの喧嘩に発展してしまう。
 眺める分には構わないが、巻き込まれるのはごめんだと思う生徒たちは彼女たちからうまい具合に離れていく。
 そうこうしているうちにセレアナはセレンフィリティに押し倒される形でベッドに横になる。
 しかしここから喧嘩は思わぬ方向にシフトすることになる。
「よぅし、良い子ね。じゃあこのまま大人しくしていなさいよ!さもないと……」
「えっ……んぁっ!?ど、何処触っているの!」
「胸よ、それが何か?」
「そういうことじゃ……あっ!?だ、だめ、脱がさないで!ちょっと、そんなところ舐めちゃダメ!」
「何よぉ?嫌そうにしている割には準備ばっちりじゃないの!」
 セレンフィリティの中で今ある自分たちの状況でセレアナを黙らせる策を実行する。
 当然のことながら、セレアナは反抗する。しかしセレンフィリティは止まらない。
 加熱する二人の行動に保健室内にいた男子生徒たちは固唾を飲んで見守っている。
 騒がしかった保健室は異様なまでに静まり返り、ただ響くはセレアナの徐々に変わっていく声だった。
 翌日、この事態が校内の誰もが知るベスト珍事件として語り継がれることになるのであった。