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四季の彩り・ぷち~海と砂とカナヅチと~

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四季の彩り・ぷち~海と砂とカナヅチと~
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 第17章 オレンジ色の光の中で

 昼間に天海 聖(あまみ・あきら)の自己紹介を終えた後、天海 北斗(あまみ・ほくと)天海 護(あまみ・まもる)と聖も交えてレオン・ダンドリオン(れおん・たんどりおん)と思い切り生みを楽しんだ。北斗も聖も機体の構造上、海で泳いだりは出来ない。けれど、片思いのレオンと一緒に、大切な青春の1ページを作っていく。
 今日という日が、記憶に残る楽しい思い出になるように。
 4人で砂浜で駆け回って、いっぱい、いっぱい遊んで。
 デートだという緊張も解けて、気がついたら――夕方。

 人の少なくなった浜辺で、北斗とレオンは肩を並べて海を眺めていた。
 水平線に、朱色の太陽がゆっくりゆっくりと沈んでいく。暗くなりはじめた空には、白い一番星が光っている。
 護と聖が遠くで見守る中、北斗は夕日を見ながら思い出話をしていた。出会ってから起こった、これまでの色々を。
 ――レオン・ダンドリオンという1人の男性に一目惚れしてから、もうすぐ1年。
「夏、か……。今年の花火大会ももうすぐだな。そうだ、レオン、去年のヴァイシャリー湖の花火大会、覚えてる? オレ達、仕掛け花火の手伝いを……」
 それからの言葉が続かない。あれから手伝いを終え、北斗達も空に打ち上げられる沢山の花火を鑑賞した。
 その時。クライマックス近くになって連続して花火が上がったあの時――
 北斗はレオンに、大好きだと告白したのだ。
 レオンはありがとう、と。友達から始めて、お互いのことをもっとよく知っていこう、と言った。
 あれからもまた、約1年が経つ。
「あー……あの時の花火、綺麗だったよなー! 形も崩れてなくってさ」
「…………」
 懐かしむように言うレオンに、返事が出来ない。
 ――変だな、オレ……
 機晶姫だから心臓なんて無いのに、なんだろう、ドキドキして胸が締め付けられる、この息苦しい感じ。
「なぁレオン、オレ……」
 そっと手を繋いだ、その時。
「覚えてるよ」
 レオンは唐突は言った。夕日を見つめたまま、北斗の手を握り返す。人ではない、機晶姫のつるりとした手の感触を感じながら、それでも、決めたことがある。
「え……?」
「ちゃんと、覚えてる」
 そう言って、レオンは北斗にいつも通りの気楽な笑顔を向けた。
「俺もお前のこと嫌いじゃないし、付き合うか」
「…………」
 不意打ちで、驚きすぎて声が出なかった。中途半端に口を開けて、ただ、レオンを呆然と見詰める。
「なんて顔してんだよ。これからは恋人として、よろしくな」
「あ、ああ、レオン、ありがとう……!!」
 そして北斗は、今日一番の笑顔を浮かべた。

              ◇◇◇◇◇◇

 夕日の中で2人きり、賑わう浜辺から離れたひっそりとして静かな場所。広がる海を前に、御神楽 陽太(みかぐら・ようた)御神楽 環菜(みかぐら・かんな)は長い長いキスに耽っていた。
「――――」
 多分、これまでで一番長いキス。
 息苦しくなって、身体が酸素を求めるまで続け――やがて、唇を離す。
 お互いに呼吸をして、見詰め合う。あれから、2人はどこにでもある恋人達のデートのように腕を絡めあい海岸を散策したり談笑したりと時を過ごした。
 足元には、昼にプレゼントされた線香花火。
 夜になり暗くなれば、その灯は際立ち綺麗に見えるだろう。

 そして、帰り路。小型飛空艇エンシェントで夜空の下を飛びながら、陽太は環菜に話しかける。
「環菜、今日は楽しかったですか? 環菜が楽しめたのなら、俺はそれが1番嬉しいです」
「……それは、愚問ね」
「え?」
「楽しくなかったわけ、無いでしょう」
 ちらりと振り向くと、環菜は少しふてくされたように目を逸らした。その彼女に、陽太は正面から向き合い、真摯に言った。
「……環菜、俺は、環菜のことを一生かけて幸せにし続けたい、と本気で想ってます」
「…………」
 環菜の視線がゆっくりとこちらを向く。だが――
 そこで、彼女ははたと気付いた。小型飛空艇のバランスが――
「わ……分かったから、前を見なさい前を!」
「あ、は……はい! すみません!」
 ふらふらと飛んでいたエンシェントは、そうしてまた真っ直ぐに飛び始めた。