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【空京万博】ビッグイベント目白押し!

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「本日は本当に、有り難う御座いました」
 閉幕後。
 貴族のドレスに興味を示した女王アイシャはルドルフと共に楽屋を訪れ、何着かの衣装に着替えて記念撮影を行った。アイシャも、そして生徒達も、短いながらも楽しい――或いは、緊張のひとときを過ごし、最後はマリウスと陽とで見送りに出た。
 アイシャは、ありがとうございました、と穏やかに微笑んで去っていく。その姿が視界から消えるまで深々と頭を下げていた陽が、まだ緊張の抜けきらない面持ちで顔を上げた。
「皆川、お疲れ様」
「は……はい……」
 ショーが終わってからこちら、ずっとアイシャの相手をしていた陽は、すっかり顔面蒼白になってしまっていた。
 楽屋に居たときは周りのフォローもあったけれど、見送りの時は楽屋の片づけも有るという事情を女王が察して、少人数での見送りを許してくれた……ので、いつの間にか生徒代表に祭り上げられた陽は、この上ないプレッシャーに晒されることとなったのだ。
 おまけに、着替える時間も無かったためまだドレス姿のままだ。先ほどまでは緊張で頭が真っ白だった所為で気にしていなかったけれど、はたと我に返ると一歩足を進めるだけでもおおごとだ。
「さあ、楽屋の片づけをしてしまおう」
「はい……」
 歩けるか、とマリウスが苦笑しながら見守る中、陽はなんとか歩を進める。
「陽、大丈夫?」
 そこへ、二人の帰りが遅いことを心配したテディが様子を見に来た。
 極度の緊張から解き放たれてへとへとになっている陽は、つい縋るような眼差しをテディへと向ける。
 するとテディは、ほんのり頬を紅潮させて、口をきゅっと結び、それから陽の隣へとぎこちない歩き方でやってくる。
「ほら……手、貸して」
 本当は舞台の上でこうしたかったけど、従者としての一線は越えたくなかった。でも、今ならそう、これはただ従者として、歩きにくそうな主人に手を貸すだけ、だから。
「ありがとう、テディ」
 陽はにっこりと笑って、テディの手に自らの手を乗せた。



「お疲れ様あぁあああっ!!」

 テディが楽屋のドアを開け、恭しく陽を中へと招き入れた瞬間。
 何処から出てきたのか、クラッカーが盛大に打ち鳴らされ、紙テープが空中で乱れ踊る。
 え、何、なに、ときょときょと周囲を見渡す陽。
「展示の準備から運営まで、本当にお疲れ様。これは、みんなから」
 終演後、楽屋の片づけに加わっていたクリスティーが、抱えきれないほどの巨大な花束を陽へと差し出す。
「本当にお疲れ様でした。素敵なイベントを、ありがとう」
 一日裏方に徹していたエメも、満面の笑顔で陽へと賞賛の声を送る。
 未だに何が起こったのか解らない、という顔をしている陽が、ええっと、と、腕の中の花束とクリスティー、それからエメの顔を順番に見る。
 楽屋の中はもうすっかり片づけが終わっていて、陽がまだ纏っているドレスを片づければ、後は荷物を運び出すだけという状態だ。先ほど爆発したクラッカーも、ちゃんとゴミが散らからないタイプを選んでいたらしい、後ろでクリストファー達が手早く回収している。
「俺からも、ありがとな。ちょっと驚いたこともあったけど……楽しかったぜ!」
 すっかり私服に戻ってメイクも落としたソーマが、わしわしっと陽の頭を撫でる。
「あああのっ、誘ってくれて、ありがとうございましたっ!」
 輪の中で恥ずかしそうに俯いていた静も、何度か口をぱくぱくさせた後、やっと声を上げて頭を下げた。
 これからもよろしくおねがいします、と続ける所までは、出来なかったけれど。それでも内気な静にしては頑張った方だ。
 内心ホッとした藍も、ありがとう、と陽に拍手を送る。
 それをきっかけとして、小さな楽屋はこのイベントの立役者である陽を讃える、暖かな拍手でいっぱいになった。
「あの……ほんとに、こんなボクに力を貸してくれて……みんな、ありがとう!」
 陽の瞳に、大粒の涙が浮かぶ。
 なんとかこぼれ落ちないようにするけれど、大きなことをやり遂げた達成感と、みんなからの暖かな思いとで胸はいっぱいで、頭はまっしろで、喉の奥から、熱いものが目頭へととめどなく溢れてくる。
「謙遜すんなって、サイコーだったぜ!」
「そうです、皆川君が居たから、みんな此処まで頑張って来られたんですから。胸をはってください」
 ソーマとエメの言葉に、陽はこくりと頷いて笑顔を浮かべる。
「本当に、本当に、ありがとう!」
 晴れやかな声でそう言う陽の顔には、少しだけ自信を得た笑顔が、燦然と輝いていた。