校長室
探して森の中
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第四幕:魔女のお茶会 「しかし皆さんに会えて良かったです」 御凪は同行している仲間、笹奈と高崎 朋美(たかさき・ともみ)、ウルスラーディ・シマック(うるすらーでぃ・しまっく)に視線を流すと笑みを浮かべた。 「それはどちらかというとボクのセリフだと思うんだけどね」 笹奈が周囲を警戒しながら言った。 たまに空砲を撃っては動物たちを逃がしている。 危険な動物が近づかないようにしているのだろう。 「俺たちとしても助かっている。特に魔女の居場所を知っているってのは助かるな」 「本当に……魔女には会ってみたいから」 (許さないって……相手を強く意識した言葉だと思うから気になるの) 真剣な面持ちの高崎の肩をウルスラーディが軽く叩いた。 「気負うなよ。御凪の話を聞く限りじゃ悪いことにはなりそうにねえ」 「その気遣いをボクが修理したものにも使ってくれると嬉しいんだけど」 「気が向いたらな。それよりまだ着かないのか?」 先導していた御凪は顔だけ彼らに向ける。 「もうすぐ見えてきますよ。と、あそこです」 木々の隙間から目的地が見える。 魔女の暮らしている家だ。 ドアをノックすると中から帽子を被った少女が姿を現した。 しかしすぐに顔を引っ込めてしまう。 「何してるんだルーノ……と、御凪じゃないか」 「佐野君じゃないですか。奇遇ですね」 そんなやり取りをしている二人を見てルーノが言った。 「かずきの知り合いか!」 「そんなところだ。中にあげてもいいだろ?」 「おう!」 そう元気に答えるルーノの頭を佐野は撫でた。 「なにをするか!!」 「今くらい素直になればいいと俺は思うがな」 「くーちゃんのことはもういいの!」 その様子を見て御凪は苦笑する。 家の中にいる面々の疲れの見える顔つきから説得が失敗したのが理解できた。 「思ったよりも手こずっているみたいですね」 御凪の一言に清泉が答えた。 「自分たちの考えの甘さを痛感してるよ」 「ほ、本当にどうしたらい、いいのか……」 リースもお手上げの様子であった。 ナディムに至っては目を瞑って黙り込んでいる。 どうしたものかと御凪が考えていると後ろから言葉が来た。 「本当にそれでいいの?」 静かだが力強い声だ。 「いいの!」 ルーノが意地になっているのは誰が見ても明らかだった。 子供が駄々をこねているように見えなくもない。 「嘘だよね」 「嘘じゃない!!」 「だって……意識しすぎだもの」 「意識なんてしてないもん!」 話し続ける高崎と反論を続けるルーノ、二人を見てウルスラーディは思う。 (まったく……朋美もモノ好きだな。ここまで必死になるなんてな) 彼からすれば子供の喧嘩だ。しかも他愛もない。 放っておけば勝手に仲直りするかもしれない、そんな子供の喧嘩。 しかし高崎はそれを親身に考えているようだった。 だからこその言葉だろう。彼女の次の一言にルーノは言葉を失ってしまった。 「絶対に許さないって……相手を強く意識してる言葉よね」 「それは……」 それっきりルーノは黙ってしまった。 その場に居合わせている誰もが事の成り行きを黙って見守っている。 「本当はどうしたいの?」 「……」 泣きそうな、そんな空気がその場を満たした。 「たまには自分の気持ちに素直になるのも悪くない」 佐野がルーノの頭を撫でる。 今度は黙ってされるがままだ。 「また……一緒に遊びたいよ……」 ルーノの視線先、仲良く寄り添う二人の姿を写した写真がある。 それが魔女の些細な願いだった。 ■ 「ルーノ……」 久瀬の隣に立っていたクウがルーノの姿を視界に収めると、落ち着きのない様子で手を握ったり開いたりし始めた。その様子を見た久瀬が頭をかくとつぶやく。 「皆に手伝ってもらったんだ。クウクンも少しは頑張ってみたらどうだい?」 クウがルーノに謝ろうと彼女に近づこうとしたとき、ルーノがクウたちのほうに駆け出してきた。 「くーちゃん!」 触れ合える距離、ルーノはクウの隣に立つと自分の頭の先に手を乗せ、そのままクウの方へ横にずらした。 「やっぱり私の方が高い!!」 そんなことを言い出したルーノを見て佐野が呟いた。 「そうじゃねえだろ……」 「アニスのほうが高いよね」 「そういう話でもねえよ」 どうしたものかと悩むが、それは杞憂に終わった。 クウがルーノに言ったのだ。 「うん。今度はアタシが勝つから!」 「負けないもん!!」 どうやらわだかまりは解けたらしい。 仲直りができて肩の荷が下りたのだろうか。 ルーノは集まった面々を見回すと笑顔で言った。 「みんな。うちに来て! お茶会に招待するよ!!」 おー、と皆が返事をするが久瀬だけが別の言葉を口にした。 「ところでセレアナクンたちの姿が見えないんだが……どこだい?」 ■ 「見事に迷ったな」 「迷ったな、じゃないです! アル君のばかー!」 先頭を走っていたアルクラントとシルフィアが現状を簡潔に表現してくれていた。 「森の中にこんな暗い場所があったなんて知らなかったなー。見てよこれ植物まで見たことないのがあるよ。もしかしたら動物も変わったのがいるかも!!」 好奇心を刺激されているのか、曇入が元気に辺りを走り回っている。 彼女と対照的に、周囲の暗さと道に迷っているという現状に精神的に参っている様子の西村は、奥山にもたれかかりながら歩いていた。 「もう……いや。疲れた……」 「よしよし。私が傍にいるから頑張りなさいよ」 そんな彼女たちを眺めながらセレンフィリティが言った。 「お菓子の家みつからないわねー」 「あるわけないじゃない。セレンってば本来の目的わかってるの?」 「魔女探しでしょ?」 知ってるわ、というように自信満々に答えるセレンフィリティにセレアナは続けて問いかけた。 「魔女を探した後は?」 「あー……つれてく?」 「依頼内容の詳細も知らないなんて、お菓子の家につられてたのね」 「あちゃー」 セレンフィリティは失敗したというように頭上を仰ぎ見る。 依頼内容を把握していなかったことに今更気づいたらしい。 「まあいいわよ。少なくとも他の子が依頼達成してくれたみたいだし」 「連絡取れてたの?」 「ええ、前もって久瀬稲荷に話を聞いていたからね。というわけで今から向かうわよ」 セレアナが先を行く皆に声をかけた。 「魔女のお茶会に招待されてるんだけど、一緒に行かない?」 その日、森に住む魔女の家ではささやかなお茶会が開かれた。 招待を受けたのは魔女の友人たちであった。
▼担当マスター
砂鳥
▼マスターコメント
お初にお目にかかりました。 そうでない方はお久しぶりです。砂鳥です。 久々の執筆かつコメディに挑戦! というわけで書いてみましたが皆さまに喜んでいただければ幸いです。 コメディをどう表現するか悩みましたがくすっと軽く笑ってもらえるよう頑張ってみました。 さておき、このたびはイベント参加ありがとうございました。 また皆様に会える日を楽しみにしております。