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打倒! 鷹の目強盗団

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打倒! 鷹の目強盗団

リアクション


●決戦!
 ドドォオン!! ドン、ドン!!
 連続する爆発音。
「これで、強盗達も簡単には逃げられないでありますよ」
 炎上するバイクやエアカーを前にして、葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)は満足気にそう言った。
「悪い奴って、危なくなるとまっさきに逃げ出すものね。逃走手段は、総て確実に潰しておかないと」
 コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)は、彼女の言葉にそう答える。
「後は、建物の方へも、確認に行くでありますよ」
 彼女たちは、二人一組、互いの背を庇うようにして、敵のアジトをくまなく捜査する。

「終わりだよ」
 部屋を護る最後の強盗が倒れると、騎沙良 詩穂(きさら・しほ)はそう言って、まばゆいばかりの光を放つ光明剣クラウソナスを鞘に収めた。
 ここに来る途中手に入れた情報では、この先の部屋に、強盗団に捕まり奴隷として使役されている少年少女が、捕らえられているというのだ。
 救出を急ぐ詩穂、そしてルカルカ・ルー(るかるか・るー)ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)山葉 加夜(やまは・かや)エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)リリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)言った仲間達。
 奥に進むと、扉は左右に2つあり、」どちらのドアにも鍵がかけられていた。
「間違いない、きっとこの部屋ね!」
(「みんな、待ってて、すぐに助けてあげるから」)
 ルカルカは、焦る気持ちを押さえ、鍵穴を慎重に調べる。
「少し、複雑な形状をしているようですね」
 彼女と同じように、その隣でドアに掛けられた鍵を開けようとしている、加夜がそう言った。
 ダリルが尋ねる。
「どうする?」
「どうしても開かないって言うのであれば、鍵を壊して入るしか無いけれど……」
 そう答えたルカルカへと、ダリルがわずかに目を細める。
「焦る必要は無い」
 その言葉にルカルカは頷いた。
「うん……そうだね、ずっと怖い思いをしてきてるはずだもん。荒っぽい事をして、驚かせたくない……って、開いたわ!」
「こちらも開きました」
 ルカルカと加夜は、互いの顔を見合わせ微笑む。
 左側の部屋には、少女ばかりが閉じ込められていた。
 入ってきた人の姿を見ると、ビクリと身体を震わせ怯える少女たち。
「もう大丈夫ですよ、可愛いお嬢さん」
 そう言って、すっと薔薇1輪を胸元から取り出すエース。
「助けに来たんだ。だから、もう大丈夫。俺達と、ここを出よう」
 『助けに来た』その言葉を聞き、蒼白だった少女の顔に、ほんの少し朱色を帯びる。
「お兄さんたち、私達を助けてくれる、の?」
「そうだよ。さ、ゆっくりと、立てるかい?」
 そして、少年ばかりが集められた右の部屋。
「辛い思いをしたわね、痛かったでしょう?」
 リリアは、少年の顔を覗き込む。
 殴られたのか、少年の晴れた右頬に手を触れて、優しげに言う。
「こんな場所、早く出るわよ。私達に任せて、後についてきて」
 リリアは、少年たちにそう言うと、 加夜に目配せする。
 加夜は頷き、ハッ!と掛け声をかけると、真空波で少年たちの手に付けられていた手枷を壊した。
「こんな子供達を誘拐して、奴隷として働かせていたなんて……」
 ジェライザは、一人の少年の、アザだらけの腕を見て心を痛めた。
 どれほど辛い思いをしてきたか……それを思うと、強盗団の人間は、決して許されない。
「少女たちの方は、幸い大きな怪我を追っているものはいないようだ。少年たちはどうだ?」
 隣の部屋での簡単な診察を終えたダリルが、そう言って部屋に入ってきた。
「打撲や擦り傷といった怪我はあるけれど、動けないほどの怪我を負っている子は居ないよ。肉体的な怪我は問題無さそうだ、むしろ、心のケアのほうが……」
 ジェライザの言葉を受け、ダリルも頷く。
「そうだな……ともかく、動けないほどひどい怪我を負わされたものは居ないようだ。なによりここを出るのが先決だ、飛空艇へ移動しよう」
 仲間達は、少年少女を真ん中に守る形で、アジトからの脱出を図る
 経験と勘を生かし、周囲の物音に警戒しながら、人気のない場所を選び進む。
 出口まであと一歩、と言うところで、どうしても強盗との戦闘が避けられない状況となった。
「みんな、必ず守るから、私達からはなれないでよね!」
 ルカルカは、そう言って少年少女に笑顔を向けると、仲間達の先頭に立つ。
 その隣には、ダリルの姿が。
「ちょっと! そこ、どいてくれる?」
「なんだ。テメェ等。あっ! 大事な『商品』をどこに連れてく気だ?!」
「商品、ですって?」
 この言葉には、普段温厚な加夜や、情に厚いジェライザは怒りを隠せない。
「あなた方のような卑劣な人達は、絶対に許せません!」
「どこまで酷い扱いをする気だ、お前達! この子達は絶対に渡さない!」
 脱出のための血路を切り開くため、武器を取る仲間達。
「詩穂の後ろに居れば、みんな絶対に大丈夫だから」
 混沌の楯を構え、護りを固める詩穂。
 加夜は、怯懦のカーマインを引きぬき放つ。
 最終兵器との異名を取るルカルカの攻撃は、生易しいものではなく、瞬殺される者がその大半だった。
 運良くその攻撃から逃れた敵は、ダリル、エース、リリアの3人が、一人残らず制圧する。
 ものの数分で、戦闘は決着を見た。
「片付いたようだね、さぁ、行こう。出口はもう、すぐそこだよ!」
 詩穂はそう言って、助けた少年少女たちを外へと誘った。

 そして、その頃。
「ハァ、ハァ、この奥が、ボスの居る部屋に続いてる、そうだ」
 敵を倒したばかりで、肩で息をする永谷。
 少々手間取ったものの、永谷は、勇平達と共に敵を倒し、戦闘を終えたのだ。
 その足元には、前歯を砕かれ無様にのびたナイフ男が気絶して倒れている。
「この先は、私達に任せてもらう。行くぞ」
 リブロ・グランチェスター(りぶろ・ぐらんちぇすたー)は、そう言って奥へと進む。
 通路の突き当り、両開きのドアを蹴破ると、大きな斧のような武器を肩に背負ういかつい大男と、太腿まで入ったスリットから、肉感的な足を顕にする艶っぽい妙齢の女性が、くわえタバコをくゆらせ待ち構えていた。
「あらあら、来たようねぇ。ちょっとオイタがすぎるんじゃないの、お嬢ちゃん達?」
 小馬鹿にしたように、女はリブロ達に向かってそう告げる。
 レノア・レヴィスペンサー(れのあ・れう゛ぃすぺんさー)は、機銃を手に質問を無視し問いただす。
「そこの大男、お前がここのボスか? 正義と栄光の名の下に、お前達に血の粛清を行う」
「空中戦で撃墜数を稼ぐつもりだったけど、デキる敵なんて一人も居なかったんだもん。所詮は、大したこともないただの強盗団だよね」
 レノアに続き、エーリカ・ブラウンシュヴァイク(えーりか・ぶらうんしゅう゛ぁいく)も、女を無視し、そう話し始める。
「……この、小娘の分際でっ! アタシを無視するとは上等だよ。今、思い知らせてあげるわ!!」
 タバコの火を指でもみ消し、スリットから鞭を取り出した女は、彼女たちを打ち据えようと、攻撃を繰り出す。
 ガントレットで、その攻撃を受け止めたアルビダ・シルフィング(あるびだ・しるふぃんぐ)
「あんたは、あたしと一騎打ちといこうじゃないか。ちょうど退屈してたんだよね」
 そう言って、アルビダはニッと微笑む。
「グハハハハ、生意気な女どもだせ。お前は望みどうり、そいつの相手をしてやれ。俺は、残りの3匹を貰うぜ。どこまでそんな軽口が叩けるか、勝負してやる。覚悟しな!!」
 立ち上がる男、鷹の目強盗団のボスであるバルタスは、凶暴な笑みを浮かべそう言い放ち、斧を力強く振り下ろす!
「リブロ様!」
 レノア男の攻撃を受け止めようと前に立つが、その衝撃を押さえ込みきれず、壁に体ごと吹き飛ばされる。
「グッ!」
 身体を叩きつけられ、小さく呻くレノア。
 エーリカは、少し距離を取り魔法を放つ。
「いくよ、サンダーブラスト!」
 エンシャントワンドの先から、電撃が放たれ敵に襲いかかる。
 リブロの紅い瞳は、バルタスの左胸を射抜くように見据え、銀の髪をなびかせ後方にポンと飛び退くと、対物ライフルの引き金を引いた。
 その照準に、寸分の狂いはなかったが、引き金を引くと同時に身を捻ったバルタスは、致命傷を避ける。
 強盗団を束ねてきた男だけあって、バルタスの強さは『本物』だった。
 一瞬、気がそれたアルビダを、女の鞭が打ち据える。
「よそ見してる暇なんて無いよ? それとも、もうビビってんのかい?」
「ふざけるな、アタシ達を甘く見すんじゃないぜ! アンタの口も、すぐに黙らせてやる」

「思ったより、このナイフ野郎、強かったな」
「あぁ、毒とか、セコイ技使いやがって」
 戦いを終え、消耗していた勇平や永谷達は、床にもたれかかりそう話す。
 拘束するのは、連れてきていた婦警達に任せ、しばしの休息を取る。
 しかし、また直ぐに、こちらに向かってくる大勢の足音が響いてきた。
 また、やるしか無い。
 重い腰を上げた二人だが。
「逃げるな! おぬし達に情けをかけるつもりはない。今まで人々を苦しめてきた分、しっかりとその身に思い知れ!」
 通常のグレートソードより一回り大きい両手剣を握り、バッサバッサと敵を切り倒していく夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)
 彼らの姿を見つけると、笑顔を見せ話しかける。
「この辺は、もう雑魚の姿は少ないようだな。まだ下の方や外で暴れまわってる連中が大勢いる。俺はそっちを狩りだしてくるぜ。まだまだ、暴れ足りないからなぁ!」
 踵を返し、再びきた道を引き返す甚五郎。

 強盗団を殲滅するため動く者が敵との激闘を繰りひろげ、人質が無事開放されようとしていたその頃。
「さぁ、奪った宝を保管している場所を、大人しく吐いてもらおうか? 鋼鉄の白狼騎士団の力、十分思い知っただろ?」
 敵の喉元に物騒な刃を押し付け、不敵にニッと微笑むのはセフィー・グローリィア(せふぃー・ぐろーりぃあ)だ。
「こ、この先だ! ボスに言いつけられて集めた宝は、全部そこにある! その他は、俺は知らねぇ! 本当だ信じてくれよ!!」
「信じましょう。あなたは、眠ってください」
 エリザベータ・ブリュメール(えりざべーた・ぶりゅめーる)は、敵の鳩尾に一撃を食らわせ気絶させた。
 奥に進む途中、何やら物音に気づいたオルフィナ・ランディ(おるふぃな・らんでぃ)は、音のする方、小部屋のドアをそっと開ける。
 中では一人の女強盗が、必死にゴソゴソ荷物をまとめ、逃げ出す準備をしているようだ。
(「いい獲物がいるじゃん♪」)
 その様子を見て愉しそうに口元に弧を描いたオルフィナ。
「いいものがあるかも知れないし、ちょっと行ってくるよ」
 彼女は仲間と離れ、女強盗に背後からコッソリ忍び寄る。
「そんなところでナニしてるんだよ」
「ヒッ?! このっ!」
「おっと! てめぇじゃ俺には勝てねぇよ 」
 下っ端らしいその女強盗は、力も弱く、簡単にオルフィナに組み敷かれた。
 見ればまだ年も若く、見た目もそれほど悪くない。
「離せ! ちょ、どこ触ってっ……アッ!」
「ここが弱いんだろ?……俺達と取引しないか? オルフィナの私掠品になるなら命も持っている宝物も保障してやる。悪い申し出じゃ、ないだろ?」
 数分後。
 寝返った女盗賊は、宝物庫の暗証番号もあっさり教え、セフィー達は難なくお宝を手に入れることに成功した。

「宝の匂いがしたのは、この辺だったんだけど……」
 物置小屋らしき場所をゴソゴソと探るオデット・オディール(おでっと・おでぃーる)
 一見めぼしいものは無さそうに見えるが……あった! 奥に隠された小箱の中に、小さな宝石がいくつも隠されている。
「やったね!」
 宝石を手にし喜ぶオデット。
 しかし、
「おっと、そいつを持ってどうするつもりだ、お嬢ちゃん?」
「えっと、それは……」
 まずい、気配を消して近づく敵に、気が付かなかった。
 頭に銃口を突きつけられるオデット。
「妙な動きをしてみろ、テメェの頭が跡形もなく吹っ飛ぶぜ?」
 敵は、低い声でそうオデットを脅す。
 絶体絶命かと思われたその時、
「兄貴〜! 大変だ!!」
「ん? どうした?!」
「ハァ、ハァ、バケモンみたいに強い大男が、こっちに向かってて。助けてください!!」
 息を切らし走ってきた手下らしき男は、そう言って男に助けを求める。
「んだと? どっちに居るんだ?」
「すぐそこの、あの積み上げたドラム缶の裏手っす! 仲間が、もう10人も殺られてっ! ハァハァ」
「お前、この女逃さねぇように見てろ!」
 男は、現れた手下に銃を渡し、言われた方向へ歩き出す。
「……なんてなぁ」
 ニッと口元に笑みを浮かべ、途中から現れた男は、油断している男の首に、強烈な回し蹴りを浴びせ一撃のうちに仕留めた。
「組織が大きいと、仲間の顔も十分覚えていられんようやな? そんな簡単に、だれでも信用したらアカンで〜」
「あ、あなたは?」
「仲間やで。さ、宝石頂こうか。俺は、瀬山 裕輝(せやま・ひろき)。お金は大事やで〜、見つけた宝石、助けてやったんやから、山分けな♪」
 裕輝は、そう言うと人懐こそうな笑みを浮かべた。

 ところで、裕輝の言っていたことは、あながち全てが嘘ではなかった。
「これでもくらえ!」
 エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)は、そう言ってアジトから逃げ出そうとする強盗を見つけては、片っ端から殴り倒していた。
 倒れた強盗の、胸元から転げ落ちる宝飾品に思わず見とれる。
(「これ一個売り飛ばしたら、イイ金になる……イヤイヤ、ダメだ。強盗を倒すことに集中するんだ!」)
 金欠病を患う彼にとって、強盗が持ちだそうとしている宝はとても魅力的なものだ。
 甘い誘惑に打ち勝つためか、我慢も知らず、他人に迷惑をかけてまで金を奪っていた強盗への怒りからか、エヴァルトの鉄拳は、次々と敵を打ち倒す。
「お前ら犯罪者に手加減なんてしないぜ、覚悟しな!」

 ガッ!!
 女の手から、鞭が離れる。
 馬乗りになったアルビダ。
「ハァ・ハァ、アンタの勝ちだ。さぁ、殺しな!」
 覚悟を決めた様子の女を前に、アルビダは言う。
「悔しいなら、リベンジしてみろよ! 期待せずに、待っててやるからさ」
 喉元につきつけた銃口を放し、こめかみに一撃浴びせると、女は気絶する。
 きわどい戦いを制した彼女は、ボスと対峙する仲間を見る。
 一人ひとりの単純な力比べでは、リブロ達は負けたかもしれない。
 しかし、息のあった連携技でそれを補った彼女たちは、なんとか鷹の目強盗団のボス、バルタスを追い詰めた。
「賊徒らに、血の粛清を……」
 リブロが銃口を構えたその時、バルタスは手近にあった過敏を投げつけ、座っていた玉座のような椅子の後ろへと隠れる。
「そんなとこ隠れたって無駄……あっ!」
 エーリカが叫ぶ。
 バルタスの姿が無い。
 玉座に何か仕掛けがあるのだろう。
 椅子に隠されるように付けられたボタンを押すと、玉座の下部分が開き、階段が現れる。

「チッ!俺はここで終わるような男じゃないぜ! 体制を整え、必ずまた返り咲いて見せるっ!!」
 秘密通路を抜ければ、エアカーの隠し倉庫だ。
 一気に脱出し、起死回生を計る……。
「な、オレ様の、車が?!」
 用意していた車は、炎上し黒焦げになっていた。
「やっぱり、ここに来ると思ってたよ」
 バルタスの目の前に、零式狙撃銃を構えたコルセアの姿が。
 そして、その隣には吹雪もまた、武器を構え立っている。
 いち早く、敵の逃走経路を重点的に探っていた二人は、この隠された倉庫を見つけ、バルタスが到着するより早く、手をうっていたのだ。
「終わりであります」

「鷹の爪は、折られたか……」
 アジトの敷地内に続々と着リツしていく飛空艇を遠くから眺め、そう呟いた黒髪の人影……ひっそりと、その場を後にし消えていく。
 こうして鷹の目強盗団は、山葉 涼司の狙いどうり、ここに壊滅した。