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第 2 章


「……うん、ここいら辺りにいそうですね。 さて……獲物はどこかしら」
 東 朱鷺(あずま・とき)が頭に乗せた烏帽子を揺らしながら歩いていると不意に声をかけられる。
「あれ……朱鷺じゃないか?」

 イルミンスールの森に迫る危機を聞いて九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)も盗賊達から神器を取り返すべく動いている事を聞いた朱鷺はそのままローズと同行していました。表面上、顔は穏やかだが内心は相当焦っていた。

(まずいわ、彼女らに盗賊を退治されたらカツアゲできない……何とか別行動しないと……)

 近隣の住人に避難を呼びかけながら不審者を見なかったかどうか、街道を歩く人にもこの辺りでは見掛けない者はいなかったかどうかなどザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)がエースとリリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)と共に聞き込みを続けている。朱鷺もそれらしい行動を見せながら徐々に離れようとするとセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が一つの捜索法を提案した。

「ねぇ、神器って装飾は派手じゃないけれど銀製でそれなりに高価っぽく見えるって言ってたわよね……私達、盗賊がどこかの故買屋で換金してないか調べてみるわ。ローズも一緒にどう?」
「そうだね、行こうかな……セレンフィリティのフォローに」
「……あのね、それどういう意味?」
「ローズが一緒にフォローしてくれるなら心強いわ、行きましょう」
 セレアナとローズがすたすたと街道を歩いていくと、その後を文句を言いながらセレンフィリティが追いかけていった。

「……それじゃあ、私も別方向から盗賊を捜索に入りますのでここで。後程お会い致しましょう」
 残った3人に呼び止められる前にと、朱鷺も姿をくらまそうと街道を外れていった。


◇   ◇   ◇


 立ち寄った近隣の村での聞き込みや、リリアが木々や花から教えられた情報を整理すると、そう遠くない場所に件の盗賊達が潜んでいる事がわかり、ザカコを先頭にその場所へ向かっていた。
「さてと……リリアさん、花たちが教えてくれた盗賊達の居場所はこっちで間違いないでしょうか?」
「ええ、間違いないわ。待っているがいい……大馬鹿者共!」
「リリアははりきっているね、かくいう俺もだが」
「……あの、お二人とも? 自分はまず説得を試みたいんですが……」
 向かっている今、既に臨戦態勢を取ろうとするエースとリリアを前におずおずとザカコが釘を差したところで木々の合間から野太い話声がするのを3人は聞き逃さなかった。

「しっかし、こんだけのお宝が無防備に像にはめ込んであるだけっていうから安物かと思ったら意外と良い代物だったな」
「そうだな、だがこの辺の故買屋じゃあの像に装備されてたものだってのがすぐバレるかもしれねぇ……やっぱりシャンバラから離れようぜ」
 盗賊達が腰を上げたと同時にその眼前へリリアが剣を据え、軽蔑そのものの視線で見下ろしていた。
「宝を持って、どこへ行こうというの? ……そのお馬鹿な行動のツケを払ってもらわないと困るのよね」

 エースがエバーグリーンで操った蔓を盗賊達に巻きつけて拘束し、ザカコへ心ゆくまで説得するように言うと、半分頭を抱えたザカコが額を抑えながら盗賊達へ剣とティアラを返すよう説得を始める。
「――と、いうわけでそのアイテムがないと周辺の森だけでなくシャンバラ全域がモンスターで溢れてしまうんです、返して頂けませんか?」

「……兄ちゃん、言われてホイと返すようじゃ盗賊稼業なんかやってらんねぇんだよ!」
 蔓が勝手に解けた――ように見えたが、隠れ身で姿を消していた仲間が蔓を剣で断ち切り、3人に襲いかかってくると溜息をついている間に戦闘体勢を整える。

「やはり盗賊、力には力でしか応えないというのね……森を脅かす存在は許せないの」
 リリアが即座に盗賊達の実力を量り、剣の技で対抗しうると判断すると次々と斬り伏せていき、エースも遠慮は無用とばかりにグラウンドストライクで逃げ道を失くしていきながら確実に追い詰めた。
「エースさんとリリアさんを怒らせましたか……穏便に済ませようとしましたがその権利を放棄したのはあなた方だ、この上はこちらに剣とティアラを渡してもらった方が身のためですよ……逃げ場はないのですから」
 ザカコはスッとカタールを鼻先へ突き出し、ジリ、と一歩近づくと盗賊の一人が叫ぶ。
「お…俺達は、ティアラしか持ってねぇよ……っ! 渡すから、もう勘弁してくれよ!」


 ティアラを手にした3人は、ひとまず森でモンスターや悪霊を相手にしているシリウス達の所へ向かっていった。