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 第 5 章


――― 一方。

 ブフォ!!!
 
 神器の行方を追っていたセレンフィリティ、セレアナ、ローズは一軒の故買屋を訪ねていた。――いたのだが、店主は突然鼻血を吹いて蹲った。
「し……刺激が強いわ、そこの姉ちゃん……わし、ウブやから」
 店主が指差す方向にはビキニ姿のセレンフィリティが――

「……何? 2人とも……その呆れまくった視線」
「そりゃあね、真夏も過ぎてむしろ寒くなってきたって頃なのにその恰好で堂々と歩くってのは」
 セレアナはもはや諦めムードを漂わせ、ローズは妖精の塗り薬を差し出しながら鼻血を吹いた店主の手当を始める。
「ご主人、鼻血は止めてさしあげるから教えてほしいのだけど……最近この辺で余所者とか見ませんでした?」
 鼻の上を押さえながら考えていた店主は、数日前からうろついている不審者の姿があった事を3人に伝えると手掛かり探しに向かった。


「十中八九、その輩ね……今朝も見掛けたって言ってたからまだそう遠くには行ってないはずだわ、ちょっとトレジャーセンスしてみましょうか」
 セレンフィリティがトレジャーセンスで神器らしきものを探索する傍ら、セレアナは殺気看破で周囲を警戒していると先ほど立ち寄った故買屋へ向かうむさくるしさ満載の男数人を目にした。
「なんか……いかにもって感じだね、充分怪しいけど不審者の特徴と一致してる何かがあれば決定打だが……あ! セレアナ、あの髭面の男!」
「あの店主が言ってた特徴と良く似てるわね、取り敢えず聞くだけ聞いてビンゴなら返してもらいましょう。セレン、容疑者発見よ」


 盗賊の一人が王の剣らしきアイテムを手に持ったところで道を塞ぐように仁王立ちしたセレンフィリティが銃を構えて宣言する。
「まあ、無駄だと思うけど一応聞くわ? 手に持っているその剣を返しなさい!」
「あなた達が持っていったその剣は、ただのお宝ではないんだ……それがなければイルミンスールの森だけではなく、シャンバラ全域にモンスターが溢れてしまう、黙って返してくれれば私達も手は出さないけど」
「手は出さないだあ? ナメた事言ってんじゃねぇぞ?」
 セレンフィリティとローズは、顔を見合わせて溜息を付くと互いに銃を向ける。盗賊達の背後には既にセレアナが構えていた。
「ま……わかってたけどやっぱり返す気ないわね、セレアナ行くわよ!」

「女王の加護!!」
 案の定、襲ってきた盗賊から身を守る術を唱えたセレアナは盗賊の背後からサンダーブラストを浴びせると、逃げ惑う盗賊の足元へセレンフィリティは威嚇射撃を繰り返していく。かいくぐって近付く盗賊はローズが神速を使い、黒縄地獄を叩きつけていった。


 見た目よりずっと弱いのか、サンダーブラストと威嚇射撃から逃げ続ける体力がなくなった盗賊は地面に膝を付いて肩で息をする始末――
「……なにもんだ、この姉ちゃん達」
「情けないな、もう終わり? ま……疲れただけだろうし特に治療は要らないだろ。大体私達と自分達の実力の違いも見分けられないんじゃ、その程度って事だ……剣はもらっていく」
 ローズがひょいと剣を取り上げ、懐に仕舞うと森へ向かおうとする。
「……? 2人とも、行かないのか?」
 見ればセレンフィリティとセレアナは盗賊達をぐるぐると簀巻きにしていた。
「ん? 一応盗みの現行犯だし、然るべき機関に引き渡すから逃げられないようにしてるだけ。それにしても剣しか持ってないって事はティアラは別の連中が持ってるのよね……エース達がそっちを取り返してくれてるといいけど」


 直後、その心配をよそにザカコと北都から『ティアラ奪還』の報が届いたのだった。