空京

校長室

【十二星華&五精霊】サマーシーバケーション

リアクション公開中!

【十二星華&五精霊】サマーシーバケーション
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リアクション



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 丁度よい高さに打ち上げられたボール目がけて、ティセラ・リーブラ(てぃせら・りーぶら)が跳び上がる。豊満な胸を揺らして放たれるアタックは力強く、相手チームのブロックをものともせずコートに突き刺さる。
「決まったーっ! 十二星華のリーダーティセラ選手、相手に反撃の隙を与えない完璧な試合運びでした! ……あ、申し遅れました。私、実況の戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)です」
「同じく、リース・バーロット(りーす・ばーろっと)ですわ。皆様の白熱した試合を少しでも盛り上げられるよう、誠意務めさせていただきますわ」
 実況役を買って出た二人が挨拶をする中、試合を終えたティセラがシリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)リーブラ・オルタナティヴ(りーぶら・おるたなてぃぶ)の出迎えを受けていた。
「ティセラさ……お姉さま、お疲れさまです。次の試合も頑張ってくださいな」
「ありがとうございます。……ふふ、あなたを見ていると、他人という気がしませんわ」
 リーブラから差し入れられた飲み物に口をつけて、ティセラが柔らかく微笑む。事実、二人が並ぶと背丈が同じこともあり、姉妹どころか双子にすら見える。以前はそのことで困惑していた彼女だが、こうして面と向かって会い見えるようになったことも、シャンバラ女王を巡る戦いが一つの終わりを迎えたことの象徴であろう。
(いろいろあったけど、ま、無事解決ってこったな!)
 二人の様子を見つめていたシリウスが笑みを浮かべて、参加者を労うべく向かっていった。

「……すっかり主役を持ってかれた気分だわ。まあ、それだけの実力があることは認めるけど……何か気に入らないわね」
 人だかりの絶えないティセラを横目に、カヤノ・アシュリング(かやの・あしゅりんぐ)は不機嫌といった様子で棒アイスを頬張っていた。カヤノが『気に入らない』その主な要因が、二人の間に存在する体系差、主に胸であるということは、本人としては認めたくないものであった。
「カヤノ、見つけた! ボクと勝負してもらうよ!」
 かけられた声にカヤノが振り向くと、これまでも幾度か勝負をしたことがあるティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ)が立っていた。
「今のあたいに勝負を挑んだことを、あんたは後悔することになるわよ。それでもいいというなら、受けてあげるわ」
「決まりだね! ボクたちが勝ったら、アイス奢ってもらうから!」
 たち、という言葉にカヤノが首をかしげたところで、風森 巽(かぜもり・たつみ)がティセラと共にやって来た。
「え、何? もしかしてペア戦!? ってことは……」
 カヤノがティセラを険しい視線で見つめる。当のティセラはそれに臆することなく、笑みを浮かべて歩み寄ってくる。
「あなたのことはよく存じております。足手まといにならぬように致しますわ」
「……勘違いしないでよ。あたいはティアと勝負しに来たんだから。あんたと組むつもりで来たんじゃないんだからね」
 差し出された手を、カヤノが渋々握り返す。
(おやおや……これは思っていた以上に興味深いことになりそうですねえ)
 カヤノとティセラを組ませることを提案した張本人である巽が、二人の様子を微笑ましく見守っていた。

「さあ、次の試合が始まりました。……えーと、巽選手とティア選手のペアが、ティセラ選手とカヤノ選手のペアに挑みます!」
 リースからもたらされた情報を参考にしながら、小次郎が選手を紹介した後試合開始を告げる。
「ティア、手加減は一切無しよ!」
 打ち上げられたボールに跳び付いたカヤノが、極寒の冷気を放出させながらアタックを繰り出す。
「ボクだって! ……これがボクの、スチームエクスプロージョンだ!!」
 対するティアが、火術と氷術の同時発生による水蒸気爆発を起こして、放たれたボールの威力を削ぐ。
「あーっと、ティア選手の技で巽選手、吹っ飛ばされたー!」
 しかし威力が大き過ぎたのか、ボールと共に巽も高々と吹き飛ばされる。同じ選手がボールを連続で触れない以上、このままティセラ・カヤノチームの勝利か、そう思われた瞬間、

「ソゥクゥ……イ・ナ・ヅ・マ……
 オーバーヘッドキック!」


 空中で身体を捻った巽の足に電撃が走り、ボールをオーバーヘッドキックで撃ち出す。高高度からのアタックが、ティセラのまとったケープから放たれた光線と相殺し、優った結果コートに突き刺さるのと、巽が着地するのはほぼ同時のことであった。
「ボールは体のどの部分に触れても良い……んだったよな?」
 巽の言葉を裏付けるように、ポイントが巽・ティアペアに与えられた。
「へっへーん、どうだカヤノ! ボクたちの勝ちだぁ!」
「ふ、ふん、たまたまよ!」
 胸を張るティアと張り合うカヤノの所へ、ティセラが申し訳なさそうにやって来る。
「済みません、防ぎきれなくて」
「……別に、あんたのせいなんて言ってないわよ。一撃で仕留められなかったから負けただけよ」
 ぷいっ、と視線を逸らしたカヤノが、ティアとの約束を果たすべく歩き出そうとして、立ち止まって振り返る。
「……あんたも来るなら、アイス奢ってあげるわよ」
 その言葉にティセラの表情が一瞬だけ、予想外といった表情を見せる。が、すぐに優雅な微笑を浮かべて、
「ふふ。では、お言葉に甘えさせていただきますわ」
 カヤノの後を追うのであった。

「あーっと、パッフェル選手のアタックで、コートが蒸発したー! 済みません、コートの修理が完了するまでしばらくお待ちください」
 パッフェル・シャウラ(ぱっふぇる・しゃうら)の必殺アタックをもろに受けて、ぷすぷす、と煙をあげた生徒が有志の救急隊員によって運ばれていく。
『また怪我人だって!? まったく、忙しいったらありゃしない! このままじゃこっちが倒れちゃいそうだよ!』
 通信の向こうで、海の家に設けられている救護所に詰めているオットー・ツェーンリック(おっとー・つぇーんりっく)の必死な声が飛んでくる。
『ああ、どれも見た目ほど大した傷じゃないわよ。これぐらいの傷ならツバでもつけとけば治るわよ』
 ヘンリッタ・ツェーンリック(へんりった・つぇーんりっく)の声が飛んできた後、オットーとの言い争いを残して通信が途絶える。オットーの言うように、各地で行われている競技の影響でやたらと負傷者が運ばれてくるものの、ヘンリッタの言うように致命傷に至る傷を負った者は出ていない辺り、契約者としての身体能力の高さ、そしてある程度の節度はわきまえられているようであった。
「……脆いわね。ティセラなら全力で撃っても受け止めてくれるのに」
 パッフェルが星銃パワーランチャーに指を這わせ、狙いをティセラがいるであろう方角へ向ける。
「やあ、パッフェルくん。次はボクたちと手合わせ願えないだろうか」
 気後れすることなく銃の照準に入って声をかけてきた桐生 円(きりゅう・まどか)、そしてミネルバ・ヴァーリイ(みねるば・う゛ぁーりい)の姿を認めて、パッフェルが銃を下ろす。
「……いいわ。苦しむ間もなく壊してあげる」
 不敵に微笑むパッフェルに応えるように、円も同様の笑みで応える。

「お待たせしました、コートの修理が完了しましたので試合を再開します。次の試合はパッフェル選手に、円選手とミネルバ選手のペアが挑みます!」
 小次郎が試合開始を告げ、ボールが宙に放たれる。
「……行くわ」
 上がったチャンスボールへ、パッフェルがためらいもなくパワーランチャーの全力斉射を見舞う。対する円はフル装備のミネルバに抱えられ、そして波動が二人を飲み込む直前、空高く放り上げられる。
「あーっと、またもコートが蒸発したー! 直撃を受けたミネルバ選手、大丈夫かー!?」
 波動が消え、何も残らないと思われていた空間に、外見だけは人の姿を保っているように見えるミネルバの姿があった。
「……ヘルメットがなければ即死だった」(あれーおかしいなー、何かお花畑が見えるんだけどー?)
 兎にも角にも一撃を耐え切った事実に、パッフェルの表情が僅かに変化を見せた時、上空から射撃音が響く。
「確かに一撃の威力は優秀。……しかし、連射は効かないと見る!」
 ミネルバによって打ち上げられたボールへ、両手に拳銃を装備した円が弾丸を――ちゃんとゴム弾に換装してある――撃ち込む。精密射撃モードに切り替えたパッフェルとの壮絶な撃ち合い――ボールを押し込もうとする円と、ボールを弾こうとするパッフェル――は、連続射撃による一時的な出力不足に陥ったパワーランチャーの斉射がズレたことにより終焉を迎えた。
「……負けたわ。私の一撃を耐えた時点で、こうなることは何となく予想していたけれど」
 コートに落ちるボールを確認して、パッフェルが銃を下ろす。コートの修理が始まり、ミネルバが救護所に運ばれていく中、歩み寄った円が口を開く。
「ボクはキミと友達になりたい。出来ることならパッフェル、と呼びたい」
 言葉をかけられたパッフェルが、先程よりも大きく表情を崩す。
「……それがあなたの願い事、というわけ。……変わってるわね、あなた」
「パッフェルに言われるとは心外だね」
 どちらからともなく、ふふ、と互いに微笑み合う。
「……いいわ。あなたのことは覚えておいてあげる」
 パッフェルが差し出す手を、円も握り返して応えた。