空京

校長室

【十二星華&五精霊】サマーシーバケーション

リアクション公開中!

【十二星華&五精霊】サマーシーバケーション
【十二星華&五精霊】サマーシーバケーション 【十二星華&五精霊】サマーシーバケーション 【十二星華&五精霊】サマーシーバケーション 【十二星華&五精霊】サマーシーバケーション 【十二星華&五精霊】サマーシーバケーション 【十二星華&五精霊】サマーシーバケーション 【十二星華&五精霊】サマーシーバケーション 【十二星華&五精霊】サマーシーバケーション

リアクション

 
「ちがーうそっちじゃなーい」
「んなこと言ったって、ちゃんと指示してくれなきゃ分かりっこないよ」
 速水 桃子(はやみ・ももこ)の罵声に文句を垂れつつ、小夏 亮(こなつ・りょう)が目隠しをされた状態で棒を持ち、ここだ! と思った所へ棒を振り下ろす……が、棒は空しく砂浜を打っただけであった。
「へたくそー」
 スパーン、と音がして、黒いビニールバットを手にした桃子が亮の尻を引っ叩く。
「っ!! 少しは加減しろよなぁ」
「加減したら罰ゲームの意味無いじゃん。はい、それじゃもう一回やり直しねー」
 ため息をつく亮の尻をもう一回引っ叩く桃子。
「……ダメだな。メロメロには出来るかもしれねぇが、男にゃ興味ねぇ。エミリア、次行くぞ」
「はい、拾児様」
 その様子を眺めていた一組の男女が、別の組へと視線を向ける。
「ちゃんと誘導してね翔! 失敗してバットは嫌だからね!」
「大丈夫、任せといて。……そうそう、そのまま……おっと、右右……ああ違う、左左」
「えー!? 翔、どっちなのかハッキリしてよ!!」
 御影 翔(みかげ・しょう)のマイペースな誘導に、エドナ・グラント(えどな・ぐらんと)があっちへふらふら、こっちへふらふらしながら、スイカがある気がする場所へ手にした棒を振り下ろす……が、棒は空しく砂浜を打つだけだった。
「もー、翔がちゃんと誘導してくれなかったからだよ! だから翔がバットね!」
「えぇー、そうなの?」
 エトナの言葉に困った表情を浮かべつつ、結局は尻をスパーン、と叩かれる翔を目の当たりにして、筑紫 拾児(ちくし・じゅうじ)がケッ、と唾を吐く。
「海に来てまでイチャイチャしてんじゃねぇ。リア充爆発しろ」
「……あの、海とはそういう場所なのでは……」
 言いかけたエミリア・カンドリン(えみりあ・かんどりん)が、拾児の険しい視線を目の当たりにして押し黙ってしまう。
「そこの男子、私とスイカ割りで勝負しなさいな」
 そこへ、赤根 冴子(あかね・さえこ)羽田 優香(はねだ・ゆうか)のペアが勝負を挑んできた。一見強気そうに見える彼女だが、拾児には彼女の本質――異性に対してM気質――が見えていた。
「いいぜ。負けた方が罰ゲーム、分かってんだろうな」
「いいわ、受けて立とうじゃないの」
「へっ、今の言葉、忘れるなよ。……エミリア、ヘマすんじゃねえぞっ」
 勝負を受けた拾児がエミリアを指示役に、目隠しをする。一方冴子も優香を指示役に、目隠しをする。
「お姉さま、頑張って誘導しますね!」
「ええ、期待しているわ、優香」
 両者準備が揃い、どちらが先に向こうのスイカを割るかを賭けて、スタートの合図が切られる――。

「や、約束だものね。……ほら、せいぜい思いっきりやりなさいよ」
 勝負は、拾児の勝利に終わった。拾児の気迫と、エミリアの献身的なアドバイスが勝利の要因であった。
「ど、どうしたの? 私の色気に当てられたのかしら?」
 別にそこまでする必要はないはずなのに、冴子は四つん這いになり、扇情的なお尻をフリフリさせる。言葉尻は強気のまま、しかし目には涙を浮かべているのは、やはり彼女が異性に対してMであることが起因していた。
「これが欲しかったんだろう? オラァ!」
 スパーン、と拾児の振るったバットが、冴子のお尻を引っ叩く。
「ああんっ」
 そのまま二発、三発と叩かれていくと、冴子の表情がみるみる恍惚に浸っていく。
「ほらほら、尻叩かれて嬉しそうじゃねえか!」
「あうう……そ、そんなこと……いい、いいわ、もっとぉ!!」
 お尻の動きを大きくして、冴子がもっと、とおねだりを始める。
(あわわ、あたしの誘導が下手くそだったから、お姉さまがお仕置きを……)
 すると、それまで事態を傍観していた優香も、冴子の隣に四つん這いになってお尻を晒す。
「エミリア、思いっきり引っ叩いてやれ。手加減はなしだぞ?」
「……はい、拾児様。……ゴメンなさい、拾児様の命令ですから……!」
 エミリアがバットを振りかぶり、スパーン、と優香の尻を叩く。
「あうっ! ……痛いけど、でも、ちょっと幸せ……」
 優香もすぐに、愛しのお姉さまと同じことをされているということで恍惚に浸っていく。
「このままお持ち帰りしてやんぜ!」
 上機嫌で拾児がバットを振り続けたのであった――。

「ふぅ……人がたくさんだね。こんなに人が居たら、スイカなくなっちゃうかも」
 スイカ割りが行われている会場で、裏方としてスイカの設置を続けていた竜ヶ崎 みかど(りゅうがさき・みかど)の心配は、お紺さんの声によって的中と相成る。
「みかどさん、スイカがもう切れてしまいそうですわ」
「うーん、やっぱりねー。じゃあ、用意しておいたのもドンドン置いてっちゃって」
 みかどが示した先には、『西瓜(スイカ)』の他、『胡瓜(きゅうり)』、『甜瓜(メロン)』、『冬瓜(トウガン)』、『南瓜(カボチャ)』、『糸瓜(ヘチマ)』が用意されていた。それぞれ名前の上には順番に番号が振られており、参加者はサイコロを振って何を割るかを選べる仕組みになっているようであった。
「スイカ以外のものもあるけど、いいの?」
「同じ瓜科のお友達ですから、問題ないのですよ」
「そうそう、問題ないぜ! ……あ、今まで割ったスイカはちゃんとスタッフが美味しく頂いてるぜ!」
 同じく裏方、というか割れたスイカをとにかく胃袋に収める係として動いていた榧守 志保(かやもり・しほ)が、スイカだけでなくきゅうり、メロン、トウガン、カボチャ、ヘチマと次々と砂糖を振りかけていく。
「榧守、スイカに振るのは塩であって砂糖ではない。これではただ甘いだけの水っぽい食べ物になっているではござらんか……。
 メロンも同様。……いや、塩をかけるなどと聞いたことはないが……。
 トウガン? ……ほう、砂糖をかける調理法が存在しておるのか。これは榧守が正しいやも知れぬな。
 カボチャは、砂糖というよりはミリンではあるまいか。そもそも生で食うものでは……既に蒸されているだと!?
 きゅうりとヘチマは合わぬであろう……ヘチマ水として利用するが吉であろうが、拙者には無用であるな」
 骨骨 骨右衛門(こつこつ・ほねえもん)が志保を窘めつつ、参加者が割ったスイカや他の瓜科の果実を振る舞っていく――。

「あーもううるせえなあ……右とか左とかどっちだよ!」
 スイカを前に、目隠しをして棒を持った佐野 誠一(さの・せいいち)が、周りの雑音に苛立った声を上げる。
(誠一が困ってる……じゃあ、これならどうかな?)
 結城 真奈美(ゆうき・まなみ)が目を閉じ、精神を集中させ、誠一に語りかける。
『誠一、これならちゃんと分かりますよね?』
『ああ、ハッキリ聞こえるぜ。しっかり誘導してくれよ』
 内側から聞こえてくる真奈美の『声』を頼りに、誠一が歩を進めていく。
『誠一、真下にスイカがあります』
『よし! 一発勝負で思い切りたたいてやんよ! これで俺の勝ちだ!』
 誠一が『声』通りに棒を思い切り振り下ろせば、見事スイカがぱかっ、と真っ二つに割れた。
「おめでとう、誠一」
「ま、これくらい当然だな。……真奈美も、お疲れさん」
 誠一の手が、真奈美の頭に伸びる。頭を撫でられて、真奈美の頬がほんのりと紅く染まる。
「そうだ、真奈美、日焼けしたら困るだろ。俺が日焼け止めを塗ってやろうか」
「……えっ? い、いいですよ誠一、それくらい一人で出来ますっ」
 咄嗟に離れる真奈美、豊満な胸がプルン、と震えるのを目の当たりにして、おっぱい大好き人間である誠一が退くはずもなかった。
「いいから俺に任せとけって」
「あ、あのその……あうぅ……」
 半ば強引に引きずっていく誠一の背中を見つめて、真奈美が困った表情を浮かべつつも拒否することなく付いていく。

「……なぜだ! なぜヒットせんのだ!」
 ぼすっ、と空しく砂浜を打った感覚に、目隠しを外したジェイコブ・バウアー(じぇいこぶ・ばうあー)が嘆きの声を上げる。
「すみません、ジェイコブ。わたくしの誘導がもっとしっかりしていれば……」
 ジェイコブの誘導に当たっていたフィリシア・レイスリー(ふぃりしあ・れいすりー)が申し訳なさそうな表情を浮かべる。かれこれ5回挑戦して、一度も置かれたスイカを打つことが出来ずにいたのだった。
「フィルのせいではない。……最初はお遊びと思っていたが、なかなかどうして奥が深い。これは十分、軍事訓練として通用するかもしれんな。……次は外さん、必ず当てる」
 ジェイコブが目隠しをすると同時に目を閉じ、精神を統一し、感覚を研ぎ澄ませていく。
(これは……わたくしは声をかけない方がよろしいですわね)
 声を掛けるのを憚られる雰囲気を感じ取ったフィリシアが、緊迫した面持ちでそっとジェイコブを見守る。ジリジリと焼けるような日差しの中、滴る汗すらも気にせず、ジェイコブはスイカの気配を察知するべく気を張らせていく。
(…………!)
 カッ、とジェイコブが目隠しの奥で目を見開く。今彼の目には確かに、緑に黒の縞模様が刻まれたスイカがはっきりと映っていた
「でやぁぁぁ!!」
 迷いなく歩を進め、ジェイコブが渾身の一撃を振り下ろす。ぱかっ、と音がして、振るった棒の直撃を受けたスイカが真っ二つに割れた。
「やった……やりましたよ、ジェイコブ!」
 目隠しを取ったジェイコブへ、フィリシアがいつになくはしゃいだ様子でジェイコブに身を寄せる。
「ああ……これでオレも、軍人として一つ大きな経験を得たな。さあフィル、この勝利を二人で分かち合おうではないか」
「ええ、そうね、ジェイコブ」
 割れたスイカを互いに持ち合い、食するべくジェイコブとフィリシアがその場を後にする。

 そうして、生徒たちは基本、ほのぼのとした時間を過ごしたのであった――。