空京

校長室

【十二星華&五精霊】サマーシーバケーション

リアクション公開中!

【十二星華&五精霊】サマーシーバケーション
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リアクション

 
「うわっ! ちょ、なんでそんな的確に狙えるんですか!?」
 胡蝶 姫月(こちょう・きつき)の振り下ろした棒をかろうじて避けたヴィオール・アルティナ(う゛ぃおーる・あるてぃな)が、目隠しをしたままの姫月に問いかける。
「これでもセイバーの端くれだからねぇ。大丈夫、君が苦しまないようにしてあげるよ」
「なるほど、そうでしたね……じゃなくて! 大体これはスイカを割ることが目的でしょうが! あなたはただ殴りたいだけにしか見えませんよ!?」
 ヴィオールの言葉に、姫月はやれやれと首を振って答える。
「君は何も分かってないなぁ。あくまで私は『うっかり』君を殴ろうとしているだけだよ。殴るつもりで殴ってない、それでは様式美に反するからねぇ」
「わざわざ起こすのは『うっかり』とは言いません! ……うわ! だからどうしてそんなに正確なんですか!? 見えてるでしょう! 絶対見えてるでしょう!?」
「お約束の展開は、起こされなくてはならないのだよ」
「ちょ、待っ――」

(この世に自分が斬れないモノ等無い! スイカなぞ、一刀両断にしてくれる!)
 と意気込んで目隠しをしたソルト・レイク(そると・れいく)が、暗転した視界に気付いた瞬間ぱたり、と砂浜に突っ伏す。
「ほれ言わんこっちゃない。ソルト・レイク、暗所恐怖症であることを忘れたな」
 やれやれとため息をついたロウ・ハウリング(ろう・はうりんぐ)が、ソルトを担いで海の家まで連れて行く。

「よし、アレにするか。スイカ割りなら安全そうだし大丈夫だろ」
 と言うウォーレン・クルセイド(うぉーれん・くるせいど)に従うまま、目隠しをされて棒を持たされた水城 綾(みずき・あや)がよろよろしながらスイカへ向かって歩いていく。Tシャツを着てても分かる豊満な胸は、観客を別の意味で湧かせていた。
「……よし、そこで力いっぱい振り下ろせ!」
 かろうじてスイカの前まで来た綾にウォーレンが指示し、大きく振りかぶった綾が棒を振り下ろす……が、ぺこん、と音がしただけでスイカには一筋の亀裂も入らなかった。
「……手が痺れたよぉ」
「おいおい、ジャストミートして無傷かよ……どんだけ力ないんだ、お嬢……」
 やれやれと呟きつつ、目隠しを外してしょげている綾の所へ歩いて行き、その頬へ冷たい飲み物をくっつける。
「ひゃう!?」
「ほら、喉渇いてるだろ。スイカは割れなかったけど、当てたのは確かだからな」
「……あ、ありがとう、ウォーレン」
 飲み物を受け取った綾が口をつけ、その表情に少し笑みが戻った。

「……誰もあたしを叩いてくれない……このままあたしは干からびる運命なの?
 ああ、誰か私を叩いて……思いっきりその棒で私を割いて!」
 無視され続けたスイカは、もしかしたらこんなことを思っているかもしれなかった――。

「岩造、1時の方向にスイカはある!」
「岩造、4時の方向にスイカはある!」
「岩造、9時の方向にスイカはある!」
 目隠しをし、普段持ち慣れている剣ではなくスイカを割るための棒を構えた松平 岩造(まつだいら・がんぞう)へ、ミランダ・ウェイン(みらんだ・うぇいん)カール・ホールドマン(かーる・ほーるどまん)ドラニオ・フェイロン(どらにお・ふぇいろん)の指示が飛ぶ……が、それぞれ指示する方向が違っていた。
(な、何だと……? まさか、俺の知らない間にスイカが増殖している? あるいは、スイカが彼らでは捕捉できないほど高速で移動している? 流石パラミタのスイカ割り、一筋縄では行かぬか……。だが、これも日々の訓練と思えば造作も無いこと! 俺の剣術でスイカを割ってやる!)
 皆の指示の意図を馬鹿正直に理解した岩造が、精神を集中させてスイカの在処を探るのを、不動 煙(ふどう・けむい)古代禁断 死者の書(こだいきんだん・ししゃのしょ)がうっかり笑いそうになるのを堪えながら見守っていた。
 彼らは、岩造がスイカを割るのを失敗させ、お仕置きと称して心ゆくまで岩造を引っ叩くことを目的としていたのであった。
「先輩、首だけ3回転半させればスイカは一つになります!」
「そうか、感謝する! ……くっ、出来ぬ……! スイカごときの術を解けぬとは、私も修練が足りないな……!」
 煙の指示通りに首を捻ろうとして、もちろんそんなことが出来るわけもなく、岩造がさも悔しそうに呟く。
「そっちは女子更衣室ネ! そっちは今イイトコロアル!」
「むぅ!? いいところ……いいところとは一体どんなところなのだ!?」
 さらには『死者の書』があれやこれやと岩造の動揺を誘うような嘘の誘導を吹っ掛け、岩造を混乱させていく。
(くっ……いかん、スイカの気配を感じられぬ……むっ! この気配は!)
 長時間日に当たったことで意識が朦朧としかけた岩造の感覚が、一つの球体を捉える。確かにそれは、砂浜に置かれたスイカであった。驚愕の表情を浮かべる皆をよそに、怒涛の勢いでスイカへ向かっていく岩造。
 そして、スイカまで後三歩というところまで近付いたところで、岩造の身体が突如宙を舞い、頭からちょうどスイカのある位置に落下し、スイカにヒビを入れた後もう一度バウンドしてズボッ、と砂浜に頭から突っ込む。
「ククク……事故なら仕方ねぇよな〜。俺はただスイカを割ろうとしただけだからなぁ〜」
 不敵な笑みを浮かべた夜霧 翔(よぎり・しょう)が、明らかにスイカを割る動作でない一撃でもって岩造を吹き飛ばし、さも愉快そうに微笑んだ後、次の獲物を見つけにその場を後にする。
「わぁ、スイカだ〜! 私果物大好きだもん、全部食べちゃうんだからぁ!」
 そして、割れたスイカは皆が気付かないうちに、ルビナス・シュリンブ(るびなす・しゅりんぶ)の胃の中に消えていったのであった。

「罰ゲームよ」
「罰ゲームだ」
「罰ゲームだ」
「割ったのには成功したかもしれないが、先輩が起きないからお仕置きだ! ……あんたが! 泣くまで! スパァン! をやめない!」
「やめないアル!」
 そして、砂浜に埋もれたままピクリともしない岩造のむき出しになった尻に、ミランダとカール、ドラニオ、そして煙と『死者の書』のお仕置き用バットによる一撃が繰り返し叩き込まれたとか。

「はい、じゃあ回って回って〜。……9、10、それじゃもう20回回ってみよっか〜!」
 白のビキニにホットパンツ姿の小豆沢 もなか(あずさわ・もなか)が、オレンジ色のレースの水着に身を包んだロレッタ・グラフトン(ろれった・ぐらふとん)に目隠しをした後、くるくるくる……とかなりの勢いで回していく。
「そ、そんなに回して大丈夫かな?」
「大丈夫大丈夫、これが本当のスイカ割りなんだよっ」
 ピンク色のレースの水着に身を包んだミレイユ・グリシャム(みれいゆ・ぐりしゃむ)の心配をよそに、もなかがロレッタを10回プラス20回回し終え、れっつごー、とロレッタを送り出す。ミレイユもロレッタもスイカ割りが初めてとあって、もなかの言う事を鵜呑みにしていたが、当のもなかは楽しければオッケー! な考えで物を進めていた。
「むーむー! むぐ、むぐむぐっ!」(な、なんだよコレ……ちくしょう喋れない……あと瓜臭いし暗いし暑いし……意味が分からん!)
 そのもなかにスイカの代わりに埋められた春夏秋冬 真都里(ひととせ・まつり)が、事情をさっぱり把握できないままもがいている所へ、何かが近づいて来るような音と、複数の声援が聞こえてきた。
「そうそう、ロリッタちゃんその調子ー! そのまままっすぐだよ!」
「な、何だか見てるワタシまでドキドキしてきちゃったよ。ロレッタ、転んだりしないでねっ」
 もなかとミレイユの応援を受けるロレッタは、しかし計30回も回されたことでもはやまともに歩ける状態ではなく、もなかがこっそり発動させているサイコキネシスで半ば動かされている状態であった。
(……目が回るぞ。どこを歩いているのか全然分からないぞ)
 それでも、棒を持ったロレッタがスイカ――実際はくり抜いたスイカを被らされている真都里――の前まで辿り着く。
「ロリッタちゃん、思いっきり割っちゃえー!」
 もなかの声を聞いた真都里は、ここに来てようやく事情を理解して、激しく抵抗する。
「むむむむむー!」(や、やめろ、やめるんだー!)
 そんな真都里の抵抗むなしく、高々と棒を振り上げたロレッタが棒を振り下ろす……ことなく、ふらふらと足をもつれさせたかと思うと、目の前のスイカに頭から突っ込んでしまった。
 スイカの皮を挟んで、真都里の頭とロレッタの頭が激しくぶつかり、声にならない声を上げたロレッタがぱたり、と砂浜に突っ伏し、次いでぱかっ、と割れたスイカの中から、果肉まみれになった真都里ががくり、と頭を打った衝撃で意識を失う。
「わっ、ロレッタ!? そ、それに真都里くんっ!?」
 スイカの果肉まみれになり、見ようによっては惨状に見えなくもない事態にミレイユがしばし固まった後、現実に返って二人に癒しの力を施しに駆け出す。
「あははっ、大成功〜! うーん、でもこれって考えてみたら間接キスってヤツなのかなぁ?」
 企みが概ね成功に終わりつつも、ちょっぴり複雑な気持ちのもなかであった。

「簡単な空間認識力の訓練だ。これから私の指示に従って動け。うまくやれば褒美を、失敗すれば罰をやる」
 そう告げて、相沢 洋(あいざわ・ひろし)乃木坂 みと(のぎさか・みと)に目隠しを施し、スイカを割るための棒を持たせる。
「盲目状態での近接戦闘……それで、スイカ割りですか」
 遮られる視界に戸惑いを覚えながらも、洋に褒められたい一心でみとがスイカと向き合う位置に立ち、洋の指示を待つ。
「では行くぞ。前方に向けて移動、目標にゆっくりと前進だ」
「はい、洋さま」
 指示に従い、みとが歩を進め、スイカに向かって近付いていく。
(こっち……でしょうか。見えないということがこれほど怖いとは……)
 慣れない訓練に四苦八苦しながらも、徐々にスイカとの距離は縮まっていく。
「……よし、その位置で右に60度旋回。足元にあるスイカに一撃を加えろ」
「はい、洋さま。……覚悟!」
 指示通りに旋回したみとが、振りかぶった棒を勢いよく振り下ろす……が、旋回が若干足りず、棒は空しく砂浜を打つに留まった。
「バカ者が。……今夜は寝かさん。後で私の部屋へ来い、これは命令だ」
 目隠しを外し、成果を確認して少々落ち込んだ様子のみとへ、洋が躊躇いなくみとの頬を張り、一方的に告げて背中を見せる。
「え? あの、その……つまりそれはアレですか? ……分かりました」
 彼の部屋に行くということがどういうことか理解しているみとが、頬の痛みも忘れてうっとりと物思いに耽っていた。