空京

校長室

【十二星華&五精霊】サマーシーバケーション

リアクション公開中!

【十二星華&五精霊】サマーシーバケーション
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リアクション

 
 ティセラ陣営とリフル陣営が戦果を競い合う中、精霊陣営は思うように戦果を伸ばせずにいた。
「流石は一騎当千と謳われた十二星華、そう易々と取らせてはくれぬか」
 馬を崩され、一旦砂浜に引き上げたサラ・ヴォルテール(さら・う゛ぉるてーる)が、水に濡れて解けた髪を束ね直して視線を戦場へと向ける。
「……だが、私とて五精霊に与する者、ここで退くほど脆弱ではない。それに――」
「――信じる力、絆の力があれば、どんな相手にだって負けない……そうだろ、サラ?」
 背後に現れた緋桜 ケイ(ひおう・けい)悠久ノ カナタ(とわの・かなた)の存在に、サラがフッ、と笑みを浮かべて振り返る。
「友よ、今こそ精霊と人間の絆、見せる時!」
「ああ!」
 サラとケイがしっかりと手を取り合い、そこへカナタが騎手として騎乗する。
「準備は出来まして? わたくしも加勢いたしますわ」
 背後では、セイラン・サイフィード(せいらん・さいふぃーど)真世 太郎(まよ・たろう)と馬を組み、唐沢 北斗(からさわ・ほくと)を騎手に据えて出陣の準備を整えていた。
「よし……出陣!」
 サラの号令で、2騎の騎馬が向かって左側、リフル陣営へと向かっていく。
「ほら、リラックスして。馬が頑張らないと、赫夜さんも力を発揮出来ないよ」
 そのリフル陣営では、藤野 赫夜(ふじの・かぐや)を騎手に迎えたハルディア・弥津波(はるでぃあ・やつなみ)デイビッド・カンター(でいびっど・かんたー)のペアが、しかし不慣れなのか思うような動きをこなせずにいた。
「済まない、水上騎馬戦とやらは初めてのことなのでな……」
「ああいえ、赫夜さんは悪くないッス!」
 申し訳なさそうな表情の赫夜に慌てて言葉を返すデイビッド、しかし触れる身体の温もりと柔らかさが、彼にどうしても意識させてしまう。
(慌てるな、集中、集中……)
「十二星華が一柱、藤野 赫夜とお見受けする。私は五精霊が一柱、サラ・ヴォルテール! あなたと手合わせ願う!」
 そこへ、カナタ騎が名乗りをあげ、北斗騎を従えて突っ込んできた。スカーフへ伸ばされるカナタの手を赫夜が身体の動きだけで避け、ハルディアとデイビッドが赫夜を支える。
「おやデイビッド、もう慣れたのかい?」
「今はそれを気にしている場合ではない!」
 ハルディアに言い切るデイビッド、危機に際し恥じらいを吹っ切ったが如く振る舞い、2騎の攻撃を掻い潜ろうとする。
(こんな、美しい女性を合法的にお触りできる機会、逃すわけには!)
 しかし、2対1という状況、さらにはやたらと気合の入った北斗騎と状況を的確に判断し振る舞うカナタ騎の襲撃に、赫夜騎はよく持ちこたえながらも追い詰められていく。
「……む、私の仲間が狙われている」
「ホントだ! リフル、助けに行こう!」
 リフル・シルヴェリア(りふる・しるう゛ぇりあ)を騎手に迎え、久世 沙幸(くぜ・さゆき)藍玉 美海(あいだま・みうみ)が馬を組む彼女らが姿を見せた目の前で、赫夜がスカーフを奪われ同時に馬を崩されてしまう。
「少々手荒な真似をした、済まない」
「……いや、構わない。戦いとはそういうものであろう?」
 騎馬の上からサラが、ハルディアとデイビッドを引き上げた赫夜が、互いに微笑を浮かべ合い、そして2騎は新たな敵、リフル騎へと標的を定める。
「沙幸さん、リフルさん、来ますわよ」
「……仲間の仇、取らせてもらう」
 リフルの目がすっ、と細まり、戦う意思を覗かせて相対する。
「十二星華が一柱、リフル・シルヴェリアとお見受けする。私は五精霊が一柱、サラ・ヴォルテール! あなたと手合わせ願う!」
「……いかにも。あなたの首、頂戴するでござる」
「リフル、何かおかしいよそれ!?」
 交わされる言葉とは裏腹に、リフル騎の動きは無駄がなく的確であった。リフル自身の運動神経の良さ、沙幸と美海との息が合っていることが、2騎との戦いにおいても互角に持ち込む要因であった。
「そこだー!」
 北斗騎が果敢にも突っ込み、そして北斗がリフルに手を伸ばす。故意ではないが胸の辺りに伸びた手を、しかし襲ったのは硬い感触だった。
「……着けててよかったミニどんぶり」
「……どうりで、リフルさんにしては胸が……いえ、失礼ですわね」
「……構わない」
「え、ええっ、ど、どういうこと?」
 北斗騎を沈めたリフル騎が、カナタ騎との一騎討ちに持ち込む。
 それぞれの騎手が、そして騎馬が、激しくぶつかり合う。突撃を見切られバランスを崩されたリフルが、しかし落ち際にカナタのスカーフを抜き取り、続行不能になりつつも勝利をもぎ取る。
「……流石、勝負にかける執念、見事だ」
「……これもラーメンのため。……あ」
 サラに起こされたリフルの胸から、ミニどんぶりがポロリ、と落ちる。
「ああ〜、リフルのポロリを阻止できなかったよ〜」
「……沙幸さん、とりあえず自分の身を省みた方がよろしいかと」
 それを見て悔しがる沙幸は、落ちた衝撃で自分の水着がはだけてしまっていることに、ようやく気付いたのであった――。

(……い、今のはポロリということでいいのかしら? ですがこれでは売りつけるには少し弱い……いえいえ! 夏の思い出を記録するためです、ええそうです、そのためにはもっともっと撮影を続けねば!)
 水上騎馬戦の様子をデジタルビデオカメラで撮影していた風森 望(かぜもり・のぞみ)が、先程のシーンを再生した後で頭に何やら邪な思考を抱きつつ、それを隠すように頭を振って撮影を再開する。
(平和な光景ですわね……この平和な一時を記録として残す、望も偶には良い事を考えますわね。今もあれほど夢中になって……)
 その隣でサポートに回っているノート・シュヴェルトライテ(のーと・しゅう゛るとらいて)は、望の邪な思考には全く感づいていない様子で望の行動を微笑ましく眺めていた。
(皆さんスタイル良くて、これだとグラビア並の水着美女写真が沢山撮れそう……い、いやいや! 真面目な取材の一環だよっ!?)
 ティセラ、リフル、サラとそれぞれの陣営を代表する人物を目の当たりにして、羽入 勇(はにゅう・いさみ)が思わず浮かんだ思いを振り払うように首を振って、撮影を交えた取材を行っていた。
「ここに来れなかった人たちにも、その楽しさが伝わるような写真を撮らなくちゃね。……あらセイニィちゃん、ちょうどよかったわ。ここにセイニィちゃんにピッタリの水着があるの、着てみない?」
「へっ!? いやいや、あたしにそんなの似合うわけ無いでしょ――ってパッフェル、どうしてあたしを羽交い絞めにするの!?」
「……そうした方がいいような気がしたのよ」
 ビューティーアドバイザーの如く水着を勧めてくるニセフォール・ニエプス(にせふぉーる・にえぷす)に詰め寄られ、逃げようとしたセイニィ・アルギエバ(せいにぃ・あるぎえば)が、どこかからデンパを受け取ったような素振りのパッフェル・シャウラ(ぱっふぇる・しゃうら)に止められもがく。
「いやー!!」
 そのままズルズルと引き摺られていくセイニィであった。

「……この状況を、何と表現すればいいのかしら」
「まぁ、これだけの者が集まった場での、ある意味相応な展開、だわな。折角だ、テティスも楽しんでくればいい」
 複雑な表情を浮かべるテティス・レジャ(ててぃす・れじゃ)に、騎馬戦の審判を務めていた斎藤 邦彦(さいとう・くにひこ)の声がかかる。
「……そう、ね。私は他の十二星華のことをよく憶えていないけど……一緒に楽しむことくらいは、私にも出来るわよね」
 表情を崩して、声をかけてくれた邦彦に礼を言って、テティスが騎馬戦の会場へと向かっていく。
「意外とマメなのね、気後れしてる子にわざわざ声をかけるなんて」
 背後からネル・マイヤーズ(ねる・まいやーず)の声がかかり、邦彦は気怠そうに呟く。
「やるからには楽しもうとするだけのことだ。……眼福だし」
 チラリ、と向けた視線の先には、ティセラや赫夜といったいわゆる『見応えのある』者たちの姿があった。そんな彼にネルが「正直ね」と背中を叩きながら言葉を残し、そして二人は審判業務に戻っていく。


「イルミンスール武術部の本気を見せてやるぜ、ヒャッハー!」

 そう言い残して姿を消したと思った所へ、上空からフィアナ・コルト(ふぃあな・こると)を騎手、マイト・オーバーウェルム(まいと・おーばーうぇるむ)相田 なぶら(あいだ・なぶら)を騎馬としたフィアナ騎が、クローム・ウェントス(くろーむ・うぇんとす)クリケイト・クルス(くりけいと・くるす)の馬へ襲いかかり、スカーフを奪ってついでに馬を崩してしまう。水中に潜るわ水中に小型爆弾を仕掛けるわのなんでもアリ攻撃も、「三次元攻撃だ!」とマイトが考案したバーストダッシュによる翻弄には大した効果を発揮せず、そして崩されたところへ自ら仕掛けた小型爆弾に触れて、大きな水飛沫と共に彼らは砂浜へと打ち上げられたのであった。
(ま、十二星華が姿を見せるまでは、目立たないように行こうかね)
 前衛がフィアナ騎ならば、毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)を騎手、プリムローズ・アレックス(ぷりむろーず・あれっくす)マナ・オーバーウェルム(まな・おーばーうぇるむ)を騎馬とした大佐騎は中衛の如く振る舞い、釣り竿を伸ばしてスカーフの奪取を狙う。
「取った! 取ったよ、輪廻――きゃーっ!?」
「れ、連!? う、うわっ!?」
 相手のスカーフを奪取して喜んでいた柊 連(ひいらぎ・れん)の胸の部分に釣り竿が引っ掛かり、脱がされそうになってバランスを崩し、白菊 輪廻(はくぎく・りんね)共々海に落っこちてしまう。スカーフは取られなかったが、続行は不能になってしまった。
「芦原の嬢ちゃん、乗り心地はどうだい?」
「わ〜、普段と全然違う世界が見えるよ!」
 鬼崎 洋兵(きざき・ようへい)秋月 桃花(あきづき・とうか)が組む馬の上で、芦原 郁乃(あはら・いくの)が普段より高い視界に感動の声をあげていた。
(鬼崎様は紳士な方なので安心です。……ただ、郁乃様の胸や太腿、お尻が触れるのは羨ま……いえ、なんでもありません)
 洋兵と郁乃の後ろで、桃花が心に浮かんだ思いを潜めた一方で、ジークフリート・ベルンハルト(じーくふりーと・べるんはると)と騎馬を組むユーディット・ベルヴィル(ゆーでぃっと・べるう゛ぃる)は、洋兵が他の女性と一緒にいることに激しい嫉妬心を隠さずにいた。
(うう……洋兵さんが私以外の女と一緒にいるなんて……!)
「なにやら邪悪な気が背後から漂っているようだが……構わぬ、俺は魔王として、エレガントな勝負を申し込む!」
「さっすが魔王様! 私どこまでも付いていきます!」
 騎手のシオン・ブランシュ(しおん・ぶらんしゅ)が感涙の涙を流したところへ、以上4騎で編成された『イルミン武術部』に挑む者たちが現れた――。