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のぞき部だよん。

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のぞき部だよん。

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第9章 真相 【下校時間←→昼休み】

 まず、青空幸兎が疑われた。
 タキシード姿でアタッシュケースを持っているのだから当然だ。
「オラ、のぞき部なんて関係あらへん。昼休み? プール前? ただ歩いてただけやん」
 水原ゆかりが警棒で青空の胸を突く。
「本当にそれだけか!」
 青空は、自分を見つめる愛美の視線に気づいた。
「あと……ぶつかった」
「ぶつかった? 何にぶつかったんだ! この馬鹿者!」
 すると、愛美が立ち上がる。
「私。私にぶつかったの。それで、アタッシュケースの中のものが……」
「それは関係ないやんけ!」
 ボカッ。青空は警棒でぶん殴られた。
 アタッシュケースから、ロープがはみ出ているのが見える。
「貴様! このロープはなんだ!」
「宝探しに使うんや。洞窟とか探検するのに必要やんけ」
「そんな嘘が通じると思うか!」
 水原が素速くアタッシュケースを奪って、
「中身を検閲する!」
 しーん。
 中から出てきたのは、ロープの他に、蝋燭、鞭、アイマスク……。
「手を煩わせおって……」
「やっぱり宝探しといっても、信じてくれへんか」
「当たり前だ!」
「でも、あのときロープを拾ってくれた男は、信じてくれたんやけどなあ……」
「誰だ、そいつは!」
「わからへん。オラ、恥ずかしくて下向いとったから。ただ、あの服は……波羅蜜多ツナギやな。ま、この際誰でも関係あらへんけどな」
 今ここに、波羅蜜多ツナギを着た男子はいない。話は暗礁に乗り上げた。

 では、愛美は何をしてたのか。
 朝野未沙と未羅のコンビと出会い、オシャベリしていたというが、その会話の中にヒントがあるのかもしれない。

 時は昼休みに遡り――
「きゃっ!」
 愛美は青空にぶつかられて、転んで尻餅をついた。
「愛美さん。大丈夫?」
 朝野未沙と未羅が、駆け寄ってくる。
「うん。大丈夫。ちょっと打っただけ」
「アザになって残らなければいいけど……」
「ありがとう。心配してくれて。未沙さんと未羅さんですよね」
 未沙は名前を覚えてもらっていて、嬉しかった。
「うん。愛美さん、プール行くの?」
「そうなの。本当は放課後に泳ぎたいんだけど、マリエルがスイーツのおいしい店見つけたって言うから」
「わー。あたしも行きたい! 食べたい! 連れてって〜」
「いいよ。行こ行こっ。未羅さんも一緒に行こう!」
「え? 私も? うれしいー。あ。そしたら、お姉ちゃん。スイーツの前にプールで運動した方がいいんじゃないの?」
「言えてる! じゃあ放課後、泳いでから行こうよ! なんかこの制服、久しぶりに着たんだけどキツいのよね。変でしょ?」
 すかさず愛美が女子ならではの褒めトークをかます。
「そんなことないよ。似合ってるよー。未沙さんスタイルいいもん!」
「よくないよくない。もう蒼空学園の制服って普段着ないし、何か違和感あるんだぁ〜。もうぜったい可愛くないよ」
 未沙は負けじと謙遜トークで対抗。
「変なこと言って。未沙さんがスタイル悪かったら、私なんて――」
「何言ってんの! 愛美ちゃんはみんなのマドンナだよ!」

 2人の褒め&謙遜トークは55分続き、1時間の昼休みをほとんど使い果たしてしまったという……。
 時は下校時間に戻り――
 残る重要参考人は、坂下鹿次郎だ。

「拙者、ただベンチでボーっとしてただけでござる」
「アホか。昼休みの間、ずっとボーっとしてたんかい」
 坂下を疑っていた沙耶の追及が始まる。
「のぞき部の頃からおかしい思とってん。のぞかない方がいいとかなんとか言うてたやろ。そんなん言うのぞき部、怪しいわ」
「あれは、ただ……」
「聞かせてもらうで。1時間も何を考えとったんかを……!」
 今や、みんなが坂下を疑っている。
 坂下は、あきらめて正直に語り出した。
「考えてたのは、……愛美殿のお尻のことでござる」

 世界は坂下の妄想に入り――
 女子更衣室。
 愛美がゆっくり服を脱いでいく。転んだときのお尻を痛そうにしながら、パンツを脱いだ。
「大丈夫かな。アザになってる?」
 未沙が、かがんで見る。
「なってる。大きいよ。何かの地図みたいに見えるー」
「ええー。まいったな。やだー」
「でも、それもまた可愛いよ」
「そんなことないって。未沙さんだったら可愛いだろうけど」
「あたしなんてダメだよ。かわいくないもん」(以下略)
 そして56分後、世界が歪んだ。
 ロープ、鞭、蝋燭、アイマスク……が空を飛んでやってくる。
 タキシードの青空が鞭をしならせて、愛美の尻をバッチーーーーーン!!!
 愛美は尻を突き出して、
「もっと、虐めて!」
 青空は、尻の地図をバチンバチン叩いていく。
 その隣に並んで鞭を待っている朝野姉妹の尻を無視し、ひたすらに愛美の尻を叩いていく。
「はあう! やめて……くだ……さい……やめ……ない……で……くだ……さ……い……」
 バチン! バチン! バチン! バチン! バチン!
 坂下は妄想と現実の間で立ち上がった。

「やめろ! 愛美殿のお尻は地図でござるぞ。財宝の在処を示す地図でござるぞ!」

 現実世界に戻り――
 坂下の変態っぷりに、みんなが戸惑っている。
 そのとき!
 一人の影が坂下に向かって突進。ぶん殴った。
「ふざけるな!!!!!」
 蒼空学園の制服を着ているが、見慣れない顔の男だ。
 天瀬が男の前に歩いていき、男と対峙。
「もしかして、首謀者ですか?」
 ざわざわ……
「それは、僕の制服です!」
 波羅蜜多実業の姫宮が、ハッとして、
「そうだ! お前。パラ実の朱 黎明(しゅ・れいめい)だな!」
 朱黎明は坂下の胸倉を掴んでぐわんぐわん揺らす。
「ふざけるな、貴様! 財宝の在処を突き止めるためにのぞき部にのぞき穴を作らせようとしてたのに、まさか! まさか、尻の地図が貴様の妄想だったなんて……!!! くそう。私としたことが……」
「……多くの人を犠牲にして、よく平気ですね?」
 朱の背後に、天瀬が迫っていた。怒りで血管をピクピクさせながら、
「うおおおおおおおおお!」
 死神の大鎌を思わせるデザインの光条兵器が、背後から出てくる。
 しかし……
「失礼!」
 朱は間一髪、大鎌をよけてド派手なスパイクバイクでキャンパスを逃げていった。

 その頃――
 首謀者を捜して校舎の周辺を巡回してる者たちがいた。
「サイミン! キャー。かわいいー!」
 サイミンと呼ばれたのは、女装したサイクロン・ストラグル(さいくろん・すとらぐる)
 恥ずかしそうに振り向いたが、男にしか見えない。
 サリア・エンディミオン(さりあ・えんでぃみおん)はカメラを構えて、カシャッ。カシャッ。
「もっかい、こっち向いてえー!」
 撮りまくっている。
 サイクロンも次第にその気になってくるが、パートナーのグランメギド・アクサラム(ぐらんめぎど・あくさらむ)は冷静にたしなめた。
「貴公の魅力では、のぞき部は寄ってこないだろう。諦めるんだ。サイクロンは女性には見えない」
 サリアのパートナーフェミリア・アレクトル(ふぇみりあ・あれくとる)は、今気がついた。
「え! もしかして、あなた……サイクロン?」
「はい。オレですよ。しかし、こんなとこを歩いててのぞき部を見つけられるのでしょうか……」
 サイクロンは途方に暮れていた。
 と、そのとき!
 
ドドドドドドドドッッッッッ!!!!!!

 そこに、朱のスパイクバイクが近づいてくる。
 慌ててサイクロンが転び、尻が露わになる。
 サリアはそこを激写!
 通り過ぎる朱は、思わず尻をチェック。
「あいつ、尻を見た! 怪しい!」
 サイクロンがいきなりツインスラッシュでバイクを撃破――
 したはずが、朱はまだバイクに乗っている。
 それはパートナーネア・メヴァクト(ねあ・めう゛ぁくと)のバイクだった。
「黎明様。後は私がお引き受け致します」
「ネア。頼んだよ」
 朱を逃がしたネアは、サイクロン軍団の攻撃を受ける。
 その戦いは壮絶なものとなったが、サリアはひたすらサイクロンの活躍シーンをカメラに収めていた。
「その攻撃、もっかいやってー!」
 
 朱は、バイクを捨てて裏口から逃げる。
 しかし、甘かった。
 地上で沙耶がコンパクトの鏡をチラチラさせ、夕日を反射させる。
 それが合図となり、屋上で控えていたパートナーの嵩乃宮 美咲(たかのみや・みさき)が飛空挺を飛ばした。
 朱は立ち止まり、迎え撃つ構えだ。こいつさえ倒せば、逃げ切れる……
 その判断は正しい。
 波羅蜜多実業のソルジャーが、蒼空学園のプリーストに負けるとは誰も予想しないだろう。
 朱は落ち着いている。慌てることなく、美咲の攻撃を冷静に見ている。
 美咲は飛空挺に乗ったまま、光条兵器を繰り出す。
 ここに、朱の誤算があった。
 光条兵器は、美咲の豊満な胸の谷間から出てきたのだ。

「う……! こ、こんな胸、見たことない!!!」

 朱はたわわな胸から目が離せない。
 たわわん。たわわん。たわわん。たわわん。たわわん……
 光条兵器は既に朱の脳天に迫っていたが、朱は依然として胸から目を離せないでいた。
 ズビズバーーーーーーーッッッッッ!!!!!!!!!
 朱は死の1ミリ手前までダメージを受けた。
「おっぱい……」
 ガクン。気絶した。
 勘違いとはいえ、やはりのぞき部の首謀者である。女性の体には敵わなかったのだ。
 沙耶と美咲は見つめ合い、大きく頷いた。
 こうして、首謀者の朱も、首謀者抜きで動いていたのぞき部も、ともに正門前に晒された。
 子供にしか見えないプリモがツカツカと朱に歩み寄る。
「あんたのくだらない勘違いのために、あたしはのぞかれそうになったのよ! ……このロリコンどもめッ!!!」
 しかし、のぞき部の連中はやるだけやったからなのか、いい顔をしていた。
 弥涼は首謀者ではなかったが……
「首謀者が誰か、そんなのは最初から関係ない。肝心なのは、のぞくかのぞかないかだぜ……」
 その目は、まだ死んではいなかった……。