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11・3日目の朝

 荒地をがむしゃらにラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)がバイクを飛ばしている。何処からどう見ても筋肉質な中年のおっさんだが、目つきは鋭い。
「オラァ!!糞魔女!どこだぁ!姿見せろ!さっさとカノンの魔法を解け!」
 大声で叫びながら、バイクを飛ばしている。廃坑が見えてきた。中に人影がある。
「なんだ、ありゃ?」
 廃坑から、ラルクを手招きする桐生円が見える。円は、ラルクに静かにするよう合図を送っている。


 百合園には今日も朝から訪問者がいる。

 波羅蜜多の五条 武(ごじょう・たける)は女装している。パートナーのイビー・ニューロ(いびー・にゅーろ)は「タケル、お似合いです」と、ヘッドドレスやリボンまでつけ、過剰なまでの装飾を施す。「本当にどうしようもなく、変身が得意ですね」とイビーは褒め称えている。
 元々女性のシャーロット・マウザー(しゃーろっと・まうざー)は、日奈々から百合園制服を借り受け、生徒を装ってタケルと共に百合園へ潜入する。
「ちょっと強引な作戦ですけど、カノン様のためにもやはり実行しなければ!だって、偽りの姿のままで良いのでしょうか?好きな相手を巻き込んで良いのでしょうか…?カノン様はきっと、そのままの姿でも十分魅力的な方だと思うんですよぅ。少々強引ですが、やっぱりここは頑張らないと、ですよねぇ」
 出迎えにきた既に潜入しているイリーナに語るシャーロット。
「勿論だ。シャーロット、制服に合ってるぞ・・・リボンが曲がってるぞ」
 シャーロットのリボンを直すイリーナ。
「大丈夫だ、勇気を出せ」



12・そして時は近づいている

 校内では。
 少し遡って、イリーナ・セルベリアが「シャンバラ女王の末裔に一度拝謁したかった」とラズィーヤとの謁見を求めていた。申請は生徒会「白百合会」を通じて行われた。申し込みを受けたラズィーヤはいとも簡単に承諾する。
「なんだか、いろんな人が入り込んでいるようだし、この辺でいつもの百合園に戻しましょうね」
 副部長・神楽崎優子(かぐらざき・ゆうこ)は気が進まなかったが、ラズィーヤは気にしていない。


 イリーナはラズィーヤの前に跪き、丁寧な接見の挨拶を済ましたあと、スカートをめくって太ももに付けた銃を取り出し、ラズィーヤに向ける。
「カノンという教導団の生徒がこちらに身分を偽って潜入している。何とか助けたい。ご協力をお願いしたい」
 ラズィーヤは、銃を突きつけられても変わらない。
「カノンとオウムの話は、知っていますわ。私、煙草はたしなみませんの。ライターは下げてくださらない?」
 ラズィーヤは当然、イリーナが用意した銃がライターと知っていた。
「しばらくここにいなさい」
 イリーナは、入室してきた白百合乙女剣士団にいつの間にか囲まれている。
「悪いがここでは死ねんよ。一人で死ぬ等許さん言われているのでな」
 白百合乙女剣士団の剣を飛び越え、窓から逃走するイリーナ。

 同じ時間、放送室ではメイベルとセシリアによるインタビューが行われていた。
 静香の前にマイクが置かれ、メイベルとセシリアが質問を繰り出す。静香はインタビューなど嫌だったのだが、ラズィーヤが返事してしまったために断ることが出来なくなっていた。

メイベル「静香校長にお尋ねします。好きな季節はなんですか?」
静香「えっ、季節っ?えーと、今は夏だから、夏っ、かな」
 その後、好きな食べもの、好きな花、など質問が続き、いよいよ核心の質問、
セシリア「好きなタイプはどんな人ですか?」
メイベル「例えば、容姿って気になりますか?心の優しい子と外見の美しい子、どっちが・・・好きですかぁ?」

 メイベルはこの質問がしたくてインタビューをしているのだ。わざわざ録音もしている。全てはカノンのため。静香の答えをカノンに聞かせるために。
 静香は、ジッと考えていてやっと口を開く。
「あのねぇ・・・」
 放送を聴いていた誰もが息を呑んだ、そのときシャーロットが侵入してくる。

 さて、先ほどラズィーヤを襲って逃走したイリーナは、五条、シャーロットと共に、秘密結社ネガシエイターを結成していた。秘密結社ネガシエイター・メンバーは総勢4名。五条武とイビー・ニューロ、イリーナ・セルベリア、シャーロット・マウザー。
イリーナとシャーロットがラズィーヤと静香を人質にしている間に、五条が亜津子(カノン)を説得し、魔女退治に向かう筋書きだ。