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幻のダイエット草を探せ!

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 第3章 戦闘開始! 派手な戦いのこと

 そんな大騒ぎの中、ジャックたちイルミンスールダイエット草捜索隊の本隊が到着する。
 荒巻 さけ(あらまき・さけ)は、愛美やマリエルたちを守るため、仁王立ちで応援歌を歌い始めた。
 「パラミタの 道開けし新たなる風 シャンバラにその名誇れる 嗚呼 蒼空 蒼空学園」
 気合を入れるために巻いた長いはちまきをひるがえし、さけはイルミンスールの生徒達の注目を集めようとする。
 「わたくしが蒼空学園の荒巻さけ、いざ、勝負!」
 大声で名乗りをあげ、さけはピコピコハンマーを構える。
 相手が怪我しないようにという配慮であったが、武器以外では手加減するつもりはなかった。
 「望むところだ! 俺達の力をみせてやるぜ! ファイヤー!」
 ジャックが進み出ると、犬神 疾風(いぬがみ・はやて)が立ちふさがる。
 「ちょっと待った! ジャック・サンマー! どっちが熱い男か俺と勝負だ! 熱い男は二人もいらないっ!」
 「なにっ! 当然俺のほうが熱い男だぜ!」
 ジャックは疾風に向き直り、思いっきり炎を放つ。
 「がんばれ、師匠ーっ!」
 疾風のパートナーの剣の花嫁月守 遥(つくもり・はるか)が、パワーブレスを飛ばす。
 「行くぞ! 爆炎波!」
 炎の波が地面からほとばしり、ジャックの放った炎と激突する。
 轟音とともに、辺りは黒焦げになった。
 「さすがジャック、俺がライバルと見込んだだけの男だ! なかなかやるな!」
 疾風はにやりと笑い、ジャックを見据える。
 「おまえもなっ!」
 ジャックも不敵に微笑んだところで、別方向から声が響いた。
 「こらーっ! いいかげんにしなさい!」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)の美脚キックが、疾風とジャックの頭に炸裂する。
 「ぐおっ!?」
 「ごふっ!?」
 不意をうたれて、疾風とジャックは吹っ飛ぶ。
 「そんなにばんばん炎を出してたら、森が火事になっちゃうでしょっ!!」
 美羽のパートナーの剣の花嫁ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)は、パワーブレスで美羽の支援を行っていた。
 「すみません! 美羽さんがご迷惑をおかけしてしまって……」
 同じ蒼空学園の生徒である疾風を攻撃してしまったことをベアトリーチェはわびる。
 「師匠ーっ! ヒールで回復するよっ」
 遥があわてて疾風を回復する。
 「美羽さん、これは俺とジャックの男の対決なんだ! 邪魔しないでくれ……ぐふっ!?」
 「だからって、森を破壊していいわけないでしょうがっ!!」
 疾風が反論するが、美羽は有無を言わさず、疾風の頭に回し蹴りを炸裂させた。
 そんな中、樹月 刀真(きづき・とうま)はパートナーの剣の花嫁漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)にジャックたちとは戦いたくないと言われていた。
 「ジャックと一緒にアイスを作った時は楽しかったし、エリザベート校長は大図書館への入館許可をくれた……戦いたくない。ゴメン刀真」
 「それなら俺に任せておきなさい、月夜が一肌脱いでくれれば何とかしましょう」
 「え?」
 きょとんとする月夜だが、その横で刀真は大声をあげる。
 「男子生徒諸君! ちゅうも〜く」
 言うなり、黒い刀身の片刃剣の光条兵器で、刀真は月夜の服を切り裂いた。
 「うん、エロいですね、てな訳で見物料をいただきます」
 「……え?」
 赤のレースにガーター付きの下着姿の月夜は、呆然とする。
 男子生徒たちからはどよめきがあがるが、それだけではすまなかった。
 「よし、この隙に男子は全滅です! 爆炎波……グフッ!?」
 「バカッ」
 月夜の投げつけた百科事典が、爆炎波を放とうとした刀真の後頭部に直撃する。
 「死んでしまいなさい! この女の敵!」
 「パートナーになんてことするの! 同じ剣の花嫁として許せないよ!」
 「さっきから、炎を使うなって言ってるのがわからないのっ!?」
 「……美羽さん、パワーブレス使います。存分にやっちゃってください」
 さけと遥と美羽とベアトリーチェが、刀真をフルボッコにする。
 「えと一言、スカートの中が見えてまグフッ」
 「イヤ、裸は駄目だけど下着までは良いんじゃないかと水着も中々際どかったし、グハッ」
 余計なことを言って、刀真はさらに殴られる。
 「キライ」
 月夜は涙目で刀真をにらみつけると、言葉少なに非難するのだった。

 「何やってんだあいつら……。でも、こっちも本気で戦わせてもらうぜ! サンダーブラスト!」
 空飛ぶ箒に乗り、空中から魔法で攻撃するのは、イルミンスールの緋桜 ケイ(ひおう・けい)であった。
 しかし、女相手に戦うのにためらいのあるケイは、疾風や刀真を集中的に狙う。
 「くっ、そんなに何度もくらってたまるか!」
 「ゲブラッ!?」
 疾風は素早く電撃を避けるが、すでにボロボロだった刀真は思いっきりくらって気絶した。
 ケイのパートナーで魔女の悠久ノ カナタ(とわの・かなた)は、「女の美をかけた戦い」に燃えていた。
 「ケイは女とは戦いたくないなどと腑抜けたことを申しておるが……この戦い、負けるわけにはいかぬ!」
 カナタは空中からさけに突撃をかける。
 「魔法で攻撃するつもりですのね。そうはさせませんわ……うっ!?」
 「わらわの鉄拳を受けてみよ!」
 さけの顔面にカナタのパンチが炸裂する。
 「こうなったら容赦しませんわ! わたくしの木刀を受けなさい! 鈍器だから死にはしませんわ!」
 さけは木刀を取り出すと、カナタに応戦する。
 「派手な魔法は火事の元よ! まずはあなたを止めてみせる!」
 美羽も、カナタにかかと落としを放つ。
 「見るがいい! ケイよ、女同士の戦いとは時に醜いものなのだ!」
 カナタは叫びつつ、さけと美羽と殴り合いを繰り広げる。
 「怖ええ……。本気になった女の戦いは予想以上に怖ええよ……!」
 パートナー達の本気の殴り合いに、ケイは戦慄するのであった。

 ブレイズ・カーマイクル(ぶれいず・かーまいくる)とパートナーの機晶姫ロージー・テレジア(ろーじー・てれじあ)は、連携を取り合いながら魔法で攻撃する。
 「蒼空学園の校長め……金儲けのために森を荒らすなど許さん! そんな女の傀儡など蹴散らしてくれるわ!  金の亡者の手先め! このブレイズ・カーマイクルが相手になってやる。さぁ、逃げるなら今のうちだぞ? ……無論逃がさんが」
 「貴方達の好きにはさせない……」
 ブレイズが派手に雷術を放ち、力がつきかけたところでロージーが支援する。
 「おのれ……しぶとい連中だ……ロージー!」
 「……チャージ開始」
 ロージーのSPリチャージにより、ブレイズは回復する。
 「来た……きたきたきたきたーー!みなぎってきたぞーーーー!!」
 ブレイズはさらに攻撃を仕掛ける。
 「フフハハハハ! 見るがいい。そして思い知れ! 僕の力を!!」
 エリオット・グライアス(えりおっと・ぐらいあす)とパートナーの機晶姫メリエル・ウェインレイド(めりえる・うぇいんれいど)は、魔法で愛美とマリエルを集中攻撃していた。
 「組織的に行動する集団と戦う場合、その中心人物および指揮官にあたる者を叩けばその集団は瓦解しやすい。すなわち、小谷 愛美とマリエル・デカトリースを倒せば、蒼空学園側に勝利できるはずだ」
 「楽してダイエットは女の子の夢だもんね! 絶対、ダイエット草を手に入れてやるんだから!」
 「ファイエル!(撃て!)」
 かけ声とともにエリオットが魔法を放ち、メリエルは金属バットをぶんぶん振り回す。 
 「きゃああああ!」
 「うわーん、こわいよぉぉぉ!」
 愛美とマリエルは必死で逃げ回る。
 剣崎 誠(けんざき・まこと)は、逆に愛美とマリエルに囮になってもらい、有利に戦おうと考えていた。
 「さすがにやばくなってきたな……俺の背後に回れ、小谷!」
 「たすけてえええ!」
 誠は、愛美をかばい、エリオットやメリエルの集中攻撃をかわそうとする。
 「くっ、ここは俺に任せて逃げろ!」
 「ええっ、でも、それじゃ誠君が……」
 「いいから早くしろ!」
 誠の言葉に、愛美とマリエルは戦線を離脱しようとする。
 しかし、そこに突然、木の上から影が迫った。
 「させません!」
 水神 樹(みなかみ・いつき)が木の上から奇襲をかけてきたのだ。
 「イルミンスールの平穏のため、頑張ります。お覚悟を……」
 武器は使わず、格闘技だけで戦う樹の横顔は、どことなく楽しそうであった。
 「おまえの相手は俺だ!」
 「あなたたちに好き勝手はさせません!」
 セイバーの誠とナイトの樹が激突する。
 愛美たちは、徐々に不利な状況に追い込まれていた。
 羽瀬川 セト(はせがわ・せと)も、箒で飛び回りながら、ゲリラ戦術で戦っていた。
 「よし、このまま決着をつけてしまいましょう!」
 セトは、「歓迎! 蒼学探索隊御一行様」と書いた横断幕を設置して、愛美たちを罠にはめようとしていたのだが、もはや、それどころではなくなっていた。

 高月 芳樹(たかつき・よしき)は、蒼空学園の生徒たちが怪我しないように無力化することを考えていた。
 パートナーのヴァルキリーアメリア・ストークス(あめりあ・すとーくす)は、芳樹の盾になるように動く。
 「蒼空学園の生徒に告ぐ! 即刻、退避してくれ! ……って、誰も聞いてないな。じゃあ、しかたがない。いくぞ、アメリア!」
 「わかったわ!」
 芳樹の合図で、アメリアはすばやく身をひるがえす。
 その瞬間、芳樹は地上で戦う蒼空学園の生徒達に、網を投げつけた。
 「うわああああ! な、なんのつもりだー!」
 「身動き、不能……」
 「くっ、味方の罠に巻き込まれてしまうとは、なんたる不覚!」
 「う、動けないよ、エリオットくん!?」
 ブレイズとロージー、エリオットとメリエルはイルミンスール生なのに、一緒にがんじがらめにされてしまった。
 「味方ごと攻撃してくるとは、なんて奴らだ!」
 「ちょっと、いいかげんにしてよ!」
 誠があわてて叫び、同じイルミンスール生に戦いに水を差された樹も、怒って声を荒げる。
 「あれ? こ、こんなはずじゃなかったんだが……」
 「ま、まあ、愛美さんやマリエルさんも捕まえられたし、結果オーライじゃない?」
 芳樹の肩を、アメリアがポンポン、と叩く。
 「さて戦争の始まりじゃ。野郎共いくぞぉぉぉ」
 セトのパートナーの魔女エレミア・ファフニール(えれみあ・ふぁふにーる)が、ギャザリングヘクスを飲んで強化した魔法で、攻撃しようとする。
 「ま、まってください、ミア! あんまり無茶は……」
 「アシッドミスト!!」
 セトの声など聞かず、エレミアは敵も味方も関係なく魔法を放つ。
 強化された酸の攻撃により、網にかけられていた愛美やマリエルたちは、服がボロボロになってしまった。
 「いやあああああ!? 見ないでええええ!!」
 「ちょ、ちょっと、なんでこうなるのぉぉぉ!?」
 ついでに網も溶けたので、身動き取れるようになったが、別の意味で動けなくなってしまった。
 「くそっ、この僕がなんでこんな目に……ロージー! グフッ!?」
 「ブレイズ、現在のワタシを見ることは拒否します。断固拒否します」
 ロージーはブレイズを思いっきりぶん殴り気絶させる。
 「だめええええ、エリオットくん、見ちゃだめええ!!」
 「や、やめろ、落ち着くんだメリエル!」
 メリエルも半泣きでエリオットをポカポカ殴る。
 「ぎゃああああああ!! この馬鹿ああああああ!!」
 「なっ、急に動きが速く……ぐわあっ!!」
 キレた樹は、たまたま目の前にいた誠を思いっきりぶっ飛ばした。
 「な、なんじゃ? 微妙に想定外のことが起こっているのう……。イルミンの生徒がたくさん被害にあっとるじゃないか」
 「やりすぎですよ、ミア……」
 自分の魔法の結果に呆然とするエレミアに、セトがため息をつく。
 セトは「歓迎! 蒼学探索隊御一行様」の横断幕を、地上に向かって投げる。
 女子生徒たちは必死で横断幕をやぶって、身体を隠そうとする。
 そのとき、突然シャッター音が鳴りひびいた。
 「え!?」
 愛美たちが驚いてふりむくと、譲葉 大和(ゆずりは・やまと)が端正な顔にいやらしい笑みを浮かべて、カメラを構えていた。
 「これは……瑞々しい桃かと思ったら、可愛らしい妖精さんではありませんか」
 大和は続けてシャッターを切る。
 「これは……双子のスイカかと思いきや、天より舞い降りた女神のごとき女性ですね」
 さらに、シャッターを切る。
 「ん? 何を呆けているのです? 私は美の探求者ですが、今はあなたの敵ですよ?」
 「ぎゃあああああああ!?」
 ようやく事態を理解した愛美とマリエルは、「蒼」とか「学」に細かく切断された横断幕で身体を覆いながら、大和を追い始める。
 「殴打による記憶と記録の消去、確定……」
 「待てー! この変態ーっ!!」
 「こ、殺す!!」
 ロージー、メリエル、樹も、同じイルミンスール側である大和に激昂し、追い始める。
 「ははははははは、捕まえてごらんなさーい!」
 大和は攻撃を受けながらも全力で逃走し、パートナーの待つ合流地点に向かう。
 大和のパートナー、剣の花嫁のラキシス・ファナティック(らきしす・ふぁなてぃっく)は、あきれつつもヒールをかける。
 「大和ちゃん、さすが変態でドMだね……」
 「ははははは、これでまた動けるようになりましたよっ」
 回復した大和は、さらに女子生徒たちを挑発しつつ、逃げていった。
 「まったく、わかりやすい場所でやられてよね? どうせ、後で回収するはめになるのはボクなんだから」
 ラキシスはため息をついた。
 こうして、蒼空学園チームもイルミンスールチームも森の中でバラバラになるのであった。