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準々決勝
第一試合
「第一試合! パラミタオオカブトムシのアーサー対、パラミタキイロミツバチの四郎さん!」
 ここまで来たからには負けられない……両者の意地がぶつかり合う。
「試合開始!」
 ヒュッ。
 素早い動きでアーサーの周囲を飛び回る四郎さん。
「アーサー落ち着くのよ、ディフェンスシフト!」
 アーサーの防御が上がる。ここまで勝ち進んできた、順当な作戦だ。
「こちらはパワーブレスだ!」
 四郎さんサイドは、これまでの「傷ついたらヒールで回復」作戦ではなく、ここは短期戦にするため、パワーブレスをかけてきた。
 いつも以上のパワーと堅さがぶつかり合い、ガァンガァンと大きな音が会場中に響いていた。
 どちらも体力が消耗してきた終盤。
 攻撃の手数を多くはなっていた四郎さんが、クリティカルヒットを命中させた!
 アーサーはたまらず、うずくまってしまった。
「勝者、パラミタキイロミツバチの四郎さん!」
 見事、四郎さんの決勝進出が決まった!


第二試合
「第二試合。パラミタオオクワガタの黄緑紫対、パラミタモンシロチョウの白戸!」
 立派なハサミのクワガタに、ひらひらと舞うモンシロチョウ。とてつもなく危なっかしそうに見える。
「試合開始!」
 宮下信子の夫である健二は、白戸にやさしく声をかけた。
「無理せんでええから、ダメだと思ったら帰っておいで」
 素早さが取り柄の白戸だったのだが、紫は想像以上に素早く動いた!
 ぶんっ!
 最初の一撃はぎりぎりで白戸がかわす。
 空中で方向転換した白戸は、すぐさま紫に羽カッター攻撃!
 紫の身体をかすめたが、紫はかまうことなく突進した!
 ぶわっ!
 強い風圧に耐えられなかった白戸は、ひらひらひらと白い布が舞い落ちるように場外へと落ちていった。
「勝者、黄緑紫!」
 試合後、健二は対戦相手の紫に向かって言った。
「ありがとなぁ。白戸の羽を傷つけないように、風で飛ばしてくれたんじゃな」
 健二は花道を去っていく紫に、いつまでも手を振っていた。


第三試合
「第三試合! パラミタトノサマバッタのぴょん三郎対、パラミタノコギリクワガタのデスペラード!」
 先ほどまでの疲れは感じられない。両者堂々と、ステージ中央に構えた。
「試合開始!」
 ぴょん三郎が素早く高く飛び上がり、落下の勢いでキックを繰り出す!
 だがパワーがない! デスペラードの堅い身体に弾かれた!
 続いてデスペラードの攻撃! 防御が低めのぴょん三郎は、ぐらっと身体をふらつかせた。
 すぐに身体を起こそうとするが、ダメージが大きく立ち上がれない。
 そこへデスペラードの追撃!
 ずしっ。
 当たり所が悪い音がした。クリティカルヒットだ!
 ぴょん三郎はその一撃に耐えることができず、ばったりと倒れ込んだ。
「勝者、 デスペラード!」
 勝敗は決した。だが観客席からは、勝者敗者関係なく、あたたかい拍手が降り注いでいた。


準決勝
第一試合
「いよいよ準決勝! この対戦にはエリザベート校長が指名した、招待選手に戦っていただきます」
 ざわざわと客席がざわめく。招待選手とはいったい誰なんだろう。
「選手入場! パラミタキイロミツバチの四郎さん対、パラミタキイロミツバチの三郎さん!」
 わああぁぁ! 客席から大きな歓声!
 伝説のミツバチ次郎さんの子・三郎さんだ!
 一ヶ月前、2メートルだった体長は、4メートルほどにまで成長している。
 セコンドに付くのは、パラ実の三郎さんお世話係。虹色のモヒカンがかっちりと決まっている。
「三郎さんはまだそんなに強くねぇ。身体も小せぇ。でも、もっと強くなって欲しくて、実戦で鍛えることいしたんだぜぇ!」
 それに対するは、やはりパラミタキイロミツバチの四郎さん。
 図らずも、ミツバチ同士の対決になったのだ!
「試合開始!」
 ぶんぶんぶんっ!
 双方、早い。
 たまにぶつかりあっている様子が見えるものの、細かい動きまで見て取ることができない。早すぎるのだ!
「黙って見守るしかないだろう。終わったときにどちらが立っているか……」
 ぶんぶん、ばちっ!
 ハチが飛ぶ音と、時々ぶつかる音。観客もセコンドも、その音が途切れる時を待った。
 ぶん……。
 羽音が途切れ、一匹が場外に落ちた。
 ……身体が小さい。三郎さんだ。
「勝者、四郎さん!」
「やっぱりまだダメだったか……」
 虹色モヒカンのお世話係は、そっと三郎さんをなでると、起きるのを手伝ってやった。
 ぶぅん……。
 四郎さんが心配そうに、三郎さんの近くに飛んできた。
 ぶんぶん、ぶんぶん。
 羽を鳴らしながら、2匹は会話をしているようだ。
 2匹の会話内容は誰も知ることができないが、少なくとも2匹は寄り添い、仲むつまじく見えた。


第二試合
「続きまして第二試合。パラミタオオクワガタの黄緑紫対、パラミタノコギリクワガタのデスペラード!」
 目的は婿探しだった紫。だが婿は見つからず、ここまでどんどん勝ち進んできている。
 対戦相手のデスペラードは大きなハサミで全力の威嚇をしている。
「試合開始!」
 まずは素早く先制攻撃をする紫。だが……。
 ガチ!
 デスペラードは、紫の攻撃を受け止めた!
 組み合ったままじりじりと力比べをする2匹。
 力に自信のない紫には不利だった。
 デスペラードは紫をひょいと持ち上げると、そのまま場外に落としてしまった!
「ああ、紫さんが……負けた」
 がっくりする大和。だが、紫の様子がなんだかおかしい。
 もじもじとデスペラードに近付き、そっとハサミを差し出したのだ。
『……』(お、お友達からお願いします!)
「まさか紫さん……恋を!?」
 そんな紫さんのハサミに、デスペラードも自らのハサミをそっと重ねた。
『……』(これからは俺から離れるなよ)
 2匹は寄り添い、幸せそうに気持ちを確かめ合った。
「わあ! 紫ちゃんに彼氏ができたぁ!」
「デスペラード、その子大事にしろよ!」
 観客からは祝福の拍手。クモのアララちゃんが紙吹雪のかわりに糸をまき散らし、スズムシのフォルテくんが祝いの曲を奏でた。
 ひととき決勝の舞台は、お祝いムードに包まれたのだった。