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狙われた学園~蒼空学園編~2話/全2話

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狙われた学園~蒼空学園編~2話/全2話

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 その瞬間、振り返りもせずに季保は後ろ足を蹴り上げ、そのかかとが邦彦の顎をかすめた。しかし、邦彦はそれをとっさによけ、銃を季保に突きつける。
「悪いがその手は喰わんよ」
「あら、これだけじゃないのよ」
 季保は傷ついた側の手首をスナップさせると、細い皮の鞭が飛び出し、邦彦の手にある銃をたたき落としてしまう。邦彦は銃を拾い上げるが、時既に遅し。
「私も部下を見捨てるわけにはいかないの。さようなら…あなたとは、またお会いしたいものだわ」
 季保はそういうと、上空で旋回させていた小型飛行艇に素早く飛び乗って空に舞いあがる。邦彦は銃を構えて、季保の小型飛行艇目掛けて引き金を引いたが、季保は上手く交わして去ってしまう。
「任務完遂とはいかなかったか…しかし、なんて女だ」
 邦彦は無表情にそう吐き捨てた。
 
 
第4章



 紀とリリーは蒼空学園本部に連行するため、沼地側に手足を縛られた状態で捕縛されていた。マーゼンや他の生徒たちは少し離れたところで、蒼空学園本部と連絡を取っている。
 そこに季保の指示によって動いていた鏖殺寺院の構成員たちが集結し、突如姿を現わしたのだ。
「何事だ!」
 更に小型飛行艇から飛び降りてきた季保が見張りに立っていた生徒たちをなぎ倒し、紀とリリーの縄を小型ナイフで切り裂いてしまう。
「季保姐さん!」
「ほんとに世話が焼ける! バカどもが!」
「すいません、姐さん!」
「私たちは三人揃って『鬼太刀会』だ。どんなにあんたたちがバカでも、見捨てるわけにはいかないんだよ」
 処方された薬のせいか、まだリリーも紀もフラフラとしていたが、何とか立ち上がった。
 そこにメニエス・レイン(めにえす・れいん)が現れた。
「麗しい結束力、理想的な上司と部下の姿ね。それにしても、懲りない奴らだわね。…お仕置きが必要かしら」
「おだまり、この吸血鬼が」
 季保が鞭をしならせ、メニエス目掛けてピシィっと振るってくる。
 それをミストラル・フォーセット(みすとらる・ふぉーせっと)が氷術を使ってはねのけると、ミストラルを守るかのように立ちふさがった。
「メニエス様、お下がり下さい!」
「おねーちゃん、ミストラル、あたしに任せて」
 被虐趣味のあるロザリアス・レミーナ(ろざりあす・れみーな)が再度、季保の鞭をその体で受け止めると、後方にいたメニエスが光術、火術を駆使して季保に襲いかかろうとする。
「危ない!姐さん!」
 リリーがまだふらつく体で、季保を守るためにメニエスの攻撃を防ぐ。
「リリー!」
 紀が季保から受け取った爆弾をメニエスたちに向かって投げつけると、ロザリアスとミストラルが盾となって爆破からメニエスを守った。
「ロザ!」
 メニエスは傷ついたロザリアスにヒールをかけ、回復させた。
 次の瞬間、季保たちに次々と矢が射かけられる。
 蒼空学園のナンパ師、女性と見るやナンパせずにはいられない、ナンパこそが我が使命、鈴木 周(すずき・しゅう)が援護射撃に弓を使ったのだ。季保たちの部下は、ほとんどが射貫かれてしまい動けない。
「俺は鈴木周、こっちは相方のレミ。どうせ目的は一緒なんだろ? 援護するぜ、任せてくれよなっ! で、終わったらお茶でもどう?」
 と、メニエスの肩を抱こうとするが、メニエスの余りに冷たい視線にぞっとして、周は伸ばした腕をぶんぶんと体操するかのように振りまわして誤魔化した。
「あたしは蒼空学園が大嫌いなのよ…」
 メニエスは小さく呟くと、さらに周は腕を振りまわす。
「周くん!! それは、協力の要請じゃないよね? うん、ちょっと真面目だと思ったらまたナンパなんだね? あとできちんとお話しようね!?」
 パートナーのレミ・フラットパイン(れみ・ふらっとぱいん)に叱られ、周はしょんぼりとしてしまう。
「せっかく手に入れたばかりの弓で活躍したのに…レミに叱られちゃったぜ…とほほ」
「羽根 季保! 覚悟しろ!」
 樹月 刀真(きづき・とうま)がカルスノウトを手に季保の前に立ちはだかった。
「姐さんには手を出させへんで!」
 リリーが季保を守るべく、刀真と季保の間に立ちふさがったが、漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)がシャープシューターでリリーを狙撃する。
「刀真の邪魔はさせないわよ」
 リリーはとっさの判断で季保を抱きかかえ、横っ飛びで月夜の攻撃を避けた。そこに刀真がたたみかけるようにして、季保にカルスノウトで飛びかかってくる。
「貰った!」
「ちぃ!」
 季保は背中に背負っていた太刀をすらり、と抜くと、リリーを突き飛ばし、刀真と真っ向から剣を交える。刀真は男女の力の差を利用してプレッシャーをかけようとするが、季保の力は相当なものだった。
 そこに容赦なく、今度はメニエスが刀真ごとファイアストームを浴びせようとするが、刀真のパートナー玉藻 前(たまもの・まえ)が急に姿を現し、メニエスを妨害する。
「アレは我のモノだ、傷付けるなら覚悟しろ」
「ちぃ…九尾の化け物が!」
「メニエス様になにをする!」
 ミストラルは玉藻 前からメニエスを守ろうと、メニエスの前に立った。
 そこに次々と、紀が爆弾を投げつけ、また、リリーが怪力で地震攻撃を行おうとする。
「容赦はしませんぞ!『鬼太刀会』の威力、見るがよい」
「やったるで!」
「させるか!」