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狙われた学園~蒼空学園編~2話/全2話

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狙われた学園~蒼空学園編~2話/全2話

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 一方、紀とリリーは生徒たちの活躍により、すっかりスタミナを使い果たしたところをクリスティーナ・カンパニーレ(くりすてぃーな・かんぱにーれ)のランス攻撃によって最後のダメージを食らい、アクィラ・グラッツィアーニ(あくぃら・ぐらっつぃあーに)アカリ・ゴッテスキュステ(あかり・ごってすきゅすて)に取り押さえられてしまったのだ。
 さっそく、マーゼンたちによる尋問が始まった。
「うう、私たちになにをした…」
 うつろな目をする紀に黒 金烏(こく・きんう)が冷たい視線を投げかける。
「なに、少々、鎮静剤に似た薬物を処方させてもらっただけです。多量摂取してしまうと、危険な可能性もありますが、なに、自分が付いているので命には問題がありません。そのうち、色んなことを喋りたくなるでしょうが」
「く、くそ…」
「年貢の納め時だ、ウィリアム、紀。教導団に対して仕掛けた貴様らの陰謀、残らず白状してもらうぞ。クックックッ、半端な尋問では済まさんからな、覚悟しておけよッ!」
 マーゼンが執念深さを秘めた笑い声を漏らすと、アクィラがアサルトカービンを紀とリリーに突きつける。
「…腕と脚が残っている限り、脱走する可能性はゼロじゃない。捕虜虐待? 違うね、これは『葉・元士官』に対する教導団の内部統制上の処分だよ。俺たちを出し抜いたニセの葉士官のね」
「アクィラさん!それはもったいないですぅ! まずは指の関節を一本ずつ!」
 アクィラを止めようともせず、我に返っていないクリスティーナが言い放つ。
「あんたたち、兵士が私怨で動くようになったら、それはただのゴロツキよ! 目を覚まして、私怨は公憤に昇華させなさい!」
 アカリが、そんな二人を押しとどめる。
「とりあえず、薬が効いてきたようですな。さあ、吐いて貰おうか。どうやって我々の情報を盗んだのだ?」
 さすがに紀は口が堅かったが、薬に耐性がなかったのか、リリーがすらすらと喋りはじめた。
「お前たちの情報源になっとった奴がおるやろ…? 行方不明になった奴や…ワシらはあいつを捕まえて、今、お前らがやっているみたいに自白剤を使って、全部吐かせたんや…」
「情報提供者は無事か?」
「教導団の近くにあるワシらのアジトに、監禁しとるさかいにな…」
 マーゼンは葉に連絡するよう、周囲の者に指示する。
「しかし判らんの…一見脳味噌筋肉にしか見えんおぬしが、どうやって教導団のセキュリティを突破できたのじゃ? 監視哨の暴走はどうやってやったのじゃ?」
 青が問い詰める。
「ワシは確かに頭はそんなにエエ出来ではないさかい。そやけど、この紀のオッサンは、コンピュータにも詳しゅうてな…情報提供者に送られてくるデータを逆手にとって、クラッキングっちゅうのをしたんじゃ…紀のオッサンの腕はそらあ、もう、凄いもんで、セキュリティホールっちゅうやつに入っても、入ったあともわからんようにしてしまうんや…それに、このオッサンだけやあらへん。鏖殺寺院にはそれぞれの分野のエキスパートっちゅうやつがおるさかいにな、ぐふふ…」
「ドラゴニュートの子供を攫ったのはなぜだ?」
「…鏖殺寺院の一部で、ドラゴニュートの子供の組織を使い、新種のドラゴン兵器を作る、そういう計画が持ち上がっとるんじゃ…その兵器があれば、パラミタ建国も阻止することができるさかいにな…」
「何という非道なことを…やっぱり指の一本でも折るべきか?」
 アクィラとクリスティーナ、そしてアカリも激しい怒りを隠せない。
「それにドラゴニュートの子供が攫われたいうたら、親が怒り狂って飛んでくるさかいにな、それを利用して蒼空学園を潰すつもりやったんや」
「ペラペラ喋るんじゃありません、リリー!」
「そうか、非常に有益な話をありがとう。君たちは本部に送り、葉士官と自分たちで更に引き続いて尋問させて貰う。それと尋問のエキスパート、皇甫 嵩がいるぞ。楽しみに待つが良い」
 マーゼンの声が冷たくその場に響き渡った。


☆  ☆  ☆


 セシリア・ファフレータ(せしりあ・ふぁふれーた)はドラゴニュートの赤ちゃんを救出した『機甲戦女』たちを追いかけようとしたリリーたちの部下の阻止に当たった。
「鏖殺寺院、この私が来たからにはこれ以上好き勝手はさせぬぞえ!大人しく縛に付くんじゃ!」
 小さい体ながらも勇敢なセシリアは、臆することなく部下たちの前に立ちはだかる。
「いけませんわ、セシリア様!」
 とっさのことに護衛に付いていたリザイア・ルーラー(りざいあ・るーらー)も慌ててしまう。その次の瞬間だった。
「この小娘が!」
「な、何をするんじゃ!」
 追い詰められた部下たちが、セシリアに襲いかかって人質に取ってしまったのだ。
「ぐぐ…なんて卑怯な奴らめじゃ」
「お前を盾にして、俺たちは逃げ延びてやる!」
「そうはいかないわよ!」
 不意に背後から声がする。
 隠れ身を使ったシャミア・ラビアータ(しゃみあ・らびあーた)がリリーたちの部下の背後に回り込んでいたのだ。
 シャミアは自分のパートナー、リザイアにセシリアを任せ、自分はローグとしての能力を活かし、先に沼地へと進み、単独での偵察に当たっていたのだった。
 驚く部下たちが振り返る前にシャミアは部下の足を蹴り、なぎ払う。
「ローグを舐めて貰っちゃこまるのよね!」
 シャミアがリターニングダガーで部下の一人を倒すと、その隙にセシリアは自分を羽交い締めにしていた部下に肘鉄を食らわせ、逃げ出す。
「ご無事ですか、セシリアさん」
 豊かな胸を揺らして、色っぽいリザイアがセシリアの元へ駆けつける。
「ありがとう、大丈夫じゃ」
「くそう…」
 残った部下たちも、セシリアたちを前にしてたじたじになっている。
「許しませんわ、このような暴虐」
 リザイアは、ランスのレンジ攻撃をしながら、チェインスマイトで敵に二体攻撃をしかける。
 セシリアは、雷術で攻撃をしかけ、パートナー、ファルチェ・レクレラージュ(ふぁるちぇ・れくれらーじゅ)がセシリアにSPリチャージを行った。
「我が身はセシリア様の剣にして盾…。それに、ドラゴニュートの赤ちゃんが、逃げ切れるまで、負けるわけにはいきませんわ…!」
 美しい金髪をたなびかせながら、ファルチェはそう呟く。
 四人の活躍により、残っていたリリーの部下たちも殲滅状態に陥ってしまった。