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暗き森の泣き声(第2回/全2回)

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暗き森の泣き声(第2回/全2回)

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第5章 病人のための薬膳料理

-AM9:30-

「そろそろ食材が届く頃かしら?」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)は窓の外を眺めながら、食材を持ってくる生徒たちをひよこのエプロンをつけて家庭科室で待っていた。
「帰ってきたみたいだぞ」
 正門を通って校舎へ入ってくる生徒たちの姿を、ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が見つける。
「他の調味料の準備も整ったな」
 スイーツに使う材料の分量を計量カップなどに入れ、カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)はトレイの上に並べる。
「マンドラゴラはこの前、薬用に採ってきた残りがあるから・・・それで足りるわね」
「採ってきたわよ」
 アピスたちが食材の入ったカゴを抱えて、家庭科室へ入っていく。
「この辺に置いておけばいいのでござろうか」
 パラミタ人参を入れたカゴを床に置いた。
「たぶんこれで全部揃っていると思うんだが」
 星次郎は緋桜 ケイ(ひおう・けい)のために採ってきた食材のカゴを、テーブルの上に置いた。
「あぁ、足りている。ありがとうな」
「美味しくできるといいな。俺はここで少し休んでいるか」
 椅子の上に座り一息ついた。
「わらわが野菜を洗おう」
 悠久ノ カナタ(とわの・かなた)はカゴからネギを取り、流し台で泥を洗い流す。
「ボクは高級感のある野菜料理にしようかな」
 食材の入ったカゴの中を覗き込み、真口 悠希(まぐち・ゆき)は野菜を選ぶ。
「カナちゃん頼まれたやつ持ってきたわよ」
「ありがとう縁姉さん。よぉおし、頑張って作るわよ♪」
 獲れたての食材を見て、歌菜は嬉しそうに笑う。
「あっ静香さん!私たちと一緒に、大切な人の為の料理を作りませんか?静香さんの作った物が、一番元気を取り戻してもらえると思うのよ」
「うーん・・・上手に作れるか自信がないよ」
 自分が手を加えて失敗しないかと思い、桜井 静香(さくらい・しずか)は不安そうな顔をする。
「そうなんだ・・・あっ!じゃあ野菜の皮むきを手伝って」
「―・・・それでよければ」
「私も近くで一緒に作っていいですか?」
 高務 野々(たかつかさ・のの)がルカルカたちに声をかける。
「えぇいいわよ」
「静香様、私の料理も手伝ってくれませんか?」
「出来る範囲ならいいよ」
「向こう側が空いているわ!」
 ルカルカは料理に必要な分の食材をカゴの中から取り、テーブルの上に置いた。



「さて・・・まずは野菜についている泥を、水で洗い流しましょう」
 佐々木 真彦(ささき・まさひこ)はハスの葉をきれいに洗う。
「次はパラミラ人参や竹の子を1センチ角に・・・ネギをみじん切りにします」
 まな板の上でトントンと野菜を切っていく。
 ハスの葉が柔らかくなるようにぬるま湯につけ、油を入れたフライパンで野菜と肉を炒め、食材に火が通ったらもち米と醤油やチキンスープそして塩を加える。
 水気がなくなったら次に、蒸し器にハスの葉を敷き詰め、炒めた食材をその中に入れて蒸す。
「私はポタージュにしようかしら」
 フライパンにバターを溶かし野菜を炒め、関口 文乃(せきぐち・ふみの)はキノコや鳥の骨などをミキサーにかけていた。
 ボールの中へ裏ごしをして、鍋に入れてあくを取りコンソメのキューブと生クリーム加える。
「味見はしましたか?」
「―・・・味見?そんなのしなくても大丈夫よ!!それに味見なんてしたら減っちゃうでしょ」
「料理というのは、ちゃんと味見しないと・・・」
「何よ!ワタシの料理が美味しくないっていうの?」
 頬を膨らませて文乃は真彦に火術を撃つふりをする。
「い・・・いや、そういうわけではありませんよ」
 術を使われたらたまらないと、真彦は両手を交差させて振る。
「それじゃあオレは香草焼でも作るか」
 マーク・ヴァーリイ(まーく・う゛ぁーりい)は冷蔵庫の中を見て、手頃な肉がないか探す。
「少しだけ残っていたが・・・足りるか?」
 冷蔵庫から鶏肉を出してトレイの中にいれ、薬草を敷き詰めてオーブンに入れる。
「焦げないように注意しなきゃ・・・」
 椅子の上に座り焦げないように眺める。



「パラミタ人参は地球の人参とどうちがうんだ?」
 早川 呼雪(はやかわ・こゆき)はカゴの中から人参を探す。
「それでござるよ」
 ゲッコーが黄色と橙色のマーブルカラーの丸い野菜を手渡した。
「凄い色だが・・・毒野菜じゃないんだな」
 水で洗い軽く火を通して一口食べてみると、地球の人参よりも人参の香が強く甘い味がする。
「見た目はやばそうだが結構いけるんだな。さて鶏肉は残っているだろうか」
 まだ肉が残っているか冷蔵庫の中を見る。
「―・・・ギリギリの量だな。まぁ仕方がないか」
 だし汁にシイタケの戻し汁、調味料として酒や醤油、味醂と砂糖を混ぜて鍋で煮立たせていく。
 鶏肉を包丁で一口大に切り、鍋に入れてひと煮立ちさせる。
「なんとか上手くできそうだな」
 呼雪はスプーンですくった汁を小皿に移して味見してみた。
「(カエルの解剖なら得意なんだけどなぁ)」
 豆腐ハンバーグを作ろうと、ファル・サラーム(ふぁる・さらーむ)は悪戦苦闘してした。
「料理ですか申し訳ありませんが、その分野についてはインプットされていません」
 ユニコルノ・ディセッテ(ゆにこるの・でぃせって)は料理本を開き作り方を探す。
「まずはレンコンを摩り下ろしましょうか」
 摩り下ろし器を使い、猛スピードでレンコンを摩り下ろしていく。
「危うく指まで摩ってしまうところでした・・・」
「混ぜるだけならボクにもできるかな?」
 ファルが摩り下ろしたレンコンと豆腐や挽肉等と混ぜる。
 2人で手頃な大きさにしていく。
「次はフライパンで焼くんだよね」
 油を入れて豆腐ハンバーグを焼き始める。
「―・・・火が強くありませんか?」
「えっ?あわわ!」
「何やっているんだ!」
 駆けつけた呼雪が慌ててコンロの火を止めた。
「こんな強火で焼くやつがあるか。これくらいの中火で焼くんだ」
「ギリギリ焦げなかったみたいだけど・・・」
「一応・・・食べられる感じになりましたか」
 フライ返しで裏面を焼き、お皿に移した。



「フルコースといっても料理数の少ない方だし、難易度も低いのにしたから・・・落ち着いて作れば大丈夫だ」
「まずどうするの?」
 五十嵐 理沙(いがらし・りさ)がダリルに作り方を訊く。
「まずレアチーズケーキに使うバターを量っておくんだ。そしてボールの中へゼラチンと水を入れてくれ」
「分かりましたわ」
 セレスティア・エンジュ(せれすてぃあ・えんじゅ)はバターの分量を計り、皿の上に乗せる。
「他になにかやることはないか?」
 早くもカルキノスがゴボウのスナックチップスを完成させた。
「それじゃあ・・・ビスケットを砕いてバターを混ぜて、丸いケーキ型の底に敷きつめてくれ」
「あぁ・・・こうか?」
 ダリルの説明通りに、カルキノスはケーキ型の底に敷きつめる。
「次はどうすればいいのですの?」
「鍋に生クリームとふやかしたゼラチン、それとグラニュー糖を加えて弱火でゼラチンが溶けるまで混ぜるんだ」
「こうして聞いてると簡単に出来るね」
 理沙は楽しそうにヘラで混ぜる。
「パウンドケーキの生地できたわよ。静香さんが人参の皮を剥くの手伝ってくれたのよ」
 パウンド型に流し込んだ生地を、ルカルカがダリルに見せる。
「なかなかいい出来じゃないか」
「あとは上手く焼けるといいんだけど」
 オーブンの中に入れてタイマーを40分にセットして焼き始めた。
「そっちはレアチーズケーキね・・・ミントはセレンスたちが採ってきてくれたのがあるわね」
「あぁ、そうだな」
「たしかこの辺に・・・あったわ」
 すぐに使えるように、ルカルカはミントを小皿の上に置いた。