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列車からお宝を盗み出せ!

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9 最後尾車両の戦い

 切り離された列車の最後尾には、刺青を晒した大草義純がいた。
 スナイパーライフルを構え連射している。
「勝手に人のもんをとろうっちゅうんはのぅ、筋が通らんじゃろうが!」
 動くものあれば、やたらめったら撃っている。
 大鋸と共に行動していたゴザルザ ゲッコー(ござるざ・げっこー)が暗闇から義純に向かって走ってくる。
 義純のスナイパーライフルを避けて、車両下に潜り込むゴザルザ。
 室内には、他に4,5名の手下がいた。
「下だ!撃て!」
 義純の言葉に呼応して、床下にむかって一斉にライフルを連射する。

 そのとき小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が小型飛行艇でやってくる。
 列車の上に降り立つと、光条兵器で天井に穴を開ける。
 下を向いていた手下が一斉に上を見る。
 上からは、美羽が投げ込んだ煙幕が振ってくる。
 ひるむ一同。
 そのすきに、ゴザルザが下から義純を狙う。
 義純の足元を、ゴザルザのスプレーショットが狙う。
「おんどりゃぁ」
 掛け声と共に列車から飛び降りる義純、ライフルを捨て匕首を構えるが、足を負傷して動くことが出来ない。

 天井から飛び降りた美羽はミニスカートから飛び出た自慢の足で、ガラスを蹴破る。
「ダーちゃん、見ててね」
 美羽は、換気のために窓から顔をだす手下を超ミニスカートの悩殺キックで外に放り出す。
 駆け寄る大鋸、飛んできた手下を背後に投げ捨てる。

「ワタシも負けないですぅ」
 空飛ぶ箒にのった晃月 蒼(あきつき・あお)は、手にランスをもって列車に突入していく。
 美羽が放り投げた手下の洋服をランスで引っ掛けて、後ろに控えているレベッカ・ウォレス(れべっか・うぉれす)のパートナー、明智 ミツ子(あけち・みつこ)の元に放り投げる。
 ミツ子は手早く手下を縛り上げる。



 列車から飛び降り逃げ出そうとする手下がいた。
 すかさず待機していたレベッカ・ウォレスが、スナイパーライフルで狙撃する。
 正確な狙撃は、手下の太ももを打ち抜いている。
 横にいるアリシア・スウィーニー(ありしあ・すうぃーにー)は、双眼鏡を手にしている。
「レベッカ、右ですわ」
 今度は右に標的を合わせるレベッカ。
 先ほど太ももを打ち抜かれた男は、地面でのた打ち回っている。
 ふと顔を上げると、男の前に明智 ミツ子の顔があった。明智光秀の分霊であるミツ子は、隠れ身で隠れ潜みつつ接近していたのだ。ハンドガンで手下を気絶させる。
 守護天使のオーコ・スパンク(おーこ・すぱんく)は、列車から逃げ出そうとする手下が、レベッカの刺客に入らぬよう援護していた。
 暗闇を逃げる手下の上に松明を落とし目印に、レベッカが狙撃しやすいよう、援護している。
 レベッカたち4人の後ろには、組織の手下が縛り上げられ転がされている。
 傷のひどいものには、アリシアがヒールで治療をしていた。



 「うはははははは」
 車両下から転がり出たゴザルザは、笑いながら前方車両に走っていった。

 岩陰に隠れていた峰谷 恵(みねたに・けい)エーファ・フトゥヌシエル(えーふぁ・ふとぅぬしえる)は、望遠レンズを備えたビデオカメラを木箱に隠し、襲撃が写るようにセットしている。
「よし、始めるよ」
 二人は、この現場でヒールを施しお金儲けを企んでいる。

 列車から男が飛び出し、こちらに逃げてくる。片手が血だらけだ。
 そっと近寄る恵、自らセットしたビデオカメラに写らないよう最新の注意をしている。イルミンスール魔法学校の生徒だと分かるものは一切身につけていない。

「怪我した人はよっといでー。ヒール一回20Gだよ」
 キッと睨む男。
 手下は傷のない左手で、恵の喉を掴む。
「命は助けてやる。その代わり、この傷を治せ」
「うっ!」
 悲鳴を上げたのは、男のほうだ。
 エーファが、光条兵器を男の喉元に突きつけている。
「ケイから手を離しなさい」
 男の腕が恵から離れる。そのまま気絶する男。
「ケイ、大丈夫ですか」
「うん、仕事は始まったばかりだもんね、今度はもっと弱ってる人にしよう」
 よろよろと歩いてくる男がいる。
 義純だ。足は血が流れている。
「よし」
「怪我した人はよっといでー。ヒール一回20Gだよ」
 恵は、今度は慎重に義純に近づいていった。


 カジノの客は、襲撃を知り、我先に逃げようと大騒ぎになっている。
 その隙を見て、列車からヴェルチェとクリスティが飛び出してきた
 カジノでの接客衣装のままなので、ほぼ半裸のような装いだ。
 破壊尽くされた最終車両を覗きみて、愕然となるヴェルチェ。
「ここに財宝が集められてるはずなのよ。アグゥーニンがそう約束したのよ」
 しかし、最終車両にあるのは、発掘に必要な重機ばかりだった。
「やられたわ」
 ヴェルチェとクリスティは顔を見合わせている。
「ですが、これ」
 クリスティは光り輝く鉱物を持っている。
「先ほどのお客様が持ってましたの、お逃げになるとき慌てて忘れたようですわ」
「まあ、今回の報酬としては十分ね」
 輝く石をポンと胸の谷間にしまうヴェルチェ。
 そのまま闇の中に消えてゆく。


10 前から4両目の戦い

 がたん。
 音がする。
 切縞が二つ目の車両の連結を外している音だ。
 連結切断作業が行われているのにも関わらず車両は、静まり返っている。

 ラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)が警戒しつつ、アーミーショットガンを手にドアに手を掛け、走り続ける車両に飛び乗る。
 アイン・ディスガイス(あいん・でぃすがいす)は後方支援だ。

 反対側の窓が蹴破られる。身構えるラルク。
 朝霧 垂(あさぎり・しづり)ライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)がバイクから飛び移ってくる。里見 伏姫(さとみ・ふせひめ)はそのまま、列車と並行してバイクを走らせている。
 ラルクの姿を捉え、そのまま転がるように床に伏せる垂、光条兵器の鞭を身構える。
「敵じゃねえ」
 銃を構えたまま、ラルクが呟く。
「敵は、ここだぜ」
 座席を足で蹴飛ばすアイン、座席したから銃を構えた手下がラルクの頭を狙っている。
「ヴンッ」
 音がして銃が落ちた。手下が倒れる。
 川村 まりあ(かわむら・ )が窓から、手下の上に飛び降りてくる。
 手下はまりあの体の下で気絶している。
「ラルク先輩、大丈夫っ!」
 ラルクは大きく頷く。
「おっと…少しだけぶっ飛ばさせてもらうぜ?」
 ドラゴンアーツで隠れていた座席をぶっ飛ばなす。
「まりあ、逃げるぞ」
 アインが、まりあを抱える。
「あっ、あったよ!」
 立ち止まるまりあ、輝く鉱物を手下の首筋に発見した。
 触ろうとするまりあを制して、アインが鉱物に触る。
「罠かもしれん、俺が取る」
「まて、アイン」
 教導団の垂が、アインを制する。
「その鉱物は、ここで取れたものじゃない。先週、空京で盗まれた盗品だ」
 リストで確認した品だ。
「対して価値のあるものじゃない」
 鉱物をつなぐ鎖を大鋸まで断ち切る垂。
 その瞬間、手下が爆発する。
 危機一髪、ライゼの光条兵器「大傘」が爆風を受け流した。

 それが合図のように、わらわらと座席から敵が這い出てくる。
「がらっ」
 がたん。
 切縞が2両目の切断に成功したらしい。
 列車が止まる。
 それぞれが戦闘態勢をとる。

「行くぞっ!」
 外から大鋸の声が聞こえる。大鋸は、正面突破だ。
 チェーンソーを掲げて列車に乗り込んでゆく。
 
 火を逃れた手下が、外に飛び出してくる。
 大鋸は、彼らに向かって、
「おぉ・・・・・・・・・・・!」と見境なく走ってゆく。
 天槻 真士(あまつき・まこと)は大鋸を援護している。
「ああ、出来れば無傷で帰れますように」
 セラフィス・ローレンティア(せらふぃす・ろーれんてぃあ)は、禁猟区を使用してパートナーの真士を援護しているが、真士のことを思って祈るような気持ちだ。
「本当、面倒なんで、出来れば怪我しねーで下さい」
 レヴィス・ストレチア・レギーネ(れう゛ぃす・すとれちあれぎーね)は、自分のスキルであるヒールを真士に使う機会がないよう祈っている。
「テンション上がりすぎです」
 真士は大鋸と共に、敵の中に飛び込んでいる。


 羽高 魅世瑠とフローレンス・モントゴメリーの上に、大きな網が投げられた。
 女王の加護を使っている魅世瑠は、網を難なく除ける。
「ちきしょー、こいつら攫って売り飛ばしてやる!」
 頭から血を流した手下たちが投げたものだ。
 網をかけられなかったラズ・ヴィシャは怒っている。
「ラズ、みんなといっしょ、ラズ、1人きらい・・・ラズ、なかま守る!」
 ランスを持つと、手下たちに突き刺す。
「身ぐるみひん剥いてやる!」
 魅世瑠の一言で、手下たちはパンツ一枚の姿にされ、縄でぐるぐる巻きにされた。
「わんちゃ…じゃねぇ、キング様、大丈夫?」
「おうっ!」
 大鋸は、残った敵を真士に任せて、魅世瑠の元へやってくる。
「あの女、教導団なんだぜぇ」
 笑いながら敵を蹴散らしている真士を見やって、大鋸が呟く。
「いろんなやつ、いるんだね」
 話す魅世瑠の足元に、真士がやっつけた手下が転がってくる。
「とにかくお宝だっ!シー、いくぜっ!」
 シーは戦っていた手下を放り投げると、大鋸と共に列車を追いかける。


 桐生 円は、オリヴィアと共にミネルバの両手をがっちり掴んでいた。
「なんで、戦いたいよ〜。戦っていい運動するんだよぉ〜」
「まだ、だわぁ〜。もう少しお待ちなさいなぁ」
 三人は、大鋸の後には続かず、そっと闇に消えた。