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列車からお宝を盗み出せ!

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11 真ん中の車両・つまりカジノ場の戦い

 カジノ場では、Aが客を逃がすことにやっきとなっていた。
 といっても、今日の襲撃は予期されていた。
 それほどの上客が乗っているわけではない。
 客はアグゥーニンの選別した「どちらでもいい客」だ。しかし、見殺しにしては先々の評判に関わる。
 Aは「必死」に客を逃がさなければならない。
 カーシュは客の1人を乗せてバイクで逃走する。といってもどこにいってもいいのだ。空京につれて行く義理はない。
「後で、大鋸のところに連れて行ってみるか」
 ぼそっと呟いている。

 レンも目星をつけていた客を乗せて、バイクを走らせている。
「まあ、送り届けてやるよ」
 組織の全容がつかめるまでは、アグゥーニンに味方だと思わせておいたほうがいい。


 外から狙撃するレベッカにも逃げてゆく複数のバイクが見えている。
「やつら、逃がさないョ」
 アリシアが双眼鏡で確認する。
「なんだか知ってる人もいるようですわ」
「なんでもいいョ、撃つよ」
 レベッカがバイクに標準を合わせる。
 スパイナーライフルが火を噴く。
 一台のバイクが横転する。

 カーシュとレンが乗ったバイクは、狙撃者を逃れた。
 暗闇に消えてゆく。

 逃げるバイク、その上になにやら浮かぶものがある。
 アリシアが、空中に漂う2本の箒を双眼鏡で確認する。
「あれは誰でしょう」
 レベッカがライフルを構える。
「味方かもしれないしけど・・・」
レベッカが箒めがけて、威嚇の一発を打つ。


 天音とブルーズもAに避難用のバイクで逃げるよう指示される。運転は手下がするという。
「どこに連れて行かれるのやら」
「勝手消えた方が安全だ」
 二人は、隠れ身を使って姿を消す。すきをみて列車から飛び降りるつもりだ。

 駿河 北斗(するが・ほくと)は両手剣の光条兵器を持って、車内を走り続けてきた。
 邪魔するものは、勿論切りつけている。
「オラオラ邪魔だぁっ!」
 北斗が叫んでいる。
 ベルフェンティータ・フォン・ミストリカ(べるふぇんてぃーた・ふぉんみすとりか)は、北斗に寄り添う様に右隣に立ち、近接戦闘はホーリーメイスでごんっとブッ叩いている。儚げな外見と裏腹に、動作に迷いはない。
 クリムリッテ・フォン・ミストリカ(くりむりって・ふぉんみすとりか)は、北斗に寄り添う様に左隣の位置をキープし、列車内
 あちこちに、火術をばら撒いている。外見はやはり可憐な少女だが、齢150歳の魔女だ。
「あっはっはっは、ほうら燃えろ燃えろー!もっともっと燃えなきゃつまんないでしょう!炎の魔女様のお通りだよっ!あはははははは!」
 一番に2両目に乗り込んだ三人は、戦うことなく走りぬけることが出来た。
 人の多い3両目に入っても、暴れ放題である。
 クリムリッテの足元がすくわれた。
 比賀 一(ひが・はじめ)が足を出したのだ。
「皆さんご到着ーってか、随分お待ちしましたよ」
「誰よ、あなた?」
 クリムリッテが足を止める。
「誰って・・・用心棒?ま、あんたらの敵って事になるかね。」
 一が、拳銃の銃身でクリムリッテの後頭部をガツンっと叩く。
 崩れ落ちるクリムリッテ。
「女にひどいぞ」
 ハーヴェイン・アウグスト(はーべいん・あうぐすと)は、北斗に対峙する。
 ベルフェンティータが北斗の前に出る。
 ハーヴェインが突き出した拳銃を、ホーリーメイスで叩くベルフェンティータ。
「あーもう・・・!強盗とか警備とかどっちもばっかじゃないの!?とにかく私はあの猪突猛進お馬鹿が何とか生きて帰れる様に・・・守るわ。北斗、先にいって!」
「わかった!」
 前に前に走っていく北斗。
 ハーヴェインが呆れた様子で、
「俺にとっちゃ敵も味方も同じだ。お前さん、自分のしてること分かってるのかい?」
 顔を見やって、
「ここで盗ったものを警察とかに届け出るんならともかく自分の利益のためだけに使うってのは、そりゃ組織のしてることと変わらねえんじゃ無いのかねぇ」
 ベルフェンティータがキッとハーヴェインを睨む。
 一が、拳銃を突きつけたまま、ハーヴェインの隣に移動する。
 どんどん侵入者が増えている。
「敵も味方もわかんねぇよ、派手に暴れるか?」
「いや、撤退だ!こんな場所で怪我しちゃつまんねぇ」
 後ろから、銃弾の音がする。錯乱した手下が乱射している。
 振り返って、銃を撃つ一。
「あまり無駄撃ちさせんなよ、高いんだから・・・・」
「よし、逃げるぞ」
「また会おうな」
 クリムリッテたちを残したまま、一とハーヴェインは車両の外に飛び降りる。


 夜薙 綾香(やなぎ・あやか)は、隠れ身を使って、隣の車両に移動しようとしていた。
 しかし、敵も学習したらしい。
 物陰や人気のない空間にも、やたらめったら銃を乱射している。
「きゃぁ」
 綾香の耳元を銃弾が走る。
「こっちだ」
 綾香の腕を引くものがいる。
 ブルーズだ。天音とブルーズも隠れ身を使って潜んでいる。
「逃げるぞ」
 カーブに差し掛かる。列車が減速したすきに、列車から飛び降りる三人。
 綾香は飛び降りる瞬間、床に落ちていた本をつかんだ。繊細な装飾が施された稀少本だ。
 カジノの飾りとなっていたのを綾香は覚えていた。


 先に潜入していた源内侍 美雪子(みなもとないし・みゆきこ)も参戦する。
「どありゃー。この源内侍様が闇組織に蹴りいれにきたぜー!」
 バーストダッシュを使って、カジノの売上金を抱える手下に回し蹴りを一発。
「どありゃー」
 掛け声と共に、売上金と掴み取る。
「よっしゃ〜!まだまだ」
 売上金を取り戻そうと、手下たちが美雪子に覆いかぶさる。
 見事な回し蹴りが手下の喉を打つ。
 飛び上がる美雪子、今度は、カーテンをつかんで宙に飛び、手下の頭を蹴る。
 後ろから手下が美雪子を羽交い絞めようとする。

 飛び込んできたウェイル・アクレインが、美雪子にディフェンスシフトを使う。
「ありがと!」
 ウェイルは、ランスを手下の頭に振り下ろす。
「ここは危ない、大鋸のところに戻ろう!」
 ウェイルは美雪子の腕を取ると、受身の態勢をとって窓から外に飛び出す。

 ヴィンセント・ラングレイブ(う゛ぃんせんと・らんぐれいぶ)は、組織側についているふりをしていたが、裏切りと謀略が渦巻いていて、誰が組織側で、誰が王大鋸の味方なのか、分からない。
 一応、組織側についていたが途中で面倒になった。
 背中を見せている組織の兵隊たちを襲撃すると、
「あいつに気をつけろ!」
 手下の1人を指差して、そのまま列車先頭まで走る。
 ヴィンセントのいなくなった場所では手下たちが疑心暗鬼に陥り銃を構えている。


 円は光学迷彩で姿を消して、戦いの中を見て回っている。
 時々、人のいない場所に銃を撃つ手下がいるので油断できない。
 オリヴィアは、部屋の隅で獲物をまっている。吹き飛ばされ、押し出され、部屋の隅に来たものたちを光術で目くらましするオリヴィア。
 相手がひるんだところで、姿を消した円が吸精幻夜で闘争本能を増幅させる。
 オリヴィアの周りでは手下同士の同士討ちが始まっている、彼らには、円たち以外は敵に見えるよう暗示が掛かっている。
「さぁ敵を探しなさいなぁ〜、お人形さんたちぃ〜」
 戦いに勝ち残った手下は、オリヴィアの言葉に従って、戦闘の中心に走り出ていった。

 ミネルバは、どこにいるのだろう?
 円やオリヴィアから離れてて、「ミネルバちゃんぱーんち」、「ミネルバちゃんあっぱー!」とまるで踊るように暴れている。


「やはり……たまには思い切り体を動かさなければな、なあアル」
 アルゲオは少し呆れ気味だ。
 イーオンは目に付く手下にサンダーブラストを打つ。
 殺すのが目的ではないので、足元だ。
 次は火術だ。
 イーオンは戦いながら、ここまで進んできていた。

「今なら、掛かりそうだ」
 オリヴィアがおとりになって、円がイーオンに吸精幻夜を使う。
「うはははは、愉快だぞ」
 めちゃくちゃに暴れるイーオン。
「イオ、やりすぎです」
 アルゲオは止めに入る気力も失い、ただ眺めている。

 もうひとり、円の標的になったものがいる。
 ゴザルザだ。
「うはははは、愉快でござる」
 アドレナリン全快で戦い続けてきたゴザルザは吸精幻夜の力で、敵味方の区別がつかなくなっている。
 イーオンがゴザルザにアシッドミストを撃つ。
 バーストダッシュで、素早く避けるゴザルザ。
「わしと戦うのでござるかぁ」
 スプレーショットを打ち返す。
 攻撃力は、ほぼ互角。
 お互いに満身創痍になりながらも、愉快に戦い続ける二人。