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白銀の雪祭り…エリザベート&静香

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白銀の雪祭り…エリザベート&静香

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第10章 成功するか否か・・・意中の人に告白アタック

 七瀬 歩(ななせ・あゆむ)は静香のことで相談したいと言われ、温かいお茶を持って真口 悠希(まぐち・ゆき)の元へやってきた。
「うーん、これくらい離れたら大丈夫かな?・・・・・・でも、相談相手・・・本当にあたしで良いの?」
 静香や他の生徒たちに聞こえない木々の陰へ移動し、顔を俯かせている悠希の方を首を傾げて聞き、彼女は黙ったまま頷いた。
「歩さま・・・ボクは悪い子なのです・・・」
「どうして?」
「―・・・静香さまを独占したいとかは思ってないのですけど、やっぱり静香さまの一番はボクであって欲しいって思っちゃうのです・・・」
 手渡されたお茶の入ったカップを両手でギュッと握り、小さな声音で呟くように言う。
「そんなことしたらロザリンドさまを蹴落とすことになっちゃうと思いますし・・・」
「他の人の方が好きって言われたら仕方ないけど・・・・・・そうなったら、あたしが慰めてあげるから!」
「でも静香さまの一番が他の人になったらなんて・・・考えるだけで胸が苦しくて・・・」
 悠希はイヤイヤをするように首を左右に振り、告白を躊躇ってしまう。
「・・・歩さま。ボク・・・とても、辛いですっ・・・」
 苦しそうに目をぎゅっと瞑り、泣かないように我慢していた涙を一粒流す。
「静香さんのこと好きなら一人で考えてないで、きちんと静香さんに答えもらうのが一番大事だと思うよ」
「そうですよね・・・大切なのは静香さまの気持ち・・・」
 ポケットからハンカチを取り出し、悠希の涙をそっと拭いてやる。
 歩の優しさに悠希は思わず抱き顔を伏せた。
「どうしたの?やっぱり告白する勇気が出ない?」
「・・・ごめんなさい。これ以上アタックするには、一つ乗り越えなきゃいけないことが・・・。(やっぱり、隠し事をしたまま告白なんて出来ない!)」
「うん、話してみて」
「えーっと、その・・・ボク・・・・・・」
 涙を手で拭い、今まで隠していたことを歩に伝えようと俯かせている顔を上げる。
「あたし以外、誰も聞こえない場所だから。話して大丈夫だよ」
 歩はまだ悠希の決心がつかないのかと思い、言葉を途中で止めてしまった彼女の髪を優しく撫でる。
「ボク・・・実は・・・・・・」
「ちゃんと聞くから、あたしに話して」
「―・・・黙っていてごめんなさい・・・。ボクも本当は男の子なんですっ・・・!」
 悠希の言葉に歩は目を丸くして驚く。
「そう・・・だったの」
「今まで隠していてごめんなさい・・・。ごめんなさい・・・歩さま・・・」
 緑色の瞳に涙を溜め、泣き出しそうな悠希を歩がそっと抱きしめてやる。



 雪の積もった木に寄りかかり武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)は心に決めた人を待っていた。
「待たせてしまったようなのだね。はい、お詫びにココア。風邪ひかないようにね」
 明野 亜紀(あけの・あき)は牙竜が用意した折りたたみの椅子にちょこんと座り、温かいココアを彼に渡した。
「―・・・熱っ!」
「冷まして飲まないからだよ」
 クスッと笑われた牙竜は顔を赤らめる。
「これ・・・持ってきたんだが一緒に食べないか?」
「ん・・・1つもらおうかな」
 牙竜が持ってきたコロッケサンドをぱくっと食べ、“美味しい”とニッコリ笑う。
「今日はこぐま座流星群が見れるんだってさ。もう見れるかもしれないから覗いてみてくれよ」
 望遠レンズを亜紀に手渡した。
「とても綺麗なのだよー・・・。あ、今・・・流れ星が見えたのだよ」
 もっと流れ星を見ようと夢中でレンズを覗き込む。
「これだけ沢山流れているのだから、何かお願いごとしよう。沢山の子供たちの夢がかないますように。それと、ボクのお父さんとお母さんがずっと元気でありますように・・・」
「なぁ、これを持って氷上の上を舞ってみてくれないか?」
 夜空を見上げ流星群が流れ始めたのを確認すると、彼はオルゴールを取り出す。
「どんな音がするのだ?」
「あっ!まだ開けないでくれ」
 オルゴールを開けようとする亜紀を止める。
 美しく舞う愛しい彼女の姿の写真を撮り、告白しようと決めた。
 地上へ降る流星を掴むように牙竜はバーストダッシュで夜空を目指して跳んだ。
「流星が君の舞に見とれて落ちてきたみたいだ」
 握っていた手を亜紀の前で開くと、その手の平には銀の髪飾りがあった。
「明野 亜紀。俺は君のことが好きだ・・・・・・それだけは伝えたかった」
「・・・・・・・・・。・・・・・・・・・」
 彼の告白に亜紀は戸惑う。
「・・・・・・ありがとうボクは、がりゅーのこと好き、けど・・・・・・・・・けど、ボクはね、恋が怖いの。今は恋人とか・・・はっきり言って、無理。・・・正直、誰とでも無理。嫌いじゃない、むしろ好きだよ。・・・・・・でも、ごめんなさい」
 顔を俯かせて謝る亜紀の瞳に涙が溜まり、気紛れな流星のように流れ落ちる。
「それでも・・・ずっと仲良くいたいの」
「あぁ、俺も明野 亜紀と仲良しでいたい」
 涙を呑んで牙竜は彼女にニッと笑いかけた。



「桜井校長、一緒に滑ってもらえますか?」
 静香をスケートに誘おうと待っていたロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)が声をかける。
「え・・・?うんいいよ」
 ロザリンドは嬉しそうに氷上のスケートリンクへ向かった。
「嬉しいです桜井校長と滑れるなんて」
「誘ってくれてありがとうね」
 美しい顔立ちの静香に微笑かけられ、彼女は照れてしまう。
「スケート上手ですね」
「そうかな?普通に滑れる程度だよ。難しい技とかできないし・・・」
「―・・・桜井校長、試してみましょうか?」
「え・・・・・・?」
「いきますよ・・・えぇいっ!」
 校長の手を握りスピードを上げる。
「うぁっ!?」
 ロザリンドは静香の手を握ったまま、タンッと凍った湖面を蹴って2回転半ジャンプを決めた。
「ちょっと驚かせちゃいましたか?」
「うん・・・でも面白かったよ」
 満足そうに言う静香の前に立ち、ロザリンドは騎士が姫君にするように片膝を着く。
「百合園女学院に名を連ねる者として、桜井校長を守る騎士としてこれからも傍にいます」
 静香の右手を取り、手の甲にキスをする。
「そして、校長の恋人となれるよう、一生懸命頑張りますので」
 顔を上げて校長の姿を瞳に映すと、急に恥ずかしくなったロザリンドはその場から走り去ってしまった。