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【十二の星の華】マ・メール・ロアでお茶会を

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【十二の星の華】マ・メール・ロアでお茶会を

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第6章 お茶会の終わり、帰るとき

 ちぎのたくらみを使用して7歳の少女、神代葉月に姿を変えた日比谷 皐月(ひびや・さつき)は携帯電話をパートナーの師走と通話状態にしたまま、茶会へと参加していた。
 レコーダーを用いて、ティセラたちの会話も録音する。
 茶会も、終わりに近付こうとしたところで、皐月は席を立ち、お手洗いへと向かった。
 録音した会話を確認してみると、ザーッと砂嵐のような音しか聞こえない。
 通話状態にしていた携帯電話もいつの間にか圏外になっていたらしく、切れていた。
 掛け直してみても、繋がる様子がない。
「通信や録音・録画に対する妨害が働いてるんだな……」
 会話が届かなかったことを残念に思いながら、皐月は使用していたスキルを解除し、元の姿に戻る。
(オレは、オレに出来る事を……)
 服装もチャイナドレスから用意していた別の服へと着替え、食堂へと歩き始める。

「明日香さん」
 害意を持つ者が近付いてくると感じ取ったノルンが向かいに座るパートナーの明日香へと声をかけた。害意は食堂の外側まで迫っていると、視線で扉を示す。
「ありがとう、ノルンちゃん」
 明日香は食堂の出入り口である扉を見つめながら、頷いた。
 警戒を向けていた者たちも害意の存在までは気付いていたのだろう。護衛をしている者たちが静かに、警戒を強める。
 そして、食堂の扉が開かれ、皐月が入ってくるなり、室内はざわめいた。
【ティセラ親衛隊】である小川麻呂、リュシエンヌ、ウィンディ、トライブの4人はそれぞれティセラを庇うように立つ。
「危ないっ!」
 また、【クイーン・ヴァンガード特別隊員】である翔、刀真、月夜の3人が環菜の前に立った。
 翔は環菜を護るための構えを取る。
「壁は任せろ、ローザ! ユリウス!」
「はい!」
「ああ」
 一輝が、高速ダッシュでティセラと環菜の両名を守れる位置に移動すると、ポリカーボネートシールドを構える。
 その左右に、パートナーのローザ・セントレス(ろーざ・せんとれす)ユリウス プッロ(ゆりうす・ぷっろ)がタワーシールドを並べて、壁を作った。
 ローザは防御姿勢を取った後、祈りを捧げて高熱や暑さに対する耐性と冷水や低温に対する耐性を順に、ティセラたちへと付けさせる。
 ユリウスは防御姿勢を取り、その後、祈りを捧げると冷水や低温に対する耐性を一輝たちへと付けさせた。
「皆さん、テーブルの下へ!」
 コレットは声を上げ、ティセラと環菜以外の皆も隠れるよう指示を出す。
「エメネア!」
 彼方が魔法的な力場を使った高速ダッシュでエメネアへと近付いた。彼女を庇うようにして立つ。
「人を守る為に御自分の身を危うくしては本末転倒だとどうして分かって下さらないんでしょう……はあ」
 戦う理由のない者を守ろうとすることは悪いことだとは思わない。けれど、いつも心配するのは自分なのだ。
(……良いんです、いつも心配するのは私の仕事ですもの)
 ため息をつきながら呟いて、フォルネリアは彼方の傍に駆け寄った。
「どうか御寛恕を。折角の素敵なお茶会をこんな些事で台無しにしては……!」
 更に彼方とフォルネリアを背にするようにリベルが立ち、魔道書としての武器である言葉で以って、皐月を説得しようと試みる。
 ティセラの前には龍神一家の3人――岩衛門、ミケール、サルヴァトーレも立った。被っていた黒のローブは、立ちはだかる際に脱いで、動きやすい格好になっている。
「ティセラの創る世界に血の秩序が必要ならその行為・活動に手を染めることも厭わない覚悟じゃ。ここは任せい!」
 いつでも武術を繰り出せるよう構えながら、岩衛門はティセラへと告げた。
「どうよ、岩の字は。案外、健気だろ……裏社会の王を目指すって言っても最初はこんなもんさ」
 苦笑いを浮かべながらミケールが言う。
「失礼するアル!」
 サルヴァトーレはティセラを抱えると、一歩でも距離を離すため、後退した。
「どうやって入り込んだんだ!」
『ツァンダの街立入禁止&指名手配令』かつ『パラ実送り』である以上、一緒に行く事はありえない。
 そう考えていた【クイーン・ヴァンガード特別隊員】の青葉 旭(あおば・あきら)は皐月の出現に驚きを隠せないで居た。パートナーのにゃん子も環菜を身体を張ってでも守るために、彼女の前へと立つ。
「おやおや、皆さん血の気の多い事で……」
 要塞内の探索から戻ってきていた司は、開いた扉の隙間から中の様子を窺っていた。
「ふむ、シオンくん達を連れて来なくて正解でしたねぇ〜……いやはや」
 戦闘が起きてしまうかと、心配しながら事の顛末を見守る。
 ギターの形状をした光条兵器を手にした皐月は、壁となっている盾の前まで歩み寄る。
「お前を女王にするつもりはない」
 ティセラを指差すと、彼は告げる。
 差し出した指先の辺りに氷が舞った。
「すみません、氷の芸術を披露しようとしましたが、不甲斐ないことに緊張で失敗してしまったようです」
 けん制目的で氷術を行ったのは侘助だ。
 緊迫した雰囲気の中、冗談のように告げる彼であるが、視線は真っ直ぐ皐月を見据えている。次があればけん制ではなく、皐月を凍らせかねないだろう。
「場を弁えろ。ティセラに対する暴言や挑発は、敵対行為と判断するぞ?」
 トライブが声を上げた。
「その為にオレは五獣の女王器を壊す! そう判断するならそれでいいさ!!」
 そう告げると、皐月はギターをかき鳴らす。
 奏でるは、驚きの感情を起こさせる歌だ。
「せっかくの仲よくなるためのお茶会なのに、どうしてお話じゃなくてそんなコトするんですか?」
 歌に怯みながらもヴァーナーは声を上げた。
 ハグして止めようとするヴァーナーが近付いてくる前に、皐月は煙幕ファンデーションを床へと叩き付ける。
 辺りが煙幕に覆われて、視界が奪われて、ヴァーナーは近付けなくなった。
 急接近しようとしていたマッシュも視界を奪われ、思わず脚を止めてしまう。
 その隙に皐月は身を翻して、食堂を出ると、再びお手洗いへと向かった。
 再び、ちぎのたくらみを使用して、葉月の姿に化けると、何食わぬ顔で食堂へと戻るのだ。