百合園女学院

リアクション

　1.一夜明けて――朝

　一夜明けて、野原キャンパスにはやはり勇者達が戻ってきた。
「戻ってきただけじゃなくて、新入りさん達もいるんだからねえ！」
　言ったのは、小鳥遊　美羽（たかなし・みわ）。
　彼女の傍らには、新参者の勇者達が苦笑をこらえて立っている。
　彼らは皆メールの内容に驚いて駆けつけてきた、人の良い少年少女達だった。
「まあ、呼び掛けたのは、私じゃなくて爆弾ちゃんなんだけどさあー」
　心配そうに美羽は隣の部屋へ視線を向ける。
　そこには「保健室」で寝ているはずの鹿島　シイナの姿があるはずだった。
　彼女はナナ・サイレントノームの蝋人形化に伴い、次第に身動きの取れない状態になっていた。
「一般生徒」の彼女は相応の訓練を受けてないため、クラスを持つ学生よりも抵抗力がないのだろう、というのが養護教諭の見解だ。
「という訳で、最初だけ【蒼空学園のアイドル】たるこの私が仕切るけど。後は各自の判断に従って、行動して頂戴ねーっ！」

　そんなこんなで、美羽の一声で一同は思い思いのグループに分かれた。
　
　まず、森に取り残された【町民討伐隊】を救助する【救助隊Ａ】の面々。
　片野　永久（かたの・とわ）。
　三池　みつよ（みいけ・みつよ）。
　グレイス・ドットイーター（ぐれいす・どっといーたー）。
　レン・オズワルド（れん・おずわるど）。
　
　蝋人形化した学生達を救出するための【救助隊Ｂ】の面々。
　椿　薫（つばき・かおる）。
　橘　恭司（たちばな・きょうじ）。
　
　ドクター・ペルソナを討つための【魔術師討伐隊】の面々。
　七尾　蒼也（ななお・そうや）。
　エル・ウィンド（える・うぃんど）。
　四方天　唯乃（しほうてん・ゆいの）。
　樹月　刀真（きづき・とうま）。
　漆髪　月夜（うるしがみ・つくよ）。
　茅野　菫（ちの・すみれ）。
　相馬　小次郎（そうま・こじろう）。
　小鳥遊　美羽（たかなし・みわ）。
　橘　舞（たちばな・まい）。
　ブリジット・パウエル（ぶりじっと・ぱうえる）。
　金　仙姫（きむ・そに）。
　影野　陽太（かげの・ようた）。
　ノーン・クリスタリア（のーん・くりすたりあ）。
　風祭　隼人（かざまつり・はやと）。
　星宮　梓（ほしみや・あずさ）。
　椎堂　紗月（しどう・さつき）。
　鬼崎　朔（きざき・さく）。
　アンドラス・アルス・ゴエティア（あんどらす・あるすごえてぃあ）。
　ブラッドクロス・カリン（ぶらっどくろす・かりん）。
　スカサハ・オイフェウス（すかさは・おいふぇうす）。
　神代　明日香（かみしろ・あすか）。
　赤羽　美央（あかばね・みお）。
　日比谷　皐月（ひびや・さつき）。
　霧雨　透乃（きりさめ・とうの）。
　シャノン・マレフィキウム（しゃのん・まれふぃきうむ）。
　月詠　司（つくよみ・つかさ）。
　ウォーデン・オーディルーロキ（うぉーでん・おーでぃるーろき）。
　朝倉　千歳（あさくら・ちとせ）。
　朝倉　リッチェンス（あさくら・りっちぇんす）。
　
　古代の鏖殺寺院の砦跡で町長夫人を救出する【砦跡隊】の面々。
　篠宮　悠（しのみや・ゆう）。
　マリアンヌ・オードレイン（まりあんぬ・おーどれいん）。
　レイオール・フォン・ゾート（れいおーる・ふぉんぞーと）。
　
　町へ情報を探りに行く【捜索隊】の面々。
　コハク・ソーロッド（こはく・そーろっど）。
　アストライト・グロリアフル（あすとらいと・ぐろりあふる）。
　ヴィゼント・ショートホーン（びぜんと・しょーとほーん）。
　シルフィスティ・ロスヴァイセ（しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ）。
　神和　綺人（かんなぎ・あやと）。
　クリス・ローゼン（くりす・ろーぜん）。
　ユーリ・ウィルトゥス（ゆーり・うぃるとぅす）。
　エヴァルト・マルトリッツ（えう゛ぁると・まるとりっつ）。
　ロートラウト・エッカート（ろーとらうと・えっかーと）。
　デーゲンハルト・スペイデル（でーげんはると・すぺいでる）。

「でもシイナがいないんだよな？　誰にどんな情報を渡せばいいんだろう？」
　不安そうにコハク・ソーロッド（こはく・そーろっど）は美羽を、一同を見渡す。
「そんなの決まってるじゃない」と、美羽。
「こんな時の【百合園女学院推理研究会蒼空支部】だよ、ね？　ブリジット……て、ブリジット？」
　ブリジット・パウエル（ぶりじっと・ぱうえる）の姿を捜すがどこにもない。
「あれ、どこ行ったんだろ？」
　はーいと、神和　綺人（かんなぎ・あやと）が手を挙げる。
「連絡を取り合って、皆で考えればいいんじゃないのかな？」
「それもそうね」
　そう言った次第で、全員で携帯電話の番号とメールアドレスの交換をした後、行動に移った。
　まず町で情報を得るために【捜索隊】と、キャンパスからもっとも遠い【砦跡隊】の面々が出発する。
　シイナが書き置いた地図を片手に、目的地へと旅立ったのであった。
　
　■
　
　同じ頃、校舎の外ではよからぬ企てが始まっていた。
　鏖殺寺院……もとい、パラ実のメニエス・レイン（めにえす・れいん）が小声で、木陰の蝋人形に計画を話していたのだ。
「あらあー、そう言えばお人形ちゃんとパートナーは意思疎通ができるのだったかしら？」
　クスクスと笑う。
「いいのよ、話したって。でもね、あたしは強くて賢いのよ。それにあなただって、あの素敵な魔術師さんに取り入ろうとした『同じ穴のムジナ』じゃない？　マッシュ・ザ・ペトリファイアー（まっしゅ・ざぺとりふぁいあー）」
　さあて、と裾を払って、メニエスはゆらりと立ち上がった。
「まずはペルソナちゃんに御挨拶、と行こうかしら？」