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「暗き森のラビリンス」生命を喰い荒らす蔓

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「暗き森のラビリンス」生命を喰い荒らす蔓

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第1章 猛毒の牙

 十天君が用意した石版の謎が生徒たちによって解かれ、お月様の上に扉が現れ開いた。
 扉を通り4階のフロアへ向かう。
「皆行ったみたいだね。僕たちはこれから他の人も来るかもしれないから、もう一度ワープ装置を起動させに行こうか」
 他の生徒たちが4階へ進んでいったのを見た後、清泉 北都(いずみ・ほくと)は幻草陣の中へやってくる仲間のために起動させておこうと、白銀 昶(しろがね・あきら)と共に石版部屋を出る。
「この蔓の先に毒草がいるね、灰色だ・・・石化させられたら動けなくなるから気をつけて」
 禁猟区で気配を探知した北都が、噛まれないように注意するよう言う。
「オレたちにまだ気づいていないようだぜ」
 小声で言い昶は北都の傍を離れないように進む。
「装置の位置は来た時と変わっていたりするのかな?」
「根性の悪いやつらのことだからどうだろうな。とりあえず石版部屋へ来る途中で見つけたとこへいってみないか」
「そうだね行ってみよう」
 闇雲に探すよりかいいかと、見つけた場所へ行ってみることにした。
「この先に毒草たちがいるよ」
 ナラカの蜘蛛糸の端をつまみ身構える。
「こっちに来るぞ!」
 深緑の毒草が昶たちの存在に気づき、彼らを噛み砕こうと襲いかかる。
 牙を鉄甲でガードし、もう片方の拳で殴り潰す。
「邪魔だよっ」
 道を阻む化け物を倒そうと、北都は糸に巻きつかせて端を引っ張り微塵にする。
「あったぞ」
 昶が指差す方を見るとワープ装置がある。
「来た時と同じ場所だね」
 追いつかれる前に起動させようと北都たちは発見した場所へ走る。
「たしか雷術で電力を供給するんだよね」
「よし、やるか」
 昶と北都は息を合わせて雷術を放つ。
 円型の部分が赤色から緑色へ変わり、ワープ装置の起動に成功した。
「追ってくるぞ」
 耳をピクつかせガサガサッと音を立てて迫る毒草の葉音を、昶が超感覚で察知する。
 ワープ装置に乗り1階へ向かう。
「ふぅ・・・危なかったな、麻痺くらわしてくるやつがいたぜ」
「ナーシングで対処出来る毒を持っているやつ以外は、なるべく相手にしないようにしないとね」
「とりあえずここにはいないようだし。さっさと起動させようぜ」
「うんいくよ。せーの!」
「おっ、成功したな。2階の石版部屋の通路につながっている場所へ行けるやつは他にもあったよな。それも一応起動させておくか」
 緑色に変わったのを確認し、他の装置も起動させようと探す。
「棘があるね。なるべく音を立てないようにしないと襲ってくるよ」
 昶の顔を見てどうやって通ろうかと考え込む。
「そうだな幅もあるし・・・。あ、これにつかまって飛び越えれば通れそうだぜ。―・・・よっと!」
 壁の蔓を掴み昶は北都を片腕に抱え、地面の棘を飛び越える。
「見て向こうにあるよ」
 北都は棘が動き出さないよう、慎重に歩き装置の傍へ行く。
 小声で合図し昶と一緒に起動させる。
「これで道は確保できたかな?」
「とりあえず石版部屋へ戻ろうぜ」
「そうしようか」
 起動させたワープ装置に乗り2階へ戻る。



「北都さんたちが先にここへ入ったみたいだね。早く追いつかなきゃ!」
 先に入った友達に追いつこうと、レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)が幻草陣の中へ入る。
「棘が道を塞いでいるようじゃのう。火術で焼いてしまおうか?」
 ミア・マハ(みあ・まは)は火術で焼こうかとレキに聞く。
「うーん・・・それだとSPを消耗しちゃうからどうしようかな」
「こういうものはさっさと壊してしまった方がいいですね。あらら、音に反応して動くんですか。掃除してしまいましょう♪」
 忘却の槍を振り回し騎沙良 詩穂(きさら・しほ)が棘を一掃する。
「さぁ参りましょう」
「あわわっ、待ってください〜」
 息をきらせながら咲夜 由宇(さくや・ゆう)が彼女たちの後を追いかける。
「追いつきました〜、皆さん足が速いですぅ」
「刺さったら痛そう」
 そう言いながらもルンルン・サクナル(るんるん・さくなる)は棘に触れようとする。
「わっ、何やってるの危ないよ!」
 気づいたレキが慌てて止める。
「なぜかちょっと触ってみたくなって・・・」
「それよりも早く上の階に行こう」
「う、うんそうだね」
 横目で棘を見ながらレキたちの傍を歩く。
「あったよ装置、これに乗ればいいんだね」
 レキたちは北都と昶が起動させたワープ装置に乗ると2階へ転送される。
「この辺には毒草はいないのかな・・・」
 突然襲われないように警戒しながら進む。
「皆さん奥の方にドアがありますぅ」
 石版部屋を由宇が発見する。
「毒草か・・・噛まれた痛いのかな。―・・・うわぁあ!」
「どうしたんですか!?」
 詩穂が振り返るとルンルンの足に、深緑色の毒草が噛みついている。
「このっ、離しなさい!」
 化け物の口を掴んでベリッと引き千切る。
「ありがとう・・・」
 助けてくれた詩穂を見上げて礼を言う。
「まだ他にもいるかもしれません。足元にも気をつけてくださいね」
「後で毒の治療をしましょう」
「うん・・・」
 由宇の傍を離れないよう、痛む足を引きずりながら歩く。
「まさか毒草クリーチャーがいたりしないよね。―・・・ふぅ、よかった」
 レキはそっと開けて中の様子を見ると、北都と昶の姿を見つけた。
「これから上の階に行くんだね」
「うん、6階に行こうと思ってね」
「あれ怪我しているようだけど大丈夫?」
 ルンルンの足の怪我を見て、治してやろうと北都が駆け寄る。
「歩けなくはないけど毒が・・・」
「ちょっと動かないでね。―・・・これで大丈夫だよ」
「うぅ、ありがとう」
「じゃあ行ってくるよ」
「無事に戻ってきてね。(アウラネルク・・・どれだけ魔力を奪われてしまったのかな)」
 レキたちを見送りながら北都は、捕らわれている妖精は無事だろうかと心配する。
「救えるといいな、その妖精」
「―・・・うん」
 心を読むように言う昶に、不安そうな顔で頷いた。



 4階のフロアで十天君にタイムリミットの時間を言われ、1時間30分経過した頃、小型飛空艇の速度をMAXにして東條 カガチ(とうじょう・かがち)たちがようやく幻草陣の前へたどりついた。
「検査の後にかっとんできたけど、やっぱり結構かかったねぇ」
「こっちはトラップを用意しているよ」
 佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)は陣から張天君が出てきた時、トラップにはめてやろうと手頃な木を探す。
「それじゃあいったんここでお別れだね」
 そう言うとカガチは島村 幸(しまむら・さち)たちと共に、幻草陣の中へ入る。
「さてと装置はどこかなー」
 先に進んだ生徒たちと合流しようと、2階へ行こうとワープ装置を探す。
「邪魔な存在を消すために魔力を奪って、バイオテロをしようとするなんて許せねぇな」
 医者としてアスクレピオス・ケイロン(あすくれぴおす・けいろん)は、そんなもの阻止してやると怒り顔になる。
「うわっこの棘動くのか!」
 通路を走る足音に反応した棘が、鞭のように動き彼らに襲いかかる。
「ゆっくり進んでたらあっとゆう間に時間切れになっちゃうよ」
 行く手を阻む棘をカガチが刀でぶった斬る。
「ありましたよ装置、急いでください」
 北都と昶が起動させたワープ装置を見つけた幸がカガチを呼ぶ。
「相手している暇がないんでね、じゃあねぇ」
 棘がカガチの身体に届く前に、彼らは2階へ転送される。
「簡単に通してはくれないようだね」
 ガササッと葉音を立て、獲物を見つけた毒草が猛スピードで向かってくる。
「後ろがつかえてるんだから渋滞させるなって!」
 細切れにされた残骸がベシャァと地面に飛び散り、断面から紫色の液が流れ出て消滅する。
「くそっ、まだくるのかい。―・・・うぐぁあっ!・・・ぐぅー・・・・・・」
 奇声を上げながら襲いかかる毒草に噛みつかれ、毒をくらい眠ってしまう。
「起きなさいカガチ!」
 幸がバシンッと彼の頬を叩き無理やり起こす。
「あっ、いったぁああ!毒のせいで眠ってしまったみたいだね」
「そんなもの相手にしていたらキリがありませんよ。次眠ったら帰宅後にお仕置きしますからね!」
 眠気がふっ飛ぶほど大声で怒鳴りつけ、カガチを盾に石版部屋を探し走る。