シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

ニセモノの福

リアクション公開中!

ニセモノの福

リアクション

 木漏れ日が福神社の参道にちらちらと光を落としている。
「しばらくここも慌ただしかったけど、事件も解決したみたいだね」
 歌の練習にはここが一番、とばかりに岬 蓮(みさき・れん)アイン・ディアフレッド(あいん・でぃあふれっど)を連れて福神社にやって来た。
「ここで練習するのか?」
「落ち着いて練習できて、お祈りもできるからちょうどいいでしょ」
 引き気味のアインに、蓮はあっけらかんとした笑顔を向けた。
「またそんな難しい顔してるー。そもそも、アインの歌は暗いのよーっ。歌っていうのは楽しく歌うものだし、もっと気楽に軽やかに歌を作ればいいのーっ☆」
 たとえばこんな風に、と蓮は即興で歌い出す。

「♪ ちゃっちゃーらっ♪
  キノコ食べてマッスルになーる男よぉー♪ 悪党共をふみつぶせー♪
  行けー行けー! 赤い帽子がトレードマークのぉ〜
  行けー行けー! 我らのスーぱ……」

「蓮の作詞は色々タブーありすぎや!」
 アインはびしっと蓮にツッコミを入れた。普段は標準語アクセントで喋っているアインだけれど、不意をつかれるとぽろっと関西弁が出てしまう。
「これくらい気楽ーに歌うといいんだよっ」
 ぴかっと満開に笑う蓮に、アインはこっそりと呟いた。
「歌人になる為に修行せねばと思っていたが……蓮に相談するのが色々と間違ってたな」
「何か言った?」
「いや特には」
 軽くかわして、アインは福神社を眺めた。
 この場所で自分が歌を作るとしたら……と心のままに旋律を紡ぎ出す。

「♪ 誠の祈り 蒼空へと届けば
    白き光雨 我が身に降り注ぐ  それは 生暖かい女神の手
    青き草木 我が元に芽生える  それは 光り輝く笑顔のもと……♪」

 アインが歌い終えると、ぱちぱちと拍手をしながらメイベルが現れた。
「歌の練習ですか? 素敵ですねぇ」
「うん。気持ちの良い季節だから外でって思ったんだよ」
「ここは緑がいっぱいですからねぇ」
 メイベルも社付近を見渡した。一時は布紅の不調に引きずられていた福神社も、以前の清々しい場所に戻りつつある。
「一時はどうなることかと思ったけど、布紅ちゃんが元気になって良かったわ」
 アルメリアはしみじみと言うと、琴子に向き直った。
「琴ちゃん、やっぱりまたこんなことがあるといけないし、布紅ちゃんを連れて帰っちゃダメ? ちゃんとお世話するから」
「いけません」
「……どうしても?」
「どうしても、ですわ。布紅様には福神社にいていただきませんと。社が空っぽになっては困りますもの」
 攫われるのをおそれるかのように、琴子は社を背に腕を広げた。
 
 偽のお守り袋を売っていた者たちは、生徒たちに懲らしめられた後ツァンダ家の騎士たちにさんざん絞られ、相当にこりたらしい。今は定期的に、見張りつきで福神社のボランティアをさせられているが、文句も言わずに黙々と清掃をしている。
 取り戻すことが困難かと思われていた偽守りの代金は、福神社に届けられた匿名の寄付によってその多くが賄われることとなった。寄付金と共に偽物のお守りも大量に送られてきており、それを見た犯人たちは、これは自分たちがクイーン・ヴァンガードを名乗る者に騙されて取り上げられた金とお守りのストックだと騒いだ。
「こんにちはー♪ 今日は被害者の会の人を連れてきたんだよ〜」
 参道をやってきた歩が、社の中にいる布紅に声をかける。
「布紅さんも同じ被害者だって教えたら、励ましたいからって言ってくれたんだよっ♪」
「ありがとうございます〜。でもお陰様で、もうすっかりだいじょうぶです」
 布紅はそう言いながら社を開け、外に出て来た。まだ回収できていない偽物は残っているけれど、新しいお守りに届けられる願いはそれを補って余りある。起きあがることもままならぬほど弱っていた布紅は、今は前以上に元気に見えた。
「皆さん、ようこそです〜」
 やってきた偽守りの被害者に、布紅がぺこりと頭を下げている。神様らしくはないけれど、これがこの社の福の神。
 歩が知っていた地球での神様とはずいぶん違う印象だけれど、福を願ってお互いが幸せになるのなら、たとえ神頼みでも良いんじゃないかと歩は思う。
 パラミタは地球とは違う場所。様々な問題を抱えている大陸でもあるけれど。
「パラミタって素敵なところだよね♪」
 そしてもっと素敵な場所になっていけますようにと、歩は福の神に祈るのだった。
 
 

担当マスターより

▼担当マスター

桜月うさぎ

▼マスターコメント

 ご参加ありがとうございました〜。

 お守り。
 開けてはいけません、と言われるものだから、余計に中が見たくて仕方がありませんでした〜。
 自分で開けたことはないのですが、こんなものが入っていた、という話に、ドキドキしながら聞き耳を立てたりしてました。
 私にとってのお守りは、身近にあって、ちょっぴり不思議な存在。開けてもバチなんて当たらない、と聞きましたけれど、それでもたぶん、中身を見る勇気は一生出ないんじゃないかと思います。
 皆様にとっては、お守りはどんな存在なのでしょう〜。
 いただいたアクションにも様々なお守りへの考えがあって、興味深いな〜と思いながら執筆させていただきました。

 お陰様で布紅は元気に。
 また福神社でお会いできる日を楽しみに……と書いてる時にはもう手元に福神社が出てくるシナリオとアクションがあるのですが〜。そこでお会いできる方も出来ない方も、今後ともどうぞよろしくお願い致します〜。