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ガーディアンナイツVS空賊ブラッティローズ

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ガーディアンナイツVS空賊ブラッティローズ

リアクション

「我が一番乗りだ!」
 毒島がそう言いながら空飛ぶ箒で敵船へ向かう。
「でも、前から敵さんがいっぱい来ますよ」
 プリムローズはこちらに向かってくる敵の群れを見て、眉を潜める。
「ここはこの俺、蒼空の騎士パラミティール・ネクサーにまかせるんだッ!!」
 と、後方より小型飛空挺に乗って現れたパワードスーツに身を包むエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)もとい蒼空の騎士パラミティール・ネクサーは、そう叫びながら敵集団に向かって突っ込んでいく。
「ああっ、待ってよエヴァルト!!」
 さらにその後を追ってロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)が続く。
「こら、ふたりとも待つのだ! 我を置いていくでない!!」
 と、最後に現れたのは空飛ぶ箒に乗ったデーゲンハルト・スペイデル(でーげんはると・すぺいでる)
 3人は嵐のように毒島たちの横を通り抜けて行った。
「……なんなんだ、あいつらは?」
 毒島は呆気に取られた顔をして3人が消えた先を見つめる。
「このまま直進するぞッ!!」
 と、その3人のうちのひとりパラミティール・ネクサーは、飛空挺のスピードを上げて無謀にも敵のど真ん中を突っ切ろうと試みていた。
「ソーンの兄貴! 変な奴が突っ込んできますぜ!?」
 ソーン3兄弟の横を飛んでいた空賊がそう叫ぶ。
「ブラックローズに向かう敵はあまり構うな! 我々の目的は商船のお宝だ!!」
 そんな仲間にソーン3兄弟の長男アベルは言い放つ。
「へい、わかりやし――うわぁっ!!」
 と、空賊がすべてを言い終える前に乗っていた飛空挺が突然爆発した。
「ちっ、ミサイルか!?」
 アベルはすぐさま飛空挺の舵を切って、回避行動をとる。
「ミサイル全弾発射だよッ!」
 そう言って六連ミサイルポッドの弾を撃ちまくるロートラウト。敵はそれをかわしながら先に進んでいく。
「正義のガーディアンナイツが一人、デーゲンハルト…討ち入るぞッ!」
 先のふたりにやっと追いついてきたデーゲンハルトが武器を構えて叫ぶ。
 だがそんなデーゲンハルトの横を敵機が次々と通り越していった。
「あれ? みんな戦わないで行っちゃったよ?」
「無視されてしまった……あっ、いや、それはどうでもいいのだが、どうなっているのだ?」
 ロートラウトとデーゲンハルトが後ろを見ながら首を傾げる。
「おい、デーゲンハルトにロートラウト! 何をボサっとしているんだ。敵のことは他の仲間たちにまかせて、俺たちはブラッティローズを捕まえに行くぞ!」
 パラミティール・ネクサーはそういうと敵船に向かって進んでいった。
 発破をかけられたふたりも、その後に続く。
「ねえー、みお姉! 敵の奴らなんかガーディアンナイツたちと戦わないで商船に向かって進んでるよ!!」
 なるべく雲のある場所を選んで進む迷彩塗装を施した飛行船雪だるま号。その周りを小型飛空挺で飛び周り、警戒するように赤羽美央に命じられていたエルムは敵の動きを見てそう報告する。
「狙いは古代シャンバラ王国の名品……それだけってことですかね?」
 美央は厳しい表情を浮かべ、操船をこなすジュセフに聞いた。
「そんなの知りまセーン! ミーは操縦に手一杯なノデ、細かい判断はできまセン!!」「……むぅ、まあいいです。たぶん相手はさっさとお宝を奪ってトンズラする気なんでしょうが、そうなる前に敵船を押さえたいところですね」
「なら、もうみんなには出てもらったらどう?」
 と、横にいたタニアが美央にアドバイスをする。
「そうですね。そうしてもらいましょう。ガーディアンナイツの人たちよりも早くブラッティローズを捕まえて、船をいただいちゃいましょう!」
 美央はそう言うと艦内通信を行う。
「雪だるま王国の皆さん、出撃お願いします! 目的は雪だるま的美術品の奪還と敵船の奪取です!! よろしくお願いします!!」
 その通信を聞いた雪だるま王国騎士団長のクロセル・ラインツァートは出撃準備を進めていた皆に携帯電話を配る。
「現在この空域は敵のジャミングにより通信が困難になっていますが、敵船内はおそらく大丈夫でしょう。内部での通信はこれで行ってください」
 雪だるま王国民たちはクロセルから携帯電話を受け取ると、それぞれの乗り物に搭乗していく。
「突入ポイントは俺たちが作ります。皆さんはそこから船内に突入してください。それではいきましょうか」
 クロセルはそう言うと空飛ぶ箒に乗って出撃した。
 それに続くように雪だるま王国民たちも次々と出撃していく。
「ルイさん、頑張りましょう!」
「はははっ、そうですね!」
 エル・ウィンドとレン・オズワルドはそう言葉を交わすと共に空へと飛び立つ。
 そして彼らもブラックローズ号へ向かい、進んでいくのであった。



 一方、ブラッティローズの乗る船・ブラックローズの中では船員たちが慌しく動いていた。
「敵が迫ってきているようですが、どうする気ですか?」
 と、ブラッティローズの警護を行っているガートルード・ハーレックが聞いた。
「フン、こっちの予想通りの展開だよ。ひとりでも多くの敵を惹きつけて、ソーンたちの仕事をやりやすくする……アタシは獲物を引き寄せる綺麗な薔薇だからねぇ」
 ブラッティローズは閉じていた鉄扇を開いてニヤリと笑うと後ろを振り向いた。
「出力ルーム! 聞こえるかい!!」
「はい、聞こえてますぜ姉さん」
「フルパワーで頼むよ、これから鬼ごっこをしなきゃいけないんでねえ」
「わかりました」
 出力ルーム――そう呼ばれる場所でブラッティローズの通信を聞いていた強面の大男はそう答えると通信を切った。
「いまの聞いてたか? おめえら、死ぬ気でやれよ!」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ!」
 と、出力ルームに配置されていた高崎悠司が大男に言った。
「あんっ、なんだ新人?」
「……これは一体なんなんだ?」
「ああっ、これは姉さんがこの船に追加でつけた大型エンジンって奴らしいぜ。こいつのおかげで俺たちの船は普通より早く動ける」
「いや、これがエンジンだってのは俺にもわかるんだ。そうじゃなくてその前においてあるあの何台もの自転車だ」
 悠司はそう言いながらズラリと並ぶ自転車を指差した。
「このエンジンを動かすには電気が必要なんだ。だからおまえたちが自転車を全速力でこいで電気を発生させるんだよ」
「そんなマジかよ! 漫画じゃないんだぜ!?」
「なんだ嫌なのか、新人? まあそれならそれでもいいが――」
 大男はニヤリと笑い、悠司のことをねばついた視線で見つめる。
 と、悠司の肩を出力ルームに配置された他の空賊が叩く。
「おい、おまえ。素直に従った方が身の為だぞ」
「はっ、どういうことっすか先輩?」
「こいつは男好きでな。いままで何人のケツが犠牲になったことか……」
「どうすんだ新人? やるのか? やらねぇのか?」
 と、大男がニヤニヤと笑いながら悠司の肩を叩く。
 悠司はびくりと背中を震わせて振り向いた。
「わっ、わかった。素直にやる。あっ、ちなみに言っとくけどやるのは自転車の事だからな」
「……なんだ、そうか。残念だ」
 大男はそういうと悠司の背中を押す。
「よし、じゃあさっさと始めろ!」
 そう言うと男は懐からムチを取り出して、バシンと床を叩きつける。
 男たちは慌てて自転車に飛び乗り、全速力でペダルをこぎ始めた。
 すると電気が発生し、エンジンがゆっくりと動き始める。
「大型エンジンの出力上昇中! ですが全速力を出すのは無理ですぜ姉さん!」
 と、艦橋内でモニターを見ていた空賊がブラッティローズにそう告げる。
「わかってるよ、全力で高速運航できるようになるまではとにかくガーディアンナイツたちを惹きつけるんだ。それからソーンたちが信号弾を挙げたら、すぐに回収ポイントに向かいな。その後は高速でこの空域を離脱だ。奴らが追ってこれないように積乱雲内に突入してトンズラするよ、いいねッ!」
 ブラッティローズの声に男たちは一斉に答える。
「フフっ、お膳立てはアタシがしてやるからちゃんとおやりよ、ソーン3兄弟」