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【学校紹介】鏖殺の空母

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【学校紹介】鏖殺の空母
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2:出撃前その二……秘めたる翼


「整備班の方、申し訳ないですけど海上迷彩塗装を施していただけないでしょうか? それから、小隊行動ですから、統一した記章をマーキングしておいた方がいいですね「オルカ(シャチ)」のマークを機体肩部にマーキング、お願いします」
 【ダークウィスパー小隊】所属の青色の髪と緑色の瞳を持つはかなげな印象の少女ルーチェ・オブライエンが整備員の人間に頼むと、焦げ茶色のロングヘアで、目つきが悪いが活動的な印象を受ける少女十七夜 リオ(かなき・りお)が頷いた。
「わかりました。出撃までには必ず仕上げます」
 リオはバンダナを締めるとクレーンデッキに乗って塗装用スプレーを持ってイコンの塗装を開始した。
 赤いセミロングの髪の美少女朝野 未沙(あさの・みさ)も天御柱の生徒ではないが<テクノクラート>であり、<R&D>、<機晶技術>、<先端テクノロジー>などのスキルを所持していたため特別に天御柱の生徒に混じって整備活動を行うことを許可されていた。
 一緒になって外装の塗装をし、整備班長の指示を受けながら様々な雑用をこなす。
「あたしイコンの整備・開発・修理・改造が個人レベルで出来るようになりたいんですよね〜」
 未沙がそう言うと、リオが
「御神楽 環菜校長はすべての、人、もの、技術、お金を天御柱に集約することによって効率化を図っているらしいよ。だからそういうことやりたいんだったら転入してくるといいよ。今はまだ転入は受付けてないけど、そのうち転入も受け付けるようになるとおもうよ」
「うーん。転校かぁ……愛美ちゃんと離れるのも嫌だし、どうしようかなぁ……」
 そこまで悩んでから思い直したように言った。
「あたしが持つ能力の全てを駆使して、イコンの整備技術を学びたいと思います。いつか、オリジナルのイコンを一から作り上げる為、量産機をカスタム機に改造する為、あたしは頑張るよ!」
「頑張れ〜!」
 リオが未沙をそう励ます。
「はい。あたし<機械修理>もあるから、戦闘で戻ってきたイコンの整備も任せてくださいね!」
「期待してるよ」

 ブリーフィングルーム――
 金髪のロングヘアを持ち胸が大きいローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)はネットや書籍で調べた一般的な空母の見取り図などを元に敵空母の予想見取り図を作成。そして、自らの持つ海軍の知識とあわせて目的地までの最短ルートを割り出した。
「いい? 艦橋内に発令所は無いから。空母の場合、指揮系統が一時に叩かれるのを防ぐ為に発令所は船体内部――艦の中頃にある場合が多いわ。留意しておいた方がいいと思う。そしてデッキはここ。機関室はここと考えるといいわ」
「なるほどだとすると艦橋とスクリューシャフトルームはどこですの?」
 乳白金の髪を後ろで束ねた色ぽいローザマリアのパートナーシルヴィア・セレーネ・マキャヴェリ(しるう゛ぃあせれーね・まきゃう゛ぇり)が尋ねる。
「それは、ここ、とここでしょうね。ポイントが離れているから両方を制圧というのは難しいわよ」
「あ、あたしの目的は制圧じゃなくて破壊ですから。大丈夫ですよ♪」
「そう……ならいいけど」
 シルヴィアの言葉にローザマリアはなんとなく頷いた。
「これで空母の構造の予習はできた……あとは、鏖殺寺院の人間を殺すだけ」
 鏖殺寺院を憎んでいる鬼崎 朔(きざき・さく)は敵意を剥き出しにして見取り図を睨む。彼女は銀髪を後ろで束ね赤い瞳をしている。
「まあ、1000人以上いるっつっても、全員が戦闘要員ってわけじゃないしな。殺すだけなら簡単だと思うぜ。戦闘要員は実質100人か200人だ」
 そう言ったのは黒髪のショートヘアで端正な顔立ちを持つ如月 正悟(きさらぎ・しょうご)で、嗜めるような感じでもあるが、煽っているような感じでもある。
「とにかく、戦闘要員相手に油断は禁物。だが、非戦闘要員――要するに船のクルーには手加減した方いいぜ」
「関係ない――すべて殺す」
 正悟の言葉を朔は突っぱねる。
「味方も、足をひっぱるようなら容赦しない……」
「おお、怖い怖い。せいぜい足を引っ張らないようにさせてもらうよ」
「そうしてくれ……」
 朔の怨嗟は正常ではない。正悟はそう感じ取ってあまり深く関わらないことにした。
「ヤマバ、お前はどこに行くんだ?」
 長い黒髪に黒の瞳、旧家の出で厳しそうな印象を受ける朝倉 千歳(あさくら・ちとせ)がそう涼司に尋ねる。
「あー、俺は発令所を叩くつもりだ。それがどうした?」
「む……あ、いや、ならば私も付いていく。私はイルマと一緒に情報の伝達と把握を行うつもりだ。どうやらヤマバのことを勘違いしていたようだ。いかがわしい喫茶店に出入りしているとか、迷惑をかけて周囲を困らせているという話だったが……実際は、戦闘中に女の子を助けたり、壊れた校舎の責任を一人で被ろうとしたり、中々いいヤツじゃないか。御神楽さんから潜入部隊の隊長を任させたりと、信頼も厚い様だし。謝罪の言葉を並べて頭を下げるのは易いが……今回の作戦参加者もみると、混成部隊だから隊長として纏めるのは容易じゃないだろう。ヤマバが隊長としての職務を完遂できるように、力になってやりたいな」
「そう言われると照れるな……だが、悪い気はしねえ」
 涼司はそう言って頭をかいてみせる。
 焦げ茶色の髪をセミロングにまとめた千歳のパートナーイルマ・レスト(いるま・れすと)は(私から千歳を奪うなんて)と涼司を睨みつけながらも
「サポートは最大限させていただきます。責任者としてしっかり仕事をしてくださいね」
 と口では丁寧にそう言った。
「わかってる。おれだって遊びで引き受けたわけじゃねえ。責任はしっかり果たすし任務もこなす」
「……いいでしょう。合格とします。ですが、私から千年を奪うのなら許しませんよ」
「イルマ!」
 千歳が顔を真赤にして叫ぶと、イルマはしれっとした表情でそっぽを向いた。
「あ、あの、涼司くん、これ、お守り」
 青い瞳を持ち、青い髪を後ろで束ねた火村 加夜(ひむら・かや)は白い顔を真っ赤に染めながら防弾素材でできたお守りを涼司に渡した。お姫様抱っこされた時、安心感と鼓動の速さを感じ恋に気づいた加夜であった。
「あ、おう。ありがとさん」
 涼司はそう言うとそれを胸ポケットにしまった。フラグが一本立ちました。
「今回が初陣、という面々も少なくないが、諸君に必要なことは「最初からヒーローを目指すな」と「必要なことは任務の過不足ない達成」だということを伝えておく。くれぐれも気張りすぎて戦死などしないように」
「はい」
「了解!」
 初陣の面々がビキニの上にコートを着用し、その肢体を惜しげもなく晒しているセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)の言葉に答える。
「あとは実地で指導してやる。死にたくなかったら、あたしから離れるんじゃないよ」
 セレンフィリティはそう言うと自分の胸を叩いた。
「実戦経験の少ない者は敵を深追いして突出しがちになるわ。怪我したくなかったら、敵だけじゃなく味方の位置にも注意しなさい」
 パートナーのセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)がそう言った。彼女はレオタードにコートという出で立ちで、長い脚を衆目にさらしていた。
 とにかく実戦で注意することだが、事前に説明できる部分はしておいたほうがいいという考えだ。
「……で、だ。空母に乗り込んだら電波撹乱を仕掛けます。その際にこっちまで電波がおかしくならないように無線機の周波数はこれで統一してください」
 黒い髪をオールバックにした精悍な青年戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)が背負式の大型通信機を椅子の後ろに置きながら周波数統一の指示を出す。
「了解。本格的な情報管制は戦部に任せる。みんな、異議はあるか?」
 涼司が問うが手は上がらない。
「よし。じゃあ、全会一致で情報管制を戦部に任せる。頼むぞ」
「わかりました。大任お引き受けいたします」
 拍手が沸き起こる。小次郎は敬礼をしてそれを受け止めた。
「確認しておくが目的は敵空母の無力化だ。戦闘は最小限に留めないと時間を取られて包囲・各個撃破される可能性が高い。イコンの戦闘可能時間もフル出力だと一時間が限度らしいから、潜入に20分、工作に40分、退却に20分と割り振る。みんな、時計をあわせてくれ……」
 涼司の指示によって、戦争映画でよくあるような時計の時間を一致させる作業が行われた。
「よし、準備と打ち合わせはこれで完了だ。あとは装備を受け取って、各自割り振られたステルス飛行艇に乗り込んで潜入準備をしてくれ」
『了解!』
 こうして意思が統一されると潜入班はイコンデッキに係留してあるステルス飛行艇に乗り込むために移動を始めた。そして、デッキ――
「カノン、おい、カノンだろ!」
 涼司はビームマチェットを装備したイーグリットに乗り込もうとしていた少女に声をかけた。
「だれ?」
 だが、カノンの反応はつれない。
「俺だよ、涼司だよ。カノン、事故で病院にいたんじゃなかったのか? 元気になったんだな、よかったぜ。うんうん」
「あなた、誰ですか? そもそも、事故とか病院って何?」
 その少女は交通事故で意識不明になっていた幼なじみ設楽カノンにそっくりだった。しかし、彼女は涼司に憶えがないと言う。
「確かに私は設楽カノン……でも、あなたは“私の涼司君”ではないです」
「いや、でもどう見てもカノンなんだけけど……もしかして記憶、ないのか?」
「き……おく? なに……なんだ……頭がいたい……私に触れないで!」
 カノンはそう言うと涼司を振り払い、地球人一人ではまともに動かせないはずのイーグリットに乗り込み発進してしまった。
「っな!」
 あっけにとられる涼司。
 そこに花音・アームルート(かのん・あーむるーと)がやってきた。
「あの方が私とそっくりなカノンさん?……涼司さん、会えてよかったですねえ。でも、記憶がないなんてなんだか可哀想……」
「……カノン」
「はい?」
「おまえじゃない」
「し、失礼じゃないですか!」
 花音は怒ってその場から立ち去った。
 それを見ながらも涼司は混乱していた。
「……何がどうなってるんだ? まあいい。空母潜入部隊は集合! 俺達の工作の成果が鏖殺寺院のイコンの出撃数に関わってくる。気合入れろよ!」
『応!』
 涼司は潜入用のステルス飛空艇に乗り込みました。

 そして、出撃――