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【学校紹介】鏖殺の空母

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【学校紹介】鏖殺の空母
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3:出撃
 ステルス飛空艇が出撃するとイコン部隊も出撃を始めた。そして空母のレーダー圏外で待機し、奇襲のタイミングを図る。
「アルファワンより各機、潜入部隊からの合図があるまでここで待機。目標との相対距離を保ったまま突入の準備を行う」
『了解!』
「加えてアルファワンより各機、敵イコンと彼我の戦力差は同等なれどパイロットの練度においては敵の方に一日の長がある。単独での戦闘は行わず2機編成のロッテ2組、すなわち4機編成のシュヴァルム編成を組み事に当たれ」
『了解!』
 こうして即席で編隊が組まれて天御柱の生徒たちは出番を待った。


 ――潜入部隊
 空母潜入前、静麻は空母に通信が傍受されない距離で無線機の調子を確認がてら、潜入組とイコン部隊の両方と通信を行う。無線機の周波数を全部隊で事前に統一しつつ作戦の最終確認も行う。
「本来は山葉の役割なんだがな。不安だから代行だ」
 静麻はそう軽口を叩く。
 ついでに統一した周波数以外の電波を妨害できるかも確認し、成功すると壁に体を預け目を瞑った。

「ヒャッハァ〜! 山葉が現場に着くなり女をナンパしてやがるぜ!」
 焦げ茶色のモヒカンの、いかにも世紀末救世主に一撃で倒されそうな悪役的な外見の南 鮪(みなみ・まぐろ)がそう言って涼司を煽る。
「ヒャッハァー馬鹿だな山葉は。だからお前はメガネなんだぜ。覚えてないなら覚えさしちまえば良いんだぜ。今の一番になる事が大事なんだぜ。そうだなァ〜お前の代わりに俺の事を覚えて貰っちまうとかどうだァ〜?」
「っな……ざけんな」
「おー、怖い怖い。ヒャッハァ〜じゃあ次はお前の幼馴染も美味しく戴いちまおうかァ〜?」
「舐めるなよ……」
「鮪さん、涼司さん……」
 パートナーと恋しい人の間に立たされてオロオロとする花音。そんな花音に鮪がそっと耳打ちする。
「山葉は馬鹿だからな。あいつよりオトナの俺達がちょっと刺激を与えてやろうって話しだぜ」
「でも……」
「まあ、いいから任せときな。おい、山葉、大切な幼なじみなんだろ? だったら自分の手でどうにかしろや」
「ああ! 言われなくてもやってやるよ!」
 鮪の狙い通り涼司は発奮したようだった。
「興奮しすぎだよー!」
 そう叫びながら薄茶色の髪を後ろで束ねた少女五月葉 終夏(さつきば・おりが)が涼司にラリアットを仕掛ける。
 そして体制を崩してから軽くスリーパーホールド。
「なにすんだよ、終夏!」
『……さすがに、動揺していたとはいえ「お前じゃない」って言い方はよくない。あとでちゃんと花音ちゃんに謝っときなよ』
 涼司の耳元で終夏が囁やく。そして技を解いだ。
「わーったよ。鮪も終夏もお人好しすぎだよ。俺はそこまで弱くねえよ」
「ヒャ〜ッハァ〜。俺がお人好し? 馬鹿言うなよメガネ。だからお前はメガネなんだ」
 鮪は照れ隠しかそんな憎まれ口を叩く。
「へいへい……」
 涼司は呆れて首をすくめた。
「あのカノンっていう子が、もし本当に涼司の幼なじみだとしたら……大丈夫だよ、そのうち涼司のことも思い出してくれるって! でも、何であの子、記憶をなくしてイコンのパイロットなんかやってるんだろう……」
「それがわかればなぁ……」
「一人でイコン動かしてたし、ひょっとして強化手術されたとか?」
 緑色のツインテで、小柄で可愛らしい小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が涼司を慰めつつ推論を展開する。
「どうなんだろうな。その線もあるが、強化手術で記憶を失うもんなのか?」
「わからないよ。私天御柱の技術者じゃないもん」
 そう言って美羽が溜息をつく。
「だなー」
「涼司さん。あまり気にしない方がいいですよ。今は作戦中ですし」
 花音が涼司にそう言葉をかける。
「ああ、サンキュな」
 涼司が花音に礼を言ったその時だった。
『これより敵空母に接舷する。各員は戦闘準備をせよ』
 すべてのステルス飛空艇にその放送が流される。
「よっしゃ、いっちょやったるか」
 そうして戦士たちはアドレナリンを分泌させ始めた。

 ――一方鏖殺寺院空母

「これはこれは、メニエス・レイン(めにえす・れいん)様、よくぞおいでくださいました」
 空飛ぶ箒に乗って、額に鏖殺寺院の紋章を浮かべたメニエスは攻撃されることなく鏖殺寺院の空母に接触することに成功した。
「ごきげんよう、中を見せてもらおうと思うんだけど、ここを指揮する者にお会いすることは可能かしら?」
 銀髪と赤眼を持ち目付きの悪いいかにも魔道士然としたメニエスがそう問う。
「はい、問題ございません。ご案内いたします」
 鏖殺寺院のメンバーはメニエスに敬意を持って接し、慇懃な態度を取る。
 しばらく上質なメイド服を着た吸血鬼であるパートナーのミストラル・フォーセット(みすとらる・ふぉーせっと)とともに空母の中を歩かされ、メニエスは空母の司令官と面会することに成功した。
「いらっしゃいませ、メニエス殿。お噂はかねがね伺っております」
 司令官は丁寧な敬礼をしてメニエスを迎えた。
「この度はイコンとやらがどんなものか間近で見させてもらおうと思ってね。見学できるかしら?」
「はい。構いません。おい、メニエス殿をご案内して差し上げろ」
 司令官の言葉にメンバーは敬礼をして答えると、「こちらへ」と言った。
 そして歩くことしばし。メニエスとミストラルはイコンデッキにたどり着いた。ちなみに人気はない。
「へえ、これがイコンね……」
「ふん。こんな鉄の塊がなんだというのだ……」
 メニエスとミストラルがそれぞれの感想を述べると鏖殺寺院のメンバーが説明を始めた。
「イコンは戦車や戦闘機以上の戦闘能力を誇ります。こちらがシュバルツ・フリ―ゲ。指揮官用の機体です」
「なるほどね……」
「こちらがシュメッターリング。シュバルツ・フリ―ゲの量産型で一般兵が使用します」
「装備はマシンガンのみ……これでは接近戦に弱いのではないかしら?」
 ミストラルがそう言うと鏖殺寺院のメンバーは笑って答えた。
「そこはそれ、戦術でいくらでもカバーできます。まあ、いずれ接近戦用の武装も開発されるかもしれませんが、今はマシンガンのみですね」
「ふむ……そこはまだ改良の余地有りね」
「そうでございますね……」
 メニエスの言葉にメンバーはそう応じた。

 一方仮面で素顔を隠したトライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)も鏖殺寺院鮮血隊の自称副隊長として仮面で素顔を隠して空母に乗り込み、司令官と面会していた。
「イコンなんてもんを引っ張り出されちゃ、自称・鮮血隊副隊長としちゃ商売上がったりだぜ」
「そう仰いますな。イコンも所詮は兵器。イコンだけでは戦争はできません」
 司令官はトライブにそう説明する。
「ところで、今回のこの空母の進軍の目的はなんだ? それと、イコンの訓練はどこでやているんだ?」
「我々の目的は人類の精神的な根源であるパラミタからの、地球勢力の排除です。ちなみに訓練は中東やアフリカ各地でやっております」
 そう云うものの、司令官自身が地球人であるためウサン臭さは隠せない。
「ふーん。ちなみに、イコンも見せてもらっていいかな? あと、俺でも動かせるのかな?」
「イコンの見学はご自由に。ただ、動かすのは無理でしょうな。専門の訓練を積んでいないとF1レースの車を1速で動かしているような操作しかできません。とても戦闘は無理です」
「なるほどね。じゃあ、見学させてもらえる?」
「結構です。おい、鮮血隊の方をご案内して差し上げろ。先客がおりますが、お気になさらずに」
「了解」
 トライブはそう言うとイコンデッキへと案内され、メニエスと共にイコンを見学することになるのであった。