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リアクション
〜空を舞うキージャ族の褌を叩き落せ!
ビーチバレー大会!〜
「さぁて! 最後の競技ですよ! 皆さん、ビーチバレーは好きですかああ!?」
ルイ・フリードがマイクに向かって叫ぶと、応援席のメンバーは大きな声で答えた。
競技参加者以外は応援席を用意して、観戦する姿勢になっていた。とはいえ、人数不足のためこの競技は勝つか負けるかの試合となっている。
ミューレリア・ラングウェイはため息混じりに準備運動をしていた。
「なんだかちょっとさびしいよなぁ。どうせならトーナメント戦とかやりたかったんだけど」
「ええ、ですがあまり長引くとみんなと遊ぶ時間が少なくなります」
ルーノ・アレエがそう口にすると、ミューレリア・ラングウェイは驚いたように目を丸くしたがすぐに笑顔に変わる。
「ああ、そうだよな。桜紀もがんばろうな!」
「うん」
元気よく返事をした真城 桜紀と三人で、彼女たちは円陣を組んだ。そこへ、楠見 陽太郎とイブ・チェンバースが声をかけてきた。楠見 陽太郎は若干寝不足気味のようだったが、何とかから元気でがんばっているようだったので、あえて誰も突っ込みを入れなかった。
「俺たちも入れてくれよ」
「あたしも一応参加者なのよ?」
2人を入れたところで、ナガン ウェルロッドが二日酔いの頭痛を押さえながら、更に割って入ってくる。
「まぁ、ガンバローや」
軽いその言葉に、一同は気合を入れて答えた。
コートといっても、砂地に簡単に線を引いただけのその場所に、対戦する選手達はお互いににらみ合っていた。
「普通のバレーボールよりも柔らかいものを使用する簡易ルールのバレーボールです。
しかも、落としたほうの失点になるので、ラリーが続く限り点数を奪うことが出来ない仕様です。
ただ、あまりにも長引く可能性がありますので、先に10点とったほうの勝とします」
「さて、先攻はこっちなのか?」
ナガン ウェルロッドが自信満々の不敵な笑みを浮かべ、昨日のみ明かしたタク・アンを睨みつける。タク・アン自身も、ナラ・ヅーケもその表情は真剣そのものだった。日差しはまだそこまで強くはなかったが、今日も暑くなりそうだった。
「いくぜ!!」
合図と共に、ボールが飛び上がる。だが打ち付けてきたのはナガン ウェルロッドではなくミューレリア・ラングウェイだった。その勢いを誰も拾うことが出来ず、まず一点を得ることができた。
「へへ、まず一点!」
「ナら。コちラも」
ナラ・ヅーケが飛び上がると、柔らかくボールを叩く。だが、そう見えただけで威力はまるで大砲のようだった。ルーノ・アレエが何とか受け止めるが、上に上げるのが限界だった。片腕がビキビキ、と音を立てている。
「ルーノさん!」
応援席の朝野 未羅が悲鳴のように声を上げる。朝野 未沙は工具を準備し始め、いつでも出られるように支度していた。クロス・クロノスも背筋に嫌な汗をかきながら観戦していた。
「でもこれじゃ、他の人も尋常じゃない怪我をしそうですね……」
昨日のうちに救護班テントを片付けてしまったので、少し席をはずして救急用具を取りにいった。と、同じことを考えていたらしく如月 日奈々とヴァーナー・ヴォネガットとかち合う。3人は苦笑しながら、用意だけ整えて観戦をしていた。
「っく、なゼ……」
叩きつけるボール、全てがミューレリア・ラングウェイの周りに集められてしまう。
「ミューレリアゾーン……サイコキネシスで引き寄せるんだぜ」
にやりと笑って、その八重歯をのぞかせる。キージャ族の若者達は、なんとしてもミューレリア・ラングウェイから離れたところに叩きつけようとするが、それも全て楠見 陽太郎に拾われてしまう。
ついに楠見 陽太郎は勢いをつけて飛び上がった。
「いきますよ……轟雷閃アターーーーーーーーーーーック!!」
楠見 陽太郎の放った一撃は、砂地に穴を開けるほどの一撃だった。応援席から歓声が沸きあがる。本人もあそこまでうまくいくとは思わなかったのか、ちょっとビックリしている様子だ。
「陽太郎、よそ見してないで!」
イブ・チェンバースはアタックをかけようというキージャ族の男性相手に、自分の肢体を惜しげもなくさらすため、胸元を寄せる。
「せくしーふぃーるど……っ」
んふ、とイブ・チェンバースがウィンクを投げかけると、アタックに失敗したようでそのまま自分の陣地にボールを落としてしまった。それを目にすれば妖艶な魔女はガッツポーズで喜びを表現する。
「……私も、負けてられない!」
メンバーの活躍を目の当たりにし、拾うのに必死だった真城 桜紀は飛んできたボールに向かって勢いよく駆け出した。だが砂地に足をとられてしまい、ジャンプのタイミングがずれてしまった。
腕ではなく、顔面にボールが直撃する。運よくもち上がったそのボールを、ナガン ウェルロッドが叩きつけた。
「これで、十点目だああああああ!!!!」
勢いよくたたきつけたそのボールは、あまりに強い衝撃ゆえに、破裂してしまった。
応援席から歓声が上がり、合宿参加者の勝利となった。
競技が終わると、簡単な治療や修理を行いながら昼食をとり、最後の遊び時間が与えられた。
御薗井 響子は朝野 未沙からフィンを借りて朝野 未羅、人魚達と一緒に海を泳ぎ始めた。赤羽 美央は砂のお城を作っているエルム・チノミシルを携帯で写真に収めた。思い出が一つ増えたことを喜びながら、海に視線を向けた。そこでは鏡 氷雨がスノウ・ブラックと共に水遊びをしていた。
「アンジェラさんも一緒に泳ぎましょ?」
ニーフェ・アレエが手を差し出すと、アンジェラ・クラウディは雨月 晴人の顔を見つめる。
「よし、なら俺も泳ぐかな!」
そういって笑顔を浮かべた彼の顔を見て、アンジェラ・クラウディは同じく笑顔を浮かべた。カナヅチ組みのエース・ラグランツと五月葉 終夏は少しでも、と泳げる仲間たちから教授されていたがなかなかうまくいかないようだった。
それを他人事のように眺めて笑っていたメシエ・ヒューヴェリアルがいきなりぶっ倒れて、その教授も途中で終了してしまったのだが。
「ふ、ふふふ……人を呪わば、あな、ふた……つ……」
「おーい、だれか水持ってきてくれ、後日傘ー」
「せっかくだから、罰ゲーム受けていただきましょうかー」
桐生 ひながひょっこりあらわれて、倒れているメシエ・ヒューヴェリアルに向かい微笑んだ。
「せっかく負けた人には罰ゲーム、って決めてたのに……なんだか皆さん楽しそうにしてるんですもん。ということで、競技にも運営にも参加しなかたメシエさんの人拓をとろうと思いまーす」
といってバケツに入ったタコの墨を取り出し、ベシャッとかけようとしていると、タク・アンとダッティーが通りかかってその二人が頭から被ってしまった。
「……まぁいいか。誰でもいいのですよー」
にっこり笑いながら、恐ろしいことを口走った彼女を止めるものなど、誰もいなかった。
墨を被った2人は何度も人拓を取らされ、それは桐生 ひなから各学校に送られることになるそうだ。
「遊びも大事だが、片付けもですな」
戦部 小次郎は建てたテントをキレイにばらしながらそう呟いた。赤城 長門もばらしに手伝いながら、先日優勝できなかった件でホーク・キティにギッタンバッタンにされたキズをなでる。
「ああ。何をとってもいい思い出じゃけぇのぅ」
そういいながら、湯上 凶司お手製の競技の名前が書かれた横断幕もくるくると巻き取っていく。文字を囲む飾り模様には、「クイーン・ヴァンガード広報部」の文字が大量に描かれていた。それに気がついたものは、ほとんどといっていいほどいなかったとか何とか。
「おーい、レロシャン、そろそろ変える仕度するから起きてくれよー」
姫宮 和希が声をかけても身じろぎ一つしないのは、レロシャン・カプティアティだ。どうやら昨日のつりの後から眠っているらしいのだが、いまだに起きる気配はない。迎えのバスの時間もあるので、ガイウス・バーンハートに背負ってもらい、バスまで連れて行くことになった。
「かまどの片付けは、こんなところでしょうか」
「リンちゃん、メリッサちゃん。手伝ってくれてありがとうね」
七瀬 歩の言葉に、ロザリンド・セリナは笑顔で返事をした。空はまだ突き抜けるように青く、日差しもまだまだ暑くなりそうだったが、夏合宿はこれで終わりを告げようとしていた。
帰りのバスの中、運営委員長の橘 綾音はみんなの寝顔を見て回っていた。
そして、バスがさいしょの集合場所に着いたとき、彼女がいう言葉は決まっているのだ。
「かえって休むまでが、合宿ですからね!」
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担当マスターより
▼担当マスター
芹生綾
▼マスターコメント
お疲れ様でした。
今年の夏合宿はいかがでしたでしょうか?
非常に残念ながら(?)、今回は普通の夏合宿を楽しんでいただきました。
リクエストもあり、私が使用しているNPCも出させていただきました。
以前からみがあった方にも、なかった方にも絡ませていただきました。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
詳細設定は、私のマスターページをご覧くださいませ。
今年の夏の思い出として、愉しんでいただけたならば幸いです。