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終章2 〜新たな始まり〜


 2020年7月。
 シャンバラは、東西に分断された。
 これによって、PASDの役割は変わった。
「司城君」
 空京大学の学長、アクリト・シーカー(あくりと・しーかー)は司城を呼び出した。
「PASDの処遇だが、元が中立として作られた組織だ。今後も、その役割を維持してほしい。研究や調査については……」
 アクリト曰く、シャンバラ統一のために、東西関係なく学生を受け入れる研究機関として運営してもらいたいとのことだった。
「あと、先程天御柱学院から連絡があったんだが、極東新大陸研究所から派遣されてきた研究チームの代表者が、この空京大学に向かっているそうだ」

            * * *

 PASD情報管理部。
「アレンさん、ではよろしくお願いしますね」
 ロザリンドがアレンと「取引」についての確認を行う。
 PASD存続を受け、彼女はアレンと継続して組む事にしたのだ。
「了解。オレがここで管理部長代行を引き受ける。それで、君がヴァイシャリーで得たエリュシオンの情報をオレに提供する」
 ロザリンドが通う百合園女学院は、東シャンバラの首都となった。エリュシオンからの介入が最も強いと思われるこの都市で、帝国の情報をPASDへと送る事を条件に、情報管理部長代行を引き受けてもらう事になったのだ。
「もちろん、こっちからも西シャンバラの情勢については送るよ。そういう事で、いいよね?」
 それぞれが東西シャンバラの情報窓口となる。
 アレンを紹介するとき、ロザリンドは彼を「最も信頼の置ける情報技術者」として強く推薦した。情報管理部の責任者が推すだけあって、すんなりと引継ぎは完了した。
 
 空京大学をから空京の市街地に出た時、ロザリンドは一人の女性に声をかけられた。
「君、ちょっと道を聞きたんだが、いいかな?」
 夏だというのに、丈の長い黒のロングコートを着ている。
「空京大学はどう行けばいい?」
 ちょうど彼女は空京大学から出たので、道順をその場で示した。
「助かったよ。ありがとう」
 その女性は、ロザリンドに礼を言い、空京大学へと向かった。

            * * *

「久しぶりだな、征」
 ロザリンドに道を聞いた女性は、空京大学に無事到着し、司城と顔を合わせていた。
「ロシアの研究者っていうからもしかしてと思ったけど、キミだったんだね」
「天御柱学院で教員をしていたと聞いていたが、まさか五年前からパラミタにいたとはな」
「キミの方こそ、軍にいたんじゃないのかい?」
 どうやら、二人は顔なじみのようだ。
「極東新大陸研究所設立の時に、引っ張り出された」
「なるほどね。で、キミが来たって事はやっぱり『サロゲート・エイコーン』関係かい?」
「そうだ。先程、インドの小僧にも挨拶は済ましてきた。一応は我々とこの大学が共同で研究を進める事で、同意は得られた。明日には声明が出るだろう」
 どうやら、彼女はその件でここを訪れていたようだ。
「『冷徹な白雪姫』『ミス・ロボット』他にも異名があったけど、キミがパラミタで何をするのか少し楽しみだよ、ジール」
 ジール、と呼ばれた女性はしばらく司城と言葉をかわした後、その場をあとにした。

「ホワイトスノー博士、お久しぶりです」
「おお、ノーツのとこの。随分大きくなったな」
 帰り際、リヴァルトと彼女は対面した。
「最後に会ったのは十一年前ですから。あなたがパラミタに来られるとは、驚きですよ」
「仕事だからな」
 大学の正門まで歩きながら、二人は会話をかわした。
 空には、人型のロボットが飛んでいた。サロゲート・エイコーンという新兵器だ。
「空京を飛んでるなんて、珍しいですね」
 海京からここまで上がってきたということは、何か所用があってのことだろう。
「一応、征のヤツには会って来たが、お前の方からもよろしくと伝えといてくれ。これから忙しくなってくるぞ」
「はい」
 正門前で、リヴァルトと別れ、研究者――ジール・ホワイトスノーは去っていった。

 空を駆ける『代理の聖像』と、彼女の訪れは、新しい物語の始まりを告げているかのようであった。


End

担当マスターより

▼担当マスター

識上 蒼

▼マスターコメント

 ご参加頂きありがとうございます。そして大変お待たせ致しました。
 ワーズワースの娘たち三部作、ついに完結です。
 同時に、私の中での「蒼空のフロンティア 第一部」がこれで終わったような気がします。
 正直、こんな長丁場のシナリオになるとは最初は思ってませんでした。番外編も含めると、原稿用紙に換算しておよそ2000枚の大長編となりました。びっくり。

 投票結果は以下の通りです。
【1】33
【2】19
 棄権・記入なし 16

 NPCと関わりがないため、棄権という方が多かったです。少々失念していました。

 リアクションに関しては、各々が感じたままのものが物語のテーマです、という感じです。内容に関してはあまり私が言及するものでもないかなと。
 ただ、「みんなが笑えるハッピーエンド」は、シナリオの性質上難しかったように思えます。ですが、『彼女』はきっと救われたのではないでしょうか。
 あとは、こちらの予想に反して、死んだキャラが少なかった事でしょうか。これについても結構驚いてます。

 リヴァルト達にスポットを当てた物語は、これで本当におしまいです。ただ、彼らも今後私のシナリオにはちょくちょく出てくるでしょう。

 それでは、これまでお付き合い下さいありがとうございました。
 次回、別のシナリオでも会える事を祈りつつ、今回はこのくらいで失礼します。


※8月24日(火) 名前の表記ミスを修正し、再提出致しました。