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【サルヴィン川花火大会】東西シャンバラ花火戦争!?

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【サルヴィン川花火大会】東西シャンバラ花火戦争!?
【サルヴィン川花火大会】東西シャンバラ花火戦争!? 【サルヴィン川花火大会】東西シャンバラ花火戦争!?

リアクション

「ええと、私たち、バイト代を出す余裕がありませんよ…?」
 咲夜 由宇(さくや・ゆう)はちょっと困っていた、フレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛い)が彼女の喫茶店の手伝いを申し出てくれるのはいいのだが、借金があるのでそんな余裕がないのだ。
「いえ、そんなのいいんです、チラシを配らせていただければそれだけで」
 ルンルン・サクナル(るんるん・さくなる)はそこを横から助言した。
「もし途中で事情のわかる人がいれば、いつでも抜けていただいてかまわない、ってことにすればいいんじゃない?」
 そうすればただ働きしてもらう由宇の心的負担も少なくなるし、ルンルンも仕事が増えるかもしれないというスリルを抱えることができる! なんでそう思うのかちょっとわかっていないけど!
「そうですねえ、一応チラシは置き場所をつくって、貴方がいない間も手にとってもらえるようにしましょうか」
「ありがとうございます、精一杯お手伝いさせて頂きます」
 ルイーザ・レイシュタイン(るいーざ・れいしゅたいん)も頭を下げる。
「いえ、お兄さん、見つかるといいですね」
 由宇はおだやかに微笑んだ。

「喫茶店やってますよーっ! あ、申し訳ありませんが兄を捜しています、この特徴に心当たりある方はご連絡下さいね」
 フレデリカは道行く人に声をかけながら、喫茶店のバイトの手伝いで、宣伝しつつお客さんに人探しのチラシを配っている。
 しかし花火大会のためか、人は多くても人探しのチラシまで受け取ってくれる人は少ない。
「みんな楽しそうだもん、無理ないかな…。兄さん、どこいっちゃったんだろうなあ…」
 本当なら、自分も道行く人のように兄に手を引かれて楽しんでいたはずなのだ。
 近くで同じように宣伝をしていたルイーザが、配る手を止め、チラシを抱きしめてつらそうな顔をするフレデリカをなぐさめる。
「フリッカ、大丈夫ですよ。必ず見つかりますって。
 きっとお兄さんの方も一生懸命フリッカを探していると思いますよ?」
「うん…きっとそうだよね…」
「…あら、どうも喫茶店の方が忙しくなってきたようなので、宣伝とチラシ配りのほう、お願いしますね」
 ルイーザは戻っていき、またフレデリカはひとりになった。

「…つい嘘をついてしまいました…」
 フレデリカから見えない場所までやってきて、ルイーザはため息をついた。
 罪悪感が胸を締め付ける。でも、ああ言わないとフリッカがそのまま壊れてしまいそうだったのだ。

「…なぜ俺は一人で来てしまったんだ!!」
 二色 峯景(ふたしき・ふよう)は心で咆えていた、まわりはカップルばかり、ピンクのオーラがうざったい!
 我ながら、お祭りに一人というのは悲しいし切ないものだ。
 ぶらぶらと露天を冷やかし、その最中に屋台と屋台の間で気になるものを見つけた。
 赤い髪の女の子がしゃがみこんで、どうもしくしく泣いているようだ。
「えと、おじょーちゃん一人? 迷子かい? おっと怪しいもんじゃない、俺は二色 峯景」
「ぐすっ、…迷子じゃ、ないです。置いていかれちゃっただけだもん…」

 さっきまでしくしく泣いていた女の子はフレデリカと言って、ずっとお兄さんを探しているらしい。
 人ごみを見て、取り残されたような気持ちになって、不吉な考えに囚われていたようだ。
 しかし、今は回復してなんと、ひたすらお兄さんの自慢話を始めた。
「それでね! 兄さん、当時から凍てつく炎とか使いこなしてたのよ! きっと今頃、もっと凄い魔術師になっているはずよ!」
「はあ…さいでっか…」
 ブラコンだ、すっげーブラコンだ。ついでに今の自分の返答、面白みがなくて0点だ。
 でも、しくしく泣いているよりはこんな風に笑っているほうがいい子だと思う、きっとお兄さんにはものすごくかわいがってもらっていたんだろう。
「そういやパートナーさんはいるんだろ? もっとパラミタに詳しくて、手がかりのつてとかないものかな」
「ルイ姉には、聞けないの。昔恋人を亡くして、どうも兄さんの話を聞くと、恋人さんを思い出してしまうみたいだから…」
「ひとりで頑張ってるんだなあ」
「そんなことないよ、つらいだろうに手伝ってくれるから、感謝してるの」
 二人で話し込んでいると、予想外に時間が過ぎていく。
「あー、サボりすぎちゃった、そろそろ戻らなきゃ」
「そっか、じゃあ、そのチラシ俺にもくれよ、何か思い当たることがあったら連絡するよ。あ、ちょっと待ってな」
 ささっと近くのリンゴ飴の屋台に駆け寄り、何かを買って戻ってきた。
「これでも食って、元気出せ。じゃあな」
 彼女の目の色みたいな、鮮やかな姫リンゴ飴をその手に握らせて、峯景は手を振って去っていった。
「…もう…大きなのだったら、食べられないわって言えたのに」
 フレデリカは昔、兄に大きなリンゴ飴をねだったことがある。しかし小さな彼女ではそのリンゴ飴は大きすぎて、ほっぺたや服をべたべたにした挙句ぼとりと落としてしまった。しくしく泣く彼女に、兄は『次は姫リンゴ飴にしよう』と頭を撫でてくれたのだ。
 結局その約束が叶えられる前に、兄はいなくなってしまったけれど。
 あの人はぜんぜん兄さんには似ていないのに、どうしてこんなに、兄さんを思い出させるのだろう。

「ふふっ、フリッカも隅に置けませんね。…でも、お兄さんの自慢話ばっかりって言うのはないんじゃないですか?」
「きゃぁぁっ! ルイ姉、見てたの!?」
 大慌てのフレデリカに、ルイーザはにっこりとビデオカメラを掲げた。
「え? もちろん見ていたからに決まっているじゃないですか。ほら、これにばっちり」
「わ、私そんなことまでしてないわ! ソートグラフィーの捏造ね! ルイ姉ひどいー!」
 きゃーきゃーと騒いで、ルイーザのビデオカメラをとりあげようとばたばたするフレデリカは、少しは元気を取り戻したはずだ。

 神和 綺人(かんなぎ・あやと)クリス・ローゼン(くりす・ろーぜん)ユーリ・ウィルトゥス(ゆーり・うぃるとぅす)神和 瀬織(かんなぎ・せお)は由宇の喫茶店で一息をついていた。
 彼らは浴衣にデザインの共通項があって、ひと目で4人は連れだとわかる。
 紺地に紫陽花の模様、かたや瓶覗きに紫陽花。もう一人の小さな子は紅梅の浴衣、色違いで模様はお揃いでかわいいものだ。
 お兄さんは、多分保護者なのだろうな、そう由宇は見て取った。
「こちら、特製こだわり紅茶と特製ケーキになりますぅ」
 店内にはいすとテーブルはカップルを意識して二人組みセットのものしか置いていない、もちろん綺人とクリス、ユーリと瀬織が同じテーブルについている。
 紅茶とケーキをいただきながら、花火大会を眺めていた。
「なんか、たこ焼き屋台に近づくなっていううわさがあったよね、騒ぎが起きてるとかなんとか」
 たこ焼き、食べたかったんだけどなあ、とつぶやく綺人に、クリスは尋ねた。
「アヤ、中洲のうわさのほうは、ご存知ないのですか?」
 クリスは中洲に行きたかった。綺人との絆を確認してみたかったのだ。
「知ってるよ、今さらじゃない。絆を確かめるのなんて」
「そうですよね。私たちがロケット花火の雨の中を生き延びるのなんて、決まり切ってます!」
 盛り上がる二人を眺めながら、ユーリはぼそりとつぶやいた。
「お前達が参加しないでよかった…」
 彼の脳裏には、二人が大惨事を引き起こすシミュレーションがありありと見えている。
「なにやら陰謀を感じなくもありませんが、結果楽しければよいのでは?」
「そうかもしれんな」
 そしてわたあめを欲しがっていた瀬織を連れ、ユーリは席を立った。
 歩幅の違いすぎる瀬織を抱き上げて歩き出す。
「言っていかなくていいのですか?」
「すぐ連絡はとれる…それに少しくらい、二人きりにさせてやった方がいいだろう」
「そうですね」
 微笑むユーリに、妹扱いされているな、とちょっと拗ねながらも、瀬織は彼の肩に手を置いた。

 マーゼン・クロッシュナー(まーぜん・くろっしゅなー)はばかばかしくなってきた
 東西戦争などという名前を冠してはいるが、ただのお祭り騒ぎだ。ロケット花火を撃つ側もグループもリーダーもなく、個人プレーの塊でとりとめがなく、私情に駆られているものが多く見受けられる。
 教導団、すなわち西側に属する彼らだが、あえて東に身を置いて、東側の情勢を探り、同時に西側を攻撃することで自陣を客観的に観察してもいる。
 金団長のためという思いがなければ、早々に撤退していたかもしれない。
 アム・ブランド(あむ・ぶらんど)本能寺 飛鳥(ほんのうじ・あすか)も、東のエリュシオンの影響を調べに行っていたが、成果ははかばかしくはないようだ。
「だめだわ、皆浮かれすぎて話になりません」
「確かに怪しい人はいたけど、愉快犯ばっかりだよ」
 たこ焼きに何かアヤシイなにかを仕掛けられたとか、ロシアンたこ焼きがどこかで爆発したとか、たこ焼きばかり犠牲になっている。さすがに彼らにはたこ焼きに対する思いはないため、それらが東西に関連するのか否かはさっぱり判断がつかず、ペンディングにされた。
 マーゼンはふと、気になるものを見つけた。
「中洲を見てみて下さい」
「何かありましたの?」
 混戦状態で人は動き続けている、彼が何をさしているのかがとっさに分からずにいると、マーゼンはあそこだ、と視線を近づけて指を差す。
 視線の先では、カップルの二人が手をつなぎ合い、力を合わせてロケット花火を捌いている。時々微笑みあっては、力強い顔をして互いの死角を埋めあい、縦横無尽に戦っている。
 彼らのリストには、二人は蒼空学園生とイルミンスール魔法学校生だとある。東西に分かれたもの同士が、なおも歩み寄ろうと努力しているように見えた。本人たちは、ただお互いしか見えてはいないと思うのだが。
「大局を、彼らのささやかな絆に仮託することは愚かですがね」
 いつかまた、シャンバラが一つに戻る日が来るだろうか。
「そんな日が来るといいね」
「ええ、そうですね」
 そしてアムはそっと胸のうちでささやくことがある。
 視線を寄せられたときに、肩に置かれた手がそのままだ。触れるあたたかさに彼女の中で膨れ上がる塊と、願うものが存在する。
 彼女は、もっと近しくなりたかった。互いに立つ場所も、心の位置も。目の前の彼女らのように。

 影野 陽太(かげの・ようた)は中洲の様子を遠目に眺めていた。
 エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)が彼を呼び、中州から視線を引き離して駆け寄り、屋台の払いを持った。たまには羽を伸ばさせてあげたい、と完全に財布係りである。
「おにーちゃん、ありがとー」
「ほかに何か見たいものある?」
「あれはなんですか? お魚がいます。あっちもなにか銃でパンパンうってます」
「金魚すくいですわ、あちらは射的ですわね、行ってみましょうね」
 微笑ましく屋台をめぐる二人や、まわりのカップル、中洲で頑張る人々を思いながら、自分の大切な人のことをも思い浮かべる。
「カンナ様、どうされているかなあ…。電話、してみてもいいかな…」
「あら、貴方もいたの」
 陽太が振り向くと、まさかまさかの人物がそこにいた。
「…えええ?! 」
「…うるさいわね、私だってたまには花火大会くらい見に来るわよ。涼司に引きずられてきただけだけど」
 着くなりどこか行っちゃったわ、せいせいするけど、と呟く御神楽 環菜(みかぐら・かんな)を、陽太は呆然と見ている。
 白地にほのかな藍染めの花を散らした浴衣に、落ち着いた赤紫の帯を締め、髪を結い上げてうなじを晒している。
 彼女らしく、いつものサングラスではあるけれど。
「さすがに浴衣でサングラスはないかしら」
 そういってサングラスを外す環菜に、陽太はやはり言葉もなかった。
 エリシアとノーンが二人に気づき、物陰に隠れて二人を見ていた。この状況で褒め言葉の一つも出てこないパートナーにおかんむりである。
「…もうちょっと、なんとかなりませんの!?」
 パートナーをすっかり忘れて、陽太は環菜と相対している。
「それに、プライベートでは、私はなんと言ったかしら?」
「はっ! で…デート中は、なな…名前でお呼びすると…!」
「そして、貴方が今すべきことは?」
「エスコート、させていただきます、環菜!」
 差し出された手を、陽太はおっかなびっくりうやうやしく取ってぎくしゃくと歩き出した。
 環菜はいつも手から離さない携帯電話を閉じ、かご巾着にしまいこむ。
「それにどうせ電話をかけるなら、もっと早くしなさいよね」

 その様子をエリシアはこっそりと携帯で写真に収めた。
「わー、カップルですね」
「ですね、もうちょっとがんばりなさい陽太。さあ、次は何を食べに行きましょうか」
「ひよこさんも、さわってみたいです!」

「ふはははは、可愛らしいカップルの皆さん! いや勇気ある比翼の鳥達よ! 愛の伝道師たる、この私の愛の試練に耐えて見せなさい!」
 自称『愛の伝道師』エッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)は高笑いしながら、中洲にロケット花火を打ち込んでいく。
「おおっとぅ!」
 飛んできたロケットを、卑怯にもパートナーのアーマード レッド(あーまーど・れっど)を盾にしてかわした。
 ひたすら寡黙にロケットを打ち出し続ける巨大ないかつい機晶姫と、ぴょこぴょこ動き回りながら大騒ぎする(相対的に)小さな人影はひたすら火力にものを言わせて中洲にロケットのなだれを撃ち込んでいる。
「ふふふ、これだけでは済みませんよ…」
 エッツェルはにやりとわらった。少し後ろの方に大量のロケット花火を隠してあるのだ。
 ファイヤーストームで全弾一斉掃射、しかし。
 ガコーン!!!
 一部のロケットが、レッドの頭部に直撃した。
 レッドの背の高さを計算にいれずに隠し玉を仕掛けたエッツェルである。
 ゆっくりと振り向いたレッドは、喋ることこそできないが、その繊細な可動角制御をもってじっとりと恨み節を表現した。
「ああっ、ごめん、怒らないでレッド悪かったです!」

「うっひゃあ!」
 景気よくロケットを打ち込む月夜見 望(つきよみ・のぞむ)の足元にロケットが突き刺さり、尻餅をついた。
「すっげえ、ここまで飛んできてこの威力!?」
 天原 神無(あまはら・かんな)はブチギレである。
「あたしの望くんになにすんのよ!」
 角度からして、対岸にいるのはでかい機晶姫と、そのまわりでぴょこぴょこしているやつだ。
「すげえすげえ、イコンほどじゃないけど、あの機晶姫さん整備してみたいな」
「何言ってるのよ、あいつらは望くんに怪我させようとしたのよ!?」
「しょうがないじゃん、ケンカ祭りみたいなもんだろ、むしろ怪我してなんぼってやつ?」
 怪我したら、手当てしてくんねーの?
 無邪気な望の微笑みに応えねばと、新たな目標を決める神無であった。

「ふふふ、みなさん頑張ってくださいねー」
 最初は、今自分が打ち出しているこのロケットで怪我をしないか心配していた神楽坂 翡翠(かぐらざか・ひすい)だが、もう今やノリノリである。
「よく考えたら、倒れたって看護イベント、ありますもんね。いいことですねー」
 そう結論付けたのだ。
 レイス・アデレイド(れいす・あでれいど)は、すさまじい周りの花火を打ち込む勢いにちょっと青ざめ気味だ。
「ほとんどのカップル達は中洲関係なくイチャ付いているだろうし、これはほとんど恋人ナシの奴らか…嫉妬の力恐ろしいぞ…」
「あはは、皆さん、派手に撃ち込みますねえ、リア充がよほどムカツクのでしょうか?」
「死人が出なけりゃいいがな」
 ロケットの打ち込み手伝いをするも、翡翠ほど楽天的に考えられず、やっぱヤバくね?という思いに汗している。
「わあ、あの人ふっとんだー。服焦がしちゃったらごめんねー!」
 榊 花梨(さかき・かりん)は嬉々としてロケットを並べ、火をつけていた。
 手加減なしにロケットが次々と撃ち出される、次をやろうとしたら、近くに花火は見つからなくなっていた。
「やりすぎだ、そろそろ打ち止めになってきたぞ」
 花火を集めていたレイスがあきれる。
「もう大分時間も経ちましたしね、そろそろでしょうか」
「うーん…残念。楽しかったから、またやりたいな縲怐v

 茅野 菫(ちの・すみれ)パビェーダ・フィヴラーリ(ぱびぇーだ・ふぃぶらーり)は、中洲でひたすら逃げ回り、機会をうかがっていた。
 途中でロケット花火ではありえない威力のミサイルぽいもの、ロケット花火によく似た何かが降ってきたが、さほどしないうちに止んでしまい、様子見をしているうちに、花火の数も減ってきたように思った。
「さあ、ここで勝負! リア充は殲滅っ! あとなんで年の合うNPCいないんだよっ!?」
 後半はよくわからないが、なんだかリア充への意気込みだけは感じられる。
 一方パビェーダは久しぶりに菫と出かけられてうれしかった。手をつないで走り回るのは楽しいし、悪巧みはちょっと心が痛むけど。
「申し訳ありませんけどっ!」
 そういって周りのカップルのつないだ手に攻撃してまわる。女同士も男同士も普通のカップルもおかまいなしに絆チョップをかます。
 菫は持ち込んだネズミ花火をぽいぽいカップルたちに放り投げ、驚いて手を離すのを期待して暴れ回っていたのだが、次第に不発弾を拾っては岸に撃ち返したりしはじめた。
 塊で打ち出されたロケットの中に、ときどき導火線に火がついていないものが混ざっているのだ。
「ひゃっほう!」
 そのとき、牙竜と雅、西岸の巽は同士討ちを起こしていた。長かった戦いは、決着はつかなかったようだ。
 死力を尽くした二人のリア充をめぐる戦いは、両方とも文字通り力尽きるまで続いた。周りのロケットも最後の名残とばかりにその数を減らしている。
「皆がんばれよ…俺からの最後のプレゼント…!」
「忘れるな! 我が倒れた所で、第二、第三の……」
 牙竜は前日から牙竜が中洲の中に隠していたロケット花火の導火線をなんとか探り当てる、紐を引き点火すると、地面の下からロケット花火が次々と打ち出された。
「うわっ、なんだーっ!?」
 菫たちが仕掛けたものではない花火が足元を崩した。
 おまけに、用意しておいたネズミ花火にまで火がついたのだ。
「や、やばい…!」
 あわててはじける前に大量のネズミ花火を投げ出した。

 打ち上げられた花火と、すさまじい破裂音が中洲を埋め尽くした。
 今度こそ手を離すもの、それでも耐え切ったもの、最終的な審判は下されたのだ。