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闇世界…村人が鬼へ変貌する日早田村

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闇世界…村人が鬼へ変貌する日早田村

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第4章 鬼と鎌鼬と騙し騙される鬼ごっこ?

「あれれっ!私のユニコーンがいない・・・」
 村が闇世界に変貌したとたん、歌菜のユニコーンがいなくなってしまった。
「変わると乗り物は全て村の外に出てしまうみたいだよ」
「そんな〜」
 真に言われ歌菜はしょんぼりとする。
「歌ってればくるかもしれないよ?」
「そうですね・・・。ユニコーンがいないと歌えないわけじゃないですし!」
「イタゾ、ニンゲンダァアッ」
「高台から!?」
 見上げるとそこには鬼が火縄銃で歌菜を狙っている。
「歌菜さんっ。(ここからじゃ間に合わない!)」
 ズダァンッ。
 銃声が闇夜に響き渡る。
「―・・・っ」
 何も出来ないまま終わってしまうのかと、歌菜は思わず目を閉じてしまう。
「あれ・・・。私・・・まだ生きてる・・・?」
「そんなところで姿も隠さずにいるなんて、いい的にされてしまう」
 レオナーズ・アーズナック(れおなーず・あーずなっく)はふぅとため息をつく。
 火術の炎で銃弾を落としてくれたおかげで歌菜は間髪助かったのだ。
「アーミスも油断しないように・・・って・・・いない。どこにいったのかな?」
 傍にいたはずのアーミス・マーセルク(あーみす・まーせるく)が、どこかで逸れてしまった。
「鎌鼬さん・・・どこにいるんでしょう。女の子の姿のようですから怖くないはずですけど・・・うぅっ」
 咲夜 由宇(さくや・ゆう)は怯えながら民家や路地をキョロキョロと見ながら進む。
「ほんと怖がりだなぁ」
 気を紛らわせてやろうとアレン・フェリクス(あれん・ふぇりくす)は、彼女にペシッとでこぴんをする。
「あうっ!何するんですか、痛いです〜」
「はははっ!元気になるように歌ってあげようか?」
「や、やめてください。鬼に気づかれたらどうするんですか!」
「冗談だって」
「―・・・〜っ、アレンさぁあんー」
 からかわれたと分かり、恨めしそうな顔をしてアレンを見上げる。
「きゃあ、ドアが!」
 バタンッと急に民家のドアが開き、由宇は足をもつれさせて転びそうになる。
「ウマソウナガキダッ、ドッカラクッテヤロウカ」
 民家のドアを蹴り開けてノコギリを手に鬼が少女に襲いかかる。
「1匹なら余裕だねっ」
 由宇を守ろうとアレンはルーンの剣にアルティマ・トゥーレの冷気を纏わせ、得物の持つ手首に斬りつける。
「ギャァアッ、キラレタ!」
 鬼は手首を押さえ、叫びながら砂利道を走っていく。
「逃げていったならもう襲ってこないよね。―・・・うぁあっ!?」
 通路の角を曲がろうとしたその時、倉庫の傍に隠れていた鬼がもう片方の手を使ってノコギリを振り回す。
「これが鬼なのねっ」
 民家が並ぶ路地からやってきたアーミスが、雷術の雷をノコギリに落とし、鬼を感電させる。
「怪我はないみたいね」
「痛覚がないのに逃げたと思わせて、不意打ちを仕掛けようとしていたんだね」
「そうやって騙して襲おうとしていたみたいよ」
「(由宇の殺気看破があるからって油断出来ないねぇ・・・)」
 気をつけなきゃなと、アレンはぐしぐしと髪を掻きあげる。
「まったくもう、こんな時にレオナはどこにいるのかしら」
 アーミスは逸れたレオナーズを探しながら探索を続ける。



「この辺にいそうな感じがするんですけどね」
 ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)は髪に鈴をつけ、鎌鼬を探し歩く。
「スズノオトガキコエル、ドコダ?」
「鎌鼬の声・・・じゃなさそうですね。鬼でしょうか」
 倉庫の裏側から見ると、民家の方をクワを持った鬼がうろついている。
 路地から離れるの待っていると鬼同士がコソコソと何か話してる。
「何でしょう、ここからじゃ聞こえませんね・・・。あ、やっと離れて行くみたいです」
「ソコカ!」
 ほっとしたのも束の間、会話していた1匹が高台の方から彼が隠れているところへ回り込んできてしまった。
「魔を遠ざけるどころか気づかれてしまうなんてっ。あんなので殴られたらひとたまりもありません!」
 鬼が振り回すトンカチを避けながら全力で走る。
「ひとまずあの細い路地の方へ逃げましょう。仲間を呼ばれてしまっては大変です」
「ドコニイッタ、ガキィイ!コッチカー?」
 民家が並ぶ道で大声で喚きながらウィングを探し、彼がいる路地から離れていく。
「はぁ・・・なんとかまいたようですね。―・・・おや、あんなところに子供が?いえ、小さい子供がこんなところに1人でいるなんて不自然ですよね・・・」
 気づかれないようにそっと近づく。
「妖怪がそんなところばかり好むと思ってるの?」
 少女はぱっと振り返り彼の行動を見透かしているかのようにクスクスと笑う。
「これならどうでしょうか?」
 逃がすものかとウィングが路地に塩をまく。
「相手が悪かったですね。風になっていようと、私の刃から逃げることはできませんよ。今が年貢の納め時です・・・御影流閃蒼剣、時斬霊刃閃!!」
 風となり迫りくる鎌鼬をブライトグラディウスの刃で斬りつけようとする。
「ふふぅん〜♪それくらいで風が斬れるわけないじゃないー。塩もきかないよぉー、じゃあね退魔師のお兄ちゃん。きゃっははは♪」
 小ばかにするように彼の周囲をぐるぐると回り、飛んでいってしまう。
「くぅっ、ここは他の方たちと協力したほうが良さそうですね。このままばかにされたままでは癪ですし!」
 去っていく少女を悔しげな顔をして睨んだ。



「オメガに対してこんなことをする奴は、俺の知っている限り十天君しか見当たらないな・・・」
 グレン・アディール(ぐれん・あでぃーる)は周囲を警戒しながら、その目的を探ろうと鎌鼬を探す。
「そうだろうな。でもまぁ、こんな回りくどい卑怯な手を使うのは、董天君じゃねぇな」
 思い人は裏からコソコソとするようなヤツじゃないと言い、李 ナタも一緒に探している。
「いくら子供の姿をした妖怪でも許せませんね」
 怒りながらソニア・アディール(そにあ・あでぃーる)も、民家の中へ入り鎌鼬がいないか見る。
 民家から出ようとした瞬間、ガタタッと天井の方から音が聞こえ、真っ暗な空間を見回す。
「鎌鼬か?どこにいやがるっ。―・・・むぐっ」
「静かにしろ・・・ナタク」
 自分たちの位置に気づかれて逃げられてしまうと、大声を出す彼の口をグレンが手で塞ぐ。
「ネズミじゃないようですね」
「あぁ・・・風が通るような音だ」
 キョロキョロと天井を見上げるソニアに、声を小さくして言う。
「こっちの方に風が吹いたはずだけど」
 カタンとドアを開け、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が民家の中へ入る。
「どうしたんですか?天井なんか見上げて」
 ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)はじっと天井を見ているグレンたちに声をかける。
「この裏に鎌鼬がいるかもしれない・・・」
「そうなんですか・・・!?」
 声のボリュームを小さくし、大声を出さないようにベアトリーチェが片手で口を覆う。
「俺はこれから林の中にある湖のところへ行き、トラップを作っておく・・・。そこへ追いやってもらいたい。ソニア、ナタク・・・手筈通りに頼むぞ・・・」
「えぇ分かったわ」
「了解です、グレンさん」
「任せとけっ」
 そう言うと美羽たちは、そっと民家の外へ出ていく。
「とはいっても、あからさまに誘っているようなのがバレたら出てこないわよね」
「天井を破壊して探し出しても、それだけじゃ逃げられてしまいそうです」
 どうやっておびきだそうかソニアも考える。
「まずは出てきてもらわねぇとな」
 ドバタバタとはしゃぎまわる風の音を聞き、ナタクは顔を顰める。
「私の歌で誘い出してみるわ!」
 マイクを片手に楽しげな歌で、屋根裏にいる鎌鼬を歌菜が誘い出そうとする。
「では私たちは向かい側の民家に隠れていましょう」
「こんな大勢の姿が見えては警戒されてしまいますからね」
 ベアトリーチの後に続き、ソニアたちも姿を隠す。
「まいごのまいごの、あの子はだーれ?魔法の言葉を唱えよう♪」
 歌菜はリリカルソング♪の明るく楽しいテンポで歌いながら歩く。
「マジカル☆マジカル☆お星様」
「誰か歌ってるぅー」
 屋根裏から下りた鎌鼬が窓から覗き込む。
「あの流れ星に願いを込めて、呼んで見よう♪」
「(村人の言う通り、集会場のあたりにいるみたいだね。今だっ!)」
 捕まえようと物陰に隠れている真が、ナラカの蜘蛛糸で縛ろうとする。
「わぁっ危ないなぁ。でもそれじゃあ風になってるぼっくんを捕まえられないよぉー」
 鎌鼬はヒュウゥンッと飛んでいってしまう。
「あまり近づきたくない場所ですけど、橋を渡った高台のところで林の方へ行くように誘導します」
 ソニアとナタクは橋を渡り、高台のあるところへ向かう。
「じゃあ私たちは民家の方に逃げ込まないようにするわね」
 美羽たちも妖怪の後を追うように走っていく。
「火薬の匂い・・・?歌菜さん伏せて!」
「えっ・・・まさか高台から!?」
 殺気看破で察知した歌菜が高台の方へ振り向く。
「(生徒が狙われている、鬼が持っている火縄銃を撃ち落してくれ)」
 氷室 カイ(ひむろ・かい)が精神感応で、歌菜を助けるように雨宮 渚(あまみや・なぎさ)に伝える。
「(分かったわ)」
 ダークビジョンの暗視で高台を見上げ、渚はスナイパーライフルのスコープで照準を合わせて撃ち落す。
 鬼の手から滑り落ちた銃が泥濘の中へずぶずぶと沈んでいく。
「武器がなくなれば、後は落とすだけね」
 高台によじ登り鬼の背をドンッと押して突き落とす。
「安心して。そこは泥濘だから傷つかないわ」
 バタバタともがく鬼を見下ろしながら言う。
 近くに潜んでいる彼の仲間たちは、敵わないと思ったのかどこかへ走っていく。
「鬼がいなくなっていく・・・。逃げたのかな?」
 離れていく鬼たちを見て、本当に逃げたのか真は周囲を警戒する。
「どっからか見られているような・・・。気のせいかな。いや、なんか妙だな。あれで何人も逃げるなんて考えられないよ」
 静まり返った民家に視線を移し、どうも不自然な感じがすると真は眉を潜める。
「周りを警戒しているようですね」
 イブ・トワイライト(いぶ・とわいらいと)が高台を守るサー・ベディヴィア(さー・べでぃびあ)に小声で話しかける。
「襲撃されるかもしれないと、危険を察知したのでしょう」
 彼女に頷きサーは鬼が逃げていった方を見張る。
「歌菜さん・・・俺から離れないでね」
「えぇ・・・この雰囲気、何かおかしいです。一瞬でも気がゆるんだ隙に狙ってくるはずです」
「今度は窓から!?」
 バリィインッと窓ガラスが割れる音が聞こえ、振り返ったとたんクワが真の方へ飛んでくる。
 彼の頬を掠めてザクッと地面に突き刺さる。
「無傷とまではいかなかったか」
 とっさにカイが2人を庇い、砂利道へ倒し真は掠った程度で済んだ。
「また何か仕掛けて来る前に早く行け。他の生徒たちに追いつかなきゃいけないんだろ?」
 割れた窓の隙間から覗く鬼を警戒し、隠れられて襲撃されないように睨んだまま、美羽たちが向かった林へ行くように言う。
「―・・・ありがとう。行こう歌菜さん」
 カイに礼を言い、真は歌菜の手を引っ張り林へ走る。