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魂の器・序章~剣の花嫁IN THE剣の花嫁~

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魂の器・序章~剣の花嫁IN THE剣の花嫁~
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 序の四 尾行したりコーンポタージュ買ってる間に1〜犯人達の残した爪痕〜

「いつの間にやら大混乱の状況になりつつありますね……」
 緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)は、デパートにいる契約者達の様子を見て緋桜 霞憐(ひざくら・かれん)を探していた。元々別行動をとってはいたものの、この混乱で、完全にどこに行ったかわからなくなってしまった。
「しかし、この状況は……霞憐の所在も合わせ、色々な人に聞かないとわからないですね」
 事情を知ってそうな人に聞いて周ろうと思いながら、遙遠は思った。
(霞憐、無事でしょうか……)

 椎名 真(しいな・まこと)と霞憐は、双葉 京子(ふたば・きょうこ)を探して7階にやってきていた。
「ここ……だね」
「ここですね」
 変化後の京子はどこか男性っぽく、以前の京子は男装に憧れ、胸が大きいことも気にしていた。2つの人格の共通項ということで、2人は、ランジェリー専門店の前に立っていた。まず、胸を小さく見せようとするのではないか、と考えたのだ。
 勿論、ただの予測ではない。『用意は整っております』で導き出した予測である。
「では、入りましょうか」
 霞憐は、躊躇の欠片も見せずに店内に入っていった。それはそうだろう。今の霞憐は、女性だ。屋上を出る時にぶれて見えた姿は錯覚ではなく、霞憐は、確実にその姿に近付いていっていた。髪は長く、背も20センチほど伸びている。元々着ていた服が窮屈そうなので、途中で女性服を見繕い、彼女は今、それを着ていた。ちなみに、彼女の下着は服を買った店に置いていたものだ。目と髪の色は元のままだが――もしこの部分まで変わってしまったら、本当に誰か判らなくなってしまう。
 いや、今でも充分判らないが。
 真は、華やかなピンクや花柄やレースや……の世界に足を踏み入れた。既に霞憐が、店員に話しかけていた。
「すみません、ちょっと人を探しているのですが……真さん」
「あ、うん……青いショート髪の女の子、来ませんでしたか? 服装は……」
 真が説明していくと、店員は少し首を傾げた。それから、言う。
「そういった服装の方はみえられましたけど、髪の色は違いましたよ。それに、もう少し背が高かったような……」
 それを聞いて、真は驚いた。
(背が高い? ……京子ちゃんも姿が変化してるのか!? でも、ここに来たってことは……前の人格も、胸が大きいってことかな、それとも違う下着を……)
 そう思いつつ、訊いてみる。
「えっと……もしかして、胸を小さく見せるブ……下着とかを買ったとか」
「あ、はいそうです。ブラじゃなくて、もっとちゃんと潰せるタイプのやつですけど」
「……それは、いつ頃ですか?」
「そうですね……20分くらい前になると思います」
 店を出た真は、歩きながら次に京子が行きそうな場所を考える。
「……どうします?」
「うーん……」

「あれは……」
 霞憐を探していた緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)は、真の姿を見て歩み寄っていった。何故か、京子ではなく別の女性を連れている。
「真さん、どうしたんですか? その方は……」
「遙遠さん、いや、実は……」
 真は、女性を見て何か言いづらそうな顔になった。
「この人は、霞憐さんなんだ」
「遙遠さん……ですか? はじめまして」
「霞憐……?」
 遙遠は、女性の容姿をさらりと確認した。まじまじと見るのはよくないだろう。
(……この女性が霞憐? 確かに目の色が……。他は似ても似つかないですが……この状況から考えるとそうなのでしょうか……)
 とはいえ、質問するのもなにか失礼である。
(まぁとりあえず、行動を共にしていればどうにかなるでしょう)
 そう判断した遙遠は、真に言う。
「真さん、ご一緒してもよろしいですか」
「あ、もちろんだよ。俺は京子ちゃんを探してるんだけど……」
「……まさか、京子さんも? ……それでいなかったのですね」
 そして、彼らは3人で店内を回り始めた。

「8階でございます」
 上昇が止まり、エレベーターガールの案内と共に音も無くドアが開く。閃崎 静麻(せんざき・しずま)は、面倒臭そうにフロアに降り立った。普段は相棒にやらせている買出しが、何故か自分にまわってしまった。さっさと用事を済ませたい所だったが――
「……何か、騒ぎでもあったのか?」
 そう歩かないうちに、静麻は眉を顰めて立ち止まった。多発する客のトラブル。だが、それが皆個人的な事由のようで、店員達も倒れた客の介抱は出来ても諍いに割って入るわけにはいかず、おろおろとしている者が多かった。
「見た感じ、騒いでるのは剣の花嫁とそのパートナーか? 剣の花嫁に何か……」
 そこまで考えて、静麻は1つの可能性に思い至った。
「……となると、ついて来た魅音も同じようなことになるか!?」
 閃崎 魅音(せんざき・みおん)は、行きたい所があると言って別行動をとっていた。
「心配だし、急いで探そう!」