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宝探しinトラップハウス

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リアクション


■ 探索開始から四十五分



 ダンジョンを探索するのに、【銃型HC】の機能はかなり有能だ。
 オートマッピング機能があり、そのデータに自分で気づいた事などを書き込むこともできる。探索するのならば、これを持っていて損は何一つないというオススメアイテムだ。
 葉月 ショウ(はづき・しょう)大岡 永谷(おおおか・とと)はオートマッピングで表示されている画面と、永谷自作の見取り図を見比べながら、なんでもない廊下の途中で立ち止まって壁を観察していた。
「ここですか、ただの壁にしか見えませんが」
 ミリオン・アインカノック(みりおん・あいんかのっく)は、壁をノックしてみる。返ってくる音では、向こう側に空洞があるようにも思える。
「上の方に何か仕掛けがあるのかもしれません。昔から、視線を外すには上ってこの間読んだ本に書いてありました」
 オルフェリア・クインレイナー(おるふぇりあ・くいんれいなー)が自信満々に言ってのける。
 もっとも、見上げてみてもただの壁でしかない。
「隣の部屋にも隠し扉みたいなものも無かったし、この不自然な空間には何があるんだ?」
 永谷も壁を叩いてみる。
「ここに謎の空間があるのはわかってるんだ。いっそこの壁、壊してみようぜ」
「あまり他人のものを〜、と言いたいところですが、どうせ取り壊すんですし、壊してしまいますか」
 ショウの提案にミリオンが賛同し、取り壊してみることになった。
 攻撃を加えてみると、壁はあっさり壊れる。土壁だったため、ものすごい量の埃が舞い上がったが、罠らしきものも設置されてはいなかった。
 壊した壁の先には、小さな部屋があった。まだまだマップと照らし合わせると狭い。
「お、奥に扉があるぜ」
 ショウが扉に近づいていく。
「他に入り口っぽいのもないな。壁を壊すのが正規ルートなんだろうか?」
 永谷が手製の見取り図に、壁を壊した事を書き込んでおく。屋敷は取り壊されてしまうが、仕掛けられている罠などは記録しておけばのちのち何かに役立つかもしれない。
 部屋は光源無いため暗い。壊した壁から入ってくる光だけでは少し心元ない。
「扉の横にスイッチが二つありますね」
「赤と青ですか、なんだか爆弾で最後に切るコードみたいですね」
 ミリオンとオルフェリアが、扉の横の壁に設置されているスイッチを見つける。
「他には何も無いみたいだな」
 永谷もスイッチを確認する。
「扉は鍵がかかってるみたいだな。となると、このスイッチのどちからを押せば鍵が開くんじゃね? せっかくだから、俺はこの赤いスイッチを選ぶぜ!」
「ちょっと、せめて話し合いぐらいはするべきだろう」
 ミリオンが言うものの間に合わず、ショウは赤いスイッチを押してしまった。
 スイッチを押したショウは、即座に上を確認する。とりあえず何かが降ってくる気配は無かった。
「ショウさんは、何かあるたびに上を確認しますよね」
 オルフェリアの言葉にショウは、
「なんか、上が俺の鬼門のような気がしてならないんだ」
 と答える。
「………それで、扉は開いたんですか?」
「おっと、そうだった」
 ショウがドアノブを回してみるが、鍵は相変わらずかかったまんまで扉は開かない。
「外れみたいだ。つーことは青いボタンを押して………ん、何か変な匂いがしないか?」
「しっ、黙って………なんか、ガスかなんかが漏れてるような音がしますね」
 ミリオンが気づいた事を言うと、全員に緊張が走る。こんなところで漏れるガスなんて、毒ガスぐらいしか思いつかない。
 幸い、ここに入るために壁をぶち壊しているのでそこから逃げ出すことができる。正規の入り方をしたならば、もしかしたら完全に閉じ込められてしまったかもしれないと考えると、この強引な手段は中々のいい判断だったようだ。
「きゃっ」
 一番出口に近かったオルフェリアが、何かが足にひっかかって倒れてしまう。
「ワイヤー!? 危ないっ」
 倒れたオルフェリアの真上に降ってきた、大きな物体をミリオンが体当たりで突き飛ばす。かなり大きな音を立てて床に落ちたソレは、石造のようだった。裸の髭面の男の上半身が、ボディビルの定番ポーズみたいなものをしている。
「悪趣味な銅像だな」
「ぷっ、く、あははははははははははは、な、なにこれ、あひひひひひひ」
「オルフェリア様? 何がそんなに面白いのですか?」
 オルフェリアを助け起こしながら、ミリオンが困惑顔で尋ねる。
「ちが、ちがう、いひひひひひひひ」
「もしかして笑いガスなんじゃないか」
 と、永谷。
 とにかくここから出よう。と全員慌ててその部屋から飛び出した。ついでに窓も開け、空気を入れ替える。
「ひー、し、死ぬかと、思いました」
 しばらく休むと、オルフェリアもだいぶ落ち着いた。しかし、面白くも無いの笑い続けるのは大変なのか、随分と消耗してしまっている。
「大丈夫ですか、オルフェリア様?」
 ミリオンも心配そうに顔を覗き込む。
「だ、大丈夫ですよ。ちょっと、腹筋が痛いのと疲れてしまったぐらいです」
「そうですか………、もし何かあったら言ってくださいね」
 ショウはもう一度、先ほど飛び出した部屋を覗き込んでいた。もうガスの噴出は終わっているのか、静かになっている。
「俺達に効果が無かったって事は、空気よりも重いガスってわけだ」
 ショウに遅れて、永谷も部屋の様子を見に来た。あの扉の向こうには一体何があるのか、気になるのである。例え宝物が無かったとしても、マッピングを行っている身としては、部屋があるのをわかってて無視するのは面白くない。
「今度は青いボタン、挑戦してみるか?」
「いや、わざわざ中に入る必要はないだろ」
 永谷が【ヴァーチャースピア】を構える。狭い部屋なので、ここから目一杯手を伸ばせばスイッチに届きそうだ。
「まだこの部屋が気になっているのですか」
 オルフェリアを休ませていたミリオンが、やってくる。
「せっかくだから、俺はあの青いスイッチも見逃したりしないぜ」
 ショウが何故か嬉しそうに言う。何故か。
「よし、押したぜ」
 そう永谷が報告する。少し様子を見守っていると、つい先ほども聞いたガスが漏れるような音が部屋の中から聞こえてきた。
「どーいう事だ?」
「どっちもハズレだったようですね」
 ショウの問いに、だいぶ回復したらしく合流してきたオルフェリアが答えた。
「それじゃあ、あの扉はどうやって開くんだ?」
 永谷が腕を組む。
「もういっそ、あれも壊してしまえばいいんですよ」
 ミリオンが提案する。
「ま、確かに部屋に入るのに壁を壊してる時点で、ルールに乗っ取る必要は無いわな。んじゃ、アレも怖しちまうか」
 ガスが収まってから、ショウが中に入って扉を壊すために、【レプリカ・ビックディッパー】で切りかかった。重い一撃のはずだったが、完全に扉を壊すには至らなかった。剣の先が少し扉に食い込んでいる。
「奥に鉄板でも仕込んでいたのか?」
「いや、なんつーか、扉の先に何かあるみてぇだ」
「どういう事だ?」
 永谷とショウが、先ほどの一撃でめくれた木を外していく。そうして現れたのは、その向こう側にあると思っていた部屋ではなく、ただの壁だった。
 ためしに、見えている壁の部分を叩いてみたり、他の壁も叩いてみたりしたのだが。
「つまり、この先に最初っから部屋などかったと。我達は随分と無駄足を踏まされてしまったようですね」



 二階の奥にあった部屋には、医療器具のようなものが沢山飾られていた。
「コレクションなんだろうか、随分と悪趣味だな……」
 この部屋にたどり着いた長原 淳二(ながはら・じゅんじ)がそう感想を漏らす。
 メスが何十本も並んでいたり、古くなって黄ばんだガーゼなど、注射器や聴診器も飾られている。見た限り、血のついているものや刃こぼれしているものは無いため、未使用品なのだろうが、なんとなく不気味に感じてしまう。
「歯医者で使うドリルみたいのもあるのう。これをみると、ワシ歯がキリキリ痛いような気していやなんじゃ」
 清風 青白磁(せいふう・せいびゃくじ)がそう漏らす。
「今、歯なんてないよね?」
 そう言うのは騎沙良 詩穂(きさら・しほ)
 青白磁は魔鎧として彼女に装備されているため、青白磁の歯は今は無い状態である。
「心の歯が痛むんじゃ」
「心の歯って………」
 なんて話しながら、飾られているものなどに目を通していく。最初から、コレクション用なのか実用し辛いであろうやたら装飾の入った聴診器や、さまざまな単位が記されている注射器など、少し珍しいものはいくつも見つかった。
 しかし、これは果たして売れるのかはここに居る誰にもわからない。
「錆びていないし、欲しい人は欲しいじゃないだろうか?」
 淳二はそう考えて少し持っていくことにした。特に、装飾されたメスには価値があるように思える。メスとしてはアレだが、コレクションとしての価値はあるかもしれない。
「でも、二階は一階に比べて罠は全然少ないね。無いわけじゃないけど」
「そうじゃのう。まぁ、二階にまで罠を仕掛けてしまったら、どうやって生活すればいいかわからんけん」
「しかし、二階は生活できるような部屋はほとんど無いですね」
 二階は一階に比べて、何も無い部屋の割合がかなり高かった。この部屋のように物が置いてある部屋もあるのだが、少なめだ。いずれコレクションを並べるために用意していた部屋が、結局は使われなかったのだろうか。
 結局、こいつはお宝だ。なんて叫びたくなるようなものは見つからないまま、あらかた部屋を探索し終えてしまった。メスや聴診器など、持ち運びに不便が無さそうなものだけ回収して、次の部屋に向かう事にした。
 しかしいざ部屋を出る段階になって、青白磁が二人を制止した。
「ちょっと待つんじゃ、ほれ、あそこの棚何か変じゃき、ちょっと調べても損ないは無いと思うんじゃがのう」
 と、白い棚を示す。
 他の棚と同じく医療器具が中に入っていた棚で、中にはハサミやカンシなどが入っていた。
「何か見つけたの?」
 詩穂が問いかけると、「わしの勘じゃ」と威勢の言い答えが返って来た。
「勘かー、頼りないけど調べてみる?」
「そうだな」
 白い棚の中身は既に調べてある。中も同じくハサミやカンシが入っているぐらいで、別段変なところはない。
「ん、風が変な方向から拭いてるね」
「こいつをどかしてみよう」
 棚をどかすと、少し窪みがありそこに金庫が置かれていた。サイズは小さく、ダイヤル式を回して開けるタイプのもののようだ。金庫の上にはご丁寧に鍵まで置いてある。
「よし、開けてみい」
「え? 詩穂が?」
「超感覚で音の違いを聞き分ければ、ダイヤルの数字がわかるけん」
「えー、でもなんか金庫破りって悪い事してるみたいだし………」
「それが依頼じゃき、さっさとやるけん」
「あ、そっか」
「なら、この部屋にある聴診器を使えばもっと正確に音がわかるかもしれないな」
 淳二が聴診器を取ってくる。
「それじゃあ、やってみるね」
 詩穂は金庫破りにとりかかった。
「いいか、そ〜っとじゃ、そ〜っと動かして音をよぉぉぉぉく聞き分けんといけんよ。そう、ゆっくりじゃ、ゆっくり〜」
「あー、もう黙ってて、全然聞こえなくなっちゃうよ!」
「な、人がせっかくアドバイスしとるとき、そんな事を言うもんじゃなか!」
「だーかーらー、静かにって言ってるでしょ。いーい、静かにしててよ。わかった?」
「黙っていたら、暇なんじゃがのう………」
 しばらくしたら青白磁も観念して静かにしてくれた。
 おかげで時間はかかってしまったがなんとか金庫を開けることができた。
「ご苦労じゃけ………でも恐らくその金庫はフェイクで―――」
「ペアリングが入ってる。あ、説明書かなこれ。なになに、この指輪は大変危険な指輪です。この指輪をつけた人同士は、互いに互いが必要で仕方なくなり、一生を共に過ごすことになるでしょう。性別は関係ありません。無闇につけることないようご注意ください。だって」
「宝………なのか?」
「ほれ薬みたいなもの、かな。これってもしかしたらつけると外せなかったりするのかな?」
「でろでろでろでろでんででん。指輪は呪われていた。とでも言われちょるかもしれんき、つけたらいけんよ」
「つけないよ。なんか怖いしね。他には何か………あれ、この金庫向こう側が開いてる」
 覗きこんだ金庫の奥は、そのまま部屋に繋がっているらしい。金庫の大きさからして、なんとか人が通り抜けることはできそうだ。
「こっちが本命じゃき、さっさといかんと」
「え、これくぐるの?」
「わしの勘が、この奥からお宝の気配をびんびん感じ取るんじゃあ!」
「俺でも、なんとかくぐれそうだな。危険かもしれないが、どうする?」
「それじゃあ、うん、行ってみようか。この先に大事なものがあったら、取り壊された時に壊れちゃうかもしれないもん」
 狭い金庫を潜り抜けると、畳二畳ぐらいの狭い部屋に繋がっていた。
 そこには一枚の絵がかけられている。見た事の無い絵だが、そこにはこの屋敷では珍しく男性の姿が描かれていた。
「これが、フランリンさんなのかな?」
「筋骨隆々の逞しい男じゃのう」
 ちなみに、彼らは知らないが、オルフェリアに襲い掛かった石造の男とそっくりである。
「しかし、大きくてこの絵は金庫を通らないな」
 と、淳二が手を触れた。
『盗人は貴様らかあああああああ!』
「ひゃうっ! な、なになに?」
「絵じゃ、絵から声がしとるけん」
『よくぞこの屋敷にいらっしゃいました盗人様』
「いきなり口調が落ち着いたぞ」
「なんじゃこいつ」
『わざわざこんな部屋までよく来てくれました。随分とお暇なようですので、不肖ながらわたくしが暇つぶしに付き合ってあげましょう。これから、わたくしがあなた達………長原 淳二様と、騎沙良 詩穂様ですね。お二方に、なぞなぞを出題させていただきます。もし、全て回答できましたらささやかですが、この屋敷の主人秘蔵の宝石をお渡ししましょう。しかし、もし一つでも間違えてしまった場合は、罰を受けていただきます』
「え、今この絵、詩穂達の名前を言ったよね?」
「そういう魔法でもかかっているのだろう、恐らく」
「ちょっと待つけん、なんでわしの名前だけ呼ばれんのじゃ!」
「鎧姿だから、かな?」
「………っ! いなげな絵の出す問題なんぞさっさと解いて宝石とやらをもらってやるけん」
『第一問。朝は四本足。昼は二本足。夜は三本足の動物はなーんだ?』
「よっしゃ、詩穂、答えちゃれ」
「え? 詩穂が? 青白磁さんが答えるんじゃないの?」
「答えは人間だな」
 さらっと淳二が答える。
『正解です。では、次の問題です。問題はこれが最後になりますので、最後まで頑張ってください。第二問。大人には割れないけど子供には割れる。女にはキレイなのに男には汚い。犬には見えるのに猫にはなかなか見ることができない。車ならできるけど家では無理がある。天気のイイ日には現われることもあるが雨の日には見ることができない。どちらかというと理科室よりか職員室の方が住みやすい。みなさんも触れた事あるコレなーんだ。』
「なんじゃ、それ?」
「え? え?」
 淳二も黙って首を振る。こんな問題聞いた事もない。
「犬には見えるんだよね、でも猫には見えないくて……車でできて家ではできないんだから、スポーツみたいにすることかな」
「頑張って考えるんじゃ」
「青白磁さんも考えてよー」
『解けませんか、解けませんよね? まだもう少しは待ってあげますよ。その間に、罰について説明しましょう。もしこの問題が解けなかった場合、みなさんが最後におねしょをした年齢をここで発表させていただきまーす』

 

「やっと生活観のある部屋ね」
 セルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)達が見つけた部屋は、小さいながら水場があり、食器棚には食器が並んでいた。そのすぐ近くには小さなテーブルと、四つの椅子がそえられている。テーブルの上には、調味料らしき瓶があり中身も入っているようだ。
「ここまでの道のりも罠はほとんどありませんでしたからね。ここが、屋敷の主の生活スペースだったようですね」
 御凪 真人(みなぎ・まこと)も部屋を眺めてみる。
 屋敷全体からみると、かなり質素な部屋だ。必要なものが最低限ある、といった具合である。収集品以外のことには、さほど興味を示さなかったのだろうか。
 二人に遅れて、ルル・フィーア(るる・ふぃーあ)が少し困惑気味の表情で入ってくる。
「どうかしたの?」
「いえ、その………先ほど、精神感応で兄上から連絡が入ったのですが、大人には割れないけど子供には割れる。女にはキレイなのに男には汚い。犬には見えるのに猫にはなかなか見ることができない。車ならできるけど家では無理がある。天気のイイ日には現われることもあるが雨の日には見ることができないものが何かと尋ねられまして」
「それはどこかで聞いた事がありますね。えぇっと、どこでしたっけ………あ、アレですね。ずっと前に流行った、答えの無いなぞなぞですよ。まるで答えがあるかのように見せかけて、実は無い。そんな悪質ななぞなぞです」
「なるほど、では兄上にそうお伝えしますわ」
 ルルが精神感応をしている間、真人とセルファはさっそく探索を始めた。真人が目をつけたのは本棚だ。
「ここの本棚は随分と他の部屋とは趣向が違いますね。これは絵本ですか」
 他の部屋の本棚は、分厚い本が沢山並んでいたが、こちらはそれ以外にも絵本や童話の本なども混ざっている。きちんと分類されていないところを見ると、ちょくちょく抜いては戻していたりしたのだろうか。
 この屋敷の持ち主には孫が居たのだから、子供も当然居たはずだ。この絵本は子供ために用意したものなのだろうか。手にとってぱらぱらとめくってみると、紙が一枚はさまっているのを見つけた。
「これは、何かのメモですね」
「何か見つけたの? 何それ、汚い字ね。えーっと、鎧を六式譲ってもらった。いくつかパーツが足りないから、実質四式しかない。って、何これ?」
「さぁ、ここの主は鎧も集めていたんですかね?」
「でも、鎧を集めていたのでしたら、パーツが足りないものなんて最初から興味を持たないのでわ?」
 ルルの言葉に、それもそうですね、と真人が頷く。
「あ、淳二君はどうでしたか?」
「大きなダイヤみたいなものを手に入れたそうですが、しばらくそっとしておいて欲しい、と」
「大きなダイヤなんてのもあるんだ、ここ。収集家なんて私達には価値がわからないようなものを集めてるイメージがあったから意外。けど、ちょっとやる気が出てきたかも。よーし、もっと探してみよう!」
 セルファが水場を探してみると、バナナを見つけた。
 この屋敷の経緯からすれば、生のバナナは腐っているはずである。よくできているが、作り物だろう。と、彼女は手にとった。
「ウキキ!」
「………はい?」
 変な声が聞こえたので、ルルが振り向くとそこには何故かしゃがんでいるセルファの姿があった。首をかしげて見ていると、セルファはなぜか一人で楽しそうに飛び回っている。中腰で。
「どうしたんだ、セルファ?」
 困惑気味の真人。声をかけても、何故か距離を取る。
「まるでお猿さんみたいですわ」
「確かに、妙に身軽になってる気がしますね。あんな中腰でぴょんぴょん飛び跳ねているのなんて見た事ないですよ」
 割と冷静に観察する二人。おかげで、すぐに持っている黄色いバナナに気が付いた。
「あのバナナ、少し変な気配を感じますね。恐らくアレが原因でしょう。すみませんが、少し手伝ってもらえますか」
「構いませんわ。お猿さんごっこをしているセルファちゃんも可愛いですけれども、あのままだと困ってしまいますもの」
「すみません、では入り口で構えててください」
「はい」
 急遽セルファの追い込み漁が始まった。
 真人がじりじりとセルファとの距離を詰める。危険を感じたのか、セルファは歯を剥いて威嚇をするが、真人は怯まない。さらに距離を詰めるとセルファがついに逃げ出した。先回りするように真人が追い込んでいく。
「うふふ、つかまえましたわ」
 と、後ろからルルがセルファに抱きついた。
 いきなりの事で動転して暴れるセルファの手をはたいて、真人がバナナを落とさせる。
「あれ? 何してんの二人とも? って何で私、ルルさんに抱きつかれてるの?」
「かわいかったですわよ」
「あんまり心配かけさせないでくださいよ。とりあえず、今後バナナ触るのは禁止ですからね」
「え? え? 何、私なにかしちゃったの?」
 わけがわからない、という顔のセルフィアには最後まで何があったか教えられる事はなかった。
 ちなみに、この呪いのバナナのようなアイテムはしっかり持ち帰り、しかも結構な金額で売れました。