リアクション
夕暮れ時近い蒼空学園の一角には花音を中心に今回のイベントの運営及び審判役を務めていた生徒が集まっていた。
「皆さん、お疲れ様でした。幸い、今回のイベントも皆さんのご協力のおかげで無事……」
「花音さん! 大変です!!」
「……何かありましたか?」
「裏山のベンチで、何か凄い戦いが始まっているから止めに行くと審判役のリカインから連絡があったんですが……先ほど、私じゃ無理、という伝言を残して連絡が途切れました」
「まぁ……」
様子をじっと聞いていた加夜が一歩進み出る。
「花音さん! 私がエミンさんと向かいます」
「ええっ!? 加夜、私もなの?」
素っ頓狂な声を上げたエミンに花音も続ける。
「私からもお願いします。私が向かえればいいのですが、後夜祭の運営があって身動きできないんです」
「花音まで……わかった! わかりましたよ!! もう、乗りかかった船だから特別だよ!」
「ありがとうございます!」
そう言って加夜とエミンが駈け出していく。
「あれ? 花音? 何か緊急事態なの?」
そう言ってやって来たのは美羽である。
「ええ、でも大丈夫ですよ、多分」
「そう? じゃあさ、カフェの改装にちょっと人くれないかな? 音楽のセッティングは私がやるんだけど、机やフロアの方に人手が欲しいんだ」
「わかりました、美羽さん」
花音は美羽に頷きつつも、何故か加夜とエミンの方に気が取られるのであった。
「ところで、校長ズはどこへ?」
「校長ズ……ああ、涼司様は……」
そう言って固まる花音を、訝しげに美羽が見つめる中、遠くの空でカラスが「アホー」と鳴いていた。
裏山のベンチ前では、噂を聞きつけた生徒達が木陰や木の上やはたまた上空から、とある二人の人影の様子を固唾を飲んで見守っていた。
人影の傍には、幸せそうな顔でバタンと倒れている明日香とリカインの姿がある。
「フフフ……よもや涼司さんが蒼空仮面の正体だったなんてぇ、エリザベートちゃん……」
「明日香くん……どうでもいいけど止めに入った私の頭まで叩くなんて、いけないと思うんだけど」
リカインが明日香を恨むような目で見る。よく見ると彼女の目にはうっすらと涙が溜まっている。よほど痛かったのであろうか?
「はいはい、どいてどいて! みんな後夜祭に行きなよ! おおっ!?」
そう言って裏山を登って来たのはエミンと加夜であった。
「皆さん、もうすぐ始まりますよ……って、涼司君!? どうし……モゴォ!?」
エミンが加夜の口を塞ぎ、木陰に引き込む。
「加夜、色々わかるけど、ちょっとおもしろそうだから観ない?」
「そ、そんな!? 駄目ですよ、エミンさん!」
「いいじゃない? どっちにしてもあの二人がガチでやり合う事なんて無いんだしさ」
「そ、そういう事じゃなくて……!?」
加夜が見ると、周囲の生徒達も一斉に頷く。
彼らの関心事は今やイベントの健全な進行ではなく、夕方のベンチに座り独特なオーラを放つエリザベートと涼司に注がれていた。
中には「すわ、禁断の組み合わせか!?」と色めき立つ者達もいる。
「聞きたいことがあるですぅ?」
「何だ?」
「マジカルエリザベートは、ちゃんと正規の手続きで参加したですぅ。ですがぁ、蒼空仮面はリカインから譲り受けた参加者資格を用いて違法にイベントに参加していますねぇ……これは蒼空学園の負け、という事でいいですかぁ?」
クククと不気味な笑みを浮かべるエリザベート。
「確かに。だがな、そもそも君も真っ当な目的で参加していない等明白だ。だから痛み分けと言う事で済まさないか? 君と明日香の辻斬りで、ウチの生徒が何人PTSDを起こしたか分からないのだからな」
「笑止ですぅ!! 敗北を誰かの責任にすること等、もってのほかですぅ!!」
「ならば、互いの意見の相違という事で、決着をつけるか? 別に俺はそれでもいいぜ?」
「フッフッフ……蒼空学園と我が校の代理戦争という訳ですかぁ……言葉ではなく力で決着を付けようとする所は、蒼空学園の伝統なのですかぁ? 全くお子様ですねぇ、恋愛とは力ではないのですぅ」
涼司が立ち上がる。
「おまえが言うな!! いいか、本来なら勝っていたのはウチだったんだぞ!」
エリザベートも立ち上がる。
「いーえ、違うですぅ。イルミンスールの圧勝でしたぁ!!」
延々と続きそうな二人の争いを見ていた生徒達の中からボツボツと帰る者が出始める。
「加夜、もういいんじゃない?」
「そうですね……」
エミンと加夜も帰路につく。
言い争う涼司とエリザベートを無視するかのように、蒼空学園のカフェからは陽気なダンスミュージックが聞こえ出す。
「明日香くん、そろそろ私達も立ち上がらない?」
「私はエリザベートちゃんがいるからここで死体役やってますぅ」
「あっそう。じゃあ私は行くね」
スクッと立ち上がったリカインが、衣服に付いた草を払いながら裏山を降りていく。
結局、涼司とエリザベートの会話は、蒼空学園かイルミンスールのどちらが恋愛上手かという意地の張り合いであった事が後々明日香の談話として校内の新聞の三面記事になるのだが、それよりも美羽が企画した後夜祭のカフェでダンスパーティで、カップルが成立した者もそうでない者も踊りあかしたという一面の記事に生徒達の注目は注がれているのであった。
(終わり)
こんにちわ、深池豪です。もうすぐ今年も終わりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
私は餅が好物なので、ひどく個人的に喜びつつ来月を待っていたりします。
おお、クリスマスですか……、ここ最近はクルシミマスというイベントに置き換わったりするため私は基本スルーの方向です(笑)
さて、今回のお話はそんなクリスマス前の大出会いイベントのお話でした。
皆様からは様々なアクションを頂きました。ですが、今回、ちょっと私がこのイベントの制限やルールを加えすぎてしまった感があり、思ったようなアクションがしにくいとのご意見も頂きました。
この点は反省し、次回に繋げたいと思っております。特にジャンケンの設定は蛇足だったような気がして、本当にすいませんでした!
そんな中でも皆様のアクションはそれぞれ個性的なものばかりで本当に随分助けて頂きました。
ですが、その一部は重複等で泣く泣く不採用とさせて頂きました。ごめんなさい!!
皆様は今回のリアクションいかがだったでしょうか?
今回の称号はなるたけ多くの方に付けさせて頂きました。
付いてないよ、と言う方は、私がいいネーミングが浮かばなかっただけです。すいません……。
それでは、またお会いできる時を楽しみにしております。
※12月12日 一部修正を加え、リアクションを再提出しました。