シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

DieSymphonieDerHexe2

リアクション公開中!

DieSymphonieDerHexe2

リアクション


第5章 冒涜する者

「永遠の命・・・ですか。まぁ、長生きしたいっていう思想は勝手ですからね」
 不死なんてばかばかしいというふうに言い、フンッと六鶯 鼎(ろくおう・かなめ)は鼻で笑い飛ばす。
「それにしても結構いますね」
 不振に思われないように小さな声音で呟く。
「化け物になった連中が沢山いるってことですか」
 老いも痛みも死すらもない。
 そんなものはただの化け物なのだと考え、坂上 来栖(さかがみ・くるす)が愉快そうにニヤつく。
「魔女は元々、見た目が若く寿命で死ぬことはないんだけどね」
 今のままでなぜ満足出来ないのかと月谷 要(つきたに・かなめ)は肩をすくめる。
「見た目はかなり若いのに、さらに若いままって6歳以下に見られたいんでしょうかね?」
「さぁ?他の種族たちを従わせる餌にも使えると思ったんじゃないかな」
 小ばかにしたように言う来栖に要が答える。
「どっちにしろ化け物になりたい者の戯言でしょう」
「(ぅわぁ〜なんだか殺る気満々・・・)」
 クド・ストレイフ(くど・すとれいふ)は2人の会話を聞きながら、ゾッとしたように顔を蒼白させる。
 神的に暇だった彼は魔女たちを化け物として殺したがっている同行者たちと違い、不死になりたい者たちに説教しにやってきた。
「2人とも、そろそろ黙りなさい」
 ブラックコートの端を掴み、パレードに紛れようと歌い踊る者たちへ鼎が顔を向ける。
「―・・・何、この感じ・・・。仲間に危害を加えようとしているやつがいるわ!」
 ディテクトエビルで恐ろしい殺意を感知した魔女が騒ぎ立てる。
「うっそ〜激最悪っ」
 他の種族たちと服従させようとしている自分たちの思想を棚に上げて激怒する。
「やばいですね。今は気づかれていないようですが。早くパレードの中から出てなければ、見つかるのは時間の問題です」
 コートで気配を殺しているものの、このままでは気づかれてしまうのは問題だ。
 一刻も早く塔の中へ行かなければと、目立たないように鼎は身を屈めて急ぐ。
「完全に姿を隠せたりするわけじゃないし、見つかったらアウトだよ。オレは気配が少し薄れるからまだマシだけどね」
 ブラックコートの上にベルフラマントを纏い要も走る。
「ていうことは要さんの傍にいれば、もしも私が魔女に姿を見られたら・・・。まとめて発見されるということですね?そう理解しました」
「はっ、本気で言ってるの!?」
「もちろん・・・」
「酷い・・・」
「今言った“もちろん”って、“冗談です”っていう意味ですよ?」
 焦る要を見て鼎が心の中でクスッと笑う。
「要さんが私たちを捨てて先にいってしまうなんてことがないって信じてますから」
 そう言いながら鼎は噴水の傍に身を潜め、塔にいる見張りたちを見る。
「塔の入り口が開きっぱなしですね?それになんだか魔女たちが慌しく動いているように見えますが」
 すでにアスカたちが騒動を起こしているのを知らない鼎は不思議そうに眉を潜める。
「外庭にいるやつも不死なのかな?」
「どうでしょうね?相手の足を掠めてみれば分かるんじゃないですか」
 首を傾げる要にさらりと危険な賭けをするかのように言葉を返す。
「えぇっ、それは困りますね。不死じゃない相手を殺してしまったら、ただの殺人じゃないですか。私、それだけはごめんですからね」
 化け物でない者を殺してしまったら、ただの殺人狂じゃないですかと来栖がイヤイヤをするように首を振る。
「まぁ、隠れられるうちは慎重に進みましょうか。って来栖さん、突っ込むの!?」
 不死でない相手とは戦いたくないと塔へ突っ込んでいく彼女の姿に鼎がビックリ顔をする。
「侵入者め、私たちの邪魔しにきたの!?簡単に入れると思ってるわけっ」
 ディテクトエビルで来栖の存在に気づき、ロッドをくるくると振り天に向けると、空に裂けるようにビキキッとヒビが入る。
 まるでレーザーのような光が彼女を目掛けて降り注ぐ。
 仮初の地でなければ、周囲の物まで破壊しそうな勢いだ。
「崩落する空!?」
「今更気づいても遅いわっ!」
 捕らえて牢屋に放り込んでやろうと魔女がニヤリと笑う。
「相手が化け物かどうか分からない以上、手出しづらいですね・・・」
 少しずつ癒えていく片腕の傷口から来栖は相手へ視線を移し、どうやって塔に入ろうか考える。
「来栖さんには悪いけど、仕方ないですねぇ。行きますよ!」
 彼女を置いて鼎たちが先に塔へ入り込む。
「おや皆さん、不死になれたんですか?」
 階段を駆け上がり開発室にやってきたクドが魔女たちに声をかける。
「命ってぇのは限りがあるからこそ輝くもんなんじゃねぇんですかね。人ってぇのは限りがあるからこそその一瞬一瞬を、過ぎ去ってゆくその刹那を大切にするんです」
 地球人の言葉とは思えない感じだというふうに、彼女たちは黙って彼の話を聞く。
「例えばね、やりたいことだけやって生き続けるとしますよ?それでその後は?何もかもやりつくしたその後は?待ってるのは退屈だけっすよ。死ぬことすら出来やしませんから、生きることに飽きても終わることすらできない。虚しいもんでさぁ」
「―・・・・・・」
「永遠とも言える時間を退屈に過ごし続けるなんて、考えるだけでもゾッとしますよ、お兄さん」
「退屈?フッ・・・」
 黙たまま聞いていた魔女が可笑しそうに口元を笑わせる。
「研究に費やす時間を考えたら、いくらあっても足りないくらいだわ」
「限られた時間の中で何をなすのか――それが生きるってことなんじゃないんですかね。なのにそれを、その輝きを無くしちまったら、もはやそりゃあ死んでるのと大して変わんないんじゃないのかなーとお兄さんは思う訳ですよ。ま、考え方は人それぞれですがね」
 貪欲までに研究を極めたいという言葉にも負けず話を続ける。
「いきなりこんなこと言われたところで受け入れられないでしょうけども、頭の隅っこに少しでも留めておいてくれりゃ幸いですよ。こんな風な考え方もあるって感じでね」
「―・・・地球人という生き物は、昔から不老不死を追い求めていたんじゃないの?」
「言ったでしょ?考え方は人それぞれだって。それじゃあ後は要さんたちに任せました」
 自分はそんなのごめんだというふうに言い、一緒に来た3人に任せて開発室から出て行った。
「まぁ、どんな姿になろうが。どうせ地球人は地球人でしかないのよね。下級吸血鬼なろうとも所詮は地球人よ」
 姿形がどうであれ種族は変わらないと魔女は要を見て言う。
「人外でもヒトだと認めてくるんだね?不老不死になったあなたたちは、ヒトガタしでしかないけどさっ」
 要は黒薔薇の銃のトリガーを引き銃弾を放つが、 ファイアストームで吹っ飛ばされてしまう。
「そんなもの、命中しなければ無意味ねっ」
「へぇ〜、それならこれはどうかな。フッ」
 おぞましい気配を発した要が後退るのを見て愉快そうに笑みを浮かべる。
「退いてなさい、私が倒してやるわ♪」
 他の魔女が玩具を見つけたように嬉々としてマインドシールドで畏怖を弾き飛ばし挑みかかる。
「くっ、これでも通らないみたいだね」
 大口径銃ヘルゲート・ノッカーで吹き飛ばそうと撃つが、鉄のフラワシでガードされてしまう。
「だったら直接蹴り倒してあげるよっ」
 銃弾すらもスキルで弾く相手に苛立ち首元を狙い蹴り飛ばす。
 メショッと骨をへし折る音が響き、魔女は口からゴプッと血を流した。
 虚ろな目が急にキッと要を睨み、口元をニタリと不気味に笑わせて、彼の足をロッドで力いっぱい殴りつける。
「足が・・・っ。いくらリジェネレーションでも治りが遅いね」
 殴られた場所を手でさすり、足元をふらつかせながら立ち上がったその時、開発室に入ってきた来栖にヘヴンズドア・ノッカーを向けられる。
「ねぇ、要さん・・・お前はヒトか、化け物か?」
「―・・・まさか俺をっ!?」
 ズダンッ。
「きっちり殺すまで気を抜くな」
 要の背後を狙う魔女の胴体を断裂させ、朱の飛沫の炎で燃やす。
「そっちこそ・・・ヒトか、化け物か?」
 窓から差し込む月明かりで黒く冷たく光る銃口を来栖に向け、冷徹に言い放ち銃弾を1発くらわす。
「忠告は感謝する。割と人間を辞めてる自覚はあるけど、俺はヒトだよ。・・・多分ね?」
 ターゲットは彼女でなく、首に飛びつこうとする身体から千切れた魔女の手を狙ったのだ。
 飛散した破片が床にべちゃっと張りつく。
「あんた、そんな格好似合わないわよ」
「化け物退治も人間の神父の役目じゃないのか?」
「フンッ、ずいぶんとイカレタ神父がいるものね」
「お前たちは私が殺す、逃げても殺す、死ぬまで殺す・・・。ほらかかってこい化け物ッ!“死の恐怖”を思い出させてやる!」
 天井にピッとタバコを投げて左右の腕をクロスさせ、魔女たちを死滅させようとする。
 ダダンッズダンッ。
 室内に銃声が轟き彼女たちに当たらなかった銃弾が、魔道具を貫通して破壊する。
 心臓をベシャッと踏みつけ、落ちてきたタバコを指でキャッチして口に咥える。
「ほら背中御留守!ムチャなことしないでくださいよ心臓に悪い!・・・まぁこっちもそろそろ疼いて来てたんですけどね」
 術者が仕返しにフラワシを動かしているのに気づき、来栖を狙う嵐のフラワシを鼎が弾き飛ばす。
「私はその研究に興味はありますが、まずは不死はどこまで殺せば死ぬのか。これも研究しておきましょうね」
 共に来た他の2人の銃と同じ職人が創った異形銃を魔女に向け、狙いを定めて頭部を狙い撃つ。
「あら酷い、いきなり撃つなんてね!」
 頭がゴロンと床へ転がり落ちたまま、ギロリと鼎を睨み氷術の矢を放つ。
 銃舞で舞うように避けて氷の矢を破壊し、相手の四肢を撃ち抜く。
「んー、千発目、死なず。あ、精神が逝ってる。もういいや。“不死”は実証されましたしね」
 銃を撃ちながらペンでメモを取る。
「では、被験者さん。“Good night”」
 氷術で凍らせて1人ずつ銃弾で砕いていく。
「・・・・・・グロ・・・」
「って鼎さん、千発も撃ってたのかよ・・・」
 来栖と要が引き気味にぽつりと言う。
「って、2人とも何引いてるんですか!?2人とも近いこと言ってませんでしたか!?」
 まるで殺しを楽しんでいるかのように言われ、そっぽを向く来栖と要に抗議の声を上げる。
「さてと。研究資料の回収を・・・」
「不死を冒涜するだけじゃなく、泥棒までする気?何の苦労もなしに横取りしようなんて、図々しいにもほどがあるわ」
「こっちは殺す気はなかったんだけど。あんたたちがその気なら、殺し合いをしてあ・げ・る♪」
 壊れていない魔道具を鼎が取ろうとした瞬間、破裂した内臓がずるずると床を這い、細胞同士がひっつき合い魔女たちの身体が再生してしまう。
「やっぱりあの男の言葉を信じなくてよかった。他の種族なんていじ汚いやつらばかりよ。特に不老不死を夢見る地球人どもわね!」
「術では冷凍しきれないようですね」
 何年も眠り死ねず動けず、意志のみる存在だった鼎は不死となった彼女たちに、同じ苦しみを与えようとした。
 しかし、胃の細胞が氷を喰らうようにじわじわと溶かして気化させてしまい、徐々に他の細胞をくっつき氷を気化させ再生したのだ。
「楽しかった?私たちを殺そうとして・・・」
「もちろん殺されてもいい覚悟でやってることよねぇ?」
「ていうかわざとやられてやったのに。調子に乗っちゃってさ、激うけるんだけどぉ〜。まさか分かってなかったとかナイでしょ?」
 魔女が口々に3人へ問いかける。
「やばいですね、もうSPが・・・」
「術使いすぎだよ鼎さん!」
 氷術を使いまくった鼎に対して要が文句を言う。
「もう無理だよ、早く脱出しようっ」
「化け物に人間が負けた気で悔しいけど仕方ないな」
 さすがにここにいるのは危険だと判断した要と来栖の2人は、黒檀の砂時計をひっくり返し開発室から逃走する。
「えっ、ちょっと2人共!私を置いていく気ですか!?」
「まさか鼎さん、持ってきてないわけっ!?」
 1人だけ砂時計がない彼女が遥か後ろにいるのを見て、要がぎょっとした顔をする。
「待って、置いて行かないでください!うわぁあぁあっ」
 塔の外に出た崩落する空の光のレーザーに襲われ、鼎は身動きが取れなくなってしまう。
「せっかく不老不死の身体にしてもらったんだ。これくらいは働かないとけいないな」
 冷たい眼差しで地面に伏せる鼎を由唯が見下ろす。
「因果応報・・・。あれだけのことをしでかしたんだ、八つ裂きにされても文句ないはずだな?」
 彼女にとってSPを切らせて魔法を避けることだけで限界の鼎を、小さな小動物のように追い詰めることは簡単なことだ。
「あなたに呪文は使わない。せいぜい撲殺されないように避けることだね」
「くぅっ!」
 もうここで終わりかと目を閉じる。
 しかし何時まで経っても殴りかかる気配がない。
 不思議に思い恐る恐る目を開けると、エッツェルが由唯の背後から彼女が手にするロッドを握り止めた。
「エッツェル・・・どうして?―・・・あっ!」
 彼の方へ振り向き鼎へ視線を戻すと、すでに要と来栖が彼女を連れて逃げてしまった。
 開発室で何も得られず魔女に追われるはめになってしまった鼎は、2人に手を引っ張られながら走り、最悪な日です・・・と呟き嘆息する。



「由唯さん、どうやら間に合ったようですね」
 彼女がどこも変わった様子がなく、人を傷つけるところを止めることが出来たことに、エッツェルはほっと息をつく。
「―・・・残念だね」
 外庭に現れた彼に戸惑っていた由唯は、表情を変えずに間に合ったと思った相手の思いを砕く。
「もう、私は不老不死の身体を手に入れたんだよ」
「―・・・・・・っ!そ、そんな・・・」
「さらなる不死の実験があるんだ。私はそれも手に入れたい。不の感情を糧に生きる身体を・・・」
「不の感情!?」
 闇に落ちようとしているような彼女の言葉に驚き、思わず大声を上げてしまう。
「恐怖や不安などというものをだね。それは永遠になくなることのないから・・・」
「どうしてこんな研究にまで手を染めるんですか!?」
「欲しいからなっただけだよ。永遠の時が!」
 光術で相手の身体を傷つけ、彼に不老不死となった身体がどんなものか見せつけようと、反撃させようとする。
「どうしたんだ?どこでも傷つけてみて。すぐに再生するんだから、遠慮はいらない。来ないなら、一方的にやられるだけだよ」
 本当の答えをすぐにはやらず、相手の弱点を攻めてじりじりと追い詰める。
「あの人、なんで仕掛けてこないの?変なやつぅ〜」
 その様子を魔女たちが見世物のように見物している。
「だったら私が見せてあげる」
 禁じられた言葉を紡ぎ、氷術で作り出した刃でスパッと自分の片腕を斬り落とす。
「ほら、痛くないんだよ」
 手首を掴んで表情を曇らせる彼に見せる。
 腕の断面からぼたぼたと血が流れ、石畳を赤々と染める。
 べちっと切れ目をくっつけると、細胞同士がくっつき腕が再生する。
「これでもまだ足りないなら、心臓を取り出してみる?」
「止めてください!痛みの無い不死の肉体なんてろくでもないものなんですよ」
「どうして?なんで・・・なんで喜んでくれないんだよ!!」
 由唯の気持ちに気づかない相手に苛立ち、光術で吹っ飛ばす。
「ぐっ、ぁああぁあーーーっ!!」
 エッツェルはたまらず声を上げ地面へ転がる。
 氷術で彼の身体の周りを固まらせ、針のように尖った氷で動きを封じる。
「認めません、そんな研究は・・・」
 皮膚を硬質化させ、痛みを知らぬ我が躯で痛みを鈍らせて、氷の刃を砕きエッツェルが起き上がる。
 それが自分の影響のせいだとしても、どうしてもそれだけは許すことは出来ない。
「自分がエッツェルの隣に居るのに相応しい存在になりたかった。自分がエッツェルの隣に居ても大丈夫だと思ってもらいたかった」
 彼の気持ちを知らない彼女は、起き上がった相手の肩に掴みかかり押し倒し、不老不死になった理由を想い人へぶつける。
「これは効果がいつ切れるか分からない不完全な不老不死なんだ。でも必ず、傍にいられるようにその身体を手に入れてみせる!」
「由唯さん・・・あなたまで化け物にならないでください」
 ずっと持ち歩いているお守りをポケットから取り出し由唯に見せる。
「あなたが、私に贈ってくれたこのお守り・・・気持ちは、私も同じなのですから・・・」
 少しでも化け物にならないように侵食を抑えるために彼女がくれたのだ。
「私はどんな姿になっても目の前から突然消えたりするような真似はしません。だから・・・、こんなことはもう止めてください。同じ時間を生きられなくなってしまうじゃないですか」
「せめて不老不死にならないと、エッツェルに相応しくないと思ったんだ。ごめん、ごめん・・・」
 大切な想い人の手を握りながら、ぽたぽたと涙を流して謝る。
「ちっ、つまんないの。もういいや、裏切り者はさっさと冷たくさむぅ〜い牢屋に入ってもらいましょうか!」
 眉を吊り上げて怒った魔女が崩落する空の術で2人を狙う。
「エッツェル、私を盾にして!まだ効果は切れてないと思うんだ」
「そんなこと出来ません。由唯を盾にするくらいなら私が盾になりますっ」
 自分を守ろうとする彼女を抱きかかえ、仮初の町から出ようと必死に走る。
「おのれぇ、逃がすかぁああーーーっ!!」
 恐ろしい形相で追いかけ、彼の弱点の光属性の魔法を撃ちまくる。
「―・・・やっぱり私が!」
「いえ。女を守るのは男の役目だって昔から相場が決まっているんですよ」
 身体に傷を追いながらも走り町の外へ出る。
「はぁ・・・はぁ。ここまでくれば大丈夫そうですね」
 由唯を地面へそっと下ろしてやり、ぺたんと草の上に座り込む。
「酷い傷・・・私のせいでこんな・・・っ」
「気にしないでください。しばらくじっとしていれば治りますから」
 心配そうに傍へ寄る彼女に笑ってみせる。
「(それにしても少しきつかったですね。特にドルイドの術がかなり堪えましたよ。途中で倒れてしまったら捕らえられていたかもしれません・・・)」
 息を切らせながらエッツェルは片腕で額の汗を拭った。