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喋るんデス!

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喋るんデス!

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 薄暗い部屋の中に美菜達のベッドが運ばれる。
 その床には魔方陣が描かれている。
 どうやらここで魔術の儀式が行われるようだった。

「毎回毎回、よくもまぁ集まるものだな」
 運ばれてくる人々を見ながら、アンドラスが感心したように言う。
「それだけ人間というのは、欲深い生き物なのでしょう」
 札束を手にした男……御手洗秀介博士が答える。
「ふん、欲深い人間共が……」
「しかし、その際限のない人の欲こそが、新たな時代を作るのです」
 御手洗博士はケースに入れられた赤い結晶に視線を落とす。
「欲望の結晶『-Gire-』(ギア)……たったこれだけの量でも膨大なエネルギーをもたらしてくれます」
「欲を抜かれた人間共は腑抜けになってしまうがな」
「それは一時的な症状ですよ、人の欲は潰える事がない、欲望が新たな欲望をもたらす……この研究が進めば、永久機関すら実現可能でしょう」
 御手洗博士は己の研究理論に浸っていた。


「そんなことの為に、お兄ちゃんは……」
 怒りに身を震わせ、美菜が立ち上がる。
「話は全部聞かせてもらったわ」
 カレンと七日の2人も立ち上がった。
「おや皆さん、例の睡眠薬が効きませんでしたか?」
 不思議そうな顔の御手洗博士。
「そんなもの飲むわけないじゃない」
「飲むフリだけです、ペッと捨てました」

「ペットを捨てた……ほぅ、『喋るんデス!』まで調査済みとは、恐れ入ります」
「じゃあ、全部あなたの仕業だったの?!」
 七日の発言に何か勘違いしたのか『喋るんデス!』のことまで白状する御手洗博士。
 兄がバイトに手を出した原因を思い出し、美菜に衝撃が走った。
「飼い主の夢が実現……なかなか面白い玩具だったでしょう? このバイトの報酬はあれの売り上げで成り立っているのですよ」
 ……あれは文字通り傑作でした、と得意げに語る。

「飼い主とペットの絆を利用するなんて……許せない!」
「どう許さないと言うのですか?」
「こうだよ、ジュレ!」
「心得た」
 カレンの影の中に潜んでいたジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)のレールガンが火を噴く。
 命中し、飛ばされる御手洗博士……だが……

「ふぅ……札束がなければ死んでいました」

 よろよろと立ち上がる御手洗博士。
 紙ふぶきとなって散った札束を感慨深く見つめている。
「そんな馬鹿な!」
 驚愕するジュレール。
「拳銃とかならともかく、ジュレのレールガンを札束が止めるなんて……」
 これにはカレンも驚くしかない。
「冗談です、一度やってみたかったので、つい……おかげで100万Gがパーですよ」
「な……」
 そんな事の為に100万Gを捨てたというのか……
 あまりの馬鹿馬鹿しさにカレン達の動きが止まる。
 その間に御手洗博士はケースから『-Gire-』を一つ取り出し、銃のよう装置に装填する。

「『100万Gのレールガン』……なかなかでした、これはお釣りです」
 御手洗博士の放った赤い光線がジュレールを貫いた。


「ジュレ!」
「ふ、他人の心配をしている場合ではないぞ?」
 アンドラスの放った炎がカレンを襲う。
「く……こいつ……」
「楽しませてもらうぞ、人間!」
 アンドラスは怪しく微笑んだ。

「わわ、私はどうすれば……」
 突如目の前で繰り広げられる戦闘に美菜はなすすべなく立ちすくんでいた。
「美菜ちゃん、私の後ろに」
「歩さん!」
 光学迷彩を解除した歩が姿を現す。
「安心して、美菜ちゃんは私が守るわ」
 御手洗博士は予想以上の戦闘力を持っているようだったが、防御に専念してさえいれば庇いきれる。
「その子はあなたに任せておけば大丈夫そうね」
 その様子を見ていた七日が歩に話しかける。
 どうやら彼女も美菜を庇おうとしていたようだ。
「あ、足引っ張っちゃってごめんなさい」
「気にしないで、じゃ、行ってきます」
 申し訳なさそうにしている美菜から視線を外し、御手洗博士に向かう七日。
 ネクロマンサーである彼女に従い、レイス達が姿を現す。
「無駄です」
 レイス達に銃を向ける御手洗博士。
 赤い光線は実体を持たないレイス達をも撃ち抜いていった。

「これこそが人の欲望の持つ力! 『-Gire-』のエネルギーは我々に限りない可能性を与えてくれるのです!」