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リアクション
久々に休日を寝て過ごしていたパートナーの大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)を、コーディリア・ブラウン(こーでぃりあ・ぶらうん)は怒られるのを覚悟で起こした。
(ホントは家でゆっくり寝ていようと思ったでありますが、明日もお休みであります。いい気分転換になるでしょうし……)
そう思った剛太郎は、彼女の頼みを怒ることなく聞き入れ、2人して公園を訪れていた。
(『花祭り』というと、『お釈迦様にお茶をかける祭り』をパラミタでも行っているでありましょうか?)
花々に囲まれ、賑わう公園の様子に、剛太郎は故郷の花祭りのことを思い出す。
「わぁ……お花のお菓子もあるのですね」
屋台を見回しながら、コーディリアは声を上げた。
「剛太郎様、あちらから見て周りましょう」
菓子作りの参考にするべく、全ての菓子を扱う屋台を巡るつもりで、コーディリアは剛太郎の手を取ると強引にその手を引いて、歩き出す。
「そんなに急がなくても屋台は逃げないでありますよ!」
はしゃぐコーディリアの姿をいつになく、一段と可愛らしいと思い、剛太郎は彼女へと声を掛けた。
「人気のあるものは売り切れてしまうかもしれないでしょう?」
笑みを零しながら彼女は言い返す。
「それもそうでありますね」
その言葉に納得し、頷く。
何より楽しそうな彼女の様子に、剛太郎も楽しくなってきた。
(今日はイベントに来て良かったであります)
そう思いながら、己の手を引くコーディリアに心の中で感謝を告げる。
「花祭りだって。行ってみるよ、セレアナ」
パートナーのセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)と共に、所用で空京を訪れていたセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は、通りかかった公園で花祭りが開催されていることを知り、彼女の腕を取ると、強引に引っ張って、公園へと入っていく。
「セレン、そんなに急がなくたって、花祭りは逃げないわよ」
引っ張られながら、想定外のデートの始まりに、セレアナは苦笑を漏らした。
公園に入って直ぐの花の展示に、セレンフィリティは目を奪われた。
花壇やたくさんの鉢植えに、色とりどりの花が咲き乱れている。
その春爛漫な、ほのぼのとした雰囲気に、柄にもなくセレンフィリティは乙女チックな気分になり、様々な花壇を覗き込んだり、展示の先にある雑貨の屋台で、アクセサリーを覗いて回る。
「セレンでも花は好きなんだ」
教導団での殺伐とした雰囲気とは違った日常の安らぎを感じ、悪くないと思っていたセレアナも、普段と違ったセレンフィリティの様子に、まるで珍獣でも見るような視線で、ぽつりと呟いた。
「な、なによ! あたしだって女の子よ!?」
その呟きに言い返すセレンフィリティは、いつもどおりの彼女だ、とセレアナは笑う。
「もう……。それにしても、お腹空いて来ない? 奥に食べ物もあるみたいだし、おやつにしましょ」
通りの先を指差しながらセレンフィリティは奥へと歩き出した。
見た目も味も楽しめるだろうと、いくつかの菓子を買い求めてから、ベンチに座る。
「セレアナ、どうしよう?」
「うん? 何が?」
並べ終えたセレンフィリティが漏らした言葉に、セレアナは首を傾げる。
理由を訊ねてみれば、気軽に買い求めたものの、その見た目に心を奪われ、食べるのが惜しくなったのだと言う。
「何とも悩ましい……」
呟くセレンフィリティに、セレアナは写真に残せばいいではないかと返すと、彼女は携帯電話を取り出して、カメラを起動した。
全ての菓子を写真に収めると、早速1つ目を食べ始めた。
「わあ、おいしい〜」
口の中に広がる味に素直に感嘆し、セレンフィリティは頬を押さえた。
(まあ、こういうのはあまり味は大したことないのよね……)
そんなことを思いながらもセレアナは、目の前で幸せそうに菓子を頬張るセレンフィリティに水を差しては悪いと思っているうちに、その様子が微笑ましくて、見とれていた。
『ぱらみったー』なるウェブサービスにて、空京にある公園で、「遅咲き桜が咲いているらしい」という呟きを見つけた非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)は、パートナーたちを誘って、公園を訪れていた。
「思ったとおり、綺麗ですね」
開催されている祭りを目にして、近遠がそう口にする。
桜を愛でるのは夜桜が一番だろうと、展示含め花を見て回るのは日が暮れてからにして、まずは屋台の方へと目を向ける。
「あちらにお菓子の屋台が並んでいますわ。見に行きませんか?」
そう言って、皆を誘うのは、ユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)だ。
「おいしそうでございますね。向かいましょう」
アルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)も頷いて、2人は食べ物の屋台が並ぶ通りへと足を向けた。
その後を近遠と、イグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)が続く。
グラスそのものを花に見立てたパフェ、桜色に生地にさくらんぼと生クリームをふんだんに用いた上に5つを皿に並べて1組とし桜の花に見立てたクレープ、そして、色々な花の形をした糖菓などを買い求め、保護者然として控えめに後を着いてくるだけのイグナも巻き込んで、ユーリカたちは菓子を食べ歩く。
「このパフェ、可愛らしい上においしいですわね。いつか作ってみたいですわ」
手にしたパフェを近遠に勧めながら、ユーリカはそう口にした。
「それでは、ユーリカさんの作るパフェも楽しみにしてますね」
近遠もそう返して、微笑む。
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