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超能力体験イベント【でるた2】の波乱

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第9章 覚醒

 一方、設楽カノンが一般参加者も襲い始めて大混乱のステージでは。
「カノン。海人の方に行った黒の十人衆は、次々に倒れているみたいだよ! 私たちもがんばってやっつけちゃおうよ!!」
 小鳥遊美羽(たかなし・みわ)が、ぴょんぴょん飛びはねながら、5人の敵に囲まれてピンチのカノンに加勢していく。
「ぐうううう。頭が、痛いです。コロス、コロス!!」
 ナタを振りまわして敵と闘うカノンは、自分自身の精神をもてあまし気味になってきていた。
「カノン、私は、カノンのお友達。そうだよね?」
 小鳥遊は、カノンをまっすぐみつめていった。
「小鳥遊さん? はい。あなたは、私の友達です。うーん、あれ」
 言葉の途中で、カノンは首をうち振った。
 少し正気を取り戻したのか、カノンは、一般参加者ではなく、黒の十人衆に立ち向かっていく。
「アハハハハハハハ! いいですよ、小鳥遊さん! 2人で斬り刻んであげましょう!! イベント会場へのいまいましき乱入者を!!」
 カノンは笑って、血に濡れたナタの刃をペロッと舐めた。
「なかなか崩れないですね。凶暴ゆえに人と疎遠かと思いきや、仲間が多いようです」
 黒の十人衆のリーダーらしき男は、悪態をついた。
「まあ、一応若い姉ちゃんとしてみることができるからな。かくいう俺も、その輝く太ももをチラ見してると、ついつい萌えちまいそうだぜ」
 寺院の別の男が答える。
 その男のいやらしい視線に、カノンは不快感を募らせた。
「何ですか、あなたは。変な目で私を、私をミルナ! イライラします。コロス、コロス!」
 カノンは、その好色そうな敵に斬りかかっていった。
「おおっと、すごい迫力だな。エリート強化人間の姉ちゃん、笑うと可愛いんだから、笑えよ」
 男はそういって、ニッと笑うと、カノンの身体をとらえて、抱きしめようとする。
「っう……!! あああー!!」
 不快感が絶頂に達したカノンが絶叫すると同時に、足もとから大爆発が巻き起こる。
「う、うおー」
 カノンを取り囲んでいた5人の敵は、爆風に揉まれて絶叫をあげた。
「カノン! 大丈夫なの、カノン? 悪い奴ら! 絶対許せないよ!!」
 卑劣な闘い方に、小鳥遊の怒りは爆発した。
「おっと、一般学生があまり調子に乗るんじゃねえよ。ミニスカートなんか履いて、戦場をナメるのもいい加減にしろってんだ。倒れて血を流してくれた方が、よっぽど目の保養だぜ。決めた! お前からぶっ殺す!」
 黒の十人衆の一人、ランディ・ハーケンが小鳥遊に迫る。
「あなたは特に思い上がっているから、容赦しない! よーし!!」
 小鳥遊は、ランディに向かって走った。
「美羽さん、私も行きます!!」
 ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)も、小鳥遊の脇について、走り始めた。
「だから、ミニスカートヒラヒラさせて、戦場をちまちま走ってんじゃねえよ! チアガールの姉ちゃんはときと場所をわきまえてはしゃげってんだ! 死ね!!」
 ランディのサイコキネシスが、小鳥遊たちを襲った。
 だが、小鳥遊たちは変わらず走り続けている。
 その勢いが衰えないことに、ランディは驚いた。
「ふざけているのはあなただよ!! みて、こんなに走っても、ミニスカートの裾は完全にはまくれあがらない!! 乙女のスカートの中身が、そう簡単にみられると思ったら大間違いだよ!! はあああああ」
 叫ぶ小鳥遊の目がギラギラと光り、その全身が、燃えるような真っ赤なオーラに包まれた。
「ちっ、この力は、もしかするとかなりの使い手だったとか!? 何だろうと、この俺はそう簡単に負けねえぜ!!」
 ランディは銀のナイフを構えて、自らも小鳥遊たちに突進する。
「なに、そんな、小細工を弄して!! なめやがってんのはそっちだよ!! いくよ、覚醒!! ハイパー・サイコ・キーッック!!
 ぶつかりあった瞬間、小鳥遊はランディの肉体を、思いきり蹴り飛ばしていた。
 ダイナミックな攻撃を受けたランディの手から、ナイフが落ちる。
 ばびゅーん
「う、うわああああああああ」
 悲鳴をあげながら、ランディの身体がイベント会場の天井に向かって吹っ飛んでいく。
 小鳥遊が、蹴り飛ばしたランディの身体をさらにサイコキネシスで操っているのだ。
「念を込めて! お空の彼方に! イッちゃってー!!」
「イッて下さいー!!」
 小鳥遊とベアトリーチェは、二人並んで念を込めて、ランディの身体をどこまでも遠くに飛ばす。
 ついに。
 どごーん!
 イベント会場の天井を突き抜けて、ランディは、蒼穹を抜けて、海京の遥か先、どこか地平線の向こうに消えていった。
 天井にできた大きな穴から、青い空がみえ、お陽さまの光が降り注ぐ。
「はあはあ。やったよ!」
 小鳥遊は、激しい疲労に襲われ、膝を屈しながら、勝利を確認した。
 消耗は激しかったが、これで敵の一人が消えたのだ。

 黒の十人衆の4人目を倒した! これで残るは6人! 次は誰が倒れるのか?

「カノン。お友達といえば、ルカもそうだよね。違うかな?」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)もまた、カノンを助けるために現れた。
「ルカさん? アハハハハハ! 一緒に闘いましょう! こいつらを駆逐しないと!!」
 カノンはルカをみて微笑みながら、ナタをブンブン振り回している。
「おやおや。だいぶ興奮しているね」
 ルカルカは、肩をすくめてみせた。
「む!? お前は!!」
 黒の十人衆の一人、シビト・イジロウは、ルカルカの姿をみて、血相を変えた。
「ルカ! お前に受けた仕打ち、忘れてはいないぞ」
 シビトは、ルカルカに迫った。
「あれ? 君は!!」
 ルカルカの目が、大きく見開かれる。
 彼が「大いなる主」の力で復活する前、シビトは、ルカルカとの因縁浅からぬ関係にあったのだ。
 ルカルカにとって、シビトは、想い出したくもない過去と直結する存在だった。
「驚いたな。どうやってよみがえったの?」
 ルカルカは、シビトへの憎悪が胸にこみあげてくるのを感じ、徐々に表情を険悪なものに変えながら、尋ねた。
 実際、シビトにまた会うとは思っていなかったので、信じられないという想いが強かった。
「私は、お前たちが滅ぼしたと想い込んでいる、大いなる主の力でよみがえったのだ。ここで会ったが百年前、貴様から受けた屈辱、ここで晴らしてくれるわ!!」
 シビトは、闇黒を生み出してルカルカにぶつけながら、距離を詰めてくる。
「ど、どういうこと? シビトの主は、倒されたと聞いているけど、そうじゃないってこと!? くっ、でも、でも、勝手だ! 君が、君が私にあんなことをやったから!!」
 ルカルカの顔が、怒りで真っ赤に染まってゆく。
「どうしたんですか? この人と知り合いなんですか?」
 カノンは、ルカルカに尋ねた。
「御免。この人、とても悪い人なんだ。だから……倒す!!」
 ルカルカもまた、シビトに向かっていった。
「ルカ。その者が邪悪そのものであることはわかるが、あまり興奮しすぎるのはよくない。冷静な判断力を曇らせる結果にならないことを祈る」
 ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が忠告する。
「わかってる。わかってるよ。でも、こいつを放っておいたら、また誰かが、こいつにひどい目にあわされるんだ!!」
 だだだだだ!
 ルカは、光条マシンガンをシビトに乱射した。
 だが、ルカが撃ったのは、シビトがつくりだした幻覚だった。
「ダリル。一緒にルカをサポートしよう。俺たちはそのための存在なんだ」
 イベント会場のスタッフ本部で連絡役を務める夏侯淵(かこう・えん)から、通信が入る。
「もちろん、そうさ。だからこそ、俺がついている」
 ダリルはいった。
「ふははははは。以前の私と同じだと思うなよ。いまは、超能力の方が専門だ!!」
 シビトのサイコキネシスが、ルカルカの身体を襲う。
 宙に身体を持ち上げられ、身動きできなくなるルカルカ。
「くっ。確かに、力が増しているね」
 ルカルカは、空中で、じっとシビトを睨みつけた。
「気合だけは一人前、というわけか。ゆっくり殺してやるぞ。うん?」
 シビトは、他の生徒が近づいてくるのに気づいた。
「わーっ、早く避難しないと……でも、ここでも、闘いが!」
 何とか闘いを避けて会場のどこかへ避難しようとしていたフィアナ・コルト(ふぃあな・こると)が、シビトの姿をみて驚きの声をあげる。
「おお、その姿……素晴らしい、素晴らしいぞ!!」
 シビトの目が、邪な欲望に染められた。
 フィアナは、どういうわけか、ドレスやリボンや指輪を身につけて、とってもお姫様な可愛らしい外観でいたのだった。
「みつかってしまいましたね。こんな姿だから、目をつけられてしまうんですね。キャ、キャー、来ないで!!」
 フィアナは、何を期待しているのか、迫るシビトから逃げようともせず、棒読み口調で悲鳴をあげた。
「フハハハハハハ! とらえて、奴隷にしてくれる。おもちゃだ、おもちゃだ!」
 シビトは、下卑た笑いを浮かべながら、フィアナの胸に手をかけようとした。
「キャー! やめて、イヤー!! 乙女の自衛手段、発射ー!!」
 しゅごおお
 フィアナの両手の手甲が外れて、ロケットパンチとなって宙をはしり、シビトの顔面にぶち当たった。
「あっ、フィアナ、そんなところで何やってるんだ」
 相田なぶら(あいだ・なぶら)が、パートナーの姿を思わぬところでみつけて、驚愕の叫び声をあげた。
「ん? どうしたのですか、なぶら?」
 フィアナは、パートナーに首をかしげてみせて、いった。
「どうしたのですか、じゃないよ。こんなところで、そんなものものしい格好して!!」
「え? ものものしい格好って、ドレスとかリボンとか指輪とか普通の私服じゃないですか。ロケットパンチはか弱い乙女の嗜みとしての自衛手段ですよ。む? 何ですその目は? 文句あるのですか?」
 フィアナは、膨れ面になった。
 そこに。
「おのれ! バカにしおって!!」
 激昂したシビトが、フィアナに襲いかかった。
「え? きゃあああああ!」
 フィアナは、今度は芝居ではない悲鳴をあげた。
 シビトの超能力によって、フィアナは空中高くに持ち上げられると、ものすごい勢いで旋回させられた。
「ああ、頭がきーんとする! 助けて下さいー!!」
 涙を流して絶叫するフィアナ。
「フハハハハハ! いい気味だ! おしっこをもらしてしまえ!!」
 シビトは、残酷な笑みを浮かべた。
「……」
 着地していたルカルカは無言のまま、シビトに歩み寄った。
「待て。落ち着いてやれ」
 ダリルが、警告の叫びをあげる。
 ルカルカの接近に気づいたシビトは、歯を剥き出した。
「何だ、やれるものならやってみろ!! 私は、いまや、黒の十人衆の一人だ!!」
「た、助けてーああー」
 フィアナの悲鳴が、ルカの耳に刺さる。
「ああ。やってやるよ! 殺す!!」
 ルカルカは、怒りを爆発させた。
「危険なのは、わかってる、でも! ダリル!!」
「ああ。サポートはしよう」
 ダリルはいった。
 ルカルカが「危険」といったのは、ルカルカ自身がこれから行うことを指しているのだと、ダリルは理解していた。
「何をやろうと、無駄だ!」
 シビトは、超能力による防御をきつくした。
 シビトとしては、防御に専念するこの態勢こそ、ルカルカの意表をつくものだと考えていた。
「はあああああああ」
 ルカルカの目がギラギラと光り、真っ白なオーラが全身を覆う。
「覚醒!! トリプルアルファ!!
 ルカルカの手中に生じた火雷が超高速・超高圧で圧縮される。
 その火雷の殻の中で燃えているのは、大気中のヘリウムを集約し燃焼させる原子の火であり、危険な核融合の炎だった。
「くらえ!!」
 ルカルカの放ったその火雷が、シビトのフォースフィールドにぶち当たる。
 どごーん!!
 すさまじい力の前に、フォースフィールドはあっさり突破された。
「うお!?」
 火雷にサイコキネシスを使用し、着弾させる前に爆発させるシビト。
 ちゅどどどどーん!!
 だが、それでも、カオス的なすさまじい破壊の炎は、シビトを焼き焦がすに十分だった。
「ぐわあああ、お、愚かなり、イベント会場でこれだけの技を使うとは!!」
 皮膚が溶け、骨が剥き出しになったすさまじい形相でルカルカを睨み、シビトは嘲笑った。
「二度とよみがえるな。地獄の底で、永劫の炎に焼かれ続ければいい!!」
 ルカルカは、シビトがぶすぶすとくすぶる炭の塊になるまで睨み続けていた。
 ぐしゃっ
 最後の残骸を踏み砕くルカルカ。
「何とか、制御できたな」
 ダリルが、汗びっしょりの額を拭っていった。
「結界の力、信じていたよ」
「そうか。だが、えらい消耗だ」
 ダリルは、疲労のあまり、膝を床についた。
 あまりにも強力な核融合の爆発の炎を、ダリルは、覚醒技である「プリズンウォール」を使用して、シビトの周囲に形成した正三角錐形の力場で抑えこみ、力場の外への影響を無効化させたのだ。
 ルカルカの放った技は、一歩間違えばイベント会場全体を破壊しかねないものだったのだ。
「俺はこのとおりだが、ルカは平気なのか?」
 失神寸前のダリルは、ルカルカに尋ねた。
「いや、どうしてそう思う? ちょっと、塩ソフトクリームを持ってきてくれないか?」
 そういって、ルカルカは倒れた。
「はー、怖かったですねー」
 倒れた2人をよそに、フィアナは、何事もなかったかのようにイベント会場の奥へと歩いていく。
 そして。
(ははははははは! よみがえった私はそう簡単には滅びん!! 気づかないのか、アンデッド属性を得たのだと? 何度倒そうと、這い上がってくれるわ! またの闘いを楽しみにしているぞ!!)
 どこかから、シビトの笑い声が響いていたのである。

 黒の十人衆の5人目を倒した! これで残るは5人! 次は誰が倒れるのか?

「くっ!! 何だかすごい敵が出てきましたねぇ。ゲームバランス、壊れてますよ!!」
 月谷要(つきたに・かなめ)は、黒の十人衆の強大な戦力を前に、内心では戦々恐々としていた。
「ゲームではないぞ、学生くんたち!! 拙者は、黒の十人衆の一人、ティンギリ・ハンなり!! この刀のサビにしてくれよう!!」
 そういって、ティンギリは巨大な刀で月谷に襲いかかってきた。
 ぶしゅうう!!
「う、うおおー!!!」
 月谷はうめいた。
 魔鎧である機式魔装雪月花(きしきまそう・せつげっか)が攻撃を受け止めたのだが、それでも、抑えきれないダメージが月谷を襲ったのだ。
「大丈夫か? いまの攻撃、やや強烈だったな。軽減はしたが、それでも貴公には辛いはず」
 雪月花は、月谷を気遣った。
「お、俺は負けない!! 悠美香もいる!! ここで負けるわけにはいかないだぁっ!!」
 月谷は、絶叫した。
 痛みの中で、月谷の中の何かが、音をたてて砕けた。
 月谷の目がギラギラと光り、全身が、特に魔鎧が、真っ白なオーラに覆われる。
「か、覚醒!! これは? 雪月花が変わってゆく!!」
 月谷は、魔鎧の形状が変わってゆく有様を、驚愕の想いでみつめた。
「こ、この感覚は……! 私が変わる!! そうか。『奴』がいっていたリミッターとやらが外れたか!!」
 雪月花もまた、自身の変化に驚いていた。
 そして。
 雪月花は、魔鎧【アルマトラム・フォルス】へと変貌していた。
 頭部を覆うフェイスマスク。
 細身のパワードスーツ。
 装甲つきの黒のロングコート。
 完璧なまでのコーディネートが、装着者である月谷をより高次の存在へと高めていく。
「これが、これが俺にみえたものか。イメージによって、より強く、より高く生まれ変わる。これが超能力!!」
 月谷が目撃したのは、「強化型」の超能力の発現であった。
「鎧が進化して、しぶとさが増したか。だが、それで勝てると、本当に思っているのか?」
 ティンギリ・ハンは、月谷にさらに攻撃を放とうと動いた。
 そこに。
「許せない。よくも要を!!」
 怒りに燃える霧島悠美香(きりしま・ゆみか)が敵に歩み寄り、剣を高く振り上げていた。
「くっ、邪魔を!!」
 ティンギリ・ハンは攻撃対象を霧島に変え、次々に斬撃を放つ。
 霧島は攻撃を弾き、さらにヒートアップした。
「二度と要に近寄れなくしてやるわ!!」
 霧島の目がギラギラと光り、全身が真っ白なオーラに包まれる。
「覚醒!! X・サイコブレード!!
 霧島が振り上げた刀身から、強力な念力の衝撃波が、X字を描くように発射される。
 ざすっ!!
 衝撃波は、ティンギリ・ハンの身体を貫通した。
「む? 当たったでござるか?」
 ティンギリ・ハンが立ち止まって、首をかしげたとき。
 ぶしゅうううう!
 鮮血が吹きあがり、その身体はX字に裂けて、バラバラになってしまった。

 黒の十人衆の6人目を倒した! これで残るは4人! 次は誰が倒れるのか?
 
「わーはっはっは! みんな、俺様をみるじゃん!!」
 ゲドー・ジャドウ(げどー・じゃどう)は、脳漿がはみ出ている、血まみれの自らの頭部を指していった。
「さっき、俺は、カノンに襲われ、ナタでこの頭をかち割られた! この割れ目は、俺様の勲章!! これから、俺様は、カノンにもらった力で覚醒するのだぁ!!」
 ゲドーの目がギラギラ光り、全身が真っ白なオーラに覆われる。
 そして。
 ばたっ
 突然、ゲドーは倒れた。
 と思ったら、次の瞬間よみがえる。
 むくっ
 ちゅどどどどーん!!
 ゲドーが復活した瞬間、周囲に大爆発が巻き起こる。
「これぞ、俺様の新しい力!! 復活の瞬間に周囲を殲滅だぁ!!」
「ずいぶん威勢がいいな」
 黒の十人衆の一人が、ゲドーに歩み寄った。
「私の名は、アモン・アナン。この筋肉美で、お前を悩殺する!!」
 筋肉ムキムキのアモンは、ゲドーの頭部を、その太い腕で思いきり締めつけた。
「ぎゃ、ぎゃあああ! 気色悪い! 頭がまた割れる! これじゃ、悩殺じゃなくて『脳殺』じゃん!!」
 ゲドーは、せっかくふさがった頭部の割れ目がまた裂けて、血と脳漿をしぶかせるのが残念だった。
 そのとき。
「そこ! ちょーっと、待ちなさーい!!」
 警備員姿の永倉八重(ながくら・やえ)が、さっそうと現れた。
「うん? 何だ、お前は? とりあえず俺のこの筋肉をみろ!!」
 血まみれの肉塊と化したゲドーを放り出し、力こぶをつくって永倉にみせつけるアモン。
「あー、もう、やりたい放題やって! でも、そこまでよ悪漢ども! ここから先は通さないわ!」
 永倉は、剣を構えて、ポーズを決めた。
「ほう。ただの警備員ではないな。何者だ?」
「ふ、そこまで言うならぁ、教えてあげましょう!!」
 永倉は剣を振り回して見事な舞いを舞ってみせながら叫んだ。
 ぽぽぽぽぽん!!
 どこかから太鼓の音が鳴り響く。
「あるときは一般学生、あるときはイべント警備員、その実体は……」
 永倉は警備員の制服をバッと脱ぎ捨てた。
 すると。
 そこには、魔法少女の姿になった永倉が立っていた!!
 漆黒の髪と瞳は、いまや情熱の紅へと変わっている。
「紅の魔法少女、見参!! 平和なイベントを邪魔する不届き者どもは、正義の刃で成敗よ!」
 言い捨てて、永倉はアモンに斬りかかっていた。
「はあっ、筋肉全開!! 真剣白刃取りぃっ!!」
 アモンは、太い血管を浮き上がらせた両腕を振り上げ、永倉の刃を掌で挟み込んでいた。
「やるわね。でも!!」
 永倉は、刃に力を込め、アモンの掌の挟みを抜けようとする。
 ぎりぎりぎり
 だが、アモンの怪力は本物だった。
「甘いわぁ!!!」
 アモンは掌をねじって、刃を弾き飛ばす。
「とおっ!!」
 永倉は弾かれた刃に動きを合わせて跳躍すると、アモンの背後に降り立った。
「隙あり!!」
 ずばああっ!!
 永倉の剣が、アモンを袈裟がけに斬り裂いた。
「ぐ、ぐわああ!!」
 断末魔の悲鳴をあげ、アモンは倒れる。
「やったわ!!」
 永倉が勝利のVサインを決めようとしたとき。
「うおおおおおおお! 復活だぁっ!!」
 アモンに締め殺されていたゲドーが、復活して起き上がった。
 ちゅどどどどーん!!
 周囲に大爆発が巻き起こる。
 爆発がしずまった後、そこには、真っ黒焦げの永倉が立っていた。
「魔法少女ヤエ、第12話『波乱! 混乱? でるた2!?』はどうだったかしら? みなさん、また来週お会いしましょう!! 正義の心は、不滅なりぃ!!」
 そういって、永倉は倒れた。

 黒の十人衆の7人目を倒した! これで残るは3人! 次は誰が倒れるのか?