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美緒が空賊!?

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美緒が空賊!?
美緒が空賊!? 美緒が空賊!?

リアクション

「…………また、ですか……はぁ……」
 空賊たちの襲撃に、冬蔦 日奈々(ふゆつた・ひなな)はため息を漏らした。
「こうなったら……どうにかするしかない、ですねぇ……。美緒さんの事も、ありますし……この前の、仕返しも……したい、ですし……。えぇ……前に、捕まった時は……いろいろと、させられましたしね……その、仕返しを……」
 呟きながら、こくこくと頷いて、日奈々は飛行船内で戦闘しても大丈夫そうなところへと足を向けた。
 まずは乗り込んでくる空賊たちを相手にしよう、という算段だ。
 向かう途中、不穏な気配を感じて足を止める。
「ちっ、気付いたかっ!」
 舌打ちしながら通路へと飛び出して来たのは、細身剣を手にした1人の空賊だ。
「……来ました、か……」
 ぽつと呟き、相手の存在を確認した日奈々は1つ息を吸い込むと、恐れの感情を湧き上がらせる歌を歌い出した。
「うぅ……何だっていうんだ……っ」
 内から湧き上がる感情に、空賊が頭を振る。
 恐れを感じながらも耳につく歌を振り払い、空賊は剣を振るう。
 彼の動く気配を読み、一撃をギリギリのところで交わした日奈々は嫌悪感を感じさせる歌を歌い、更に魂を震わせて、己の力を引き出した。
 そうしている間にも空賊は彼女を傷つけようと剣を振るってくるけれど、斬れる! と感じさせるギリギリのところで交わしていく。
「くそっ!」
 苛立ちの募る空賊に、日奈々は笑んだ。
「殺しは……しないですから……大丈夫、ですよぉ」
 そう告げて、戦女神の威光を光の刃に変え、放つ。
 避け切れずに、その刃を脚に受けた空賊は痛みにその場でのた打ち回る。
 その隙に、日奈々は先へと急いだ。

「随分と景気良くやってくれるな」
 展望台にて、近付き砲弾を放った空賊たちの様子を見ていた紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は、ぽつと呟いた。
「まぁ、俺がここにいたのが運の尽きだ。偶には飛行船でのんびり旅も良いかと思ったがこうなったら仕方がない。ぶっ飛ばしてお縄にしてやるから覚悟しろよ」
 空賊船に向かって、くつくつと笑うと辺りを見回した。
 飛行船に残る者や空賊船に乗り込む者などが集っている。
 その中に雅羅の姿も見つけた。彼女と共に行動しようとしている者は多く、手を貸さなくても大丈夫だと判断した唯斗は「船は頼む」とだけ伝えて、空賊船に一番近い非常口を開けると外へと飛び出した。
 パートナーのエクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)紫月 睡蓮(しづき・すいれん)はそれぞれ、レッサーワイバーンとガーゴイルに乗り、彼を追いかける。
 後方で、スタッフが悲鳴を上げているのが聞こえたけれど、気にせず、足を進めた。
「プラチナ!」
「了解です、唯斗!」
 跳びながら、唯斗はプラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)を纏いながら、叫ぶ。
「白獣纏神! バイフーガ! 二代目空賊狩りとしてお前達をぶっ飛ばす!」
 魔鎧であるプラチナムの姿は、彼へと纏われることで、全身を覆う白金の闘衣となった。
 跳んで行く途中で、唯斗は小型艇の動力部へと強力な一撃を、光条兵器のガントレットを纏った拳で入れる。
「なっ、てめぇ!」
 空賊が武器を手に繰り出す一撃を避けながら、動力部の誤作動で爆発を起こす前に、次の一機へと跳び乗り、繰り返しながら空賊船へと向かった。
 時には一撃では誤作動を起こさないような堅い小型艇もあったが、睡蓮が蒼弓ヴェイパートレイルから放つ、念力で軌道修正を加え命中精度を高めた矢や、エクスが女神の力を借りて作り出した炎と雷が融合した塊などがフォローの一撃を繰り出した。
「汝ではわらわに勝てぬよ」
 エクスがそう告げながら、悲鳴を上げ落ちていく空賊を見送る。
 そうしながら次々と小型艇を落としながら、空賊船に近付いていった。

「またか」
 空賊に襲われたと聞き、その空賊船が見えるところまで出てきた夢野 久(ゆめの・ひさし)は、その船の甲板に美緒の姿を見つけると、呟いた。
 彼は以前、彼女が牛鬼頭の奈落人に憑依されたのを思い出したのだ。
「牛の次は空賊か」
「そういえば、彼女、“黒髭”とかいう空賊を退治しに行ったまま、行方不明になっていたとか聞いたわよ?」
 ルルール・ルルルルル(るるーる・るるるるる)が聞いた噂を口にする。
「え? 黒髭? じゃあ海賊か?」
 そんなやり取りをしつつも見つけたからには助けに行こうと、甲板に出ている今がチャンスと見て、目の前の窓をぶち破り、小型飛空艇オイレに乗って、空賊船へと向かった。
 ルルールも光る箒に乗り、後を追う。

「……ん?」
「何か、揺れたみたい……?」
 客室のベッドの上。
 2人の時間の後の、まどろみの中に居たセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は、空賊の襲撃による飛行船の揺れを感じて目を覚ました。
 部屋の外、通路が賑わっていて、船内の客全員に襲撃を知らせるアラームが鳴り響いた。
 2人は着衣もそこそこにマシンピストルとランスで武装して、部屋を出る
「乗客たちは船倉に逃がして!」
 スタッフへと声を掛ければ、乗り込んでくる空賊を迎撃しやすい場所へと向かった。
 ボーディングし乗り込んでくる空賊を見つけたセレンフィリティがシャープシューターの技術を用いて、引鉄を引く。
「っ!?」
 放たれた銃弾は空賊の腕を貫き、痛みを与えた。
 そして、撃たれた方向を確認した空賊は、セレンフィリティの方へと駆けて来る。
「通させない」
 立ちはだかるのはセレアナだ。
 向かってくる空賊と、一歩踏み出す彼女の力が重なり、深々と空賊の身を貫く。
「状況が状況だけに、なるべく殺さずに……は無理だもの。構わないわよね?」
 ランスが引き抜かれると、その空賊は倒れ込んだ。
 更に乗り込んでくる空賊をセレンフィリティの放つ銃弾と、セレアナの振るうランスが襲う。
「セレアナ、機嫌悪い?」
 ふと、いつもよりえげつない攻撃を繰り出すセレアナに、セレンフィリティが訊ねた。
「ええ。気持ちよくまどろんでいる所を邪魔されてはね」
「なら、終わったら続きしよ?」
 セレアナの答えに、彼女は微笑んで、そう約束し、構えたマシンピストルの引鉄を引く。

 スタッフと共に乗客たちを誘導し終えたアルテッツァたちは、飛行船へと乗り込んできた空賊たちを探して、船内を移動していた。
 通路の角を曲がったところで、船室から金品を漁って出てきた空賊たちに出くわす。
「ぎゃーっぎゃっぎゃ! いっぴーき、にひーき、さんびーき!」
 夜鷹が笑いながら、空賊たちの数を数えた。
「三匹狩ればキマク名物『だんご』が出来るぎゃ〜。さあさ、なりたいのはどいつぎゃ〜? 別に2人でもいいぎゃ、さあ来いだぎゃ」
「ヨタカ、あまり空賊の皆さんを煽らないで下さい。いたぶる楽しみが減りますから」
 彼を注意しているように聞こえるものの、アルテッツァの言葉もえげつない。
「何だか知らねぇが、見られたからには容赦しねえ!」
 そう声を上げ、剣を振り上げてくる空賊たちをレクイエムの歌い声が襲い掛かった。
「くっ、このカマの歌……か?!」
「あたしがオカマですって!? ……覚悟しなさい」
 空賊の言葉に、レクイエムの歌声は悲愴感漂うものに代わっていく。
「手加減は無用ですよね」
 口元を綻ばせながら、アルテッツァは両の手にそれぞれ構えた処刑人の剣に冷気を纏わせた。
 その剣で、空賊たちへと斬りかかる。
 腕や足を斬られながらも怯まない空賊たちは外見から夜鷹を子どもだと見て、襲い掛かった。
 それぞれの攻撃を見切って、交わし切った彼は、空賊たちが一所へと集まったところで、爆炎を放つ。
「うわぁ!?」
 炎に包まれた空賊たちは、水を求めて逃げていった。