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第四章 展開

 四谷 大助(しや・だいすけ)神豪 軍羅(しんごう・ぐんら)の一撃をガードしたものの、数メートル後方に吹き飛ばされてします。
「マスター!!」
 大助の元へ駆けつけようとする四谷 七乃(しや・ななの)グリムゲーテ・ブラックワンス(ぐりむげーて・ぶらっくわんす)が危険だと言って止めた。
「どうした! 貴様の力はその程度か!?」
「……くそっ。一対一で戦えれば……」
 軍羅と共に攻撃してくる≪荒くれ者≫達。
 ≪荒くれ者≫達は大助だけでなく、戦えない七乃さえ狙ってきていた。
 グリムゲーテが七乃を守ろうとするが、彼女だけでは手が足りず、大助も一緒になって守らなくてはならない状況だった。
 これまで軍羅の攻撃を避け続けながら≪荒くれ者≫達の足を止めてきた大助。だが、それも限界だった。
「しまった。抜けられた!?」
 大助の脇を≪荒くれ者≫が抜けていく。
 グリムゲーテは別の≪荒くれ者≫に足止めをされている。
 大助が追い掛けようにも、軍羅に邪魔されてしまう。
 七乃に迫った≪荒くれ者≫。
 だが、その≪荒くれ者≫の前にエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)と共に黒マントを追っていたはずのロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)が立ち塞がった。
「残念だったね。七乃ちゃんはボクが守らせてもらうよ」
「ロートラウトさん!」
 ロートラウトは≪荒くれ者≫にラリアットを決めると、【神速】で加速して足を払い、腹に肘を叩きつけ、さらに素早く倒れた相手のこめかみと顎に手を当て力を込めると、一気に首をへし折った。
 ロートラウトは手を叩きながら立ち上がると、七乃に親指を立てた。
 七乃は首をありえない方向に曲げたまま動かなくなった≪荒くれ者≫を、青ざめた表情で見ていた。
 仲間を殺された恨みを込めて≪荒くれ者≫が大助に斧を振りかざして突っ込んでくる。
 だが次の瞬間、≪荒くれ者≫は顔面を変形させて物凄い勢いで横に吹っ飛んだ。
「真打登場ってな!」
「エヴァルトさん!」
 エヴァルトは≪荒くれ者≫を殴った手をぶらつかせながら、大助の前にでる。
「こっちの追いかけっこが終わったんで手伝ってやるよ。ほら、さっさと決着をつけな」
 エヴァルトは先ほどまで追い掛けていた黒マントの中に≪サルヴァ≫の姿はなかったために仕方がなく戻ってきたのだった。
 大助はエヴァルトに感謝を述べると七乃達から離れて軍羅と一対一で対峙した。
「タイマンの勝負で私に勝てると思っているのかな?」
「やってやるさ……」
 軍羅の威圧感が大助の身体を貫く。
 大助は湧き上がる恐怖を押さえつけようとした。
 緊迫した戦いを大助はこれまで潜り抜けてきた。
 それなのに今まで経験したことのない恐怖が内から湧き上がってくる。
 理由は分かっていた。――今は魔鎧である七乃がいないからだ。
 七乃の補助なしで大丈夫なのだろうか。直撃を食らったらどうなるのだろう。
 そういった不安が恐怖の念となって大助の身体にまとわりつくのだ。
「なるほど。相当な修羅場を切り抜けたようだな」
「!?」
「ならば話は早い。多くの兵をなぎ倒してきた貴様の実力。私に見せてみるがいい!」
 軍羅の洞察力に驚いていた大助だったが、あることに気づき急に心が晴れたような気持ちになった。
 大助は構えを解いて目を閉じる。
「……どういうつもりだ」
「違うんだよな」
「何を言っているのだ」
「…………」
 大助は黙り込んだ後、ゆっくりと構えなおした。
「オレが勝ったら教えるよ。……力を貸せ! ブラックブランド!!」
 叫びと共に大助の甲の家紋が光り輝きだした。
 大助は笑っていた。恐怖はなく、身体が軽い。
 にらみ合いが続く。
 たった数秒が数時間にも感じられる。
 ふいに、どこかで崩れる音がして、二人が同時に地面を蹴った。
「「おおぉぉぉぉ――!!!!!」」
 気合と共に二人が拳を突き出す。
 すれ違う拳。
 瞬間――決着がついた。
 軍羅が音を立てて仰向けに倒れる。
 大助は頬から垂れる血を指で拭うと、拳の形で赤くなった軍羅の顔を下ろした。
「約束だから教えるよ。つまりオレが戦ってこれたのは自分の実力だけじゃないってこと。仲間が……大切な仲間が近くで支えてくれたからやってこれたから今まで戦ってこれたってこと」
 軍羅は気絶しているのか目を瞑ったまま、何も答えなかった。
 それでも大助は話し続けた。
「でも、最近気づいたことがある。大切な人がオレのために色んなことを背負ってしまっているって」
 七乃が胸に手を当てて大助の話に耳を傾けていた。
「確かにオレは今まで一人で戦ってきたわけじゃない。今日だってエヴァルトさん達に助けられてあんたと戦ってる。だからオレは頼りなく見えるかもしれない。それでも、その人がオレを守りたいと思ってくれているように、オレもその人を守りたいと思ってる。だからオレはどちらか一方に頼るんじゃなくて、お互いを支えあって――」
「マスター……」
 興奮した大助は話しすぎてしまったことを後悔し、それ以上は何も口にしなかった。
 すると、低い笑い声が響く。
「その様子だと次に会う時はさらに強くなっているのだろうな。……再戦が楽しみだ」
 気絶していたはずの軍羅が愉快そうに笑っていた。
「知ってる? 大助ったらあの暴走した日からずっと、精神鍛錬をしてるのよ。誰のためかわかるわよね」
 グリムゲーテの問いに七乃が小さく頷く。
「……少しくらい、信じてあげてもいいんじゃないかしら?」
 七乃は何か思い悩んでいる様子で、それ以上何も言わなかった。
 その時、ロートラウトが声を荒げる。
「余所見しないで!」
 仲間と共にグリムゲーテは襲ってきた≪荒くれ者≫達の迎撃を再開する。
 目に見えて疲労も出てきた大助は、次々と襲ってくる≪荒くれ者≫達に苦戦する。
 すると、目の前の≪荒くれ者≫を闇黒が覆う。
「変身できなくても、七乃は支援くらいできます!」
 大助が振り返ると杖を構えた七乃が≪荒くれ者≫達を睨んでいた。
「七乃……」
「マスター、七乃は前線に向かのでそちらはお任せします。その代わり援護をさせてください」
「……わかった。安心してくれ。絶対に守って見せるから!」
 大助は先ほどまでの疲労など感じさせない勢いで拳を振った。