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リアクション
≪氷像の空賊≫と戦っていた健闘 勇刃(けんとう・ゆうじん)達の元へ、自分達の街を守ろうと立ち上がった住民達がやってきた。
「今更かよ……」
勇刃がそんな住民達を見てぼやいた。
すると、勇刃の横顔を見た枸橘 茨(からたち・いばら)がクスリと笑う。
「とかなんとか言って、顔は嬉しそうよ」
「え、そうかな?」
勇刃は気づかぬうちに笑っていたのだ。その胸の内では激しい闘志が燃えたぎっている。
「茨。火消し彼らに任せて、俺達は向かってくる敵を倒すぜ!」
「了解よ」
茨に指示を出した勇刃は次にアニメ大百科 『カルミ』(あにめだいひゃっか・かるみ)と文栄 瑠奈(ふみえ・るな)にも指示をだす。
「カルミちゃんと瑠奈姉は彼らの護衛は任せた」
「わかったのです」
「お姉さんに任せといて!」
お互いの役割を確認した勇刃達はそれぞれの持ち場に向かう。
「ここから先へは行かせないのです」
さっそく≪氷像の空賊≫が住民に襲いかかろうとすると、カルミの放った【ファイアストーム】が通せんぼをした。
足止めされた≪氷像の空賊≫に瑠奈が【ツインスラッシュ】で斬りかかる。
「向かってくる子はみんな料理しちゃうよ!」
住民達は二人を信用して消火活動を始めた。
その一方で勇刃は向かってくる≪氷像の空賊≫に突っ込み、激しく剣を振るっては蹴散らしていた。
「オラオラオラ!!」
周囲にいた≪氷像の空賊≫は一瞬で砕け散る。
一端、足を止めて肩で呼吸をする勇刃。
そこへ≪氷像の空賊≫達が一斉に跳びかかってくる。
「チィ!」
舌打ちをして勇刃が回避しようとするが一瞬立ちくらみに陥った。
「健闘君!?」
跳びかかってきた≪氷像の空賊≫を茨が【奈落の鉄鎖】で落とす。
ふらつきながらも地面に落ちた≪氷像の空賊≫に勇刃が攻撃を食らわす。
「――喰らえ、爆空蒼炎斬!」
光が≪氷像の空賊≫を覆い、破片が辺りに飛び散った。
周りの敵を一掃して安心した勇刃が倒れそうになると、茨が後ろから抱きとめた。
「茨、助るな……」
「大丈夫なの? 最初から結構飛ばしてたから疲れているんじゃない?」
「別に……これくらいはなんともないさ」
勇刃が茨の手を振り払って、ふらつきながらも前へ進み出る。
「やっぱり少し休んだら?」
「今はいい。後でゆっくり休ませてもらうさ」
勇刃は休んだら暫く動けなくなるような気がしていた。
すると妙な地響きと共に遠くから≪氷像の空賊≫が向かってくる。
「またか……って、なんだあれ?」
見えてきた≪氷像の空賊≫の姿を見た勇刃は眉を顰める。
「それっ」
「やぁん、レティシアさん冷たいですわよ」
レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)は水を両手ですくうと、ミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)に浴びせた。
逃げだすミスティの先にセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)が立ちふさがり、同じように水をかけてくる。
「ここは通行止めです! それ、それ!」
両方から水をかけられるミスティは、両サイドへ必死に反撃を返した。
「ほらセレアナもそんな所にいないで一緒やろうよ」
「いえ、いいです。私は疲れたのでここで休みますから」
水のかけあいをしながらはしゃぐ三人の様子を、セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は噴水の縁に腰かけて足を水につけながら眺めていた。
噴水の中でキャキャとはしゃぐ水着の女性達。
その様子を≪氷像の空賊≫達がポカンと突っ立って見つめていた。その数は着々と増えていっていた。
「まさかこの格好が役に立つなんて思わなかったわ」
セレアナが自身の来ている水着を見て深いため息を吐いた。
「そろそろ頃合いですかねぇ」
レティシアが横目で≪氷像の空賊≫の数を確認し、次の作戦を開始した。
「……きゃあ、足が滑った!」
レティシアがワザとらしく派手にこけると、水しぶきが大きく上がる。
水しぶきが地面に落下する。それと一緒にレティシアの水着のトップが≪氷像の空賊≫達の前にふわりと落ちてきた。
「困りましたねぇ。水着が取れちゃったですねぇ」
レティシアが噴水の縁から赤らめた顔だけのぞかせ、潤んだ瞳で≪氷像の空賊≫を見つめる。
「あちきの水着、どなたか拾っていただけませんか?」
≪氷像の空賊≫から暑苦しい歓呼の声があがる。
レティシアの横にセレンフィリティが≪氷像の空賊≫に背中を見せるようにして座った。
すると、セレンフィリティは片手で胸を水着が零れ落ちないようにしながら背中の紐を外す。
結んだ髪から滴り落ちる滴。セレンフィリティはそっと微笑みながら、≪氷像の空賊≫に流し目を送って言った。
「そういえば、サンオイル塗り忘れてたわ。ねぇ、誰か塗ってくれるかな?」
≪氷像の空賊≫が雄叫びを上げると大地を震わせて、我先にと向かってくる。
すると、噴水の広場に女性の声が響く。
「いただきますわ!」
先頭の≪氷像の空賊≫が水着までもう少しで手が届きそうになった所で、ユーベル・キャリバーン(ゆーべる・きゃりばーん)の炎の渦が彼らを包みこんだ。
「仕留める!」
逃げようとする≪氷像の空賊≫に【『シャーウッドの森』空賊団】団長ヘイリー・ウェイク(へいりー・うぇいく)の放った矢が左右から突き刺さった。
罠にはまった≪氷像の空賊≫達は一人残らず砕け散った。
周囲から息を潜めて見守っていた住民達の口笛と共に歓声を送られる。というよりは、男たちがさらなるサービスをレティシアとセレンフィリティに要求していた。
「男って死んでもスケベなのね」
紐をセレアナに結んでもらいながら、セレンフィリティがため息をついていた。
【『シャーウッドの森』空賊団】副団長リネン・エルフト(りねん・えるふと)は上空から降りてくると、レティシアの水着を拾って返した。
「はい。どうぞ」
「ありがとうございます」
水着を付け直すレティシアは、立ち尽くす【『シャーウッドの森』空賊団】団員フェイミィ・オルトリンデ(ふぇいみぃ・おるとりんで)に気づいた。
「噴水に美の女神様がいらっしゃるぅ」
フェイミィは鼻血を出しながら、意識がどこか別の世界に飛んでいるようだった
「ところでブルーウォーター達は水浴びしてたけど、≪魅惑の香≫の効力って続いているの?」
リネンの問われ初めて気づくレティシア。
元々、自分達で影響がわかる物ではなかったが、水と共に流れてしまったと考えるのが普通である。
それでも集まってきたということは、≪氷像の空賊≫にとって素のままでも魅力的女性だったか、あるいはただ単に彼らがスケベだったからだということだった。
すると、遠くから走ってくる集団が見える。
「あれは……また≪氷像の空賊≫ですかねぇ?」
段々と近づいてくる集団は確かに≪氷像の空賊≫だったが、その形状がこれまでと違うことに生徒達は気づいた。
「レティシアさん、あれ女空賊ですわよ」
「そうみたいですねぇ」
レティシアはミスティを庇うように前に出ながら、水の中に隠してあった武器を手に取った。
目の前に来た≪氷像の女空賊≫が怒りながら何事か喚きはじめた。
氷のため、何を言っているかわからないが、怒りだけは伝わってくる。
「なんか物凄い殺気を感じますねぇ」
「もしかして嫉妬しているんじゃないですか?」
≪氷像の女空賊≫はミスティの言葉にうなずくと、剣を腰から抜いて構えた。
レティシア達はやむなく襲いかかってくる≪氷像の女空賊≫と戦うことになった。
「リネンはやらせないぜ!」
リネンを狙った≪氷像の女空賊≫の剣を夢の世界から帰還したフェイミィが止めた。
フェイミィは相手の剣をはじくとそのままとどめを刺そうとして手が止まり。
なぜなら≪氷像の女空賊≫がリネン似でフェイミィ好みの女の子だったのだ。
「おおお、おもちかえりぃぃ――(>□<)!?」
「するなぁぁぁ!」
ヘイリーがフェイミィもろとも≪氷像の女空賊≫を攻撃する。
攻撃を食らった≪氷像の女空賊≫が砕けけ、ショックを受けたフェイミィは破片を抱きしめ泣いていた。
≪氷像の女空賊≫の攻撃により吹き飛ばされたセレンフィリティは、民家の扉を突き破り中へと入りこんだ。
「いたた……」
「大丈夫?」
「うん。これくらい平気……」
壊れた扉の前ではセレアナがセレンフィリティに近づけさせまいと奮闘している。
セレンフィリティは大したダメージは負っていないことを確認して、戦線に戻ろうした。
しかし、その足がふいに止まる。
「セレンフィリティ、どうしたの?」
セレンフィリティは室内を見渡すと、ニヤリと笑った。
「ごめん、セレアナ。ちょっとここ任せていいかな?」
「え、いいけど。でも、なんで?」
「ちょっと大事な仕事を見つけたの」
セレンフィリティはニコニコと笑みを浮かべながら家の奥へと消えていった。
女性陣が激しい嫉妬に対して奮闘している一方、男たちも女空賊の対応に追われていた。
「俺にはもう彼女がいるんだって――!」
勇刃は≪氷像の女空賊≫達から逃げていた。
最初はこれまで通り迎撃していた勇刃だったが、しつこくキスを迫る≪氷像の女空賊≫に集中的に狙われてしまい、現在は逃げ惑っているのだ。
そして積極的アプローチはグラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)にも迫る。
後ろ姿に惹かれた≪氷像の女空賊≫達がステップを踏みながら近づいていき、それに気づいたグラキエスが振り返った。
「ああん」
殺意のこもった目が≪氷像の女空賊≫達に向けられる。
≪氷像の女空賊≫達は蛇に睨まれたカエルのように固まっていた。
「目障りだ。消えろ!」
黒い炎が≪氷像の女空賊≫達を襲う。
グラキエスは残忍とも思える連続攻撃で次々と≪氷像の女空賊≫達を倒していった。
逃げる≪氷像の女空賊≫のうち一体がゴルガイス・アラバンディット(ごるがいす・あらばんでぃっと)に道を塞がれる。
「逃がしはしない」
するとゴルガイスを見た≪氷像の女空賊≫が、いきなり気を失ってしまった。
「……我は何もしてないのだが。……ベルテハイト、我はどうしたら――!?」
対応に困ったゴルガイスが尋ねようとすると、ベルテハイト・ブルートシュタイン(べるてはいと・ぶるーとしゅたいん)は≪氷像の女空賊≫達に向かって歌を歌っている真っ最中だった。
≪氷像の女空賊≫達はベルテハイトの容姿と歌声に心を満たされ、そのまま成仏して溶けていっていた。
新たに現れた≪氷像の女空賊≫との戦い。
男たちはまとも戦えないでいた。
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