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夏だ! 祭りだ! また喧嘩神輿だ!

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夏だ! 祭りだ! また喧嘩神輿だ!

リアクション

 
 

白熊神輿vs小ババ様神輿

 
 
「さあ、別の場所でも次々と激突が始まっているようです。カメラさん、切り替えてください」
 シャレード・ムーンさんが、オーロラビジョンの映像を切り替えるように言いました。
 映し出されたのは、白熊神輿と小ババ様神輿の激戦です。
「こんもり加減なら、こちらも負けてはいないわよ」
 こんもりした世界樹型の小ババ様神輿を見て、多比良幽那さんが言いました。白熊神輿の中衛は、もじゃもじゃしたアルラウネさんたちです。ナルキススさんは無表情に、ディルフィナさんはぽやぽやーっと担いでいます。
「まさか、イルミンスールの御神輿さんと遭遇してしまうとは……。これも、運命……」
「でぶ猫なんか、ぶっ潰せ! おらおらおらおら!!」
「ベ、ベア!?」
 母校の御神輿と戦うことになってどうしようかと戸惑いを見せているソア・ウェンボリスさんでしたが、雪国ベアくんの方は対照的に闘志を異常なまでに燃やしいてます。
「ふっ、また、たかが白熊が、しゃしゃり出てきていますのら。この際ですら、真っ白な灰にしてやりますら。驚きの白さですら!!」
「こ、こらキネコ、暴れると担ぎにくいと……」
 ズシンズシンと地面を踏みならして気合いを入れるキネコ・マネーくんに、困ったように大神御嶽くんが言いました。
「何やってるの、ぶちかますわよ!」
「待ってました! そいやあ!」
 天城紗理華さんの言葉に、アリアス・ジェイリルさんが歓声をあげて御神輿を押し出しました。
「ちょ、ちょっと、早い……」
 前の方を担ぐ大神御嶽くんが、引きずられるようにして小ババ様神輿が加速します。
「こばー!」
 御神輿の屋根の上に乗った小ババ様が、ちっちゃな扇子を振って応援しました。
「こばばばば、こーばー、こーばー、こばばばばこーばばばーこばこばこばこばーこばば」
 何やら、小ババ様がマーチを歌っています。
「歌か、それなら、こちらだって負けないのだよ。いくぞ、母」
 何か触発されたのでしょうか、アッシュ・フラクシナスさんが対抗心をむきだしにして担いでいたベースを手に取りました。
「勢いづけね。いーなほたーれるすいーでんで、おーなーじしゅーかく、むねにきたいしてー♪」
 アッシュ・フラクシナスさんに合わせて、多比良幽那さんが収穫の歌を口ずさみます。アッシュ・フラクシナスさんも自慢の歌声を多比良幽那さんの歌に重ねます。
 予想外のアイドルたちの歌に観客のファンたちから歓声があがりました。
「ああ、五穀豊穣ですね。お祭りらしいです」
 沿道で見ていた非不未予異無亡病近遠くんが言いました。多分違うと思います。
「とりあえず突っ込めー」
 いつの間にか白熊の御神体の上に肩車されるように乗っかった織田帰蝶さんが適当に言いました。担ぐのは嫌だったので、乗っかって楽しようと思ったようです。
 さあ、両者が激突します!
絶対に守ってやる
 ミルディア・ディスティンさんが、約束通り御神輿の前に出ました。
 ドーン!
「はわわ!?」
 調子こいて御神体の上に乗っかっていた織田帰蝶さんが魔女の帽子ごと、激突の勢いでポーンと吹っ飛ばされました。ちょうどふわふわと移動してきた秋月葵さんにむかってまっすぐに飛んでいきます。
「いやー、こないでー!」
 あわてて逃げようとしますが間にあいません。ドーンと二人がぶつかって、観客の頭上にポップコーンや焼きイカがバラバラと降り注ぎました。
「ああ、周囲に被害が……」
 頭の上に落ちてきた焼きイカを載せてユーリカ・アスゲージさんが悲鳴をあげました。
「まったく……」
 イグナ・スプリントさんが、光の翼を顕現させると軽く飛びあがりました。ナイスタイミングで、落ちてくる二人をつかみ取ります。
「ぐえっ」
 ひっつかむという感じでしたので、ほとんどボディブローを受けたのと同じです。きゅうと気を失った二人をぶら下げてイグナ・スプリントさんが無事地面に降りました。
「なーでなーで」
 とりあえず、アルティア・シールアムさんがヒールで二人をなんとかします。
その程度なの
 さて、御神輿の方はというと、ミルディア・ディスティンさんがなんとか耐えきったようです。でも、敵の攻撃を受けとめると言うことは、後ろから味方の攻撃を受けると言うことです。はっきり言って、これでは単なる緩衝材です。激突のダメージはすべてミルディア・ディスティンさんにいきました。そのため、今のところ両者ノーダメージです。
「いったん戻して。もう一度勢いをつけて、あの子ごと粉砕よ!」
 天城紗理華さんが、いったん小ババ様神輿を引きます。
「距離をとるのだ。ここは、あれで行こう!」
 悠久ノカナタさんが、何やらブラックな顔で言いました。
 両者がいったん離れて距離をとります。
「やっちまえ、白熊豪雷閃!
「ちょっと違います」
 焚きつける雪国ベアくんに、ソア・ウェンボリスさんが訂正しました。
いきますよっ!
 ソア・ウェンボリスさんが叫びます。御神体の目がビカーッと光ります。
「何か来るわよ!」
「そうはさせませんとも」
 天城紗理華さんに言われて、大神御嶽くんが呪符を飛ばしました。ぺたんと、御神体の目に貼りついて封印します。
「そこじゃないです。神輿ギミック発動、目からレーザー! ……と見せかけて、口からレーザーですっ!」
 ソア・ウェンボリスさんが叫ぶと、御神体の口から魔砲ステッキのビームが発射されました。
「やれー!」
 興奮したアッシュ・フラクシナスさんが、担ぎ棒から手を放してベースをかき鳴らしました。そんなことしたら……。案の定、御神輿のバランスが崩れました。何をしているのかと、アルラウネのリリシウムさんが軽くアッシュ・フラクシナスさんをどつきました。あわてて御神輿を担ぎ直しますが手遅れです。
 敵御神輿の中心を貫くはずのビームがずれます。
「こばあ!?」
 ビームの軌道が変わって、ほとんどVの字切りされて御神輿の上の世界樹が倒れます。勢いで、小ババ様が放り出されました。危険です。
「小ババ様!」
 キネコ・マネーくん以外の三人が、御神輿を放り出して小ババ様を受けとめに走りました。
「むぎゅっ」
 当然、残されたキネコ・マネーくんが御神輿の台に潰されます。でも、小ババ様は無事天城紗理華さんにキャッチされたのでよしとしましょう。
「おほほほほほほ、チャーンス。やーっておしまいなさい」
 担ぎ手のいなくなった小ババ様御神輿に、どこから現れたのかお嬢様神輿が突進してきました。
 バキバキバキ!
 みごとに踏みつぶして、また風のように去って行きます。はたして、まともに戦う気はあるのでしょうか。