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第一次蒼空学園宿題戦争

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第一次蒼空学園宿題戦争

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【第一章】

 蒼空学園で突如起こった宿題提出組と、サボり組との闘争。
 その勢いは激しく、瞬く間に大量の生徒たちを巻き込むこととなった。
「いたぞ! 教師軍だ! 挟撃しろ!」
「ちっ! こちら、D班! 二階の廊下で反乱軍に囲まれた! 至急、援軍を寄こしてくれ!」
「くそぉおっ! そっちがやる気ならやってやるっ!」
「うわぁあっ! 先頭のヤツがやられたぞ!」
「衛生兵! 衛生兵はどこだ!」
 夏休み明け初日だというのに、蒼空学園内では、そんな叫びがあちこちから響いていた。
「……はぁ。何でいつもこうなるのよ」
 校舎の外。
 校庭で暴れまわる生徒たちを見つめて、ため息をつき、うなだれているのは、雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)だ。いつものことながら、この騒動に巻き込まれ、頭を抱えている。
「ま、まあ、それには同情するけどね」
 苦笑いを浮かべ、宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)が返答する。それに合わせてふたたび雅羅は深いため息をついた。
「雅羅さん、少しプラスに考えましょう。見方によっては、雅羅さんの厄介ごとを呼びこんでしまう性質は、常に修行できる環境を作れるとも言えますわ」
 落ち込む雅羅を、同人誌 静かな秘め事(どうじんし・しずかなひめごと)がそう励ます。それに『そうね。これも修行、これも修行……』と雅羅はブツブツ呟いていた。
「けど……さすがにこれはみんな、はしゃぎ過ぎよね」
 そう言うと、祥子の周囲で控えていた「賢狼」「シルバーウルフ」「ケンタウロス」がそろって立ち上がる。暴徒と化した生徒たちを見つめ、祥子自身も臨戦態勢を取った。
「喧嘩両成敗ってね。悪いけど、教師軍も反乱軍も関係なく、ぶっ飛ばすわよ!」
「母様。わたくしも手伝いますわ」
 祥子の意見に静香も頷き、「フェニックス」と「サンダーバード」を召喚する。
 二人は目を合わせると、幻獣を引き連れ、暴れまわる生徒たちの群れに突っ込んでいった。


「――シャロ! 危ないっ!」
「きゃっ!」
 渋井 誠治(しぶい・せいじ)が叫び、シャーロット・マウザー(しゃーろっと・まうざー)を抱き寄せる。
 数秒前までシャロのいた場所に、反乱軍の放った雷撃が落ちた。
「大丈夫か、シャロ? 怪我はないか?」
「う、うん。私は大丈夫……誠治は?」
「安心しろ。オレも平気だ」
 誠治は余裕の笑みを浮かべる。それに安心して、シャロは誠治の腕を抱きしめた。
「なんだか、今日の誠治はとっても頼もしいですね」
「な、なんだよ急に!」
 顔を真っ赤にして、誠治は恥ずかしがる。そんな誠治の反応を楽しむように、シャロは笑みを浮かべていた。
「なんだか不思議な感じです。デートなら、いつもしてるけど、今みたいに誠治と戦うみたいなことしたことなかったし」
 そう言いながら、シャロはさらに強く誠治の腕を抱きしめた。
「誠治に守ってもらえてるって思うだけで、なんだか胸がポカポカしてきます」
「ま、守るのなんて当然だろ。シャロは……お、俺にとって一番大切な人、なんだからさ」
「誠治……」
 恥ずかしそうにそう言う誠治に、シャロは満面の笑みを浮かべた。腕を抱きしめたまま、誠治の肩に頬ずりする。
「ふふっ。でも、やっぱりいつもみたいに、二人っきりになれないのは、ちょっと残念ですね」
「シャロ……」
 互いに、至近距離で見つめ合う誠治とシャロ。瞳を潤ませ、完全に二人だけの世界に入っていた。
 そして――そんな二人を殺気のこもった視線で見つめる十数の者たちがいた。
「……おい、何だあの二人?」
「この戦場でイチャつくとはいい度胸してんじゃねえか」
「畜生、彼女持ち許すまじ」
「アタシだって彼氏欲しいのに」
「ヤツらは敵。ヤツらは敵。ヤツらは敵」
 武装した反乱軍の生徒たちが、恐ろしい殺気を放ちながら、誠治とシャロに向かっていった。
 それにようやく気付き、二人も臨戦態勢を取る。
「いくぞ! シャロには指一本、触れさせないからな!」
「誠治……」
「「「イチャつくなぁぁああっ!」」」
 嫉妬に狂った生徒たち全員の声が、綺麗に重なった。


「……はぁー、これまた面倒な事に巻き込まれましたね」
 暴れまわる生徒たちを見つめ、御凪 真人(みなぎ・まこと)は深いため息をつく。そんな真人の頭を、セルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)が小突いた。
「ちょっと、真人! あなたもやる気出しなさいよね! これは全生徒が得るべき当然の権利を勝ち取るための戦争なんだから!」
「そうは言いましても。俺は宿題してきましたし」
「私はやってないのよ!」
「だから、あれほどやっておけと言ったでしょう」
 呆れた様子で真人はそう告げる。だがこのまま放っても置けないと重い腰をあげた。
「やれやれ、仕方ありませんね……おーい、先生ーっ!」
 駆け足気味に真人は、反乱軍と睨み合っている教師のもとへと近づいていった。真人の声に反応して、教師も振り返る。
「ん? 御凪か。お前は確か宿題を出していたな? なんでお前がそっちにいる?」
「ええ、それなんですが。俺にも思うところがありまして」
「ほぅ。それはなんだ?」
「はい。夏休みの宿題を提出するかどうかは、今後の成績に反映するのでしょう? なら提出しない方々というのは、そうしなくても十分な成績をとれる自信があると言うことではないのですか?」
「い、いや。提出していない連中は皆、テストでもあまりいい成績じゃない。このままでは、落第してしまう者も、」
「それは、その方の自己責任でしょう。宿題提出に義務はなくても、進級できるかどうかは問題にできるのですから」
「う、うむ……確かに。……だが、」
 真人の言葉に、教師が頭を悩ましている。もうひと押しだと真人が思ったその時だった。
「真人! どきなさいっ!」
「へ……ぐぎゃああっ!」
 スキル『龍飛翔突』を使い、龍に乗ったセルファの一撃で、教師はボールのように地面を転がっていった。
「セルファ……もう少しで丸く収められたのに」
「何言ってんの! 戦闘は勢いよ! 私達の憤りを今こそ教師たちにぶつけてやるのよ!」
「それはタダの日頃の逆恨みじゃ」
 そう突っ込む真人を無視し、襟元を掴んでズルズルとセルファは真人を引きずっていった。それにやれやれと、ふたたび真人はため息をついた。