シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

とりかえばや男の娘 三回

リアクション公開中!

とりかえばや男の娘 三回
とりかえばや男の娘 三回 とりかえばや男の娘 三回

リアクション

「こいつが邪鬼ヤーヴェ……」
 シオン・グラード(しおん・ぐらーど)は巨大な鬼を見上げてつぶやいた。
「こんなでかいのが籐麻を蝕んでいたというのか……許せないな。聖剣を手に入れるのにはまだかかるようだ、ここは俺が少しでも弱らせよう」
 シオンはソウル・オブ・ジャッジを構えると、ヤーヴェに向かって走って行った。

「させるかあ!」
 チェーンソーを持った、モヒカンの奈落人が妨害に入って来る。
 シオンはとっさに氷華翔翼で吹雪を起こした。モヒカンは悲鳴を上げて吹き飛ばされていく。

 それを見届け、ヤーヴェに突撃しようとするシオンの足元でいくつもの銃弾がはじける。

 ダダダダダダダ……

 マシンガンだ。

「ヤーヴェ様に近寄らせるかよ、ひゃっはー!」

 マシンガンの男が、笑いながらこちらに向かって乱射してくるのが見える。

「ちくしょう」

 歴戦の防御術で弾を避けながらシオンは舌打ちした。これでは、ヤーヴェに近寄る事もできない。
 

「へー……あれがヤーヴェね」
 ナン・アルグラード(なん・あるぐらーど)は巨大な鬼の姿に半ば感動したかのように声をもらした。
 しかし、今はヤーヴェどころではない。ナンは、奇声を上げながらシオンを狙ってマシンガンをぶっ放している奈落人の脇から近づくと、等活地獄で思い切りぶっ飛ばした。
 奈落人はマシンガンごと吹き飛び、岩に当たって気絶してしまう。

「よくも、あたしの相棒を!」
 刀を持った童女が背後から襲いかかって来る。
 ナンは殺気看破で気配に気付いて、童女の攻撃をとっさに避けた。そして、すぐに体勢を整え直すと先の先で先回りをして高周波ブレードを振り回す。童女はそれを刀で受け止めると、ナラカの闘技を使って攻撃して来た。
「おもしろい。存分に力を見せてもらおうじゃないか」
 そして、ナンはしばらく童女と打ち合ったのち
「十分、見せてもらった!」
 と叫び、童女の体を袈裟がけに斬った!


 ナンが邪魔者を妨害している間、シオンはヤーヴェに挑んでいく。
 氷華翔翼で飛びながら吹雪を起こし、炎の弱まったところに武器の聖化で聖気を帯びたソウル・オブ・ジャッジで攻撃していく。ヤーヴェは背後から近づく者に気付き、巨大な腕を振り上げた。シオンは歴戦の防御術で攻撃を掻い潜り、歴戦の必殺術で急所を狙った。
「そのでかい図体で避けれるものなら避けてみろ! 前から、後ろからも、バッサリと行かせてもらう!」
 ソウル・オブ・ジャッジがヤーヴェの右の目に突き刺さる。
 悲鳴を上げるヤーヴェ。しかし、すぐに右目は再生していく。だが、それより早くシオンは左目を狙って攻撃していた。ヒットアンドアウェイでヤーヴェを少しでも弱らせる作戦だ。
「くそ、うるさい虫があ!」
 ヤーヴェは叫ぶと、口をひらいて硫黄色の息を吐いた。不快な臭気が辺りに立ち込める。


 ピー! チチチ!

 華佗 元化(かだ・げんか)の手の鳥かごの中で、パラミタカナリアが暴れだした。

「……ん? パラミタカナリアが奴の吐息を感じた途端に暴れだした。てことは……あれは毒か」

 元化はヤーヴェを見上げて言う。
 突然毒の息の直撃を受けたシオンは、気を失って落下していく。

「なら俺がやることは、毒に冒された味方を治療して回ることかね」
 
 元化は立ち上がると、シオンに向かって走り出した。奈落人達が襲いかかって来る。

「邪魔だ!」

 元化は殺気看破で奈落人の位置や攻撃を察知しながら、起用に攻撃を掻い潜って行った。そして、シオンの元にたどり着くと、体を抱き上げ揺さぶってみる。
「大丈夫か? シオン……」
 しかし、返事はない。かなりまずいようだ。何しろ、毒の直撃を受けたのだから。慌てて応急処置を施そうとする元化の背後から、再び奈落人が襲いかかって来た。元化は振り返ると、
「俺の治療の邪魔をするな!」
 と、則天去私で奈落人をシオンの体にナーシングをかけて応急処置する。
「これで大丈夫だぜ……うん?」
 ふと見ると、そこに藤麻が倒れていた。その側には竜胆が……ヤーヴェの足元にいた竜胆も毒にやられ意識が朦朧としているようだ。
「そういえば、藤麻から邪鬼ヤーヴェが出てきたんだったか」
 元化は二人に近づいていく。そして、まずは竜胆にナーシングを施し、次に藤麻の容態を見てみる。藤麻は、真っ青な顔で意識を失い、肩からは血があふれていた。
「これは、ひどいぜ。早く治療しないと」
 元化は藤麻にヒールを施した。


「まさか、毒の息を吐くとは……」
 御凪 真人(みなぎ・まこと)セシル・フォークナー(せしる・ふぉーくなー)エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)にキュアポイゾンをかけながら言った。
「まったくだぜ。まだ、何が出て来るか分からないな」
「相手がいくら強大でも冷静に状況に対処していけば活路は見出せます。慌てず落ち着いて戦うように心がけましょう。とりあえず、大きな相手に接近戦を挑むのは危険なので、私は距離をとりつつ魔法による攻撃をします」
 すると、セシルが叫んだ。
「私は正面から参りますわ。それしか能が無いもので」
「俺も前衛にいくぜ、真人は後のフォローを頼む」
 エヴァルトはそう言うとワイヤークローを手に前方に走った。

 言われるまでもなく、フォローに専念するつもりだ。手始めに真人はヤーヴェに向かってブリザードを唱えた。氷の嵐がヤーヴェに襲いかかリ、ヤーヴェの体を包む炎が一瞬弱まる。
 その隙を狙ってセシルはヤーヴェに向かって行った。手始めに鬼神力を発動。セシルの額から角がはえ、体が巨大化していく。
「貴様も鬼か」
 ヤーヴェはおもしろそうに笑うと、腕を振り上げてセシルを突き飛ばそうとした。
 セシルは正面からその手を受け止め、がっぷりと4つに組む。そして【金剛力】【チャージブレイク】でパワーを溜め、ヤーヴェを突き飛ばす。ヤーヴェはもんどりうって、その場に倒れたがすぐに起き上がった。
「やるではないか。わしの仲間にならぬか?」
「お断りします。私は自由を何よりも愛しているので、他者に寄生し操るあなたは存在自体が許せません」
 そしてセシルは、【歴戦の武術】【特技:武術】でヤーヴェの懐に飛び込み、両手のトンファーを使って殴り続けた。しかし、殴った先から傷が塞がっていく。
「無駄だ」
 ヤーヴェは笑った。
「私に物理攻撃は効かぬ」
 すると、セシルは行った。
「いくら再生しようと構いません。その再生速度を上回るくらいの勢いで殴り続けるだけですわ」
「小賢しい」
 ヤーヴェは言うと、毒の息を吐いた。
「ああ!」
 セシルは毒にあてられ、鬼神力が解ける。セシルの体はみるみる小さくなっていく。ヤーヴェはセシルの体をつかみあげると、思い切り放り投げた。
「危ない!」
 エヴァルトが受け止める。
「こちらに!」
 真人が叫ぶ。
「頼む」
 真人はエヴァルトからセシルの体を受け取ると、キュアポイズンと、命のうねりを唱えた。セシルの体がみるみる回復していく。
「生意気な」
 ヤーヴェは真人を見ると、口から炎を吐き出した。しかし、真人は行動予測でタイミングを読み、ブリザードと氷雪比翼の冷気を利用して防壁をはった。氷と炎が押し合い、空中で霧散する。再びヤーヴェが炎を吐き出そうとするより先に、エヴァルトはワイヤークローを放った。ヤーヴェの首に鉤爪が刺さり、ワイヤーが巻き付いていく。
「真人、もう一度ブリザードを撃ってくれ!」
 エヴァルトの言葉に真人は頷き、再びブリザードを唱えた、ヤーヴェの体の炎が弱まっていく。ワイヤーに締め付けられているためか、炎はなかなか復活しない。
「藤麻……。こいつを道連れにするほどの覚悟を持ちながら、それが裏目に出るとは…。だが、思うようにはさせん。聖剣なんぞの力を借りずとも、滅ぼしてみせよう。確かに簡単に致命傷を与えられる弱点武器ではあろうが、それが無ければ倒せないほどの相手でもあるまい」
 エヴァルトはつぶやくと、ワイヤークローを巻き戻し、地面を蹴り、上空から一気にヤーヴェ接近する。そして、乱撃ソニックブレードでヤーヴェを切り裂いていった。
 ヤーヴェが巨大な腕でエヴァルトをたたき落とそうとする。エヴァルトは、巧みにかわして地上に落下。そして、再び下からの渾身の切り上げ……と見せかけて、

 ズガ……!

 ティアマトの鱗が閃き、ヤーヴェの首を引き裂くように真っ赤な線が走る。

 そして……

 どさあ……

 なんと、ヤーヴェの首が胴体から離れた!

「ああ!」

 驚く竜胆。

 真人もぼう然としている。

「嘘だろう? ヤーヴェの首が」

 エヴァルトは、地面に落ちたヤーヴェの首に近づいて行った。ヤーヴェは地面の上からギロリとエヴァルトを見る。そして言った。

「とどめを刺す気か?」
「ああ、せっかくの覚悟を無駄にするような奴は、俺が討ち滅ぼしてくれよう!」
「いいのか? わしは一度藤麻の内に封じたために、命を共有してしまっている。わしを殺せば藤麻の命もないかもしれないぞ」
「そんな言葉に騙されるか。もしそれが本当なら聖剣ですら、お前の命を奪う事はできまい。
 なぜなら、聖剣とまで言われるものが、善き者と悪しき者の命を見分けられぬはずがないからだ 
 死ぬのは邪鬼ヤーヴェ、貴様だけで十分だ。我等が友を苦しめた報い、地獄でしかと受けるがいい……!」

 そして、エヴァルトはヤーヴェの頭に歴戦の魔術を叩き込んだ。ヤーヴェの頭が砕け散る。

「やったじゃないですか!」
 真人が笑顔で駆け寄って来る。エヴァルトは答えた。
「ああ。しかし、これで倒せるような簡単な相手ではないはず。倒せたと思っても、まずは距離をとって不意打ちに備えよう」


「ふーん。なかなか、おもしろそうな奴」
 殺戮本能 エス(さつりくほんのう・えす)はエヴァルトを見てつぶやいた。彼は魔剣をとりに来た奈落人の中の一人である。ヤーヴェによって目覚めさせられた奈落人だったが、言いなりになるのが嫌でダラダラしていたが、エヴァルトの内にある、友への想いと、その友を傷つけられた時の怒りに目をつけたようだ。
「こいつなら上手く使えそうだ」
 エスはひとりごちた。


 その時

「ふふふふふふ……」

 どこからか、笑い声が聞こえた。

「誰ですか?」

 竜胆が叫ぶ。すると、また、笑い声が聞こえる。

「ふふふふふふ……、くはははは、あーっははははは」


 そして、今しがた斬り落とされたばかりのヤーヴェの首が宙に浮かび、再び胴体にくっついた。

「おもしろい、座興だったぞ」

 ヤーヴェは皆を見下ろして言う。

「しかし、残念だが、あの程度でわしは死なん。言っただろう? わしに物理攻撃はきかぬと」