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【2021ハロウィン】大荒野のハロウィンパレード!

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【2021ハロウィン】大荒野のハロウィンパレード!
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リアクション

 盛り上がる移動劇場を牽引するナガンのキングクラウンも、時々歩みを止めたり、逆立ちや空中ターンといった道化らしいポーズをとっていた。
 それを移動劇場の運転席で見ていたのは菊である。
 相変わらず背後から竜司の歌が聞こえてくる。
 菊は今回、「屋台の出店も捨てがたいが、今回は山車で祭りの中心に加わってパーッとやるのも悪くないな」と思い、自分の出虎斗羅(移動劇場)の運転手をかって出たのだ。
 ここまでの記憶を思い起こせば、菊はそれなりに忙しかった。
 【いとお菓子】のメンバー募集は、彼女が窓口であった。実は、今いるメンバー以外にも噂を聞きつけた波羅蜜多実業高等学校の生徒達が彼女の元に殺到したため、軽く面接などもやった。その審査基準は『如何に派手であるか』であった。

「踊るだけ? 他にもあるだろう? もしくはおまえが一人で出な!」
「あ? 人をぶっ殺したいだ? その辺でやるか、あたしがおまえをシメるかだな」
「アイドル? ワリィな、ウチのカラーじゃないね」

 これらと並行してハロウィンパレード用に移動劇場の改造も行っていた菊にとっては、まさに猫の手も借りたい様な忙しい日々だった。
「今日は暇だ……何であたしは今、この時まで気づかないでいたんだろう。本番にやることが無いって事に……」
 ハァ〜と運転席で長い溜息をつく菊。
 フロントガラスから見える観客の顔はとても楽しそうである。
「ナガン?」
 ナガンのキングクラウンとのみ通じる無線を取り、呼びかけてみる。
 ……応答がない。
「そういや、行進中は基本喋らないって言ってたな……」
 無線を置く菊が叫ぶ。
「誰か替わってくれ、あたしも歌いたいよぉ〜!!」
「菊様。よろしければ私が……」
「え?」
 菊が見ると、聖がニコリと微笑んでいる。
「聖……いいのかい?」
「丁度キャンティ様が休憩に入られましたし、今から竜司様がお歌いになるそうです。牽引されるナガン様もパフォーマンスでしょう? 菊様のように揺れが少なく運転することは私如きでは無理ですが、ただ座っているだけなら出来ますよ?」
「ありがてぇ!!」
 菊が運転席から飛び出しステージへと向かっていく。

 ステージでは、竜司がマイクを握り叫んでいた。既にヘドバンや激しい踊りで、その顔には光る汗が滝のように流れている。
「次は、オレが乗るこの山車を歌った歌だ。てめえら、耳かっぽじって聞きやがれ!!」
 竜司の言葉と同時に、重厚なギターサウンドが響きだす。それと同時にマイクを持った菊が竜司の隣に立ち、二人の熱いシャウトがこだまする。

『WinWinハロウィンズ』
作詞:吉永竜司 歌:吉永竜司・弁天屋菊

ナガンが引く 道化か奴隷のように引く鉄の箱
イケメンがいる オレがいる ここは菊の移動劇場
刹姫が呼ぶと 炎撒き散らしてやってくるぜ! 
危なく踊るヴァイス! (ヴァイス!)
花火か飴かのミリー! (ミリー!)
ロウソク点けるぜ! 梓! (梓!)
聖の飴が降るぅ 降るぅ (降るー!)
これが いとお菓子 意図は妖し
カボチャは野菜 ランタンになる野菜
今日はハロウィン 菓子をやるぜ オレが歌うぜ 
トリック・オア・トリート!
トリック・オア・トリート!(※繰り返し)



 歌の途中でステージから飛び降りた竜司は、まるで自分のリサイタルのように振る舞い、見物人と握手をし始める。
「てめえら、トリック・オア・トリート!!」
 マイクを観客に向ける竜司。
「トリック・オア・トリート!!」
「オゥ、イエエエェェェェーーーッ!!!」
 それに合わせて、ナガンのキングクラウンが、関節部が焼け付きそうな勢いで踊りを披露し、アシェルタとミリーがありったけの小さなを連射する。
 いつ終わるともわからぬ【いとお菓子】のパレードは、別の警備員から運転手の菊が「タイムアップです! 移動を始めて下さい!」と言われるまで続いたのであった。


「すごいな……かぼちゃの馬車もいとお菓子も、二大山車と言われるわけだぜ……」
 前を行く【いとお菓子】を見ていた三鬼が呟く。
「三鬼! 前が動く、あたし達も行くよ!!」
「わかってる! 俺達が最後なんだろう!」
 三鬼は三二一の出虎斗羅にあがる。
 その上にはどこかで三二一がスカウトしてきたらしいアヒルや犬やその他の何かがいる。皆、ゆる族である。
 ただ、彼らと三鬼達がいる以外は、いたって普通な出虎斗羅である。装飾や電飾も無い、
「最後にしちゃあ、ずいぶん寂しいじゃねぇか?」
「いいからいいから。じゃ、お願い?」
 三二一が運転手に声をかけると、ゆっくりと出虎斗羅が走り出す。
 ハロウィンパレードの最後を行進していく三二一の出虎斗羅。
 上には大きな丸耳をつけた三鬼と三二一、そしてゆる族達がいるだけである。
 観客の手前に来た時、出虎斗羅が一斉に軽やかな音楽と明るい照明を点ける。
 出虎斗羅の側面に浮き上がるのは、
『三鬼のハロウィンパレード』と描かれた煌びやかな電飾の文字。
「「「おおおぉぉぉーーッ!!」」」
 最後まで見届けた観客たちが一斉に三鬼と三二一に手を振る。
「ほら、あんたも手を振り返しなさいよ!」
「お……おう」
 三二一に促された三鬼が手を観客に振る。
 その傍ではゆる族も手を振っている。
 三鬼は自分たちに手を振る観衆を見ながら、
「パレード、やって良かったな」
 三鬼が漏らした言葉に、三二一が待ってましたとばかりニンマリと笑う。
「来年もやろうね!」
「……ああ!!」
 観衆の拍手を受けて通過していく三鬼と三二一の出虎斗羅。その行く手にパレードの終着点が見える。
 そこには、これまでパレードに参加した者。警備員として警備に当たっていた者。そして観客として存分に楽しんだ者たちの姿も見える。
 三鬼はこみ上がってくる達成感に、その瞳をやや潤ませ叫ぶ。
「三鬼のハロウィンパレード! 終わったぜ!!」
 出虎斗羅の側面に出る『THE END』の文字。
 拳を突き上げたままゴールをくぐると、ルカルカの花火や、緋雨と麻羅の神輿が花火風に打ち出した魔法の矢が夜空に打ち上げられ、大拍手が起こるのだった。