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刮目! アイドル大喜利!!

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大喜利其の弐

「さて、第1試合の結果です。

 チーム若草は座布団トータル2枚、若松プロデュースは座布団トータル4枚ゲット、マイナス1の3枚です!」

アナウンスが入り、第二試合の幕開けとなった。

「第2試合はこの俺様、獅子導 龍牙様が司会だ、ハッハッハァ!

 まずはチーム若草だな。久世 沙幸君からだ! 行けーっ!!」

「はーい。難しかったんですけど……。 万博期間中の事であいうえお作文を作っちゃいましたー」

久世が挙手する。ボディラインにぴったり沿った現代パビリオン制服がひときわ刺激的だ。

「【お題:あいうえお作文】でいきますーっ! コンパニオンのお仕事中、私はこんなことを心がけていました。

 さ:さわやかな笑顔

 ゆ:友好的なコミュニケーション

 き:気配りの精神!

 ですっ!」

「ん〜〜、ひねりがねえじゃねえかよ、オイ! それじゃ座布団はやれねぇなぁ」

「そ、そうですかっ……!」

龍牙の突っ込みに、がくりと肩を落とし、身をよじる久世。その様が本人はまったく無意識なのだが妙に色っぽい。それを見ていた藍玉 美海(あいだま・みうみ)が、声をかけられる前に挙手する。

「ハーイ!!!!」

「あーん? なんだ? もう2番手行くのか? 藍玉 美海君!」

「【お題:なぞかけ】で参りますわっ! 

 アイドル大喜利とかけて、穴の開いたポケットと解きますわ。

 その心は、ポロリもあるよ……ですわっ! アイドルといえば……やはりコレでしょう!!!

 ……ん? 沙幸さん? もちろんありますわよね、……ポロリも?」

あまりの展開にのけぞった久世が、後ろざまにひっくり返った。会場から呻きともどよめきともつかない声が沸きあがる。美海はきょとんとしている。

「あれ、なにやら微妙な空気になってしまいましたわね?」

「ん、もうっ!! 美海ねーさま!! そういうことはありませんっ!!」

真っ赤になって否定する久世を、じーっと見つめる美海。

「……ふむ、ポロリと落ちが付いた所で、この場は他の方にお任せすることにいたしますわ」

龍牙はニヤリと美海に笑いかけた。

「おうっ、いろいろ期待させやがって! こいつは憎いね。

 座布団3枚ッ!!」

「やりましたわっ!」

素直に喜ぶ美海である。

「さてお次は、ッと。ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)君だぁ!!」

御神楽 陽太(みかぐら・ようた)夫妻は相変わらず多忙でこの番組の収録日は見にこられないと言っていたが、ノーンの出る今回の番組は録画して、手の空いたとき一緒に見てくれる約束になっている。ノーンは深呼吸をして座布団の上で背筋を伸ばした。

「はーいっ!! 美食亭ノーンですっ! おにーちゃんたちは今日も仲良くお仕事頑張ってるの。

 ワタシじゃあんまり役に立たないかもしれないけど ……出来るだけやってみるよ!」

そう言って、手にしていたバスケットをパカンと開けた。ケーキやお菓子が入っているようだ。

「お、なんだそれ、うまそうだなオイ!」

「【お題:あいうえお作文】ですー!」

と、ノーンはおもむろにバスケットのお菓子を次々と食べ始めた。実に幸せそうな表情である。一息つくと、ノーンは言った。

「く:クレープ食べるよ!

 り:リンゴパイ齧るよ!

 す:スフレも味わうよ!

 た:タルトいただくよ!」

そこでいったん言葉を切り、緑茶を味わう。

「り:緑茶を飲んでほっこり一服するよ!

 あ:あー美味しかった! わたしお腹いっぱいだよ!!」

ぺこんと一礼するノーン。

「なぁるほど! 実演付きかい!! リュート君、座布団1枚!!」

リュートが座布団を持ってやってくる。ノーンはにこにことリュートに笑いかけ、丁寧に立ち上がって、座布団を重ねてもらい、その上に座ろうとした。高さがある上柔らかい座布団で、バランスを崩しかけたノーンを、リュートがすばやくサポートする。

「ありがとー」

「いやいや…… はは……」

照れ笑いしながら、袖に下がるリュートである。

「続いては後攻、若松プロデュースだ! 一番手はダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)君!」

龍牙が叫ぶ。テンションの高い龍牙と比べ、月白の着流しに浅縹色の上品だが大人の色気漂う羽織姿のダリルは落ち着き払っている。

(ルカのやつ。 ……話芸を嗜むとはいえ、俺はギャグ芸は苦手なのだがな)

ダリルは仕方ない、といった感じですっと片手を上げた。

「ダリル・ガイザックこと黒麒麟だ、よろしく。

 お題:名前であいうえお作文で。そうだな。 ……若松のチームなので若松でいこうか。

 わ:我侭気侭で

 か:勝気な悪魔

 ま:舞えば天女の

 つ:ツンデレ落語家

 ……お粗末。

 若松未散を今後とも贔屓にしてやってくれ」

しかしここで龍牙が何か言う前に、サングラスをかけ、右手に扇子、左手にピコピコハンマーを掴んだ若松本人が大声で叫んだ。

「ちょーっと待った!! 誰がツンデレだ! 

 だめだー! お前はっ!! 座布団はやれんぞっ!!」

ダリルはふっと薄笑いを浮かべ、

「よもぎ頭には自覚が無いようだな」

と言い、若松はうッと詰まった。その様子を見たハルが、客席から燃えるような目つきで、ダリルを睨みつけている。ハルは一方的にダリルをライバル視しているのだ。一方のダリルはまったく気づきもしない風で、涼しい顔だ。龍牙は肩を大袈裟にすくめた。

「なんだなんだ。俺様が決める前に座布団ナシに決まっちまったぜ。

 続いてエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)君!!」

(うむ。新進気鋭の我が友のためだ、無い知恵絞って力になろう)

パラミタの各種ヒーロー勢揃いの扇子、さりげなくそれを広げてその手を挙手するエヴァルト。日本で生まれ育った彼は、実は特撮・アニメ・ヒーローモノのほか大喜利もわりと好きだったりするのだった。

「あー、【お題:なぞかけ】に挑戦する。

 たいむちゃんタワーとかけて、パラミタジャンボ宝くじシーズンの俺と解きます!!」

「ほうほう。時事ネタだな。んで、その心はなんだぁ?」

「どちらも、月(ツキ)に頼るでしょう!
 
 ……あのタワー、月を目指してたみたいだし。宝くじに重要なのはツキだし」

最後の一言は、妙な実感を伴って発せられた。

「なるほどなぁ! よっし、座布団2枚だ、持って行きやがれ!」

「やっ…… たぁあああああああああ!!!!」

ヒーロー扇子を構え、ガッツポーズ喜ぶ。どこまでも濃い男である。

それを横目で見て龍牙が元気良く呼ばわる。

「んで、お次。蔵部 食人(くらべ・はみと)君!」

(よーし、俺が頑張って未散さんのチームを優勝させてみせるぞー!)

蔵部は意気盛んである。

「ハイッ!!! 蔵部 食人ことやどかり亭食人行きますーっ! 【お題:なぞかけ】っ!

 リーダーの若松未散さんとかけて、パラミタでは珍しくないこのアイテム、古代の食器と解きます!」

「ほー。食器と来たか。んで、その心は?」

「どちらもええ(A)カップです」

会場の空気が一瞬にして凍りついた。が。蔵部はまったく気づいていない。

(……受けたかな? まぁ、未散さんの胸のサイズなんて知らないけど多分Aぐらいだよな!)

ゆらぁ〜〜っとう感じで立ち上がった若松が、その背後に立つ。エロ系ネタ、女性に失礼なネタに厳しいエヴァルトも一緒だ。

「だ・れ・が・Aカップだとぉおおおお!!!!!!」

絶叫とともに高速で連打されるピコピコハンマー。蹴りも混じっているようだ。

「あ? え? え??」

どれだけ失礼なことを言ったのか、まったく解かっていない蔵部。

「食らえっ!!!」

エヴァルトの強烈なパンチが炸裂し、蔵部は吹っ飛んだ。気温調節のために開けられていたホールの天窓に、ピンポイントでのシュートが見事に決まる。

「あああああああぁぁぁぁぁーーーーーーーーー」

尾を引く次第に小さくなる悲鳴。

「……ああ……あ。やっちまったな。座布団のみならず、本人ごと没収ってわけだ

 ……意味ねえけど、これ俺様に座布団1枚でも良くね?」

ボソっと龍牙が呟く。第2試合の幕切れである。